寄生捕喰者とツインテール
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新たな波乱が地に降り立つ
前書き
これで第二巻部分は終了です。
次に自問自答を挟み、第三巻相当の話へ移行します。
余りシリアスを続け過ぎたので、三巻目からはちょっとギャグも入れて行こうか、もしくはツインテイルズとも協力出来るようにしようか、とも考えているこのごろ。
とある事情でグラトニーの力も弱くなりますし、限定的にならピッタリかなーと。
では第二部の、最終話をどうぞ。
『ソレ』は形は同じであれど、サイズは違う。模様すら同じで、しかし力の度合いが違う。決定的に違うのは、纏う力の色。
慣れ親しんだ己の “紫” では無く、ごく最近見かけたとある者の“柿”。
目を見張った彼女だが、目を疑った彼女だが……間違い無かった。
「……さっきの奴の……『固定強化』の腕……!?」
『ソレ』が “腕” のエレメリアンの一部であること、そして自分の左腕と成っている事が。
「……な、何で……?」
『説明は後ダ! “リスク” が来る前に動け相棒!!』
「りょーか――――いっ!」
会話中に空気を読んで攻撃しない事、説明中にちゃんと質問を返す事、漫画などでは必要な……しかし現実では隙を作る行為を、アルティメギルなら兎も角単純感情種は待っていてくれない。
振り降ろされたガーネットの炎塊をバックステップで一度回避し、腕をクロスさせて肘から先に『柿色のオーラ』を纏わせ二撃目を受け止めた。
「うううぅぅぅらああぁぁっ!!」
「!!」
次いで両手での掌底を、ズバァン! と叩き込む。
物体の『固定』という能力により簡単には壊れなくなり、更に『強化』される事と両腕なのも相まって、今までよりも簡単に腕を弾き返す事に成功する。
明らかに元々の使い手よりも質が上だが、しかしラースが『リスク』と言っていたように、長々続けては何らかの障害が出る事は間違いない。
世の中そうそう甘くは無いと言う事か。
「Ahahahahahahahahahahahahahahahahahahahah!!」
「また来た……!」
ウージの咆哮に一旦グラトニーは屈み、バネのように跳ねあがって迎え撃った。
突進と共に迫る右拳を左拳で、次いで向い来る左拳を右拳で、分岐して顔面を掴まんとする“第二の腕”を、予め長方形に固定していた地面を思い切り踏み込む事で、せり上がる壁を作り防ぐ。
幸運にも前のめりになっていたウージの顎を打ち抜くと、押し込まれていた拳から力が抜ける。そこを逃さず、『柿色の左拳』で壁を殴りつけた。
「すぅ―――《ブレーク=ショット》っ!!」
砕ける直前に『固定』された岩石群が、散弾と成ってウージへ襲いかかる。余りの速度に流石のウージも反応しきれず、また焼き尽くしきれず幾つも一辺に食らう。
後頭部から倒れてすぐ、声もあげずに興奮状態でガバッと置き上がれば、
「これが―――《ブレーク=キャノン》っ!」
「!!!」
巨大な岩石塊が自分目掛けてすっ飛んできて、一言も発せずブッ飛ばされた。
散弾の如く瓦礫を吹き付ける《ブレーク=ショット》に、ドデカい塊を打ち放つ《ブレーク=キャノン》―――どちらも “腕” のエレメリアンが使っていた技だ。
本来、グラトニー自身の力とは、何の関係の無い技である。
それを自分が難なく使用出来ている事に、大なり小なり驚愕はしているか、グラトニーは己の右手を見つめて握ったり開いたりを繰り返す。
「Es apdegums!!」
『来タゼ!』
「……ウェルダン、お断り……!」
彼女のそれを隙と見たか、ウージはガーネット色の火の粉をまき散らし、同色の軌跡を引きながら、太い炎の腕がまた迫る。
「Un ēst, bet labi!!」
「《ブレーク=マグナム》!!」
対するグラトニーは数回掌底を空振りさせて『固定』し、能力による強化だけでなく打ちだした勢い “そのもの” まで固定された、柿色の腕を大火へと叩き込んだ。
これで何度目とも知れぬ、巨大な突発的な突風が吹き荒れる。
「Ahahahahahah!?」
「ひとっ飛びの……お返し」
先の意趣返しとばかりにウージは弧を描いて飛び、地面に着地できず乱暴に激突した。
突風が収まり晒されるのは、焼け焦げた大地、螺旋状に抉られる地面、複数の歪なクレーター、“何か” の燃え残り、小さな残骸の数々……。
