あの太陽のように
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5話
「やべぇ、来ちまった」
目の前には神童拓人と書かれたプレート。
うん、神童拓人の病室だお( *`ω´)
…テンパってキャラがぶれてしまった。
ちょっと落ち着こうか俺。
教えてもらって、実際に来てみたはいいけど、俺、神童拓人と面識なんかないじゃん。
知らない人が急に来たら不審に思われるよな…。
あー、深く考えないのが俺の馬鹿なところ…。最近は減ってきてたのに…。
「…………」
大人しく帰ろう。
こうして病室の前にいるのも怪しすぎる。
身を翻して帰ろうとしたその時、後ろから声をかけられた。
「…君は、誰だ?」
「へ!?」
あまりに唐突すぎて変な声を出してしまったじゃねぇかこの野郎!!
ピンク色のツインテール。傍から見れば女の子のような見た目。
この俺が見間違うはずがない。
霧野蘭丸だ。
「神童の知り合い…ってわけでもないな。誰だ?」
「え、っと…」
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
めっちゃ警戒されてる何か言わないと、何か言わなきゃ。
「あー、俺この病院に入院してて、適当にぶらついてたら聞いたことある名前が書かれてたからさ、ちょっと気になって。お前、霧野蘭丸だよな?」
「あ、あぁ…。なんで知ってるんだ、俺の名前」
「そりゃまぁ、ホーリーロードの中継全部見てたら、覚えるだろ。俺は風間祐。よろしくな」
「よろしく。…中継全部見てたって、サッカー好きなのか?」
「まぁ、検査すっぽかして見続ける程度には」
「そう、か…。中入るか?」
「え」
「折角サッカー好きがいるんだ、神童の話し相手になって欲しい。行こう」
「わ、分かりますた」
「口調どうしたw」
や、やったぁぁぁぁああ!!神童拓人に会えるぞぉぉぉ!!
お、落ち着け落ち着け、霧野と話す時は平静を保てただろ割と。
霧野が病室のドアを開ける。
足の包帯が痛々しい彼がいた。
「霧野か、今日はずいぶん早いな。…ん?後ろの君は、誰だ?」
「俺は風間祐。この病院に入院中」
「…風間祐?」
神童拓人が不思議そうに俺を見た。
え、何かしたかな俺。
「あの、俺なんか変な事言ったか?」
「君、俺と会ったことないか?」
俺が神童と会った?
そんなわけない。今が初めてだ。
…まさか、忘れてるってことはないよな…。
「いや、ないと思うけど…」
「そう、か…。俺の勘違いだな、すまない。それより、霧野。今日部活はないのか?」
「あぁ、監督がゆっくり体を休めろと言ってな。今日は休みだ。にしても、今日学校すごいことになってたぞ」
「優勝したことはやっぱ大きいんだな」
「行く先々で声をかけられてな、結構大変だった。…みんな言ってたぞ、お前が出れたら良かったのにって」
「は?」
「「え?」」
思わずそんな声が出た。
だって、変だろ。ちゃんと見てなかったのか?
「神童は、出てただろ。試合」
「出てな」
「出てたよ。いや、出てたっていうか、貢献した、っていうのか?お前があの時松風天馬に自信を取り戻させてなかったら決勝戦勝てなかったと思うぞ、お前なしじゃ勝てなかった」
言いたいことを全部言い切り、肩の力を抜いたのもつかの間、2人が唖然として俺を見ていた。
「…え、あ、いや、何かその」
「そうだな。…実は、決勝に出れなかったこと、結構気にしていたんだ。ありがとう、風間」
「…!」
神童は笑った。
俺が浮かべることのない、心の底からの笑顔。
「じゃあ、神童、俺はそろそろ帰るな。早く治して、またサッカーしよう」
「あぁ。じゃあな、霧野」
「…えっと、じゃあ俺もそろそろ戻らないといけないから」
「そうか。また話そうな。風間」
「お、おう…」
病室のドアをパタンと閉める。
「…………」
また話そうな。
って、マジか。
ヤバイ。
俺次にあったらちゃんと話せるかな。
って、何か本で読んだ恋する乙女?みたいになってんぞ!!
いや、確かに、あのバカ太陽が恋愛的にだ何だほざくくらいカッコいいのだけども、そういうのじゃないし!?
くっそ、あのバカ太陽のことまたぶっ飛ばしてくるか!?
と、何もしていない太陽に八つ当たりをしながら、俺は自分の病室に戻った。
後書き
あの、何か書いてて思いましたけど、私1話1話の文字数多くないですか。
大丈夫かな…。
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