FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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妖精の法律
「ノーラン・・・」
「なんだありゃ」
イワンとラクサスは右手が変色しているノーランを見て思わず冷や汗をかく。
「イワン、しっかり幻を展開しておけよ?俺が言いつけ破ったのバレると後であの人うるさいから」
ノーランはそんな2人のことなど気にした様子もなくそう言うと、目の前の敵であるラクサスを見据える。
「あの人って・・・誰だ?」
ラクサスはノーランが気にしている人物が誰なのか気になり質問をぶつける。
「知らなくていい、どうせ言ってもわからないからな」
「それもそうだな」
ノーランとラクサスは互いに正面を向いたままジリジリと足を摺り足で動かし、自分が最も力を発揮できる姿勢へと動かしていく。
「「・・・」」
互いににらみ合い魔力を高めていくラクサスとノーラン。その目の前を周囲に見せている幻が通過した時、2人が同時に動き出す。
「うおおおっ!!」
ラクサスが雷竜の咆哮でノーランに先制攻撃を撃つ。しかしそれをノーランは地面に手を置き、闘技場の砂を鋼鉄の盾へと変化させて防御する。
「そんなものか?」
「!?」
ノーランは雷を防いだ盾を大量の槍へと変換し、ラクサスを射撃しようとする。
「ちっ!」
ラクサスは自分に降りかかる槍を稲妻の如き速度で避けていく。しかし・・・
「ぐっ!!」
放たれた槍の数があまりにも多く、ラクサスの足に1本の槍がカスってしまう。
「そら!!」
「!?」
ノーランは動きの止まったラクサスに接近を試みると腕に手甲を纏い顔に向かって拳を叩き込もうとする。
「させねぇ!!」
「ぐおっ!!」
ノーランの拳が自らの顔に入る直前、ラクサスは目の前まで自分から来てくれたノーランの懐にパンチを叩き込む。しかしラクサスの放ったその拳は咄嗟に放ったものてあるために雷を纏っていなかった。つまりノーランに大きなダメージを与えるまでには至らない。
「そらっ!!」
「がっ!!」
ノーランは地面に着地すると同時に右足の甲でラクサスの顎を蹴り上げる。顎から受けたダメージは脳へと伝わり、ラクサスの体がフラリと力を失い、傾く。
「どうした・・・よ!!」
「ごはっ!!」
ノーランは動けなくなったラクサスの脇腹に次々にジャブを入れて攻め立てる。
だがそれに黙ってやられるラクサスではない。ラクサスはノーランの腕を掴むと体を思いきり反らせ後方へと投げ飛ばす。
「それなら・・・」
宙を舞うノーランの体、ラクサスはそのうちに体の自由を取り戻そうと左右に頭を振った後、ノーランの方へと向き直る。ラクサスがそちらを向くと目の前に黒い球体が迫っていることに気づいた。
「危ねっ!!」
間一髪で避けるラクサス。黒い球体は地面につくとバウンドすることもなく小さな穴を作りその場に留まった。
「砲丸か・・・」
ラクサスは自分に飛んできたものを見てそう言う。その隙にノーランは地面に着地し体勢を整える。その上着の袖に少し引きちぎられたような後が見受けられる。
「自分の服の一部を砲丸に変えたのか」
「そういうこと、便利なもんだろ?」
そう言うとノーランは闘技場の砂を掴む。ノーランの魔法は人間以外のものを違うものへと変えることのできる魔法。ラクサスはノーランがどれだけのものまで変えることができるのかはわかっていない。
だがノーランもラクサスが雷の滅竜魔法を使うということしかわかっていない。おまけに大鴉の尻尾のメンバーが如何せん弱かったためにラクサスがどこまでの実力を持っているのかもよくわかってはいない。互いの魔法のレベルがわかっていない現段階では五分と五分と言えるだろう。
