普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ソードアート・オンライン】編
100 迷宮区での出来事
前書き
あけましておめでとうございます。今年1年──だけと云わずに、末永く読書の皆さんも壮健であれます様に。
……今年最初の更新で、奇しくも累計100話目になりました。……内容は普通なんですがね。
SIDE 《Teach》
<GISYAAAAAAAA!!>
――パァァァァン!
第1層迷宮区。今日も今日とてMobをポリゴン体に還す。……デスゲーム宣言から早1ヶ月が経過しようとしていた頃になっている。……この頃になれば、【はじまりの街】を起こっていたと云う喧騒も和らいでいるらしい。
この【ソードアート・オンライン】というゲームは、まずフィールドに出て迷宮区を発見しなければ話にならない。……そして迷宮区を見付けたらそれを踏破してボスが鎮座する部屋──〝ボス部屋〟を発見しなければならない。……そして、そのボスを撃破して漸く次の層に進めるのだ。
100層に居ると云う最終ボスを倒したいのなら──このデスゲームから解放されたいのなら、上記の工程をあと99層分繰り返さなければいけない。……そのためには、多かれ少なかれ──自己の強化が当然の様に必要となってくる。
「……はぁ…」
オーク──っぽいMobを狩り、〝報酬〟を見ながら〝贅沢な溜め息〟を吐く。……〝報酬〟──もとい〝明らかにおかしいドロップアイテム〟に辟易していた。
……ドロップ率が悪い──とかでは無く、寧ろ逆に──〝ドロップすべき全てのアイテムが出ているのではなかろうか〟とすら思える程にドロップ率が〝良すぎる〟事が俺の頭を悩ませていた。
1回だけなら〝ラッキー〟とかで済ませる事が出来るが、それが毎回〝ドロップすべき全てのアイテム〟がドロップしていると笑えなくなってくる。……当然そんな〝ドロップアイテムの氾濫〟に遭っていれば、アイテムストレージを圧迫する事になる。
……そうなればNPCに売るしかなくなってくるしかないのだ。……〝売る〟と云う事は当然お金も、知れず知れずの内に貯まっているのだ。早くも──なのかは定かでは無いが、50万コルを突破した[コル]の欄もまた、頭を抱えたくなる要因となっていた。
ネットゲーマーは得てして嫉妬深い性質を持っている。……それにデスゲームな状態で、俺の特異性が露呈すれば〝どうなるか〟なんて愚問でしかなく──九割九分九厘、〝魔女狩り〟や〝異端審問〟の様な面倒に遭うハメになるし、要らぬやっかみも買う。
「……そろそろ時間か」
時計を見れば朝の6時11分。夜通しレベリングに費やした疲労困憊──と云う訳でもない仮想体を動かし、キリト達を心配させまいと──後ろ髪を引かれつつも宿に帰る事にした。
今の俺のレベルは12に突入していて、夜通しの──〝自分的に無理の無い〟レベリングがおそらくだが【アインクラッド】内での──俺達がキリトの情報を元に〝最前線〟を走っているのは間違い無いとして、同じパーティーのキリトと比較してみても俺のレベルは上だったので、俺は謀っていたことも有って最高峰のレベルを保っているだろう。
……なぜそんな──夜通しのレベルが可能なのかと云うと、昔──〝平賀 才人〟だった時にやったドライグとの〝三日三晩ぶっ続け寝る間無し鍛練~死んでいられる暇は無いのだよコース~〟に比べたら1徹程度の疲労感など、まだマシである。
その後、塒にしていた宿に帰れば先にキリトが起きていて、俺の顔を見た瞬間キリトは憮然としながら──それこそ〝俺、怒ってるぜ〟とでも、今にも言いそうな感じで夜通しレベリングをしていた事を問い詰められるのだった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 《Yuhno》
こう云っては自慢甚だしいのだが、ボクとアスナはモテる。……女子中だからこそ、告白される事は無かったが男子も居たらそれは酷い告白ラッシュになっていたかもしれない。
75%──これは街へ繰り出してのナンパ率である。男女共学だった場合の事を考えれば──上記の心慮も強ち間違いでもないだろう。……それが男女比が、比較するのも厭になる──この【ソードアート・オンライン】ではどうなるかは、考えたくも無い事だ。……とどのつまり──何が言いたいのかと云うと… ……〝ボク達は迷宮区に潜るにもフード付きのローブ等が必要である〟──と云う事なのだ。
「……すごく綺麗──まるで舞ってるみたい」
「………」
デスゲーム宣言から約一月。アスナも【ソードアート・オンライン】のゲームに馴れてきた頃、迷宮区で〝闘舞〟を見た。……アスナがその──Mobを相手にしての〝闘舞〟を見て感心した様な声で某かを呟いたのは判ったが、ボクは何も反応する事が出来なかった。
その背中を見て、一目で判った。〝彼〟が〝転生者〟なのだと。……その顏を確認しようとするが、都合が悪かったのかは判らないがこちらに顔を向けてくれない。
(動いたっ!)