……もうここが森の中にあった、工場跡地だとは誰も思わないだろう。
「Ahah!」
「うらっ!」
お互いの力技がぶつかった数瞬、漂っていた高揚感が嘘のように、声を発さず表情を変えず静寂が包む―――――
「Ahahah! Ahahahahah!! Ahahahahahahahah!!!」
「はあああぁぁ! うりゃああああぁぁぁ!! ジェアアアアァァァッ!!!」
また音が戻った時には、獣と見紛わん迫力の零距離戦が勃発した。
ウージが猛り狂って放つ、もう既に技も減ったくれもない剛焱の嵐を、両腕とも『固定強化』を掛けた拳の乱れ打ちで受けとめ、グラトニーもまた吼える。
分かれに分かれて飛び交う焔の拳でさえ、ラースの力と “腕” の力を得たグラトニーとは互角でしか無い。
容姿が幼子な故に的が小さい事が、ここで利点と成り功を奏したのだ
『相棒! ラッシュだけじゃあだメダ! サポートしてヤル、成るだけ “固定” して溜メロ!』
「ん!」
応戦していても感じる高熱を、頬を掠めても洒落にならない熱波が過る攻撃に、一瞬の激痛を覚悟の上で一旦固定を解く。
「が……!」
「garoza!!」
「ま、だだぁ……!」
意識を手放しそうになる寸前でこらえ、倒れる事も勢いを緩める事もせず、ガツン! 途中の腕打ちつけた拳から、『柿色のオーラ』を纏わせて効果と強化を、それこそ重ねに重ねて掛けていく。
「溜める……溜める……溜める……っ!」
『やっぱ同じ場所に掛けルト、三回目から極端に効果自体が落ちるやがルカ……ダガ!』
「ん! 『変わらないモノ』もあるっ……!!」
その変わらないものを活かす為に、グラトニーは時が来るまで只管、ウージ相手にラッシュに付き合い続ける。
左腕に、力を蓄え続ける。
飛び交うのは紫では無く、柿色の鈍い閃光。密度こそ無くとも速度と数なら “紫” を優に超え、煌々として立ち上がる柘榴石の炎と、何度も何度も……何度もぶつかる。
ぶつかって、ぶつかって、ぶつかり合う。
「Man iet vēl! ―――――《火猿腕》ゥゥ!!」
時が、訪れた。
「今っ―――《ブレーク=マグナム・ネオ》ォォッ!!」
今までの度の一撃よりも一層燃え盛り、辺りを真っ赤に照らす業火は、単純なパワー重視の小細工抜きであるからこそ、洒落にならない威力を誇る。
だがグラトニーもまた、相手の繰り出した技にさらに改良を加え、己の物として取り込み解き放つ。アレだけ鈍い柿色の光は、今では相手と押しあえる輝きを持ち得ている。
果たして…………その一撃は、焔の重撃を轟音を上げて撃ち返した。
「sāpīgs!?」
「終わらない!」
大技を真正面から跳ね返されたウージはガードも出来ず、グラトニーは一気に詰め寄って左腕でがっしり掴み、手を広げた状態で『固定』された右腕で思い切り持ち上げた。
「く、ああああっ!!」
此方もダメージが積み重なっていた右脚に鞭を討ち、空気を思い切り噴出させて飛び上がる。
幼子がの男を持ち上げる、宙を飛ぶという余りにも異様な光景の中、歯を噛み鳴らす位に食い縛ったグラトニーが、更に向う脛から風を吹き出させる。
「うりゃああっ!」
「!!」
掌底の要領で腹に左腕を叩きつけ、体ごと動かし支えの右手を勢いよく振り出した。
投げ付つけてから軽く曲がったウージの体が何故か『柿色のオーラ』に包まれるが、それを見間違いかと見直す間もなく―――空中で折れ曲がって一気に加速した。
まるで “今” 殴られたかの様に。
「Wow Oh Aaaaaaaaaa!?」
固定を解除する事で解かれるエネルギーを逆利用した、見事な投げ技にウージは二重の意味で驚き、またも過大な音を上げて地面に激突した。
「決まりっ―――《ブレーク=バズーカ》……!」
《ブレーク=ショット》などが周りの物を、《ブレーク=ライフル》が自身の体を弾丸とする様に、《ブレーク=バズーカ》の様に相手を弾丸と化す技があっても、別段不思議ではなかろう。
まあ、投げられた相手が武器と成るのではなく、叩き付けられた土台が武器に豹変するのだが。
それでもダメージは中々のモノか、ウージは遂にフラフラとし始めた。
だが頑丈さとタフさ、なお足掻き続けるの単純感情種共通なのか……ウージは両腕を振り上げ、二回りも太くし燃え上がらせる。
そして合わさり一本になる腕から、何が繰り出されるか―――何をするかなど、一目瞭然だった。
「《焼劫爆砕》!!」
『六本の岩塊ダ!』
