リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another87 罪
前書き
ラスボスとの対面。
ピエモンを倒し、子供達が安堵した瞬間であった。
世界を、無限の闇が覆い尽くす。
まず初めに起こったのは、スパイラルマウンテンの消失だった。
ダークマスターズの最後の1人であるピエモンが倒されたことにより、ピエモンが支配していたエリアは音もなく消滅していった。
最後まで残っていたスパイラルマウンテンの螺旋階段のような部品もあっという間に塵と化し、空気に溶けるようにして消えてゆく。
次に起こったのは、世界の暗黒化だった。
太一「な、何だ?一体何が起きたんだ…?」
大輔「始まるんですよ、最後の戦いが」
ピエモンが倒された直後、デジタルワールドには光が戻ってきたはずであった。
しかし、地響きがしたと思ったら再び闇が侵食を始め、またもやデジモンワールドは暗黒の力に覆い尽くされてしまったのである。
一輝「何!!?」
はやて「きゃあああああ!!?」
すずか「賢さん!!?」
賢「くっ!?」
そして、スパイラルマウンテンがひしゃげ、そこに生まれた空間の歪みに、子供達は次々と吸い込まれていった。
途中でアリサ達とは別方向に飛ばされ、大輔、アインス、フェイト、賢、はやて、太一、ヤマト、空、光子郎、ミミ、丈、タケル、ヒカリの13人が同じ場所に落ちた。
落とされた歪みの向こうに見えるのは、宇宙空間にも似た暗黒世界である。
13人のパートナーデジモン達が吸い込まれた大輔達を追いかけてきてくれた。
子供達は、どこまで続くか分からない暗黒世界を落ち続けていた。
一体いつになったら止まるのかと不安になったが、底に到達する前に彼らの身体はピンで留められたように唐突に止まる。
大輔「止まった…」
ヤマト「ここは何処なんだ?」
賢「ここは、今までの敵を生み出した元凶でもあり、ある意味世界の犠牲者が存在する暗黒空間。皆さん、心を強く持って下さい。でないと、心が暗黒に呑まれますよ」
空「ルカ君達はどこに?」
フェイト「多分別の場所に飛ばされてしまったんだと思います」
太一「どうやって戦えばいいんだよ?」
はやて「相手の出方を待つしか…ないやろうなあ」
アインス「その必要はありません。どうやら向こうから来てくれたようですよ」
どこからともなく、機械の作動音とも人の話し声ともつかない奇妙な音が聞こえてきた。
[そうだ……我が無念を晴らさずにおくものか……。]
その声は、そう言っているように聞こえた。
大輔「出やがったな。進化の過程で消えていったデジモン達のなれの果て…アポカリモン」
出現は、何の前触れもなかった。
空間から滲み出るかの如く、現れた存在。
アポカリモンは滅んでいったデジモンの怨念の集合体で、その中には古代種であるブイモン達の同族もいるだろう。
太一「大輔、進化の過程で消えていったデジモン達のなれの果てってどういうことなんだ?」
大輔「アポカリモンは…」
アポカリモン[説明する必要はない…。選ばれし子供達よ。私はその子供が言ったように進化の過程で消えていった者達の集合体。デジモン達は長い年月の中で進化を繰り返してきた。その中で消えていった者がいることを知っているか?]
光子郎「……進化の過程の中では、消えていく種があるのも仕方がないことです。やはり環境に順応出来ずに……」
アポカリモン[黙れ!!]
光子郎の言葉を遮り、アポカリモンはいきなり怒鳴った。
その声には異様な威圧感が込められており、太一達はまるで殴られたようなショックを感じて言葉を失ってしまう。
アポカリモン[仕方がない?その一言で全てを済ませる気か?]
ヤマト「何が言いたい!!?」
アポカリモン[貴様は我々を生きる資格のない者だと決めつけるのか?]