引き込まれる様にその〝闘舞〟に見入っていると──途端、彼が動き出し、Mobに〝もしも燐光が在ったら〟ソードスキル見間違えていたであろう程の突きを浴びせる。……そんな槍を浴びせられたMobは忽ちポリゴン体となって消え去った。
――「双月流…“牡丹”」
「っ!?」
……その突きの威力に魅せられていたが──そんな事は些事でしか無くなった。それよりも気になる事が出来たからだ。
(この声は…っ)
その〝声〟を聞いた時、頭の中に電流が流れた気がした。その〝声〟を聞いた時、〝理屈では無い何か〟が、〝そうなのだ〟と決めていた。……〝麻痺毒〟に冒されたわけでもないのに、その場から動けなくなっていた。
(……この声は──真人君…っ)
〝彼〟はボク達に未だに背を向けたままであるが〝彼〟の茶色の髪を見ていると、彼の声を脳内で再生させていると、〝真人君に間違いない〟、と云う観念が──それはもう面白い早さで固まっていく。……声に出なかったのはひとえに〝歓喜〟より〝驚愕〟が勝っていたからである。
(……こっちを向くっ…!)
〝真人君(仮)〟──もとい〝彼〟はゆったりとした所作でこちらを向く。漸く拝める様になったその顏は、〝子供が見たら間違いなく泣きだしそうな〟双眸を有していた。
……ボクがこの【ソードアート・オンライン】の世界に転生して約5年。ボクは〝この出会い〟を待ちに待っていたのだ。……だからボクが真人君──〝升田 真人〟の顔を忘れる事は無かった。〝彼〟の顔は〝升田 真人そのもの〟だった。
(真人君、また会えた…っ!)
「……何か用か? ……って、泣いてるのか?」
「……え、嘘 なんで…」
そう〝真人君〟に言われて、目元を指で拭ってみれば、指には水滴が付いていた。 ……その水滴が結晶となって割れた。……そこのところで、漸く泣いていた事に気付いた。
……どうにも、ローブのフードからボクの涙が漏れていたらしく、それを〝真人君〟に見られたのだろう。
ボクの涙は数分間に亘り流れ続けた。
………。
……。
…。
「……説明してくれるよね、お姉ちゃん」
「うん…。ま──キミもここに居てね」
「えー、俺も?」
安全地帯に連れられ、漸くボクの波立っていた感情が落ち着いた頃、一番最初に切り出したのはアスナだった。……〝真人君〟がこっそりとかの場から抜けようとしていたので、〝逃げないようにね?〟と、釘を刺しておく。
「……まずは自己紹介からした方が良さそうだね。ボクはユーノ。素顔はちょっとした理由で曝せないけど、その辺は気にしないでいてくれる方が嬉しいかな」
「次は私だね。……私はアスナです。私もお姉ちゃんと同じで素顔は曝せません」
「……アスナと──ユーノ、ね…。……じゃあ最後は俺だな、俺はティーチだ。敬称は任せる。顔の事は何と無く理由が判るから、気にしなくても構わない」
〝ユーノ〟と、ボクのキャラクターネームを〝真人君〟──ティーチ君は、感慨深げに…それこそ遠い昔に想いを馳せる様に──ボクの見た事が無い表情で呟く。……何故だか少し寂しくなったが、自己紹介は恙無く終わったと云えるだろう。
「……で、ボクがいきなり泣きだした理由だったね。……ボクが泣いていた理由は──嬉しかったからなんだ」
「……お姉ちゃんは、なんでティーチ君を見た時嬉しかったの?」
「……判らないんだ」
雑じり気の無い回答にアスナは、然も〝納得してません〟とでも言いたげな表情で訊いてくるがそこは──アスナには〝転生云々〟を話さなければならなくなるので、誤魔化しておく。
……もちろん、〝判らない〟なんて嘘八百である。
「じゃあ、俺はそろそろ行くな? キリト達──知り合い待たせてるし」
「っ!? 〝キリト〟…?」
「キリトの知り合いか? ……ああ、もしかしてユーノはβテスターか?」
「あ、うん大体そんな感じ」
ティーチ君の口からキリト──〝原作主人公〟の名前が出たので、面を喰らってしまった。しかし勝手に──都合良く自己完結してくれたので、それに便乗しておいた。……その後は、〝連絡がしやすい様に〟──と、3人でフレンド登録をしあった。
……今日はデスゲーム以来、最良の日となった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 《Teach》
《Asuna》と《Yuhno》。この2名は、今日俺がフレンド登録を交わした少女達である。……フーデットローブを被っているのは大体女性プレイヤーなので、〝少女〟と断定しておく。
《Yuhno》──〝ユーノ〟と云う名前は俺にとって、かけがえの無い名前である。
〝ユーノ〟と、ユーノのキャラクターネームを聞いた時、〝ユーノ・ド・キリクリ〟…。……かつて不変の愛を──ハルケギニアだったので【ラグドリアン湖】の水の精霊にだが、愛を誓い合った少女を思い出したのだ。
「~♪ ~~♪ ~~~♪ っと…」
いつの間にやら漏れでていた鼻唄に釣られたらしいMobを、ソードスキルで消し飛ばす。……フードから見えた──涙を流した少女の事を思えば、なぜだか今日は、良く眠れる様な気がした。
SIDE END
後書き
主人公のアイテムドロップ率は“黄金律”“コレクター”──それとAランクの幸運の所為で、色々とぶっ壊れてます。カーディナルのシステムに真っ向から喧嘩を売ってますね。
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