「あ……っ!! 《ブレーク=リボルバー》!」
天より不気味なほどゆっくりと、しかし実際は恐るべき早さで落ち来る、神々の天罰の如き火炎柱を目の前にし、グラトニーは慌てるもラースから焦りの感じられない指令を受た。
それで頭の地を下げると、すぐさま後ろ向きでの一回転から、裏拳の要領で地面に左腕を叩きつける。
あと少しでぶつかるその寸前に六本の石柱が立ち上がり、業火と見紛う一撃を数瞬だけ押し戻した。
回避するには、それで十分だった。
『死ぬ気で飛べェッ!!』
「ぐぎっ―――が……あああぁぁっ!!」
痛みに堪えながらまたも本来の『風』の力を利用して、ハリウッドダイブからの空中前転を行い、着地からすぐに半回転してウージを睨みつけた。
大技中の大技だからか隙は生じていたが、距離が離れすぎている。
……が、攻撃はできる。
「もっと……! 投げて投げて投げる!」
維持と力技で地面を踏み砕き、蹴り飛ばしてくり抜き、右手の牽制用から左手の本命用まで、当たる当たらないを厭わず滅多矢鱈に投げつける。
行ってみて分かるこの攻撃の使いやすさ……敵に回ればどれほどウザったかった知っているグラトニーは、僅かながらに笑みを浮かべていた。
それが何を意味しているかは、本人にしか分からないだろう。
「Vēlams, lai trieciens prom! 《炎放叩》!!」
行き過ぎた向かい風の様に真正面から牽制弾を焼き尽くし、『固定』された物をそのままソレごと押し返してくるウージ。
横に軸をずらそうとも薙ぎ払ってくる攻撃を前に、グラトニーは未だ笑みを消さない。
『ハハハハ、やッパ―――』
「……そう来るよね」
側転から途中で逆立ちに移行し、腕を曲げて地面に押し付ける。
「てあっ!」
段々と積み上げられる形で《ブレーク=リボルバー》が発動し、最後に曲げた腕を思いっきり伸ばす事でグラトニーは跳躍。
すぐ真下を灼熱の剛腕が通り過ぎるが、本人は無傷のまま着地した。
何の思ったかそこから屈むと、彼女はクラウチングスタートの体勢を取った。
いったい何をする気なのかと思われた―――刹那、音が弾ける。
「自分式っ―――《ブレーク=ライフル》!!」
「nasks……!?」
本来は固定された腕を構え、もう一本の腕で地面を打ちながら、威力増幅と『固定解放』による加速で惑わす、異色のタックル技であるこの技を、グラトニーは敢えて移動の為だけに使った。
攻撃にならない行動でも無駄にならならい……これもまたラースの策なのだ。
地面を叩かず一瞬動きを止め、宛ら下手糞な分身の術的移動を続けるグラトニーを、普通は追いかけたりなどしない。
「apstāties!!!」
だが衝動に駆られ続けるウージにとっては制止できる状況では無く、己も地面に炎腕をぶつけて爆炎を引き起こし、柿色の光芒を引いて縦横無尽に逃げ続けるグラトニーを、火炎を吹き上げ追い続ける。
「bezkaunīgs!!」
腕を目一杯伸ばし、柘榴石色の大縄が二本も現れた。
この大縄もまた滅多矢鱈と振り回し、猛り狂ったウージはグラトニーの狙う事もせず攻撃のみを続けた。
彼は……気が付いているのだろうか。
「……どーも」
「!?」
もうグラトニーは懐へと潜り込んでいる事に。
「これを……こうっ!!」
不自然に尖った岩石をウージへ突き刺し、思い切り殴って押し込むと同時に距離を取った。
痛みから声すら揚げずにグラトニーを睨みつけたウージが、左腕の大きさを二倍、三倍、いや四倍……片方の腕は愚か体から上がる炎すら無くなり、遂に七倍まで膨れ上がった。
「Meitene! tad jūs……Pāriet uz dzēst!!」
それは腕の形をしているが、腕と分かるだけで『人』の体にある四肢のどれかでは断じてない。言うなれば―――そのままずばり『化物』の腕。
煉獄に吼える魔物の業火、おしみなく力を注いでそれを纏うに至った大火は、もはや止まる事など知らない。
それがあえて、後ろへ引かれる。
「《煉焦烙殺》!!」
今度こそ決着するだろう、結果を決めるにふさわしい、奈落へいざなう灼熱の一撃。真紅にも近い、余りにも鮮やかな掌底。
見る間に焼き尽くしてしまう、打撃ならぬ打撃。
対するグラトニーは、左腕を掲げた……ただ、それだけだった。
「Ahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahah!!!!!
