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真田十勇士

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巻ノ十四 大坂その三

「こうしてです」
「人が集まりだして、ですな」
「ここまでの町になっています」
「そしてこれからも」
「いや、ここは都や奈良にも近く堺はすぐ傍にあり」
「前は瀬戸内、川も多く豊かになりますな」
 確かな声でだ、幸村は述べた。
「間違いなく」
「そうなりますな」
「ですな、ここが天下の町になりますな」
「左様ですな、してお侍様はこの大坂で何を御覧になられますか」
「この町を見ていますが」
「この町の栄えを」
「はい、それがし信濃から出て来ましたが」
 ここまでは言う、しかし上田の者とは言わない。幸村は初対面の老人が何者か知らないので身元は明らかにしなかったのだ。
「西国、都等を見て見聞を広めるつもりです」
「してここまで来られたと」
「そうなのです」
「そして大坂まで来られて」
「この町についても学んでいます、しかしここは川が多いですな」
 幸村は大坂のこのことについても話した。
「これ以上はないまでに川が多く流れています」
「そうですな、それで今は橋も多く建てております」
「ここまで川が多いとなると」 
 一行のすぐ傍にも川がある、幸村はその川を見つつ話した。
「橋は尋常な数ではなくなります」
「間違いなく、ですな」
「川の多さは城の守りになりますが民の行き来には厄介」
「だから橋が多く必要ですな」
「それにです」
 さらに言う幸村だった。
「舟も必要ですな」
「川そのものを行き来する為に」
「商いにも必要ですし。この町は舟も多くなりますな」
「今徐々に増えていますが」
「さらにです」
 増えるというのだ。
「凄い町になりますな」
「そこまでおわかりですか」
「そう思ったのですが」
「いや、その通り」
 老人は飄々とした笑みで幸村に答えた。
「私もそう思いまする」
「ご老人もですか」
「はい、この町は商いには最適の町です」
「水の為に」
「羽柴殿はここに城を築かれ商いでも栄えられるおつもりですな」
「そうですな、この大坂と堺を軸にして」
 そのうえでというのだ。
「大いに栄えられるおつもりですな、それでなのですが」
「それでとは」
「実は堺にも行こうと思っています」
 この町にもというのだ。
「一度見聞にも」
「それはいいですな、堺の賑わいはまた格別」
「都や大坂にも並びますな」
「はい、非常によいことと思います」
 老人も幸村にこう答えた。
「では大坂の後は」
「はい、あちらにも行きます」
「その様に。しかしですな」
「今はこの町を見て回ります」
「そうされますな」
「ええ、それにしてもこの町はこれからですな」
 また町を見回してだった、幸村は述べた。
「よくなります」
「ですな、さらに」
「まだまだこれから、そして城も」
「あの城も」
「非常に堅固な城になりますな」
 ただ大きいだけでなく、というのだ。
「天下の城になります」
「安土以上の」
「はい、安土も立派な城でしたが」
 最早天主はなく捨て置かれるだけになろうとしているがだ、その城壁や石垣を見てそのうえでの言葉である。 
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