「確かに便利ではあるが、相手を仕留めるには力不足だな」
「そう思うか?ならこれは?」
ノーランは砂を握りしめていた手を開く。そこから空に向かって黒い影が飛び立つ。ラクサスはそれに気をとられ顔をあげてしまう。
「カラス?」
ラクサスの視界に映ったのはなんてことのない至って平凡なカラス。そのカラスはラクサスに攻撃するどころか空に飛び立ったままどこかへと飛んでいってしまう。
「なんだ?何したかったのかわから―――」
ラクサスは視線を元の位置に戻すとそこには誰もいない。そこにいたはずのノーランがいなくなってしまっている。それによりラクサスは悟った。あのカラスは囮なのだと。
「しまっ―――」
ラクサスは後ろを振り向こうと体を反転させるがそれよりも早く顔に固いものがめり込む。
「ぐっ!!」
ラクサスは倒れながらも相手の姿を確認しようと片目を開く。その目に捉えたのは自分を殴り飛ばしたノーランではなく、続けざまに自分を襲う足しか見えない。
「かはっ・・・」
不意打ちのパンチに加え同じ場所に入る蹴り。ラクサスの視界は歪み、口の中に鉄の味が広がる。
ドンッ
ラクサスはそのまま闘技場の壁へと叩きつけられる。
シリルside
「ん?」
俺はじっと見つめていた闘技場から何か音が聞こえたような気がし、そちらに視線を動かす。だけどそこには何もない・・・ように見える。
「どうした?」
「何か見えたか?」
グレイさんとエルザさんが俺が視線を動かしたことに気づきそう質問してくる。
「いや・・・別に・・・」
「なんか今聞こえたな」
俺が首を傾げて幻のラクサスさんとアレクセイの戦いを見ようとするとナツさんが横から突然現れてそう言う。
「何かって?」
「何か聞こえました?」
「いや・・・」
「私も何も・・・」
ルーシィさん、ウェンディ、グレイさん、エルザさんがそう言う。4人にはどうやら何も聞こえてないみたい。俺も微かにしか聞こえなかったから自信がないけど、何かが闘技場の壁にぶつかったような音が聞こえた気がする。
「今のはラクサスだ!!ラクサスが戦ってる音だ!!」
ナツさんは今にも待機場所にある岩の柵を飛び越えてしまうんじゃないかというぐらいに身を乗り出す。その可能性もないことはないけど・・・
「幻が見えている今、ラクサスが戦っている音が聞こえることはないと思うのだが・・・」
「なんか聞き間違いなんじゃねぇか?」
エルザさんとグレイさんがナツさんにそう言う。2人の言う通りこの状況では本物のラクサスさんの戦っている音は聞こえるはずがない。
「いーや聞こえた!!シリル!!お前も何か聞こえたんだろ?」
「そんな気がしますけど・・・」
それでもナツさんは自分の聞いた音を信じて疑わない。するとナツさんは大きく空気を吸い込む。
「ラクサスぅ!!そんな奴に負けんじゃねぇ!!」
ナツさんは会場中が震えるほどの大声でそう叫ぶ。近くにいた俺たちはあまりの大音量に思わず耳がキーンっまなる。
「いきなり叫ぶなクソ炎!!つーかあのラクサスは幻だってさっきシリルが言ってただろうが!!」
グレイさんはナツさんに向かってそう怒鳴る。
「んだとこの野郎!!そんなの関係ねぇんだよ!!あれが幻であっても本物のラクサスも見えない中で戦ってんだ!!だったらそれを全力で応援するってのが仲間だろうが!!」
正しいようなムチャクチャなようなことをいうナツさん。でもそれもそうだよな・・・幻の中でラクサスがどんな戦いしてるのかはよくわからないけど、妖精の尻尾の仲間だったらそんなこと関係なく応援するのが筋ってものだろ!!