「……まず開く」
気が動転したのか、全く意味の無い言葉を口にし、しかしその言葉通りに手を開いて、赤くおぞましい “掌” へ自分の掌を翳す。
「……どかん」
そして握り、彼女の目の前一杯に、体を悠々と覆い尽くす業火が晒された。
「……!」
唐突に業火の進行は止まる。 バズッ! という……余りに鈍い、鈍い破裂音を伴って。
燃え盛る大火により音は止まず、しかし硬直が一瞬場を支配した、次の瞬間――――
「Ahahahahahah!? Ahahahahahahahahahahahah!!!」
何とウージの体から無数の『柿色』の破片が飛び出し、四方八方へと無造作に飛び散っていった。
駄目押しとばかりに炎のエネルギーが暴れ出し、使用者のウージですら吹き飛ばされてしまう。
「……決まった」
『炸裂! っテナ!』
これのカラクリは意外と単純で、石槍の外側と内側のそれぞれ二層に分けて、砕け散る寸前で固定を力を掛け、内側だけ固定を解いて爆散させたのだ。
“腕” の頭ではまず考え得ない戦法で、ラースの助力があったからこそグラトニーも成功した。
つまり先までの無駄な高速移動も、腹に埋め込んだ石の槍も、全てはこの為の布石だったのだ。
理性を飛ばし無駄な攻撃を討たせ、刺さった岩すら構わせないほど興奮させ、敵のエネルギーでも借りてダメージを与える。
決め手に欠ける能力を埋めるべくとした……この策の為の。
内側から猛烈な斬撃を受けたウージは転がり、それこそ左腕を破壊されたグラトニーそっくりの、気の荒れようを見せていた。
「vē……l?」
これぞ悪足掻きと言わんばかりの、強引な抵抗をつづけるべくとして、顔を上げたウージに迫るのは、
「ラース助力強化……自分式―――」
各所が壊れていて尚、血を流していて尚、美しく紫色のツインテールを靡かせる、一人の少女だった。
「《ブレーク=マグナム》!!」
「Ah―――Ahahahahahahah!!!」
渾身の力で撃ち込まれた柿色の拳により、ウージは今度こそ転がったまま動きを止めた。
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先までの爆音や、突風騒ぎはいったい何だったのだろうか……よもや夢幻なのでは……そう思わせるほどの穏やかな静寂が、暖かな日差しと共に訪れていた。
……もう、森も工場跡も、綺麗さっぱり消し飛んでいる。地面なんて黒焦げで無い部分や、抉れていない部分を探す方が難しい。
『大勝利だぜ相棒!』
「う、ん……イェ~―――」
死んでいるのかも分からず、種別が違う為に爆散すらしないウージを見やり、グラトニーはガッツポーズしようとして…………
「もう無理……」
仰向けに倒れ込み、ドサリと地面へ寝転がった。
何時もジト目気味で表情が分からない彼女だが、今回ばかりは心境がハッキリと顔に出ていた。
―――『今は動きたくない』―――と。
「はぁ……はぁ……はひぃ……」
『今どんな感ジダ?』
「つ、かれた……よ。疲れ、た……」
『ホント辛勝って感じダナ。マ、兎も角お疲れさンダ』
寝そべって荒い呼吸を繰り返すグラトニーは、ラースの言葉に何か返す気力もないと、只管吸って吐いてを繰り返している。
ダメージを与えていた、ラースがいた、運が良かった、これらの要素があったからこその勝利だろう。
しかしながらラースの言うとおり辛勝であり、尚且つウージが今どうなっているのかも分からない。単純感情種の化物ぶりを、これ以上的確に表した状況は無いかもしれない。
もちろん、そんな化物に食らいつき敗北へ持っていった、グラトニーも化物なのだが。
「くひぃ……くひは……ひはぅ……」
可笑しな呼吸まで登場する程に、疲弊を強いられている彼女は、当たり前だがもう戦えないだろう。
仮にウージに今起き上がられて、炎をまき散らして暴れられても、何の抵抗も出来ず殺されるに違いない。
尤も、向こうも向こうでアドレナリンが分泌されていたかのように、状態を顧みない大暴れをしていたので、一気にダメージが襲ってきた今、起き上がれる可能性はかなり低かろう。
と……そうやって暫しの休憩を取るグラトニーと、彼女の体力回復待ちであるラースの耳に、数人分の足音が聞こえて来る。