光子郎「いえ、僕は決して……!!」
弁解しようとする光子郎だが、アポカリモンは端から期待していないのか耳を傾けようとはしない。
アポカリモン[選ばれし子供達、そしてそのデジモン達よ。我々はお前達と出会えるのを楽しみにしていたのだ]
太一「何!!?」
ヤマト「どういうことだ!!」
詰問口調で尋ねる太一とヤマトに、アポカリモンは物分かりが悪い子供に物を教えるような口調で教えてくれた。
アポカリモン[いいか?我々が冷たく悲しく闇から闇へと葬られていく時、その片方で光の中で楽しく笑いながら時を過ごしていくお前達がいる…何故だ!!?]
アポカリモンの激情がそのまま衝撃波となって迸る。
アポカリモン[我々が何をしたというのだ!!?]
身悶えするように自分の身体を抱き締め、アポカリモンは叫ぶ。
あまりにもきつく抱きしめたからか鋭い爪が身体に食い込み、血が流れる。
アポカリモン[我々にだって涙もあれば感情もある。何の権利があって我々の命はこの世界から葬り去らなければならない!!?生きたかった!!生き残って友情を、正義を、愛を語り!!この世界のために役立てたかったのだ!!だが、我々はこの世界にとって必要がないというのか!!無意味だというのか!!?]
アポカリモンが叫ぶ間にも見る見る内に体の傷が塞がっていき、数秒もしない間に傷1つない身体に戻る。
光子郎「自己再生能力…ヴァンデモンと同じだ…」
大輔「…お前達の境遇には同情はする。けどその復讐のためにお前と同じ苦しみを今の何の関係もないデジモン達に与えることが正しいとは到底思えない」
アインス「お前達のやり場のない怒りは痛いほどに分かるが、それを関係のないデジモン達にぶつけるのは筋違いと言うものだ。」
アポカリモン[ならば私はどうすれば良かったのだ!!?暗い闇の底でただ嘆いていればよかったとでも言うのか!!?]
大輔「堂々と胸を張って生きていけばいい。お前達は生まれた時は何の罪もなかった。だからアポカリモンとして生きていても良かったんだよ」
賢「憎しみに囚われ、復讐するという選択をした時点でお前は負のスパイラルに陥ったと言うわけだな」
大輔「……悪いなアポカリモン。俺達もお前と同じだ……ただ生きたいだけ。お前を倒す…そして、解放してやるよ。お前を苦しみから、紋章とデジヴァイスの力でお前を苦しみから解放してやるぜ!!」
フェイト「…終わりにしようか、アポカリモン……太一さん達はどうします?戦いますか?」
フェイトは何処か戸惑っているような感じの太一達に尋ねる。
ヤマト「…正直アポカリモンの正体を聞いて、倒していいのか分からないって言うのが本音だ」
フェイト「……」
ヤマト「アポカリモンの言い分も分かるんだ。至極尤もだし……」
賢「じゃあ、迷うくらいなら戦うのを止めますか?仲間が減るのは辛いですが、足手纏いが増えても困ります」
ヤマト「いや、俺は戦うぞ。このままアポカリモンから目を逸らして逃げるなんて正直みっともないからな。」
太一「俺は正直、難しいことは分からねえ。でも話を聞いてこれだけは分かる。あいつをこのままには出来ないことを…確か紋章とデジヴァイスを使えばいいんだよな?」
大輔「ええ」
ヤマト「逃げるだけはしない。俺は俺の意志を貫く」
大輔「そうして下さい。その意志を大事にして下さいよ。俺は意志がはっきりしない奴は大嫌いだから」
ヤマト「なあ、それってもしかして俺とタケルも入ってないか?」
大輔「はい、俺はヤマトさんもタケルも嫌いですからね」
ニヤリと笑いながら言う大輔にヤマトは苦笑。
タケルは堂々と嫌いと言われて呆然。
大輔とヤマトを見ていると冗談ではないだろうかと思うが、太一とヒカリ、タケル以外は何となく気付く。
矛盾しているかもしれないが、嫌っていても不仲というわけではない。
そこら辺の機敏はまだまだ鈍くて幼い太一達には分からないだろう。
大輔「と言うわけだ。お前を倒して救って戦いを終わらせてやるぜ!!」
ブイモン[行くぞみんなあ!!]
全員【おう!!】
最後の決戦に挑む子供達。
アポカリモンを倒し、進化の過程で消えていったデジモン達の無念を救うことが出来るのだろうか?
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