「ラクサスさ~ん!!頑張れぇ!!」
「いけぇ!!ラクサス!!」
俺とナツさんはとにかく叫び続ける。それが本物のラクサスさんに届いているかはわからないけど、ラクサスさんなら絶対応えてくれると信じて・・・
第三者side
「ったく・・・いちいちうるせぇ奴らだな」
闘技場の壁にぶつかり、全身に大きなダメージを受けたはずのラクサスはなぜか頬を緩めている。理由は観客席から聞こえてくる女のような甲高い声と少し雑音混じりの男の声。
その声の主の2人には今のラクサスの姿は見えていないはずなのに、まるで本当は見えているかのように声援を送っている。
「っんなに大声出さなくても聞こえてるってぇの」
ラクサスはそういうとゆっくりと立ち上がる。それを見たノーランは思わず笑みを浮かべる。
「そうこないとな。あの程度で倒されているようじゃ仲間や家族のためなんて言ってられないもんな」
「あぁ・・・そういうこった」
再び睨み合う2人。そんな中不意にノーランがある質問を投げ掛ける。
「お前は『家族の敵は俺が潰す』とかさっき言ってたな。なぜそこまで仲間に固執する?」
ノーランのその質問を受けたラクサスはフッと鼻で笑う。
「なんで・・・か。そんなの簡単だろ」
「?」
「俺は妖精の尻尾が好きだからだよ」
ラクサスは迷いのない真っ直ぐな視線でそういう。
「俺は7年前、自分の勝手な考えでギルドを強くするために仲間をキズつけた。それは本来なら許されるようなことじゃねぇ・・・
だけど妖精の尻尾はそんな俺を受け入れて、ましてや今、ギルドの代表として戦わせてくれている」
7年前の784年、まだシリルとウェンディがナツたちと出会う前、ラクサスはB・O・Fと称し仲間同士で争わせ、マグノリアの住民たちまでも巻き込もうとした。しかしそれはナツやガジルを中心としたギルドメンバーたちに阻止され、その後マカロフから妖精の尻尾を破門された過去を持つ。
そして今から3ヶ月前、天狼島でハデスを倒すことに協力したことなどから当時のマスターだったギルダーツの計らいによりギルドに復帰することになり、妖精の尻尾Bチームとして大魔闘演舞に参加しているのだ。
「俺はあいつらに感謝してもしきれねぇ・・・なのにまだ何も返せてねぇ。だから!!俺は仲間を陥れようとする奴は必ず潰す!!この手でだ!!」
ラクサスは力強く握り締めた拳をノーランに向ける。
「例えお前がカミューニと同じ最強の三人衆だとしても、俺は絶対退かねぇぞ」
「面白い!!だったらその想いの力で俺を降してみるがいい!!」
距離をおいていた2人が地面を蹴り、相手に向かってパンチを繰り出す。その拳は衝突し、ドムス・フラウ全体を揺るがす。
『な・・・なんでしょうか!?今の衝撃は!!』
『まるで何かがぶつかったような震動だったね』
『しかし、特にこれといった異変はないようですが・・・』
ラクサスとノーランの耳に聞こえてくる実況の声。彼らには今戦っているラクサスたちの姿は見えておらず、アレクセイの怒濤の攻撃に防戦一方のラクサスの姿しか見えていないため、なぜドムス・フラウが揺れたのかわからないのだ。
しかし、2人はそんな声など気にすることなく互いに格闘技を仕掛け合う。
ノーランがラクサスの顔に蹴りを入れようとするが
ガシッ
ラクサスはそれを受け止めるとそのまま足を掴み後方へと投げ飛ばす。
「っお!!」
投げられたノーランは空中で体勢を整え、ラクサスに自らの服の一部を引き裂いて作った魔導爆弾を投げつける。
ドガァン
「ぐわあああ!!」
爆弾はラクサスのすぐ目と鼻の先で爆発し、爆風がラクサスを襲う。
「ぐっ!!」
一方ノーランは体勢を整えたもののそれは攻撃を行うためのもの。なので投げられた体は闘技場の壁へと打ち付けられ苦痛に顔を歪ませる。
