ハイスクールD×D~黒衣の神皇帝~ 再編集版
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戦闘校舎のフェニックス
別荘での夜
俺はベッドの上で天井を見上げていた。山に籠ってから一週間が経過しているが、朝から夕方まで修行という事となった。基本的に人間スタンダードなので、夜は眠いから木場達には自主練と言ってる。隣のベッドで寝ている木場へ視線を移すが、すやすやとよく寝ているようだ。
それはそうだろうけどさ、重り+重力で体重は十倍になっていながら剣を振っている。疲労していて当然だが、木場は凄いと思うぜ。二~三日で、慣れてから剣の振る速度が違っているからだ。小猫ちゃんもそうだが、修行開始日より確実に大幅アップとされていた事など驚く事ばかりだ。
恐らく生まれ持っての才能、と死に物狂いで努力して得た技術だと思う。俺もあると言えばあるが、今までの努力の賜物でもあるとも言える。一方アーシアも順調に魔力修行は出来ているようだし、ぐんぐん成長するアーシアだ。炎や水、雷も小規模ながら使えるようになっていた。俺はそれ以上使えるが、今日は何故か眠れないので、起きてから台所に行って水を飲んでいるとリアスが来た。
「あら起きたの?」
「今日は眠れないんで、水を飲みにきたんですよ」
「ちょうど良かったから、少しお話ししましょう」
ティーライトキャンドルがテーブルの上で淡い灯を灯しているが、俺は暗いから見えないが悪魔は見える。悪魔は、灯りが無くても夜目が利くからお蔭で夜の山でも見えるとの事だ。あのキャンドルは雰囲気的なものなのかね?俺はテーブルを挟んで、リアスの対面席に腰を下ろす。赤いネグリジェ姿のリアスは、紅髪を一本に束ねて眼鏡をかけていたな。
「あれ、リアスは目が悪いのか?」
「あーこれ?気分的なものよ。考え事をしている時に眼鏡をかけていると頭が回るの。ふふふ、人間界の暮らしが長い証拠ね」
リアスはクスクスと小さく笑うが、眼鏡姿のリアスもいいなと思いながらネグリジェ姿も似合ってると思いながら、この辺りをばら撒いている偵察機カメラから撮影させてもらった。テーブルの上に、何やら地図らしきものとフォーメーションなどが書き込まれた紙が置いていた。夜中に一人で作戦でも練っているのか?リアスは戦術が書かれている本を閉じた。
「・・・・正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」
「相手がフェニックスだからか?」
「ええそうよ。相手が他の上級悪魔なら、これを読んでいれば戦いは出来るわ。この本は研究された戦いのマニュアルだけど、ライザーは別というよりフェニックスが相手だからかしらね」
一冊の書物を取り出して、テーブルの上に置いた。開かれたページを指すが、そこには雄々しく炎の翼を広げる火の鳥が描かれていた。
「その昔、フェニックスは命を司りし聖獣として人々に崇められていた。流す涙は如何なる傷も治し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手に入れられると人間界の国々に伝説を残す程だったわ」
だが、聖獣であるフェニックスにはもう一つの一族がいた。侯爵の地位を持ち『七十二柱』にも数えられた悪魔側のフェニックス。
「人間達は、聖獣フェニックスと区別する為に悪魔のフェニックスを『フェネクス』と呼ぶようだけど、聖獣と称されるフェニックスとライザーの一族は能力的にはほとんど一緒。つまり不死身であり、私達はそれと戦わなくちゃいけない」
ルシファーから聞かされたが不死身でも倒せる方法はあると、一つは神クラスの攻撃をするか精神を消耗させるかと聞かされていた。俺は前者の方だが、不死身は確かに最強だが神クラスの攻撃が出来る俺にとっては何の問題もない。
「ほとんど無敵に近いわね。攻撃してもすぐ再生して傷を治すから、業火の一撃は骨すら残さない。八勝二敗・・・・これはライザーの公式『レーティングゲーム』の戦績よ。十回戦って八勝の内二敗は、懇意にしている家系への配慮でわざと負けただけ。実質は全勝だから、既に公式タイトルを奪取する候補にもなっているわ」
なるほど。それはリアスが言ってた事で理解出来た。俺なら楽勝だが、リアス達では勝てるか分からない。だから作戦を練っている事何だと。
「ライザーが婚約相手に選ばれた時から、嫌な予感がしたの。そうね、今思えばこうなる事を見越して、お父様達は最初から仕組んでいたんだわ。私が否応無しに結婚するように、ライザーを当てた。こうして身内同士のゲームになってもライザー相手=フェニックスが相手なら、勝てるはずがないと踏んでいたんだわ。チェスで言う所のハメ手。スウィンドルね」
リアスが強くとも、不死身が相手ではどうにも考えたのか。ケルディムはそう考えたのかもしれんが、それならどんな上級悪魔の娘であっても確実に結婚するしかないな。それも政略結婚とも言うべきでもあるが、俺的にはいくら両親が決めた事があっても否定ぐらいはするさ。
