ハイスクールD×D 雷帝への道程
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今更思うけど電車男のスレ住民は真面目に優しいよね
side ハムリオ
好きにしろか。そう言われても難しいんだよな。俺が本気で愛した女、レイナの最初で最後の弟子。おそらくはオレ以外で唯一の銀術を戦闘で扱える素質を持つ者。そんでもって教会所属の聖剣使いで、オレを殴り飛ばして拘束した奴。オレは気にしていないが向こうは気にしているだろうな。あと、気になるのが、弱いということだな。ゼノヴィアとかいうのと二人がかりで白音に攻撃をかすらせることもできてない。擬態の聖剣も刀の状態で固定して全く変化を起こさない。一から鍛えなおしだな。
「ゼオン、紫藤を借りるぞ。場合によっては聖剣を使わないほうが良いかもしれん」
「そんなにひどいか?」
「酷すぎるな。明らかに自分のスタイルを殺していやがる。多少の無茶は良いんだよな?」
「デュリオ」
「構わないよ。上から許可が出ているから。はい、足元がお留守だよ。自信がないなら自分を強化するより他人を強化してあげて。前衛も後衛も攻撃は足りてるから補助を行えるのがいた方がバランス取れるからね」
「では任せる。ゼノヴィア、もっと聖剣の力を引き出せ!!剣の構えなど忘れてしまえ!!触れた物を全て破壊するだけでいい。破壊することだけを考えろ!!」
「おう、紫藤!!お前はこっちだ」
各自の強さを互いに覚えさせるためにゼオンとデュリオ相手に戦っているリアスたちの中から紫藤を呼び出す。
「ここじゃあアレだから場所を移すぞ」
訓練用の地下室から工房に上がり、さらに二階にあるリビングまで上がる。互いに飲み物を用意してから切り出す。
「率直に行こう。オレは教会とか天使とかを嫌ったりはしていない。だが、あの時のレイナを自分たちの欲で殺した奴らは許さねえ!!お前のことはレイナから少しだけ聞いている。最後まで面倒をみれずに裏切るような形になったって後悔もしていた」
「……そんなことは分かってるわよ。私宛にレイナお姉さまから手紙が来てたから。けど、それでも頭では分かってても心が納得できないのよ!!なんでなのよ、なんで偶然はぐれ討伐が一緒になって、お互いに一目惚れなんかして、上に義理を通そうとしたのよ!!どれか一つでも違ってたら、こんなことになんてならなかったのに」
紫藤の言うことは持ってのとおりだ。オレとレイナが出会わなければ、どちらかが拒絶していれば、何も言わずに去っていれば、紫藤にとっての結末は大きく変わっていたはずだ。それは分かる。
「だが、それと銀術を使わない理由にはならねえだろうが。それに擬態の聖剣もあまり変化させる気がないな」
「それは……」
「ちょっと今の腕前を見せてみろ。そのロザリオ、銀製だろう」
とりあえず力量を確認しようとして、結果に頭を抱えたくなった。
「冗談……じゃないんだよな」
「うぅっ、銀術を使ってると頭の中がごちゃごちゃになってどうすることもできないのよ」
「あ~、幾らなんでもこれは酷すぎるだろ初心者以下だな。魔力を通してるのに変化させれないとか」
これは方針の変更だな。かなり荒療治になるが仕方ない。
「私だって昔はちゃんと使えたの。お姉さまの人形劇の手伝いをやってたんだから」
「人形劇、か。親父さんの形見だった人形を使った奴か」
「そうよ。けど、それも今はオストリッチしか残ってない」
そう言って自分の身を抱きしめて震える。
「なんで変わっちゃうの?私は変わりたくない、変えたくない。幸せなままでいればいいのに。なんでなのよ」
「……変わらないものなんてこの世には存在しない。成長、摩耗、推移、世の中は絶えず変化し続けている」
話しながらも気づかれないように少しずつ銀を広げていく。
「誰かを思う心は絶対に変わらないなんてことはない。そんな世界は何もない空虚な世界だ」
「そんなことあるわけがっ!?」
伸ばしていた銀で紫藤を覆う。脱出するには銀術を使うしかない。銀は魔力や光力との親和性が高い。その身に力を蓄えてしまうので破壊するのは難しい。完全に密封もしたので放っておけば酸欠で死ぬ。トラウマの治療には荒療治しかないからな。これで銀術を使えないようなら、二度と戦えないようにしてやった方が紫藤のためだ。