互いに大きなダメージを受けたため、起き上がるのに時間がかかる。だがそんな2人とは対称に周りの観客席などではある変化が起きていた。
シリルside
「なんだ!?今の爆炎は!!」
「一体何が起きているんでしょうか?」
グレイさんとウェンディが闘技場から上がった炎を見てそう言う。その炎はすぐに消えてしまったが、会場にいる全ての人が思わずざわつく。
『今の爆炎は一体・・・』
『ラクサスくんとアレクセイくんの戦っている場所からはまるで違うところから上がったねぇ』
チャパティさんとヤジマさんの言う通り、爆炎は幻の2人から大きく離れたところからあがった。つまり・・・
「今の炎はアレクセイのもの・・・ってことですかね?」
「いや・・・あれは恐らくノーランが魔法だな。一度魔導爆弾であのような炎を見たことがある」
俺の言葉にエルザさんがそう言う。ノーランの魔法は人以外のものを違うものに変える魔法だったから、その可能性は大きいか。
「ちょっと待って!!ノーランの魔法ってことは・・・」
「おい・・・まさかあそこにいるレイヴンの奴等は・・・」
俺たちは大鴉の尻尾の待機場所を見る。そこにはノーランを始めとした大鴉の尻尾の魔導士たちがいるように見える。だけどラクサスさんとノーランが戦っているということは・・・
「あれは思念体だ!!」
「えぇ!?」
エルザさんがそう言い、ウェンディが驚いて声をあげる。それにノーランだけが思念体な訳がない。たぶん幻を使って観客や俺たちの視界を遮り全員でラクサスさんを一斉攻撃していたんだ。
「そんなの反則行為だろうが!!」
「そうと分かれば・・・」
「もうここで黙って見てる必要はないですね!!」
グレイさん、エルザさん、俺は闘技場へと降りようと岩でできた柵に足をかける。だがそれを制止する腕が目の前に現れる。
「大丈夫だって!!落ち着けよ」
「ナツ!!」
俺たちを制止したのはナツさん。ナツさんはただ黙って闘技場を見つめている。
「ラクサスならあんな奴等敵じゃねぇ。例え6人がかりだろうがなんだろうがな」
ナツさんはなぜか笑みを浮かべ、楽しそうに言う。
「・・・そうですね」
「だな」
「まったく、お前と言う奴は」
その顔を見てなぜか納得する俺たち。俺たちは柵から足を下ろし、元の位置へとつく。だけど、ラクサスさん本当に大丈夫かな?さっきまで応援してたのに言うのはあれだけど、かなり心配・・・
第三者side
ドゴッ
両者の拳が相手の顔を捉え、ラクサスとノーランは倒れそうになる。その体をなんとか2人は立て直し、すぐに相手に向かって次の一手を放つ。
「雷竜方天戟!!」
「はぁっ!!」
雷の戟と円盤上の刃物が衝突する。ノーランの作った何の変哲もない円形の刃物が雷の戟に勝てるわけもなく、刃物を破壊した戟がノーランを攻撃する。
「ぐおっ!!」
口から血を吐くノーラン。だがノーランも何もただ刃物を投げた訳ではない。多少の目眩ましにでもなればと放った手だったのである。
ズズッ
「!?」
闘技場の足元から音がし、ラクサスは下を向く。するとそこから巨大な槍がラクサスを強襲する。
「がはっ!!」
体を切られフラつくラクサス。互いにかなりの攻撃を受けているため息が相当上がっている。そんな2人の耳に実況の声が聞こえてくる。
『な・・・なんでしょうか?私の目にはラクサスが2人いるように見えるのですが・・・』
『アレクセイと戦っているラクサスくんとは別に、うっすらと違うラクサスくんが見えるね』
『私にはノーランもうっすらと見えるのですが・・・気のせいでしょうか?』
気のせいなはずがない。実況席の3人にもかすかにだが本物のラクサスとノーランが見えているのである。その理由は簡単、ノーランとラクサスの巨大な魔力のぶつかり合いにイワンの幻が耐えきれなくなりかけているのだ。
