バトルガールハイスクール短編集
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第1回 (粒咲あんこ・火向井ゆり
前書き
初めましてblueoceanです。
ゲームではゼオン、lobiではZeon1221で名乗っています。
短編として今回はシルバーウィークで起こった事を元ネタに書いてみました。予想以上に長くなってしまいましたが良かったら読んで見て下さい
「うおっ、また懐かしいものが出てきたな………」
久し振りに実家に帰った俺は、自分の部屋で必要な物を探しているうちに懐かしい物を発見した。
「スーパーファミコン………」
「今日の授業はここまで」
チャイムとともに生徒達の空気が柔んだ。
「明日の土日は久々の休みだゆっくりしとけよ〜」
星守として地球奪還の為に何時も苦しい訓練や実践をしてきた彼女達の束の間の休息。
「さて、俺も帰ってビール飲んでゲームにしゃれ込むか………」
それはその彼女達の担任をしている俺も例外じゃなかった。
「ん………?」
そんな中、皆が帰り支度をしている中で熱中して雑誌を読んでいる粒咲あんこの姿が目に入った。
「珍しいな………何時もスマホばっかり弄っているあんこが雑誌なんて………」
彼女は人気のあるブロガーらしい。尤も俺はそういうのに興味はないので詳しくは分からないが、スマホやパソコンと共にいる事が多い彼女が雑誌を読んでいる姿が意外だった。
(何を読んでるんだ………?)
気になった俺は遠目に覗いてみる事にした。
相手に警戒されない様に自然を装い横目で覗いてみる。
『昔のレトロゲーム特集。ファミコン、スーパーファミコン!!』
「へぇ懐かしいなぁ………」
「ふぇ!?」
思わず溢れた言葉にあんこは全身を使って真っ青な顔で驚いていた。
そこまで驚く必要ないと思うが………
「せ、先生何してんの………?」
「いいや、悪い悪い。雑誌見てるあんこが珍しくて何読んでいるんだと思ったんだけど………へぇ、ファミコンならまだしもスーパーファミコンももうレトロ扱いか………時代だなぁ」
「もう製造おろか中古も僅かだけ。地球にはあるのかも知れないけれどこのコロニーでは幻のゲームになってるのよ。だけど最近………」
そう言いながら別のページを見せる。饒舌に話すあんこの姿は珍しい。
「へぇ……『WiiUで懐かしのゲームをプレイ』か………今はこんなのがあるんだな」
「それでレトロゲームの特集ってわけ」
そう言いながらとてもやりたそうな目で雑誌を眺めるあんこ。
「でもわざわざダウンロードしてまでやる必要ないな。俺のスーファミも古いし、コントローラーも中の電線が見えるけどまだ全然動くし………」
「え………?」
そう俺が言った後、あんこは物凄い形相で俺を見つめていた。
「あ、あんこ……?」
「せ、先生スーパーファミコン持ってるの……?」
「あ、ああ………」
「しかも……まだ動くの………?」
「あ、ああ………」
あまりの迫力に空返事しか返せない俺を機にする事なく俯きながら震えるあんこ。
「あ、あんこ………?」
不安になった俺に声をかけるが………
「先生!!!」
「は、はい!?」
「今日先生の家に行く!!」
「は、はい!!………え?」
バサッ
「「!?」」
不意に本の落ちたような音が聞こえ、互いに振り向くと、
「せ、先生………?」
そこには驚愕の顔をした高校2年生で風紀委員長の火向井ゆりがいた。
「ゆり……?どうしたんだ………?」
声を掛けても返事がない。まるでバケモノを見るような顔で後ずさるだけだ。
「ゆり………?」
不安になりもう一度声をかけてみる。
「先生が………!」
「ん?」
「先生が………!!」
「ん?」
「生徒を家に連れ込もうとしてるーーー!!!」
「えっ?」