如何やら段々と近づいてくるようで、少しばかり警戒の色も見受けられるほど、慎重な足取りでもあった。
まさかアルティメギルか……? 不安になる二人だが、正体は全く違っていた。
「あ! グラトニーちゃんです!」
「ちょっ……周りが更に酷い事に!? もう此処って何だったか分かんなくなってるし!」
「うげっ!? あの炎の奴が向こうで倒れてやがる!?」
「でも動かないって事は、グラトニーが倒したんですわね!」
赤髪の幼女・テイルレッドこと観束総二、青髪の少女・テイルブルーこと津辺愛香、黄髪の女性・テイルイエローこと神堂慧理那、そして謎の銀髪・仮面ツインテールことトゥアール。
ツインテイルズ勢ぞろいであったのだ。
武器を構えている事から、休憩を挟み如何にか加勢にと駆け付けてきたらしい。
出来ればもう少し早く来て欲しかったと、グラトニーもラースもそう思わずには居られなかった。
「無事ですかグラトニーちゃん! いま人工呼吸してあげますからね!」
「ドサクサに紛れて何をしようとしとるんじゃお前はぁっ!!」
「リーーーアップッ!?」
仮面の下から隠しきれない涎の滴る、通報まっしぐらなロリコンに飛びかかられかけ、グラトニーは表情を歪めるもすぐさまテイルブルーの手によって成敗され、如何にか事無きを得た。
それでも懲りずにグラトニーへ向かって行こうとするトゥアールをブルーが止める―――もといブッ飛ばす傍ら、レッドとイエローがウージの元へとソロリソロリと歩み寄る。
そのまま何度か武器を叩きこみ、怯えた表情で顔を覗き込むが、反応が無い事を見るとすぐさま離れていった。
「駄目ですわ。ボロボロで目を覚まさないけれど、この状態の武器では止めもさせません」
「もう『完全開放』は使えないし、けど放っておくってのも後味悪いわよね。如何しようかあの炎の奴」
「それは……一番の当事者に聞いた方がいいんじゃないか?」
レッドのその言葉で、倒れたままのグラトニーへ視線が集まる。
グラトニーは発言の為に空気を大きく吸い込み(その所為でより目立った胸にブルーが嫉妬の視線を向け)、小さな声を発した。
「……何とかする、何とかできる。だから、任せて」
「わかった。頼むぜ」
「まあ……同種に言われたらそうするしかないけどさ」
「お願いしますわね、グラトニー」
ツインテイルズからお礼の言葉を送られ、グラトニーは何を考えているのか分からない表情で、しかし確りと頷いた。
「しかしです。頼むだけじゃあ何だか心苦しいと思いません? あの強敵まで倒してくれたんですから、御礼があってしかるべきです」
「む、それは一理あるな」
全員が云々頷き、トゥアールは語調を強める。
「ですからこの私が! この私が極上の快楽ウォンバットォォオオオォォッ!?」
「いい加減にしろやあんたは!!」
そしてブルーに再び蹴り飛ばされた。
「トゥアールの言う事はさておき……俺としては怪我の手当てもしたいし、基地に連れて行きたいんだけど」
「ええ良いですよ! 私は大歓迎!」
「まあ、色々聞きたい事もあるしね。おおむね賛成よ」
「私も異論はありません」
「止しこっちは満場一致と……グラトニーは如何だ?」
レッドにそう聞かれて、しばし沈黙するグラトニー。
無言のままだったが、肯定の意を示す為に縦に首を振った。
その肯定に、皆の顔が明るくなる。
「よし! そんじゃ怖いけどあいつもつれて、このままワープして―――」
『フフフ、いや待つのじゃ……すこし、待って貰えんかのう?』
「「「「えっ?」」」」
「……!」
その笑顔を貸すかのように、何処からか声が聞こえて来る。
アタフタしてツインテイルズが辺りを見回す中―――――
「…………」
グラトニーの視線はある一点で固定されていた。
『ほう? 見抜いているとは……中々如何して有能な奴よ』
グラトニーの見つめる先、そこが蜃気楼のように “黒く” 揺らぎ……1人の少女が現れた。
「さて、話をするとしようか。この世界のツインテールの戦士」
その少女は眼鏡を一度軽く押し上げると、
「そして、我が盟友トゥアールよ」
1人の少女の名を口にした。
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