相手は聖剣エクスカリバーと堕天使の幹部であるコカビエル。戦力評価ではヴォルフシュテインを使わないレイフォンぐらいだと聞いている。戦闘スタイルによっては死ぬほど面倒な相手になる。空戦は確実だろうな。
飛べない紫藤が戦うには銀術と擬態の聖剣は必須だ。それが使えないのなら戦わせないのが一番だ。戦闘ができないぐらいの後遺症を与えればゼオンもデュリオも戦闘から外すはずだ。
そろそろやばいだろうな。これ以上変化の兆しがなければ解かないと死ぬな。軽く魔力を銀に通して、確認する。魔力は通っている。そして変化の兆しは無しで逆に硬化している。トラウマを乗り越えるのはやはり難しいか。感じられる魔力がどんどんと少なくなっていき、完全に途切れると思った瞬間から銀が溶け始めていった。
「これは、完全に意識を失って、いや、逆に意識を失ったからこそか」
このままでは銀に溺れるだろうから全て回収してソファーに寝かせて簡単な診断を行う。特に問題はなく、気付けをすればすぐにでも目を覚ますだろうな。
「調子はどうだ?」
いつの間にかゼオンの式髪が傍に立っていた。
「微妙。このままなら確実に足手まといになるな」
「できる限りのことはするのか?」
「そりゃあ、レイナの弟子だからな。レイナから預かっている物もあるし、現状を作った原因の一つがオレっぽいからな」
「そうか。なら、オレからは何も言わないでおく。お前に判断を任せる。フォローに不安があるならグレイを呼び寄せても構わん」
「いや、もう少しなんとかやってみるよ。ただ、戦闘に関しては最悪外すのも考えておいてくれ。中途半端なままだと死ぬかもしれないからな」
「それもお前に任せる。デュリオからの許可も取ってある」
「任された。そっちはどうなんだ?」
「うむ、少しやりすぎたみたいでな。イッセーが使い物にならなくなった」
「何をやってんだよ!?」
「うむ、昨日の殺気をぶつけたのがまずかったようだ。集団に対して放ったからな、イッセーだけ無意識下のトラウマになってしまったようだ。もう少し強いか、逆に弱ければこんなことにはならなかったのだがな。一定以上の殺気を浴びると錯乱してしまうようになった」
「おいおい、どうするんだよ」
「夢渡りしかないだろうな」
「夢渡りか、大丈夫か?トラウマに対する夢渡りはかなり危険なんだろう?」
夢渡りは文字通り他人の夢に潜る術だ。夢とは無意識下の領域、その領域に巣食う元凶を直接攘うことでトラウマなどを取り除くことや本音を引き出す術だ。ただし、術者は魂魄自体で夢に潜るため傷つけられると本体も消耗する。
「だがやるしかない。くくっ、久しぶりに全力で戦えそうだな」
「負ける心配してないが気をつけろよ」
「無論だ」
sideゼオン
深夜、全員が寝静まった中、イッセーの部屋から魘される声が聞こえたのを確認して部屋に入る。そのままベッドの横に椅子を移動させて座り、手を握って夢渡りの術を発動する。浅い部分に元凶は見当たらない。深い部分にまで一気に潜る。そして見つける。あの時と全く同じシチュエーションでちょうどクリアの姿をしたオレがイッセーたちの前に立ちふさがるところだ。クリアが右手を上げる前に殺気でバタバタと倒れていく役者たちの前に素早く降り立ちマントを広げて防御の体制をとる。次の瞬間、バカみたいな大きさの魔力弾が放たれた。
「ちっ、ラシルド、ザグルゼム、ザグルゼム、ザグルゼム!!」
ラシルドを三回のザグルゼムで強化して跳ね返す。予想以上の攻撃力だが、それだけイッセーが恐れているということだ。が、これぐらいなら想定の範囲内だ。むしろ本物のクリアの方が強い。
「ぜ、オン?」
「安心しろ、オレが守ってやる」
安心させるように軽く頭を撫でてからクリアに相対すると同時にリミッター全てを解除する。
「後悔させてやるぞ!!シン・ドラグナー・ナグル!!」
最強の肉体強化呪文を発動させて懐に飛び込む。クリアもそれに反応するが遅い。抉るようにレバーブローを叩き込み、くの字に曲がったことで下がった顎にアッパーを叩き込み、浮き上がった足を掴んで地面に叩きつける。
