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戦国異伝

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第二百二十五話 馬揃えその七

「人も揃っておる、以後天下は織田家の治じゃ」
「幕府もですな」
「やがては」
 皇族の方々もだ、信長に期待を見られていた。そのうえで信長を期待する目で見られていた。そしてだった。
 信長はその帝と皇室の方々の視線を感じてだ、左右で自身守る森長可と蘭丸の兄弟にこんなことを言った。
「嬉しいのう」
「帝、そして皇族の方々がですな」
「上様を希望の目で見ておられることが」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、信長は森の子である二人に答えた。
「実に嬉しい、だからこそな」
「天下をですな」
「収められましたし」
「そしてこれからは」
「長い泰平を築かれますな」
「この馬揃えもその為のものじゃ」
 長い天下泰平を築く為のものだというのだ。
「まさにな」
「だから武をですか」
「見せられたのですな」
「そうじゃ、帝も添加万民も安心させ」
 信長の目がここで鋭くなった、そのうえで言うのだった。
「そしてな」
「その闇にいる、ですか」
「何者かにもですか」
「見せる」
「そうされるのですな」
「これで動く」
 信長は確信していた。
「その者達もな」
「ではその者達が動けば」
「その時はですか」
「上様も動かれる」
「そうされますか」
「池の中に蛇がおるとする」
 ここでだ、また言った信長だった。
「姿が見せぬと捕まえるのは用意ではないな」
「はい、どうしても」
「蛇が池の中に隠れていますと」
「捕まえる方はです」
「どうにもです」
「困ります」
「だからじゃ、姿を見せぬ相手は動かさせてじゃ」
 そしてというのだ。
「姿を出させてな」
「そして捕まえる」
「そうするのですな」
「ここは」
「是非共」
「そうじゃ、仕掛ける。この馬揃えは表は天下に武を見せて天下布武が成ったこととその武で天下を安らかにすることを知らしめておるがじゃ」
 それと共にというのだ。
「裏はな」
「その者達を誘い出す」
「動揺させて」
「そして、ですか」
「その者達の姿を出させるものなのですな」
「見ておる」
 その者達はというのだ。
「今もな」
「では動揺しているか」
「それが問題ですな」
「慌てふためき動くか」
「そうしてくれば」
「手は用意してある」
 池の中からだ、姿を見せた時はというのだ。
「あらゆる手をな」
「では殿」
「必要とあらば」
 幸村と兼続、やはり見事に着飾っている二人が応えてきた。二人共それぞれ赤と黒の具足と陣羽織を羽織っている。 
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