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ドリトル先生の水族館

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第四幕その六

「少し連携がいうか意志の疎通がね」
「それがなんだね」
「出来ていない?」
「そういえばそうかな」
「そんな感じね」
「係の人は日本語を話してるけれど」
 見れば黒髪に黒い目で、です。典型的な日本の人のお顔です。とても奇麗なお姉さんです。先生はそのお姉さんを見て言うのです。
「けれどあのアシカ君達は日本生まれじゃないからね」
「ええと、だからなんだ」
「アシカさん達日本語わかっていないんだ」
「そうなんだね」
「うん、ある程度わかってきていると思うけれど」 
 それでもというのです。
「あまりね」
「それでなんだ」
「意志の疎通があまり出来ていなくて」
「アシカさん達も今一つなんだ」
「曲芸が出来ていないんだ」
「そうだね、この場合はね」
 どうするべきかとです、先生は行動で示しました。
 係の人のところに来てです、穏やかな声で尋ねました。
「こちらのアシカ君達はどちらの生まれでしょうか」
「はい、西アフリカです」
 そちらの生まれだとです、係の人は答えました。
「ゴールドコーストの方の」
「あちらのですか」
「はい、そうです」
 そこの生まれだとです、係の人は先生にこうも答えました。
「そちらから来ました」
「そうですか、だからですか」
「だからとは」
「この子達は貴女の言葉がまだよくわかっていないのです」
「あっ、そうなんですか」
「貴女は日本語でこの子達に言われてますね」
「はい」
 係の人は先生に素直に答えました。
「英語も一応喋れますけれど」
「英語ですか」
「ではこの子達には英語で言った方がいいですか」
「ゴールドコーストの辺りはイギリス領でしたが」
 先生の祖国です、まさに。
「ですがもう独立して日が経っていまして」
「この子達は英語はですか」
「もうよくわからないと思います」
「そうなんですね」
「はい、ですから」
 それで、とです。先生は係の人に温和な笑顔でお話しました。
「この場合はアシカの言葉でお話された方がいいです」
「アシカ語ですか」
「実は僕はアシカ語も喋ることが出来ます」
 あらゆる動物の言語を操ることが出来る先生です、勿論アシカ語も喋ることが出来るのです。それでというのです。
「ですからそちらで宜しいでしょうか」
「アシカ語ですか」
「はい、その言葉をどうでしょうか」
「そうですね、日本語が通じにくくて英語も駄目なら」
「アシカ語ですね」
「この子達本来の言葉で話すのが一番ですね」
 係の人も言うのでした。
「そうなりますね」
「それでと思いまして」
「わかりました」
 係の人も頷いてでした、そのうえで。
 先生にお願いして先生も笑顔で応えました、後日係の人のところに先生が作ったアシカ語の日本語訳辞典が送られることになりました。
 そして先生はアシカさん達にもです、笑顔で尋ねました。
「それでいいね」
「うん、流石先生だね」
「僕達の言葉のこともわかるんだ」
「僕達まだ日本語に慣れていなくてね」
「英語は知らないんだよ」
 まさに先生の思った通りでした、このことは。
「だから係の人の言葉もね」
「わかりにくくてね」
「まだ細かいところがわからないんだ」
「日本語がね」
 実際にそうだというのです、アシカさん達も。 
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