一瞬何を言われたか理解できずに固まってしまった。
「うわぁあああん!!!!」
しかしゆりは何故か泣きながら教室へ出てしまった。
「はっ!?待てゆり!!誤解だ!!!」
暫く茫然していた俺はその背中を慌てて追いかけたのだった………
「はぁ………早くも教師生活が終わるところだった………」
「せ、先生が悪いんですよ!あんな誤解するような話をしていて!!」
「いや、俺は誘ってないし………」
と弁解を言いつつ、前を歩くあんこを見るが………
「フフフフ………」
不気味な笑い声と共に雑誌から目を話さず歩いていた。よく人や物に当たらないものだ。
現在俺とあんことゆりは俺の家に一緒に向かっていた。あの後慌ててゆりを捕まえて事情を説明。
落ち着いた所であんこが急かし、ゆりと別れて2人で家に向かおうと思ったのだが………
『わ、私も行きます!!』
何故かゆりも行きたいと言い出した。
『せ、先生と2人っきりにしたら何をしでかすか分かりませんからね!!』
仮にも担任なのだが信頼の無さをひしひしと実感出来た。
………泣きたい。
「………さあ着いたぞ」
そうこうしている家に俺の住んでいるマンションの前に着いた。
学園から徒歩20分ほど、いつもはバイクで通勤しているが、この2人を連れ居ている上、歩いて帰れない距離でも無いので、少し歩くが徒歩で行くことになったのだ。
そこはいつも厳しい訓練をしている2人。特に文句も無く、さっさと着いてしまった。
「ここが俺の家だ」
マンションのエレベーターを使い、3階へ。その一番端の306号室が俺の家だ。
「へぇ………」
「散らかってない………」
「悪いか?」
「い、いいえそんな事は………」
(お姉ちゃんは成人男性の部屋はかなり汚いって言ってたんだけどな………)
と驚いたゆり。しかしそんなゆりとは違いあんこはさっさとテレビの前へ移動する。
「こ、これが………」
黄ばみがあるスーパーファミコンを前にまるで宝を見つけた様な顔でマジマジと見つめていた。
「飲み物は………お茶しかないな………それでいいよな?」
「あっ、はい、お構いなく………」
「………」
ゆりの返事はあったものの、あんこの返事が無い。耳に入ってない様だ………
「まあお茶以外何も無いんだけどな………」
「えっ?ちょっと失礼しますね………」
俺の呟きに反応したゆりはそう言って家にある小さい冷蔵庫の中身を見た。
「な、何これ………」
中を見たゆりが絶句している。
「何ってビールだが?」
「何でこんなにビールを………?」
「何でって飲むからに決まってるだろ?」
「こんなに要らないでしょ!!」
何故そんなに怒っているのかは分からないのだが、恐らく冷蔵庫に敷き詰められたビールの山を見て怒っているのだろう。
「食事はいつもどうしているんですか!!」
「外食、弁当、冷食」
そもそも料理なんて出来なくもないが自信があるのはチャーハンやオムライス位だ。
「何でこの先生は………」
頭抱えながらぶつぶつと何かを言っているゆり。
不思議そうに見ていると今度はあんこの方から声がかかった。
「先生、先生!!」
「何だよ………」
「早速始めて良い!?って言うか始めるね!!」
「………好きにしろ」
俺の返事を待たずゲームを始めるあんこ。
おかしい。折角の休みでビールを飲みながらゲームする筈が何故か学校にいるような感覚だ。
「先生、買い物に行きましょう!!」
「ん?そんなの必要ない…「行きましょう」はい………」
ゆりの迫力に押され、俺は渋々ゆりの言う通り財布を持って家を出た………
「う〜ん、ここのスーパー少し野菜が高い………」
2種類の人参を持って1人ブツブツと呟くゆり。
「別にどっちだって良いよゆり、それよりもさっさと買って帰ろうぜ………」
「何言ってるんですか!!日頃から節約は大事です!!その積み重ねが後々役に立つんですから!!」