「エクセレス・ザケルガ!!」
叩きつけた状態からそのままエクセレス・ザケルガを打ち込んで地中に埋める。這い上がってくるまでの間に体の調子を確かめる。右の拳が骨折、左足の腱が切れている。さすがにシンの力に体がついてこないか。もう少しナグル系を使い込んでいけば体に慣れるだろうな。穴から飛び出してきたクリアはどこからか巨大な槍を持ってきており、それを空高くから投げてくる。
「ベルド・グラビレイ!!」
右手を軽く振り、そこから少し離れた位置に重力で出来た帯が現れ、斥力で原子からバラバラにして弾く。剣の脆さに呆れながら、空高く飛んでくれたことに感謝する。こいつは距離がないと危険だからな。
「ニュー・ボルツ・マ・グラビレイ!!」
マイクロブラックホールを発生させるこの術に耐えられる者は少ない。押し潰されていくクリアが完全に消滅するまで見守る。完全に消滅したのを確認してから術を解除する。それと同時に世界が崩れ始める。悪夢が終わり、世界が閉じる。だが、その前にもう一つだけやることがある。素早くイッセーの元へと移動する。
「イッセー、君には力がある。赤龍帝の籠手は、神をも殺せる力を君に与えてくれる。だがそれだけだ。龍は争いを引き込む存在だ。君は一生、争いに巻き込まれる運命と言ってもいい。恐ろしいかもしれない。だが、安心しろ。オレが全てを粉砕してやる。だから、オレが駆けつけれるまで諦めるな。オレが守ってやる」
そう言ってもう一度頭を撫でてやる。ここらが限界だな。夢渡りで上の層へと一緒に移動してから術を解除する。それにしても夢の中とはいえそこそこ全力を出せて楽しかったな。夢か。少し研究してみるか?
sideout
side 一誠
夜中にふと目が覚める。誰かが傍にいたのか、椅子がベッドの隣に置かれていた。喉の渇きを感じて、何かを飲もうと部屋から出る。リビングの隣に設置されている冷蔵庫を開けて中から水を取り出す。それが聞こえたのはたまたまだった。ペットボトルの水を飲み、息を吐き出した後の一瞬の静寂に、何かを置く音が聞こえた。聞こえたのは1階からで、こんな時間に誰がと思い、ゆっくりと階段を降りる。そこには大きな氷を包丁で削って彫刻を行っているゼオンがいた。迷いなく削っているのに綺麗に東洋の龍の形が姿を現していく。時間にして5分も経っていないだろう。それなのに氷で出来た龍が完成していた。
「ふぅ~、研ぎが甘かったか」
そう言ってゼオンは氷を砕いてしまった。
「あっ」
「うん?イッセーか、どうしたんだ、こんな時間に」
「ちょっと喉が渇いて目が覚めて、そうしたら物音が聞こえたから」
「そうか。それで見ていたのか」
「うん。だけど、なんで壊しちゃったの?」
「ああ、先ほどのか。これは包丁の研ぎ具合を見るために行っている彫刻でな。彫刻が目的ではないのでな。彫刻は素手に限る」
「いやいや、素手って」
「オレにとっては岩も少し硬い粘土のようなものだからな。素手が一番表現しやすい。その次は包丁だな。伊達に料理人をやっていない」
「ふふっ、そうですね」
そこで話が途切れた。ゼオンは砕いた氷を片付け始める。そんな中、ふと聞くタイミングがなかったことを思い出して口にした。
「ねぇ、聞いてもいいですか?」
「答えられることならな」
「どうしてそんなに強いんですか?」
「難しい質問だな。まあ才能があった。努力もした。だが、それ以上に強い思いを得たことが一番の要因だろう」
「強い思い?」
「そうだ。オレが13になる前だったか、人生初のレーティングゲーム。黒歌と白音に消せない傷を残した最低最悪の相手とのゲーム。何故幼い二人が傷つかなければならないのか。オレはそんな世界を嫌った。そして他にもいるだろう同じ境遇の子供を探し、保護を始めた。少しでもまともな未来にたどり着くために。オレも、あまり良いとは、いや、ある程度は良かった?普通から見れば不幸を通り越した何かだったか。まあ、家族間は完全に冷め切った関係だったな。以前にも疑問に思っていただろう?オレがグレモリー家に婿入りすることに。つまりはそういうことだ」
