どうやら俺は主人公を殺したらしい
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一話、どうやら俺は主人公殺したようです―――プロローグ
前書き
修正しました。多分
俺は正面に吹き荒れる風圧に、いや、とんでもなく濃密な威圧に怯んでしまう。
威圧と呼べいいのか、それとも殺気と呼べいいのか迷うところだが。
「ぶふッ」
俺は何気なく、自分の脳内に浮かんだその二択に、思わず、ひと笑い。そして、少し自重した。
なぜなら、目の前のアレは迷うことなき「殺気」であるから。
目の前のアレを見れば、誰もがそう答える。
それに加えて、その周りにいる彼、彼女らも同じように殺気を含んだ物を、遠慮なく俺にぶつけてくる。それと同時にアレに対する変化に、少しばかりの動揺と恐怖も入り混じっているようだが。
そう思っていると、いつの間にか、先程膨張していた殺気の塊が、まるでリミッターが外れたかのように、更に膨れ上がる。
「何が可笑しいの……?」
どうやら、俺のぶふッとした笑いが聞こえていたらしい。
まあ、目の前のアレ、女型の悪魔、ある男の飼い主であったリアス・グレモリーさんにとっては、俺のそれは不快なものだったらしい。
その声はやはり殺気を帯びつつ、憶測だが、戸惑いの感情もあったかもしれないし、なかったかもしれない。
フッ、まあ、どうでもいいや。
兎にも角にも、俺はマジで、この状況から脱却しなければならない。いや、マジで。
いや、ね? 別に、とある世界の主人公もどきにあって、なんか色々あってムカついたから、その主人公もどきを殺しちゃった☆、ではないんだよ、うん。
それでっ、その主人公くんの周りにいた女の子たちが、俺が殺した主人公くんの死体を見ながら、どこぞのライトくんのように悲鳴を発したなどとあるはずがない。
……………………………ハイ嘘ですっ!自分は嘘つきました!ごめんなさい!
ガチで殺しました、殺りました、完膚なきまでに………ッ。
だが、まあ、留意してほしい。
あの出来事は正当防衛であったことを。なんらかの理由で、またはそうでもしなければ、俺自身も死ぬということも否定できなかったから。
でも今はそんなことを言っても無意味がないことぐらい、分かる。
だって全然俺の話聞いてくれないもん、彼女ら。
と、軽く葛藤をしていると、リアス・グレモリー、ではなく、一人の少女……塔城小猫が、俺に問いかけてきた。
「なんで……殺したのですか……」
その言葉は、震えていた。
彼女とて戸惑いの感情があったらしく、その目は、俺がまだ殺してはないのではないか、と、目の前にある現実を否定したいのか、縋るように俺を見つめていた。
それはそうだ。彼女は俺と知り合いでもある。
だが、まあ、単に知り合いなだけで親密なものではない。いや、本当に家が隣だったというだけで。
だからなのか分からないのだが、知り合いがそんなことをするわけが無い、とでも思っていたのだろうか。
そんな希望を抱いてるのなら、其れが若干嬉しくもなくもないけど。
だが、俺はそれを、否定的な言葉で制す。
「違う、俺はただ殺したんじゃあない。殺されかけたから殺されたんだ」
「俺は何もしてないのにも関わらず、彼になんの危害を加えていないのにも関わらず……彼は俺を殺そうとしたんだ」
「いや、語弊があった。彼自身……兵藤一誠は俺を殺す気はなかったのだろうけど、彼はどうやら悪魔としては、半人前の半人前の半人前らしくて」
「いやはや、本当に殺されるかと思った」
―――余りにも拙すぎて。
と、俺はスラスラと啖呵を切ったそれは、塔城小猫にひとたりとも口を挟ませない。
だが、それも一瞬で、俺の軽口は直ぐに妨げられた。
その原因は俺の視線の先にあった。
その先とは―――
「姫島朱乃……」
―――やはり貴方は私が調教すべきでしたね。
俺の真上からの聞こえたそれは、眩しい光と同時に放たれたもの。
おそらく彼女が得意とする雷撃魔法だろう。
雷速は光速よりは速くはない……だが、音速よりは遥かに速いのだ。
その速さとは、一般人どころか上級悪魔にとっても逃れることが困難な速度。
でも……ただそれだけである。
持ち主が姫島朱乃である場合は別なのだから。
まあ、現実の雷速はそれであって、彼女、姫島朱乃が自身の魔力を触媒とした、魔法陣からなる雷撃は、もっと遅いけどさ。
てか、魔方陣生成すること自体も、結構ロスタイムかかるし。だから、なんとなく打つ方向すらも読めるというわけであって。
「狙いが甘いわ、ボケ」
雷撃から放たれた後から、同時に響く爆音を耳に、俺はそう言う。
そして、異能を使うまでもなく、その雷撃を避けた俺は、そのまま姫島朱乃へ飛び出す。
まあ、一応、殺されるような攻撃されたからね。