『お前は俺のオカンか!!』と言うツッコミを飲み込み、仕方ないから満足するまで付き合うことにした。ここで反論しても論破され、さらに説教が加わる可能性があるからだ。
真面目すぎるのも考えものである。
それに心配なのは家に1人残してきたあんこの方だ。あんこがそんな事をするとは思えないが、もしクローゼットの左下の棚を探られれば担任としての威厳を失うであろう。
俺がいれば止められるが今は誰も止める者がいないのだ。
(あんこ、信じてるぞ………)
とあんこを信じているとその本人からメールが入った。
「どうしたんです?」
「あんこからメールが来てな」
俺がスマホを出した事に気がついたゆりが俺の返事を聞き、小さい身体で俺のスマホを覗いてきた。
『コーラとポテチよろしく』
「うん、心配ないな」
「何の事ですか?」
「いやこっちの話」
さて買い物を終え帰路に着く。ゆりが自信満々に『夕食は私が作りますから』と宣言していたので全てを任せる事にした。材料から見てカレーだろう。しかしその他にも野菜類や肉類を買ってしまった為暫くは自炊しなければいけなさそうだ。
「すいません、調子に乗って色々と買わせてしまって………」
「ん?ああ、良いよ別に………」
買い物が終わって流石に悪いと思ったのかゆりが申し訳なさそうに呟いた。
「ゆりの言ってる事は間違いじゃないしな。買い物も料理も面倒だからどうしても楽な方にって思う俺が悪いんだ、ゆりが気にすることないさ」
「ありがとうございます。そ、それで………」
そう言いながらゆりが俯く。声も小さくなっていき聞き取りづらい。
「これから時間あるときは私が料理を………」
「ゆり!?」
「えっ!?」
ゆりは前を見ていなかったのか交差点を周りを見ずに渡ろうとしていたので慌てて抱き寄せた。
「何してんだお前は!!危ないだろうが!!!」
「ご、ごめんなさい!!」
あのまま抱き寄せていなければちょうど通り過ぎた自転車とぶつかっていただろう。
「全く、心配させるな………」
「ごめんなさい………」
とっさに荷物を置いて抱き寄せたので中身が少し出てしまっていた。
「分かればいい。それよりもさっさと帰ろう。あんこも待っていることだしな」
「はい………」
落ちた材料を広いながら話す。
かなりシュンとしていたので少し言い過ぎたかもしれない。
(言いそびれちゃった………)
その後は2人共口数の少ないまま家へ着いた。
カタカタカタ………
「「…………」」
家に帰ると俺達は言葉を失った。
無心にゲームを見つめコントローラーを動かすあんこ。あぐらをかいていてスカートだということも頭に入ってなさそうだ。
「こんな集中しているあんこ先輩初めて見ました………」
「俺も………」
奪還授業よりも集中している様に見える。
その姿はまさにプロのゲーマーそのものだ。………そもそもゲーマーにプロがあるのか不明なのだが………
「あんこ先輩、コーラとポテトチップス買ってきましたけど………」
「ん?ちょ!?ゆり!!」
ゆりは気がついてもらえるようにと思ったのだろう。あんことテレビを挟んで立とうとしたのだと思う。
だがその足元には………
「あっ」
「!?」
その足元にはスーファミとテレビを繋ぐケーブルがあった。そして下をあまり見ていなかったゆりは足を引っ掛けてしまったのだ。それによって少しスーファミの本体が動いてしまった。
今ある新しいゲームではそんな少しの動きなど全く問題ないだろう。しかし昔のレトロゲームにとってその衝撃は致命的と言えた。
「あ、あれ………?」
画面が固まりヴーと唸るような音を上げ続けるテレビ画面。
「ああこれは………」
その状態を見て俺は確信した。あんこは口をパクパクさせて固まっている。
「バグったな………」