「くそっ・・・結構やるな」
「それはこっちのセリフだ」
口元の血を拭うノーランと切られた部位を自らの雷で焼き、止血を行うラクサス。
「いいのか?お前が約束破ったのをバレると誰かにどやされるんだろ?」
ラクサスはノーランが戦う前に言っていたことを掘り返す。
「そうだが・・・もう遅い。ここまでやったらもうバレバレだよ」
ノーランは首を振りながらそう言う。
「だから、もうここで終わりにしてやる」
ノーランはそう言うと両手を合わせる。そこから少しずつ両手を離していくと、その間に魔力の球体が出来上がっていく。
「その魔法・・・」
「そう、これはカミューニさんの魔法。空気を波動に変えるってことだ」
カミューニの魔法は波動を操る魔法。ノーランはカミューニほどの威力はないが、空気を波動へと変換することができるのである。
「それがとっておきか?だが、俺にもあるぜ」
ラクサスもノーラン同様に両手を合わせる。そこから少しずつ両手を離していくと、そこに光が集まってくる。
「な・・・あの魔法は・・・」
「ん?」
ラクサスがやろうとしている魔法に気づいたイワンは脂汗が止まらない。
ノーランはラクサスが何をやろうとしているがわからないが、目の前の敵を倒すために強大な魔力を溜めていく。
「俺はじじぃの孫・・・そして」
ラクサスとノーランの魔力が完全に溜まりきる。
「これで終わりだ!!」
ノーランがラクサスに向かって波動の球体を投げようとする。
「妖精の尻尾の魔導士だ!!」
しかし、それよりも先にラクサスの両手に集まった光が一気に放出される。
「妖精の法律だと!?」
「俺の仲間をキズつけたことを・・・
後悔しながら消えてゆけ!!」
カッ
闘技場にいるノーランやイワン、それどころか幻を見ていたはずのシリルやナツたちの目にもすべてを包む輝きが見える。
ズァァァァァァ
ラクサスの仲間を守りたい想いが込められた魔法は術者が敵と判別したものすべてを攻撃する超魔法。
光が消え、闘技場の煙が少しずつ晴れていく。そこにはキズだらけでなんとか立っているラクサスと何が起きたのかわからないマトー君。そして力なく倒れる大鴉の尻尾のメンバーと真っ白になり立ち尽くすノーランとイワンの姿があった。
『こ・・・これは一体・・・』
実況のチャパティも闘技場にいるラクサスたちを見て何と言えばいいのか言葉に詰まる。
「「「「「「ラクサス(さん)!!」」」」」」
シリルたちはキズだらけのラクサスを見て心配し叫ぶ。だがラクサスは大丈夫だということを見せたいのか、ゆっくりと手を下ろし、顔をあげていく。
『しかしこれは・・・何が起きたのか・・・』
闘技場の中で無事だった審判のマトー君は金の鎧に身を包むイワンを見てあることに気づく。
「この顔・・・ギルドマスターカボ!!アレクセイの正体はマスターイワンカボ!!」
手足をバタバタさせそう言うマトー君。それを聞いた観客たちは動揺を隠せない。
『先程まで戦っていたラクサスとアレクセイは幻だったのか!?立っているのはラクサス!!試合終了!!」
鳴り響く試合終了のゴング。だがラクサスの勝利というだけでこの戦いは終わるはずがない。
『そして我々の見えぬところで6人がかりの攻撃。さらにマスターの大会参戦か。これはどう見ても反則じゃの』
解説のヤジマは目を細めながらそう言う。
「あいつ1人で大鴉の尻尾メンバー全滅させたのかよ!!」
「あのノーランまでいたっていうのにか!?」
「さっきのエルザとシリルいい、カナとミラジェーンといい」
「化けもん揃いじゃねぇか!!妖精の尻尾!!」
