戦国異伝
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第二百二十五話 馬揃えその九
「そうするか」
「ではその時は」
「久助か飛騨者を使うか」
こうもだ、信長は言った。
「そうするか」
「忍の者を」
「うむ、それにな」
「それに、ですか」
「久助で思い出した」
滝川の名を出してというのだ。
「甲賀者は当家に仕えておるな」
「はい」
「そして伊賀家は徳川家に仕えておるが」
「服部殿が」
「しかしじゃ」
それでもというのだ。
「それは服部家の系列じゃな」
「そういえば伊賀は」
蘭丸もこのことに気付いて言う。
「服部家と百地家の二つの流れがありますな」
「そのうち竹千代は服部家を抱えていてな」
「百地家はですな」
「抱えておらぬ、いや」
「その百地家の流れは」
「一切知られておらぬ、伊賀の山奥で何をしておるのかさえわからぬ」
それが百地家とその家の流れにある伊賀者達だというのだ、少なくとも伊賀には二つの流れがあるのだ。
「あの者達も気になるな」
「百地家も」
「調べたいのう、どちらにしてもな」
「百地家はですか」
「放っておけぬ」
何故そうなのかもだ、信長は言った。
「天下は定まった、それで当家に従わうかどうかわからぬ国人がおるというのはな」
「そのことだけで」
「放っておけぬ、人を送るか」
「そして従わぬか返事のない時は」
「戦じゃ」
即ちだ、百地家を攻めるというのだ。
「そうする」
「さすれば」
「とにかくこの馬揃えで仕掛けた」
このことは間違いないというのだ。
「後は動きを見ようぞ」
「畏まりました」
「蘭丸、よいか」
長可が弟に言って来た。
「上様のお傍におるのだからな」
「はい、上様を」
「お護りせよ、命に賭けてな」
こう弟に言ったのだった。
「それはわかっておるな」
「無論、拙者も何かあれば」
「命にかえてもじゃな」
「上様をお護りします」
兄にこのことを誓って言葉を返した。
「そうさせて頂きます」
「頼んだぞ」
「うむ、蘭丸は頼りにしておる」
信長も言う、彼のことを。
「何かあれば頼むぞ」
「有り難きお言葉」
主にも言われてだ、蘭丸は確かな声で返した。そうした話もしつつ馬揃えを行いこれは成功に終わった。
そしてその馬揃えを観終わってだ、高田は。
家の者達にだ、曇った顔で言った。
「見たな」
「はい、全て」
「最初から最後まで」
見れば家の者達も暗い服を着ている、闇の衣を。
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