俺はそう呟き電源を切る。ゆりも事の重大さに気がついたのか苦笑いしながらキッチンの方へ逃げていく。
「運が良ければ………データは消えずに………ああ………」
あんこのやっていたゲーム、『スーパーマリオRPG』は最初のオープニングが終わり、セーブするとストーリーで起きたようにクッパ城に巨大な剣が突き刺さっている。
しかし………
「剣が無い………」
これはデータが全て跡形もなく消え去った事を意味していた………
スーパーマリオRPGとは………
任天堂とスクエア・エニックスの最初で最後のコラボ作品。雰囲気がFFっぽい世界でマリオの物語を体験でき、BGMもストーリーも素晴らしく、個人的にはマリオのゲームで1、2を争う面白さでスーパーファミコンのソフトでも1番好きなゲーム。(コラボしていた事も最近知り、隠しボスのクリスタラーの姿と戦闘BGMのFFっぽいのもつい最近気が付きました………)
「本当にごめんなさい………」
「別にいいわよ………バグもレトロゲームの醍醐味だし………」
とゆりを慰めるが、どうにも笑顔がぎこちない。あんこの事だし、何かこだわってゲームをプレイしていたのかもしれない。
「そ、そうだ!!どうですか?カレーの方は!!」
そんなあんこの状態を変えようとゆりは話題を変えた。
ゆりの自信作のカレー。火向井家ではカレーにはイチゴジャムを使い、深みを出すそうだが………
「「甘っ!!」」
思わず声を揃えて叫んでしまった。
「ええっ!?もしかして甘口は嫌いでした………?」
「嫌いも何もカレーって辛いものじゃない?」
「俺もそう思ってたんだけど………」
「ええっ、そうなんですか!?私の家はいつも甘口なのですが………」
カレーなんてそれぞれの家庭では違うので文句は言えない。それに味も美味しいし、甘い以外問題は無かった。
((だけど甘いなぁ………))
それだけはどうしても不満だった。
「ごめんなさい、本当は中辛にすれば間違いないと思ったのですが………」
「ん?何かあったのか?」
「実は私、辛いのあまり得意じゃ無くて………」
「「ああ………」」
あんこと共に何となく察してしまった。
(ゆりお前はどこまで………)
思わず言葉に出そうになるが、何とか飲み込んだ。
「本当にごめんなさい!!」
「いや、美味いし全然問題無いって!!」
「そ、そうよ。私のカレーより全然美味しいわ!!」
「本当ですが?それなら良いんですけど………」
ゆりの秘密をまた知ってしまった瞬間であった………
さて、食事を終え、小休止する間も無く、あんこはスーファミの前に移動した。
「おい、直ぐ始めるのか?」
「当たり前じゃない。遅れた分、直ぐに挽回しなきゃ………」
あんこは何かタイムトライアルでもしているのだろうか………
「先生、洗い物………」
「やらなくていいよ、飯作ってもらった上にそこまでしてもらっちゃ流石に悪い………」
「えっ、でも………」
「それよりもゆりもこっち来て一緒にゲームやろう」
「えっ、私も?」
その誘いは予想外だったみたいだ。
「何の為に来たんだよ。それにちょっとした対戦ゲームもあるし、ゲームをあまりやらないゆりでも楽しめると思うぞ」
「でもあんこ先輩は………」
「私はそれでも良いわ。フフフ、どんなゲームでも2人とも返り討ちにしてあげるわ」
自信満々にそう宣言するあんこ。
「それはどうかな………」
あんこがゲームが得意なのは周知の事、だがこのジャンルならば俺達2人にも勝機はある筈………!!
「何で勝負するの?」
「『ぱにっくボンバーマン』だ!!」
ぱにっくボンバーマンとは………
ぷよぷよの様な顔をそろえて消す落ちゲーで、ぷよぷよとは違い3色揃えれば消せるので難易度は低い。
更に爆弾で一気に相手にブロックを増やせたり、デカ爆で一気に消し、一発逆転も出来てかなり盛り上がれるぞ!!
