真田十勇士
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巻ノ十四 大坂その一
巻ノ十四 大坂
幸村主従は山城から摂津に向かう道を何のいざこざもなく速く進むことが出来て大坂に着いた。その大坂の町はというと。
幸村は家々を見てだ、こう言った。
「家に使っておる木がまだ新しい」
「ですな、確かに」
由利もその木を見て言う。
「建てられたばかりですな」
「うむ、そしてまだ都より人は少ないが」
「それでもですな」
「新しい家ばかりじゃ」
「急に人が集まってきていますな」
「この町はこれから栄える」
幸村は言い切った。
「間違いなくな」
「ですか、そして」
穴山は幸村の話を聞いてからだ、そのうえで。
町の真ん中で行われている大掛かりな普請を見てだ、その幸村に言ったのだった。
「あそこで行われている城の普請がですな」
「あの場所にかつて石山御坊があった」
「その跡地にですな」
「羽柴殿は城を築かれておるのじゃ」
「左様でありますな」
「しかし、その普請は」
海野はその広さと人の数を見て唸って言った。
「これはまた相当ですな」
「うむ、上田の城が幾つも入る様な」
「大きな普請じゃ」
「そうなりますな」
「相当に大きな城を築かれるな」
「ですな、間違いなく」
「特にですぞ」
筧はその普請で人が最も多く集まっている場所を見て述べた。
「あそこに天守を築くと思われますが」
「その天守が、じゃな」
「あの人の多さからしますと」
「これまたじゃな」
「相当に大きなものでは」
こう幸村に言うのだった。
「そう思いますが」
「そうであろうな、安土にあったという天主と同じだけな」
「大きな天守をですな」
「これから築くのであろうな」
「いや、それは」
どうかと言う筧だった、普段は落ち着いている彼も驚きを隠せないでいる。
「これまでにない城になりますな」
「そうであろうな」
「その城を築かれるのが羽柴秀吉殿ですか」
「左様じゃ」
まさにというのだ。
「あの方じゃ」
「そうでありますな」
「今羽柴殿は越前の柴田殿との戦の用意をされておる」
幸村は秀吉の周りのことも話した。
「しかしな」
「その用意と共にですな」
「城も築かれているのじゃ」
「この様に」
「柴田殿との戦は天下分け目」
霧隠の言葉だ。
「戦の用意に全てを注ぎ込んでおられると思いますが」
「羽柴殿はその戦の後も考えておられるのじゃ」
「それ故の築城ですな」
「そうじゃ、あの城から天下を治められるおつもりじゃ」
こうも言った幸村だった。
「それでなのじゃ」
「あの城を築かれているのですな」
「左様」
まさにというのだ。
「そして柴田殿との戦の用意に相当の力を注がれながらも」
「あれだけの城を築かれる」
「それだけの力もあるのじゃ」
秀吉にはというのだ。
「ならばわかるな」
「はい、次の天下人は羽柴殿ですな」
「そうなる、しかし柴田殿には勝たれると思うが」
それでもというのだ。
「それで完全には決まらぬ」
「そうなりますか」
「うむ、柴田殿を倒されるとだ」
そこからの流れもだ、幸村は話した。
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