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真田十勇士

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巻ノ十五 堺の町その二

 こうしたことを話しながらだった、老人と周りの者達は大坂の町も見て回った。しかしそれはただの見物ではなかったが誰もそのことに気付いていなかった。
 幸村一行は堺に着いた、そして。
 まずはその港に向かった、そこで様々な国の船が行き交う大きな港を見てだった。幸村は唸ってこう言った。
「これが堺じゃな」
「左様です」
 その通りだとだ、筧が答えた。
「本朝だけでなく明、南蛮からの船も来てです」
「この賑わいじゃな」
「勘合貿易と南蛮貿易でも栄えています」
 その明、南蛮との貿易でもというのだ。
「この様に」
「船の形もな」
 幸村はその船達も見て言った。
「様々じゃな」
「明のものも南蛮のものも」
「それぞれ違うな」
「はい、船にもそれぞれの国が出ていまして」
「それでか」
「この様に様々な形の船があるのです」
「そして人もか」
 幸村は今度は人を見て言った。
「様々じゃな」
「これまでも南蛮の者はいましたが」
 海野が言った言葉だ。
「ここは格段に多いですな」
「明の者もな」
 望月は彼等も見ていた、日本の者と髪や目の色は同じであるが着ている服が違うのでどの国の者かわかるのだ。
「多いな」
「格別にな」
「そうじゃな」
 こう海野に言うのだった。
「ここは」
「耶蘇教の寺もあるな」
 穴山は港の傍のそれも見た。
「伴天連の坊主もおるしな」
「本朝の者も出入りしておるぞ」
 由利はその彼等も見ていた。
「見れば」
「危ういのでは」
 伊佐はその様子を見て顔を曇らせていた。
「あれは」
「本朝の者に耶蘇教の信者が増えるとか」
「はい」 
 伊佐は根津に答えた。
「それはあまり」
「耶蘇教のことじゃな」
 幸村もここで言う。
「あの教え自体はいいとして」
「そうです、南蛮の国は耶蘇教の信者を増やしてです」
「それで国を自分達のものとするそうじゃな」
「そう聞いております」
 だからとだ、伊佐は主に話した。
「ですから」
「そうじゃな、拙者もそのことを恐れておる」
「その耶蘇教の噂ですが」
 霧隠も言って来た。
「大友殿のご領地で力を伸ばし」
「そしてか」
「はい、何でも大友殿は最早耶蘇教の坊主の言うがままとか」
「それは大変なことじゃな」
「これまでの寺や神社を壊しているとか」
「そんなことをして何になるのじゃ」
 その話を聞いてだ、清海が驚いて言った。
「仏も神も崇めてこそではないのか」
「それが違うのじゃ、耶蘇教では」
「耶蘇教も神を教えているであろう」
「それはその通りじゃ」
 霧隠もその通りだとだ、清海に答えた。
「実際にな」
「では同じではないか」
 神を信じているのならというのだ、清海にとって耶蘇教の神は他の教えの神と同じなのだ。神社に祀られている神と。 
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