(個人的な感想、因みに高校生の弟と30戦ほどし負け越しました………)
「なるほどなるほど………」
ゆりに操作説明とルールしていざ対戦へ。2人対戦で先ずはあんこ対ゆり。
「よろしくお願いします!」
「ふふ、負けないわ………」
勝負は三回戦で負け越した方は交代。要するに勝ち抜き戦である。
そして勝負が始まった。
「えっと………こうやって………」
「………」
流石に戦況はあんこの有利であった。この手のゲームをやった事があるのかあんこはキビキビとボンバーマンを積み上げていく。対してゆりは慎重に積み重ねている。
このゲームで重要なのは連鎖を繋げ、いかに爆弾を爆発させ、相手にブロックを積み上げる事だ。
更に一発逆転のデカ爆は専用のゲージがあり、そのゲージはボンバーマンを消す事と速く積み上げていくことで上昇していく。
『デカ爆だー!』
「ええっ!?」
なので積み上げるスピードの速いあんこの方が先にデカ爆を出現させた。
「これでトドメ!!!」
ボンバーマンと同じ様に降りて行くデカ爆。それはまさに言葉通りトドメであった。
「ああ………」
爆発と共にブロックが一気に積み上がっていく。そしてゆりの画面が完全に埋まった。
『ヤラレター』
「私の勝ちね」
「ううっ………悔しい………」
ゆりが悔しそうに呟き、あんこが余裕そうに構える。その後もあんこの方が分があり、結局2戦目もあんこの勝利で終わった。
「ううっ、結局勝てなかった………」
「さあ、次は先生ね。このまま全勝かしら………?」
「さて、それはどうかな………?」
甘いなあんこ、これはぷよぷよの様な落ゲーとは違う。
「レトロゲーと共に生きてきた俺の青春の力を見せてやる!!」
「何それ!?」
「速い!!」
俺の作戦だが、俺はいかにデカ爆を速く出現させるかに焦点を置いた。この『ぱにっくボンバー』において、デカ爆を爆発させればその後の逆転はかなり難しくなる。先ほどの説明の様にゲージは積み立てて行くだけで先ず上昇していく。
「これぞ、勝利の方程式!!」
作戦は左右2列にボンバーマンの塔を作る。中心に積まなければ左右にいくら積んでも問題無いのだ。
そしてそこからボンバーマンを消していく。連鎖は完全に運になるが、スピードで差を付けた上、3つで消せるこのゲームは無茶苦茶に積み重ねても結構連鎖が続くのだ。
「くっ………!!」
どうやらあんこも俺の行動の意図に気が付いた様だ。慌ててボンバーマンの落とすスピードを速め、少しでも追いつこうとしている。
「だが、もう遅い!!」
『デカ爆だー!』
俺の思った通り、先にデカ爆が出現した。これであんこももう終わりだ。
「俺の勝ちだあんこ!!」
俺は勝機を確信してデカ爆を落とした。
「………ふふ」
「!?」
だが、俺はあんこが一瞬笑ったのを見逃さなかった。
『5連鎖!!』
「なっ!?」
5連鎖。
それはそれまでの4連鎖と大きく違っていた。
「5連鎖だと!?」
高々と下から画面半分を爆弾で埋めるあんこ。そしてその爆弾が一斉に爆発する。
「まさか本当に………」
子供の頃、6連鎖までは出した事はあるが、それも数えるほど。5連鎖も同様だ。そしてその5連鎖は積み上がった爆弾が一斉に爆発する、ある意味デカ爆よりも恐ろしい効果がある。
この時点で俺の負けは確定だ。先にデカ爆を爆発させた上、今まで溜めていた爆弾も一緒に爆発させたあんの攻撃は一撃必殺と言っても差し支えないだろう。
だが、あんこの攻撃はそれで終わらなかった。
『デカ爆だー!』
「私の愛、受け取って先生!!」
あんこの愛(デカ爆)を更に受ける俺。既に全部埋まった画面に更にブロックが積み上がっていく。
「フフフ、気持ちいい………」
とても満足そうな笑みを見せるあんこ。
「………」
これ程嬉しくないラブコールは無いだろう。俺は言葉を失った。
例えるながら既に命が無いのに、更に追い打ちをされたような状態だ。
始める前の自信は徹底的に打ち砕かれた。
「先生、もう一戦よ?」
「ハイ………」
既に俺には戦意が無かった。
とは言えあの戦いは実際かなりあんこを追い詰めていたわけであり、この戦法は有効であった。
「やった、勝った!!」
「むぅ………」
全勝は無理なものの、あの戦法でゆりも俺も3回中1回は勝てる様になり、あんこの一強ではあったものの、そこまで圧倒的な結果にはならなかった。更に『ドクロモード』で起こるランダムなイベント(いきなりデカ爆や操作が左右逆など)によって更に結果は分からなくなった。
そして気が付けば始めてから2時間が過ぎていた………
