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Angel Beats! the after story

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直井文人と更衣室

当然のことだが男女別の部屋である。

俺たち七人でも十分広いと思えるような大部屋に案内され、庶民派層である俺と日向、野田、TKは驚いていたが、富裕層の藤巻、大山、直井はこんなもんだろう、という顔をし荷物を置いていた。

「女性陣はどうせ遅いだろうから、先に行って準備しいくか」

日向の提案に従い、パラソルやシート、クーラーボックスと様々な道具を各自均等に分け旅館を出る。

今、直井以外の俺らは女性陣の水着への期待で胸をふくらめ軍隊さながらの行進で浜辺まで隊列を組み、歩いた。

「荷物とか盗まれると危ないから三人一組を一つ、二人一組を二つ作り、着替える一組と準備する二組に分ける!!」

「じゃ、俺は大山と組むぜ」

「うん、よろしくね藤巻くん」

相変わらずの仲の良さだが、藤巻がアッチ系という疑問が浮かんでしまう。

「ふん、癪だが日向、TK組んでやる」

「素直じゃねぇなまったく」

「そこが野田っちゃんの可愛いところですよ」

変態トリオが完成した。ということは………まさか。

「僕と音無さんは赤い糸で結ばれているらしいですね」

無邪気な笑顔を見せられたが、悪寒しかしない。貧乏くじを引いたかは分からんが、いや引いたな確実に。決まってしまったことはしょうがないので、大人しく認める。

「俺たち先に着替えてくるわ」

「みんながんばって。できれば終わらせといてくれると嬉しいな!」

ゲスいことを言う大山のために作業スピードを十分の一以下に落としておこう。

ゴミ一つない浜辺をやはり珍しいと思ってしまい、何度も辺りを見渡してしまう。このビーチは旅館の私有地でこの期間は海の家なんかを出して儲けている。

「ところでよ音無。誰の水着がお目当てなんだ?」

「それは俺も気になるな。貴様はフラグを建てるだけ建てて放置してる野郎だしな」

「YOU、正直に答えちゃいなよ」

口より手を動かせと、文句の一つ言ってやろうかと思っていたが、それだと喧嘩になるかもしれないので渋々といった感じで口を開く。

「もちろん「僕の水着ですよね!音無さん!」

邪魔が入ったが気にせず言い直す。

「もちろん、かなでに決まってるだろ」

宣言したと同時に藤巻たちが着替え終わったらしく、こちらに来た。案外普通な海パンで言うことがなかった。てっきり、藤巻はふんどしを履いてくると予想してたが残念だ。

「チッ……終わってねぇのかよ」

舌打ち?いやいや大山がするわけないよな。

「何か言ったか大山?」

「何も言ってないよ。ただ舌打ちしただけ」

「なんだ舌打ちしただけか」

「うん舌打ちしただけ」

「「ハッハッハ!!」」

なにこの子怖い!



次に俺と直井が着替えることになり、更衣室へ入る。個室がいくつもあり贅沢な更衣室だなと感想を抱きながら、直井と別々の個室へ入る。

「広いな。さすがってところか」

二畳半はある更衣室の個室で落ち着けないので早めに着替えようと上着を脱ぎ、そのまま短パンを脱ぐと、

「案外広いですよね、ここの個室は」

「ああそうだな」

直井の声がすぐ近くで聞こえ、まさか……と背中に悪寒を感じつつ鏡を見ると……いた。

「な、なんでいるんだ!!」

「そんなの決まってるじゃないですか」

のそりのそりと近づいてくる。まさに蛇に蛙状態で身動き一つできない。お互いの呼吸音が分かるぐらい距離が縮まる。

あらためて直井の体を見ると、女性ではないのにある程度のくびれがあり染み一つないキメ細かい肌。元から中性的な顔立ちのため女性として見るとかなり可愛い部類に入るだろう。

……ってなんで俺はそんな真剣に感想を述べてるんだよ!!

俺の葛藤する気持ちを読んだのか、手を胸板に触れてくる。手の柔らかい感触が直に伝わりながら、ツツーと下に下げてくる動作に色々とやばくなってくる。

「や、やめろ直井。俺にはかなでが……」

ついに魔性の手は下腹部を通り越し俺のグロック17へ届こうとした瞬間……

「はいやめます。安心してください、僕にはもう音無さんに邪な考えを抱かないと決めましたから」

その言葉とともに手が離れた。

「いきなりどうしたんだ?やめるな、とは言ってないがそれでもお前がそんなこと言うなんて……」

「前までの僕がおかしかっただけですよ。一国の長を目指そうとする者が道から外れたことをするなんて変じゃないですか」

距離も離れる。

「それに、僕が音無さんへ抱き続けていたのは恋愛感情的なものではなく、尊敬の念だったということに恥ずかしながら最近、気づくようになったんです」

あの頃と違い直井の目には確かな理想とする未来を一点に見続ける思いが取れる。

「ですから、僕は今日、この時をもって音無さんを卒業します」

ようやく直井は羽ばたく。だが、心の片隅には寂しい気持ちがある。今まではただ鬱陶しいだけの後輩だった。

ストーカー紛いのことを平然とし。

空気を読まず。

犯罪行為を余裕でする。


──そんなどうしようもない後輩だった。

「ちょ、お、音無さん!?」

考えるよりも先に体が動いて抱きついていた。

「卒業なんて寂しいこと言うなよ。いつでも頼っていい、愚痴をこぼしてもいい。お前は俺の後輩なんだからな。年上になろうが政治家になろうが総理大臣になろうが後輩ってことには変わらないよ」

「で、ですがそんな甘え許されるのですか?」

「なら、許さないって野郎どもが現れたら俺たちが黙らせてやるよ。それならいいだろ?」

「はははっやっぱり音無さんは変わりませんね。どれだけ長い時を経てもあの頃のまま」

変わってない……か。あの頃の自分を俺は誇りと思ってる。いつまでもあの頃のように折れずに信念を突き通すことを俺は日々心がけている。

笑みを浮かべる直井は自分の人生を振り返るように柔らかい表情になる。

「だからこそ、僕はあなたを死後でも転生しても──尊敬し続けます」

彼が作る国……。それはきっと、良い国になるに違いない。




遅いことを心配して来た日向たちに抱き合っているシーンを見られ、絶句したのは言うまでもないだろう……。
 
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