真田十勇士
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巻ノ十四 大坂その四
「大坂の城はさらにです」
「凄い城になると」
「そう思います、また来る時が楽しみです」
「完成された城を見ることが」
「どれだけ見事な城なのか」
そのことを見ることがというのだ。
「楽しみです」
「そうですな、それでなのですが」
「はい、今度は一体」
「何か召し上がられますか」
老人は幸村だけでなく一行にも述べた。
「大坂で」
「そうですな、お腹も空きましたし」
「ですから」
それで、というのだ。
「何か美味しいものでも」
「では何を食しましょうか」
「この町は確かに人が集まってきているばかりですが」
それでもというのだ。
「よい料理人も集まってきており食材もよいので」
「美味いものが多い」
「飯もまた違います」
主食のそれもというのだ。
「水もよいですし。如何でしょうか」
「そうですな、この町は海に近い」
幸村は大坂のこのことから老人に答えた。
「さすれば」
「海のものをですか」
「はい」
それをというのだ。
「実はそれがし海のものを食したことがないので」
「それでは鍋は如何でしょうか」
「鍋ですか」
「海のものを出してくれるよい店を知っていまして」
老人は温和な笑みで幸村に話した。
「味噌で味付けをしてだしも取っている鍋です」
「だしも」
「昆布で」
「昆布とは確か海草でしたな」
昆布と聞いてだ、筧が言った。
「そうでしたな」
「ご存知ですな、昆布のことを」
「はい、ですが」
それでもとだ、筧は言うのだった。
「あれは食うものでしたか」
「実はあの城の普請に使う岩の下敷きに昆布を使っていますが」
ここからだというのだ。
「それをただ捨てるのは勿体ないとだしに使ったり茹でて食っていましたが」
「それが、ですか」
「美味く。それで」
「だしに使っているのですか」
「それがはじまっています」
「左様でしたか」
「それで如何でしょうか」
老人はあらためて一行に勧めた。
「味噌も使っていますし」
「味噌といえば馳走ですが」
こう言ったのは望月だった。
「それも使っていますか」
「はい、左様です」
「ううむ、高くないですか」
「いえ、大坂では然程」
「そうなのですか」
「味噌も近頃多く作っていまして」
それ故にというのだ。
「これは醤油もですが」
「どちらも多くあるので」
「安いのです、他の場所に比べて」
「それは凄いですな」
「殿、ここは是非です」
清海はその目を輝かせて幸村に言った。
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