「それ、は」
「オレは気にしていない。むしろ、オレなんかをリアスたちが好きになってくれて嬉しいぐらいだ。親父共はオレを貶しているからな。冥界ではあまり好意的に見られることが少ない。敵意まで露わにする貴族はほとんど居ないが嫌悪感を現すのは多い。友人と呼べる悪魔は14になるまで一人もいなかった。人間にも客と呼べるようなものばかりで友人と呼べるものは少なかった。だからだろうな、人一倍寂しがり屋なオレは一度懐に入れたものを失うことを恐れて、その恐怖がオレをここまで強くした」
「恐怖が強くする」
「違う違う。恐怖から逃れようと立ち向かう心が強くするんだ。自分の力不足を言い訳にはしたくないからな、オレは何処までも色々な力を求める。まあ、そろそろ魔力と筋力は頭打ちだろうから維持するのを目標に、精密性と魔術の効率化を優先しつつ小技を少々増やしていく位だがな。財力も色々と手を出して増やしているし、他種族の上の方とのつながりは結構持っているしな。妖怪は世話になっていたぬらりひょんの紹介で八坂様と飲み友だし、日本神話の天照は屋台の常連だったし、グリゴリのアザゼルとも飲み友だし、バラキエルは朱乃関係でちょっとお話になったりもしたし、ギリシャ神話のゼウスとは真の雷の覇者を決めるために争った仲だし、北欧神話のトールもゼウスと一緒に暴れて、他にも雷を操る奴らが色々と集まっての大乱戦は懐かしい。大乱戦は互いに雷を操るだけあって耐性を持つ所為か泥沼になって硬直状態に陥ったことで誰かが酒を持ち出したことで酒宴に流れ込んだ。おかげでパイプができたんだがな。たまにこっそり人間界で集まって酒宴を開いてるしな。その際には酒好きな奴らも混ざる所為で顔が売れるのなんのって。ザルのオレを越すワクのような奴らばっかりだからな」
なんかすごい名前がごろごろ出てきた気がする。
「恐怖を感じるのは生き物としては当然だ。だが、その恐怖にどう立ち向かうのかはそれぞれだ。時には負けることもあるだろう。だがあえて言おう。諦めるな!!諦めたらそこで終わりだ。諦めない心が成長するための材料だ。そしてどうしても無理なら、オレを呼べ。伊達に雷帝を名乗ってない」
「くすっ、それ前にも聞いたよ」
「ああ、何回でも言うさ。意地っ張りが多いからな。素直に助けてって言ってくれる奴が居ないんだよ。オレとしては頼ってくれた方が嬉しいんだがな」
ゼオンは苦笑しながら砕いた氷を流し台に放り込んでいく。
「さて、そろそろ眠るといい。明日からも大変だぞ」
「うん。でも、また今日みたいなことにならないかな?」
またあの姿がチラついたら、あれ?
「大丈夫だ。きっとイッセーならな」
そう言ってゼオンが頭を撫でてくれる。この感じ、何処かで。そう、私のピンチに颯爽と現れて私を守ってくれたような。そんなことはないはずなのに、何故かそう思えてしまう。
「うん」
ゼオンに促されるまま部屋に戻ってベッドに入る。私、本当にどうしちゃったんだろう。もしかして本当に、ゼオンに惚れちゃったのかな。確かに格好いいし、優しくて強いけど、私なんかと全然釣り合わないし。女の子らしいところなんてほとんどないし。あれ?おかしい。釣り合わないとかそういうことは思うのに、それでもって思う方が強い。えっ?もしかして本当に?いや、でも、そんな馬鹿な。私の夢は可愛い女の子やかっこいい男でハーレムを築くことだ、決してハーレムに加わるこ、と、じゃ……ない、はずだったのに。嫌じゃない、寧ろ侍らされる側の方がいいなんて、思ってる。ゼオンに甘やかされたい。あの手で撫でられて、あの腕に抱かれて、あの声で愛を囁かれたら。
顔が熱くなるのが分かる。今私の顔を見たら真っ赤に染まっている自信がある。自覚しちゃった。私、ゼオンに本気で惚れちゃってる。やばい、明日からどんな顔して会えばいいんだろう。周りにはばれない方がいいのかな?それとも正直に部長に言った方がいいのかな?どうしようどうしようどうしようどうしよう。誰か、たすけて〜〜!?
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