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馬脚を表す

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第四章

「変に思われる」
 こう思いだ、それでだった。
 慣れないながらも何とか馬の足で靴を使ってだ。そうしてであった。
 急いで先に進みだ、駅まで行って電車に乗り。
 出勤した、それからは普通のデスクワークにつけて隠せる筈だった。
 しかしだ、妙にだった。
 周りの視線が気になった、普段は何とも思わないことだが。
 自分の足に気付いているのでは、そして何か話をしているのではとだ、疑心暗鬼になる。それでなのだった。
 ふとだ、部下達がだ。
 仕事の話をしていてもだ、足とか馬とかいう言葉が出るとだ。
 妙に意識してだ、そしてだった。
 気になって仕方がなかった、そのうえ。
 歩き時はだ、会社の中でもだった。
「?パカパカって音しない?」
「するわよね」
「あれっ、何で?」
「馬でもいるの?」
「課長さんから音する様な」
「課長さんの靴駄目になってるの?」
「若しくはそういう靴?」
 OL達も言うのだった、この事態を受けてだ。
 トイレにもあまり行かなくなった、結構近い方であるが。
 そちらでも苦労することになった、そして昼は。
 新入社員の一人にだ、自分の席から頼んだ。
「今日は忙しくてね」
「お昼休みもですか」
「仕事をしないといけないからね」
 こう理由を付けてだった。
「席から動けない、だから仕事をしながら食べるよ」
「大変ですね」
「だからね」
 ここからが本題だった。
「お金渡すからコンビニでお弁当とお茶を買って来てくれ」
「何弁当ですか?」
「君が好きなのを頼んでくれ、お茶もだ」
「それでそのお弁当とお茶をですか」
「食べるから」
 自分の席で、というのだ。
「行って来てくれ」
「わかりました、それじゃあ」
 この新入社員は素直なので真司の言葉にすぐに頷いてだ。そうしてだった。
 昼は自分の席で食べて実際に仕事をした、しかし午後は。
 急に外に出ることになった、それで嫌々だがだ。
 席を立ち歩くことになった、するとだ。
 またパカパカと音がした、その音にだ。
 共に外に出る上司の飯島英年部長にだ、こう言われた。
「君の靴は」
「はい、どうも」
「悪いみたいだね、馬の蹄みたいな音がする」
「不思議ですよね」
「何でなんだ」
 部長は首を傾げさせて言った。
「これは」
「さて」
 必死にだ、真司はとぼけた。
「どうも靴の調子がです」
「悪いのかね」
「そうみたいね」
「それならだよ」
 部長は真司に心配する顔でだ、彼の言葉を受けてからこう返した。
「悪い靴は履くべきじゃない」
「すぐにですね」
「履き替えた方がいい」
「健康は足からですね」
「そうだよ、足のツボマッサージもあるじゃないか」
 人間の足にはというのだ。少なくとも今の真司には縁のないものだ。
「だからね」
「靴もですね」
「そう、気をつけないとね」
「駄目ですね」
「そうだよ、悪い靴は履かないことだ」
 こう親身に言うのだった。
「やっぱり健康第一だからね」
「仕事も」
「足もしっかりとしないと」
 部下である彼に優しく言う、そしてだった。
 二人で外にも出た、真司にとっては蹄の音一つ一つが周りに気付かれるのではとまさに針の筵に座る思いの外出だった。
 五時になり会社の皆が去っても会社に残って人がいなくなってからだ、帰宅のラッシュ時が終わった電車に乗って。
 ひっそりと家に帰ってだ、百合に言った。 
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