「くそ、また負けた………」
「良かった、あのタイミングで火力が下がって流石に終わったと思ったけど先生の方が耐えきれなかったわね………」
「次はゆり………っておい………」
「すぅ………すぅ………」
気が付けばゆりは俺のベットを背に寝息を立てていた。
「もう寝たの!?」
「まだ22時過ぎたばかりなんだが………」
そこでふと思い出す。ゆりはいつも剣道部の朝練に自主的に来ており、朝5時には来ているのだ。
「………まさか夜早く寝てて、朝早く起きるからいつもこの時間に寝てるって事!?」
「だろうな………」
流石真面目なゆりである。何故こんなに不摂生をしていないのに背が伸びないのか………
それにしてもその年で夜更かしが出来なさすぎるのも如何なものかと思う。
「先生どうする?」
「流石にお開きだろ。もう気が付けばもう22時回ってるし、今日は終わりだ」
「ええっ………」
「文句を言うな。あんこの帰る準備しろ」
「………まだスーパーマリオRPG全クリしてない」
「………全クリ前提とか、おかしいだろお前………」
ぶっ続けでやっても朝までに終わるとは思えない………
「それが普通でしょ!!」
「普通な訳あるか!!」
「先生おかしいよ!!」
「おかしいのはあんこだ!!」
流石にこれ以上は親御さんにも心配させるし、立場上俺自身が危うい。いくら仕事が忙しい親だとしても家に帰らなければ心配するだろう。
「でも………!!」
「取り敢えず今日は送っていくからまたやりたかったら明日来い!!どうせ今週は特に用事ないから!!」
どうしても譲らないあんこにそう条件を提案した。休日が潰れるのは勿体無いが背に腹は代えられないだろう。
「………分かった」
その条件であんこは渋々納得してくれた。
取り敢えず安心出来そうだ。
「ゆり、軽くて助かったわ………」
「先生セクハラ………」
「えっ?駄目か?」
あんこにコクりと頷かれた。
今俺はゆりをおんぶし、荷物をあんこに持ってもらってゆりの家を目指していた。
ゆりの家の住所は流石に覚えていなかったが、ゆりの生徒手帳に住所があり、あんこの家よりも近かったので先に送る事にしたのだ。
「しかしゆり全然起きないな………」
「全く起きる気配無いわね………」
揺すっても声を掛けても起きない為、くすぐっても起こそうかと思ったが気持ち良さそうに寝るゆりの顔を見て、その気は無くなった。
「全く、何で家の学校の風紀委員長はこんなに子供っぽいんだが………」
「本人の前では絶対に言わないのよ………」
「分かってるよ」
流石に本人が気にしている事をしつこく弄るつもりは無い。
「だけど可愛いわね………」
「そうだな………」
ゆりの寝息を聞きながら俺とあんこはゲームの話をしつつ、ゆりの家を目指したのだった………
その後、無事にゆりを送り届けた俺達。
いきなり寝ている娘を担任の先生、しかも男が送り届ければ流石に問題になるかと思ったが、ゆりは俺の家に遊びに行くと連絡をしていたらしく、特に何も言わず、事無きを得た。
その後あんこを届け終え、家に着いたのは23時半を回っていた。
「疲れた………けど、やっと俺の時間だな」
ビールを出し、スーファミの前に座る。当初の予定通りスーパーマリオRPGをするためだ。
「さてと、寝るまでにマロの国まで行きたいな………ってあっ」
電源を付けて思い出した。
「そうだ、バグってデータ消えたんだ………」
改めてあの時の状況を思いだし、ため息が漏れる。
「………まあ仕方ないか。また一からやるか!!」
だが、俺の不幸はそれだけでは無かった。
『ピンポーン』
「ん?」
家のインターフォンの音で目が覚める。
日付が代わり午前3時頃までやって限界が訪れ、セーブをし、電源を切った所で意識を失っていた。
『ピンポーン』
「時間は………?」
スマホを見てみると時刻は朝の5時。
『ピンポーン』
「誰だこんな朝早く………」
文句を呟きながら俺は渋々玄関のドアを開けた。
「おはようございます」
「………嘘だろ?」
そこには朝なのに、いつもの学校の時よりも元気なあんこが居た。
「約束通り、翌日来たわよ?」
「ははっ………マジで?」
結局久しぶりの週末休みはあんこと、そして何故か再び来たゆりによって完全に潰れることになったのだった………
後書き
また何か思いついたら書こうかと思います。
予定ではむみぃ(ミシェル)でいこうかと思っています。
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