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戦国異伝

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第二百二十五話 馬揃えその八

 その彼がだ、こう言った。
「戦も」
「それも」
「無論じゃ、しかしそれは最後じゃ」
「最後ですか」
「その時ですか」
「戦とまでいかねばよいしな」
 そしてというのだ。
「その場で捕まえられればな」
「それで、ですな」
「よいと」
「そう思っておる。そういえば」
 信長も気付いた、高田に。 
 その高田を見てだ、周りに言った。
「高田殿がおられるな」
「朝廷の公家のお一人の」
「その方もですか」
「我等を見ておられる」
「そうなのですか」
「うむ、珍しいのう」
 実にというのだ、高田を見つつ。
「あの御仁が出ておられるとはのう」
「そういえば高田様は」
 蘭丸が言って来た、まるで少女の様な整った顔立ちであり黒髪も実に奇麗だ。それが青い礼装に実によく似合っている。
「朝廷にも」
「うむ、滅多にな」
「お顔を見せられぬとか」
「そうじゃ、何をしておられるのかはな」
 信長は蘭丸に答えた。
「わしも知らぬが」
「しかし今は」
「出ておられてわし等を見ておられるのう」
「あの方ですな」
 暗い色の礼装の公家に気付いた、蘭丸も。確かに彼等を見ている。
「確かに」
「そうじゃな、暗いのう」
「どうも剣呑なものも感じます」
「何故かな、高田殿は織田家をお嫌いなのか」
「そうも思われますな」
 蘭丸は考える目で述べた。
「あのお顔では」
「別に我等は何もな」
「高田様には」
「しておらぬが」
「しかしそれでも」
「暗いお顔じゃな」
「視線も鋭いかと」
 そのこともだ、蘭丸は言った。
「そう思いますが」
「実にな」
「あの方は確か陰陽道の家でしたな」
「そうじゃ、安倍家そして賀茂家と並ぶな」
 林と同じことをだ、信長は言った。
「そうした家じゃが。しかし」
「それでもですか」
「謎が多いのう」
「一体何をされている方なのか」
「よくわからぬのじゃ」
「そうなのですか」
「古い家じゃがな」  
 このこともだ、信長は林と同じことを言った。
「しかし謎が多い」
「そうした方なのですか」
「そうじゃ、わしもよく知らぬ家でよく知らぬ方じゃ」
 それが高田であり彼の家だというのだ。
「実にな」
「そうなのですね」
「少し調べてみたいな」
 高田、そして彼の家のことをというのだ。 
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