観客たちはラクサスが大鴉の尻尾をたった1人で全滅させたことに感嘆を上げている。
「何はともあれ勝利!!妖精の尻尾Bラクサス・ドレアー!!」
マトー君がラクサスの勝利を宣言し、会場から大歓声がラクサスを包む。
「なんかあいつに敵をとってもらった形になっちまったな」
「まぁいいじゃねぇか、ラクサスが勝ったんだからよ」
「そうですよね」
グレイさん、ナツさん、俺がそう言う。
「あのフレアって子、またひどいことされなきゃいいけど・・・」
「お前は本当に人がいいな」
1日目、卑怯な手段で自らを追い詰めたフレアのことを気遣うルーシィを見てエルザがそう言う。
「汚いマネをしおって。イワン」
妖精の尻尾の観客席ではマカロフが腕を組み、ラクサスの妖精の法律によりやられたイワンを見てそう言う。
そんな中、マカロフの隣にいる初代マスターことメイビスはイワンたちを見て怖い顔をしていた。
「ラクサス、今回は俺の負けだ・・・」
闘技場を後にしようとするラクサスにようやく意識を取り戻したイワンがふらつき、尻餅をつきながら声をかける。
「だが、覚えとけ。ルーメン・イストワールは妖精の尻尾の“闇”。いずれ知る時がくる、妖精の尻尾の正体を!!フフッハハハハハッ!!」
そう言い残し、イワンは王国の魔法部隊に連行されていく。
「君たちにも来てもらうよ」
王国部隊は倒れているフレアたち4人とノーランをそれぞれ連行しようとする。
「触るな!」
「コラ!!大人しくしろ!!」
クロヘビがせめてもの抵抗として王国部隊を振り払うが注意され、すぐに連れていかれる。次々に連れていかれる大鴉の尻尾の魔導士たち。だが1人だけ明らかに様子がおかしい者がいた。
「な・・・なんだコイツは!?」
「ちゃんと立ちなさい!!」
本日の競技パートに出場していたオーブラが首をダランッとさせ、まるで人形のように力なく項垂れているのだ。そのオーブラから黒い小さな生物が飛び出し、闘技場のフェンスを伝って逃げていく。
『えー、協議の結果、大鴉の尻尾は失格!!3年間の大会出場権剥奪となりました』
『当然じゃ』
会場にそのようなアナウンスが流れる。ラクサスは横目で連れていかれる大鴉の尻尾メンバーたちを見届けていた。その視界の前に王国部隊に肩を借り、ゆっくりと歩いていく男の姿が入る。
「おめぇもルーメン・イストワールとやらを求めて来たのか?」
「いや・・・俺はちょっと違う理由で来た・・・それも読み間違いだったみたいだがな」
ラクサスの前で立ち止まり、ノーランが答える。
「だが俺なんかよりもっとすごい奴がそのルーメン・イストワールとやらを狙ってることだけは知ってるよ。詳しくは言う気はないが」
「もっとすごい奴だと?」
ラクサスはノーランの意味深な発言に眉をひそめる。
「そんなことはいい。今回のことは借りにしておく」
ノーランはキズだらけの顔を上げ、ラクサスを睨む。
「“冥府の門”が開く時、俺はお前らにリベンジしてやる。それまで生き残ってみせろ」
ノーランはそう言うと部隊の者にゆっくりと連れられていく。
「冥府の門だと?」
ラクサスは聞き覚えのあるその言葉に戦慄していた。
「また会おう、キキッ。妖精の尻尾キキッ」
オーブラに連れられていた小さな黒い生物はドムス・フラウにある石像から妖精の尻尾メンバーたちを見つめ、そう言った。
後書き
いかがだったでしょうか?
ラクサス対ノーラン、最後どうやってノーランを仕留めるかかなり迷いましたがラクサスの妖精の法律が個人的にやりたかったのでこのようにさせていただきました。
次はついにあの2人の対決です!!
というわけで次回もよろしくお願いします。
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