雷撃とか人間普通に死ぬし。俺も一応、人間にカテゴリされるし。
「だったらさぁ、殺してもいいよねお前」
「―――っ⁉︎」
一瞬にして、俺は姫島朱乃の眼前へ迫る。
その一瞬を作ったのは、勿論俺自身ではない。
その正体は、俺の手の中にある―――聖剣だった。
まあ、詳しいことはいつかまたとして。
俺は、硬直してしまった標的である姫島朱乃の隙を逃すことなく。剣の柄を、溝のど真ん中に、ドスンと軽く打ち込む。
「ごふっ……かはっ」
聖剣の柄で行った溝内は、姫島朱乃に短い嘆息。
そして、ごく少量の血を吐き出し、白目を剥けさせた彼女は、そのまま地面に、バサッと巫女服のかさばる音をとともに、突っ伏す。
まあ、殺しはしないけど、さ。あくまで今は。
「貴様ぁぁぁぁぁ‼︎」
後方からくるのは、怒りと憎しみの篭った怒涛の叫び。
「またすか、先輩……。てか、あんたまだ生きてたんすか」
呆れながら木場祐斗に言う。
その木場祐斗の姿はもはや、ボロボロ。
正直、みっともない。
「うぉぉぉぉぉおおお……ッ‼︎ 魔剣創造《ソード・バースト》ッ」
「いや、話聞けや」
木場祐斗の雄叫びと、彼自身が受け持つ、悪魔の駒であるナイトの特性であるスピード。
そして、彼の用いる神器から生まれた無数の剣の中から、選んだ二つの剣を両手に、その力を十二分に生かした特攻が飛び交う。
「祐斗待ちなさい‼︎」
リアス・グレモリーは止めようとするも、当の本人は暴走するばかり。
まあ、やはり木場祐斗は速かった。
恐らく、彼の姿を捉えているものは此処にはいない。
流石、悪魔の駒というドーピングで幾らかは、突出したものがある。
ただし、俺を除いて。
俺は、酷く緩やかに見える木場祐斗の疾走を、ぼーっと眺めながら、聖剣の力を再び解放した。
『―――っん』
自身の体から流れ出る因子を、ちょびっとだけど、聖剣へと注ぎ込む俺。
そして、それらを受け止める聖剣。
光が放出される。
轟々と生まれる風を追い風に。
その追い風に、聖剣の光を乗せ、神秘的な明かりを、暗闇に灯す。
次第にその光は俺の全てを包み込む。
輝きは絶頂に…………そして――――――爆ぜる。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「おーい、生きてますかー?」
ツンツン、ツンツンと、棒切れで、眼前の物体を突っつく。
「………このままじゃ死ぬね」
周りには、力なく倒れている複数の悪魔。
その内三人は、もう直ぐ死ぬ。ただし、このまま放置していたらの話だ。治療を施せば、どうにかなるだろう。俺はしないけど。
恐らく、彼等のお仲間さんたちが来るみたいだから、ほっとこう。
『勇………デクタ、目標が―――』
聖剣の意思が、僅かな焦燥を含みながら、俺に言う。
………分かってます。
どうせ、生き返るとは思っていた。
どうせ、あのアーシアという魔女に助けられるとは想定はしていた。
俺が申し訳程度の『エクスカリバーァァァ……‼︎』を放った瞬間。
あのアーシア・アルジェントは動いていた。いや、彼女は既に意識は飛んでいるのにも関わらず、彼女自身の神器が勝手に、奴を治療したのだ。死んでいたはずの兵藤一誠を。なぜ一度死んだ命を生き返らせることができたのか、それはもう謎の力と思っとこう、うん。考えるの面倒くさいし。
俺はしくじったなぁ、なんて自分の甘さに反省しつつ、アーシア・アルジェントに、緊急治療を施された主人公兵藤一誠を見やる。
そこには生気をほんの僅かにやどした瞳が、夜空ではなく、虚空を見上げるだけで、ピクリとも動きやしない兵藤一誠。
そんな無抵抗なこいつを―――突き刺した。
聖剣は、悪魔にとって当たり前のことだが、天敵そのものだ。
ゆえに、兵藤一誠は、あっけなく死んだ。流石に、主人公補正はここまでは、面倒見きれなかったらしいです。
こいつが悪いんだ。
確かにこの状況だけ見たものは、完全に俺は悪と見なされるだろう。
別にいいさ。
ちゃんとした理由があって殺ってのたから。
ほぼ8割が俺の私情もあったけど、別にいいよね。
これからの出来事、魔王様の妹に傷を付かせたなど、天使側と悪魔側の誤魔化しようがない争い……うん、色々やばいけど。
とにかく、俺は色々あってこうなったとしか言えない。
それ相応とは行くか分からないけど、それなりの理由があって、主人公を殺した。
それだけである。うん、本当にそれだけ。
後書き
『エクスカリバーァァァ』の元ネタはフェイトステイナイトでした。
最新話には、NEW付けやす。
タイトル通り主人公兵藤一誠は死にます。生き返りません( ´ ▽ ` )ノ
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