「レーティングゲームが悪魔の中で流行るようになって、一番台頭したのがフェニックス家だった。悪魔同士で戦う何て、ゲームをするようになるまではほとんどなかったわ。『王』も参加するこのゲームで、フェニックスの強さが浮き彫りになったの。フェニックス家は、公式『レーティングゲーム』で最強クラス筆頭・・・・不死身。これがどれだけ恐ろしいモノか、悪魔達は初めて理解したのよ」
不死身なら何度倒されても復活出来るから、フェニックスと違って他の悪魔の力には限度があるから疲労した所を一気に叩かれる、か。俺が思考の海に入っているとリアスは苦笑した。
「ライザーを倒せない事もないのよ?」
「ああ知ってるさ。倒す方法は二つだが、圧倒的な力で押し通すか起き上がる度に何度も何度も倒して精神を潰すかの二択だな。前者は神クラスの攻撃が必要であり、後者は焼き鳥野郎の精神が尽きるまでこちらのスタミナを保つ事だ。身体が再生する時に精神も疲弊する。体は不死身でも、精神までは不死身じゃない。フェニックスの精神を押し潰せば俺達の勝利って事だ」
「ええ。ただ私達には神クラスに、一撃で相手の精神も肉体も奪い去る力があれば楽何でしょうね」
『俺は神クラスの攻撃が出来るが、今の段階では封印を解除する訳にはいかないな』
『相棒は創造神黒鐵の力を封印しているから、他悪魔からもただの人間にしか見えない訳か』
ドライグと念話した所で聞いてみたが、前々から疑問があったからだ。
「ところでどうしてライザーの事を嫌っているんだ。今回の縁談、拒否理由を教えてほしい」
ライザーは女たらしで最低な所があるが、お家事情を考えると断れないしな。
「・・・・私は『グレモリー』なのよ」
「うん?確かにそうだな」
「いえ改めて名を言った訳じゃないのよ。私はあくまでグレモリー家の悪魔で、どこまで行ってもその名が付き纏うって事」
「嫌なのか?」
「誇りは感じているわ。けれど私個人を殺しているものでもあるから、誰しも私の事をグレモリーのリアスとして見るわ。リアス個人として認識してもらえない。だから人間界での生活は充実していたし、誰も悪魔グレモリーの事何て知らないもの。皆、私を私として見てくれているからそれが堪らなく好きだわ。悪魔社会では、それを感じる事は出来なかったし、これからも感じる事何て出来ないわ。私が私として充実できるのは、この人間界にいる間だけ」
遠い目をしているリアスだが、寂しさを瞳に乗せていた。俺としては、この名を気に入ってるが世界によって名は変わる。恋姫世界では北郷一刀だったし、IS世界では織斑一夏だったし、天下御免では秋月八雲だったしいしな。
だがそれはあくまで各世界での名前であり、本名は織斑一真となっている。IS世界に行く前は、名字が無かったから、コードネームでカズマと呼ばれていた。ただし両親は存在しないが、俺には家族はいる。奏や優斗、他の外史世界で知り合った仲間や記憶共有者達も仲間や家族だ。
「私はグレモリー抜きとして、私をリアス個人で愛してくれるヒトと一緒になりたいの。それが私の小さな夢・・・・残念だけど、ライザーは私の事をグレモリー家のリアスとして見ているわ。そしてグレモリー家のリアスとして愛してくれるのが、嫌何だけどグレモリーとして誇りは大切なものよ。矛盾した想いだけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」
リアスは『リアス・グレモリー』としてではなく『リアス』個人として異性に愛されたい訳か。乙女の想いは無限大だと聞くが、それかもしれんな。
「俺は、グレモリーとしては見てないぞ。リアス個人として見ているが、今はサーゼクスの頼みとなった協力者だ。リアスの為なら何でも協力するぜ。修行もその一つだ」
何故か頬を真っ赤に染まっていた。んー、目合わせて言ったからかな。と俺はリアスの目線を外す。
「そういえばさ、初陣がそんな焼き鳥野郎だ何て前途多難だな」
「ええそうね。でも私は負けない。戦う以上は勝つわ。勝つしかない」
「だが自信はあるのか。勝つ見込みはあるのか?」
「正直自身はないわね。でも祐斗や小猫は聞いた所、貴方のメニューを熟していると聞いているわ。あとは『王』の私が自信を持つだけだから、少し怖いけどね」
俺は立ち上がり、リアスの隣に座って優しく抱き寄せる。リアスは赤くなっていたが俺はこう言った。
「大丈夫。俺の指示通り修行すればあいつらは強くなるが、あとは『王』であるお前が信じないとダメだぞ。下僕と同時に仲間なのだからな。俺はどこにも属さないが、協力はしてやる。サーゼクスからの願いでもあるからな。一つだけ言うのであれば、冷静になって戦う事だ」
俺はそう言って寝床へ戻った。次の日の修行だが、俺は次元の狭間本家に戻らないといけない。明日の朝に言ってから戻るとしようか。それと赤龍帝の籠手の倍増については、本来の主人公よりも限界を知らない。
能力の増大には上限が無いしどこまで増大するかに関しては、宿主のスペックによる物だ。増大されて行く力に耐える肉体なのか、それとも創造神黒鐵としてイレギュラーな力として認識しているからなのかは知らん。
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