戦国異伝
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第二百二十五話 馬揃えその十
その彼等がだ、主に言うのだった。
「明らかにです」
「我等に気付いています」
「はっきりとは気付いていない様ですが」
「我等の影位は」
「そしてそのうえで」
「我等に見せてきました」
「その武をな」
はっきりとだ、高田も言った。
「見せてきたわ」
「これは厄介ですな」
「このままだと織田信長は我等に気付きます」
「それもはっきりと」
「それは時間の問題かと」
「危ういかと」
「そうじゃな、気付いているのがわかった」
確かにとだ、彼も言った。
「それではな」
「いずれは完全にですな」
「我等の存在と正体に気付き」
「そのうえで」
「色々と仕掛けてきますな」
「気付かれてはならぬ」
高田は本能的に言った。
「絶対にな」
「完全には」
「もしそう気付かれれば」
「その時はですな」
「織田信長が」
「我等に兵を向けて来る、そうなってはならぬ。だからな」
それ故にというのだった、高田は。
「すぐに御前のところに参るぞ」
「はい、そしてそのうえで」
「これからのこともですな」
「お話されますな」
「そうせねばな」
こう話してだ、実際にだった。
彼は闇の中に入りだ、そこで馬揃えのことを話した。すると。
闇の中にいる者達がだ、口々に言った。
「気付いておるか」
「そのうえでのことか」
「我等にその武を見せてきたか」
「織田家の武を」
「そうじゃな」
老人の声も応えた、あの声も。
「そのことは間違いない」
「では御前」
「ここはですか」
「やはり」
「動かれますか」
「そうじゃ、それも急ぐ」
こう言うのだった。
「これより徳川家に向かい。そして」
「そしてですか」
「そのうえで」
「織田家の家臣でな」
彼等の中からもというのだ。
「面白い者を二人見付けた」
「二人ですか」
「あの中で」
「頭は切れるがどちらも純粋じゃ」
「純粋ならば」
「そこにですな」
「入る隙がある」
純粋、そうであるが故にというのだ。
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