戦国異伝
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第二百二十七話 荒木謀反その三
「これはわかるが」
「しかしです」
ここで信玄に言って来たのは高坂だった。
「何故家臣達、兵達まで」
「去りたいという者は去らせたな」
「無理強いせずに」
「しかも残った者達にもな」
「家族を城から去らせています」
「城の中にいれば人質になるがな」
「それを避けています」
高坂も言う。
「それも極力」
「それは潔いが」
「人質がいないので」
「いざとなれば裏切るか降る」
「そのことが考えられます」
真っ先にとだ、高坂は信玄に述べた。
「謀反をするならば」
「そこも非情にならねばな」
「出来ませぬ」
「しかもです」
ここで言って来たのは内藤だった。
「荒木殿は兵を集めておられませぬ」
「謀反を起こされてもな」
「他の城も攻められず」
「支城からもな」
「ご自身の居城に兵を集めております」
支城の兵を全てだ、集めさせているというのだ。
「全ての支城を開けた位です」
「あれではな」
「その支城を全て使われ」
「そしてな」
「居城も簡単に囲まれます」
「訳がわからぬ」
全く、というのだった。信玄も。
「これではな」
「あっという間にです」
「城を囲まれ」
「そのうえで、です」
「攻められて終わりです」
武田の家臣達も言う。
「これではです」
「謀反を起こしましたが」
「それでもです」
「すぐに滅びます」
「城の兵も減っていますので」
「余計にです」
「全く以てじゃ」
また言った信玄だった。
「この状況ではな」
「荒木殿は切れ者ですが」
「しかしです」
「この度のことは」
「この度の謀反のことは」
どうにもだった、彼等にしても。
「奇妙です」
「面妖ですらあります」
「すぐに滅ぼされる様な謀反」
「何故その様な謀反を起こされるのか」
「おかしなことです」
「そうじゃな」
また言った信玄だった。
「どういうつもりじゃ」
「上様も兵を集められています」
「そしてです」
「荒木殿のおられる摂津にです」
「兵を向けられています」
「有岡城に」
荒木の居城であり謀反を起こしたこの城にというのだ。
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