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迷子の果てに何を見る

作者:ユキアン
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第六十六話

 
前書き
零樹もこれでオレの手を必要としないでも生きていけるだろう。
この先、何が起こるか分からないが生き残ることだけは出来る。
オレもそろそろ最終調整に入るとするか。
byレイト 

 
麻帆良武道大会 決勝


side other


『長かった麻帆良武道大会もいよいよ次で最後になります。殆どの試合において大破し続けた舞台もやっと役目を終えて眠りにつけるでしょう』

今日だけで何度も土台後と破壊され続けた舞台は最初と同じ様な新品さを保っている。

『今日だけで何回の常識が覆されたでしょうか。ですがこれが現実。やらせでも何でも無く、これが現実。そして最強が決まります。それでは選手の紹介をしましょう』

その言葉と同時に一人の男が歩いてくる。全身を黒で揃えた衣装で、歩くたびに金属同士がこすれる音が響く。そして、舞台の中央に立つ。

『ここまでの試合において圧倒的な強さを誇り、大会開始前までの予想図をことごとく粉砕した絶対強者。天流・M・零斗選手』

『続いては初戦からあの手この手で自分よりも格上の存在を倒し、準決勝においては優勝候補であったベイダー卿、改めナギ・スプリングフィールド選手を破り、結婚を認められた絶対強者の息子、天流・M・零樹選手』

紹介と共に準決勝時と同じ姿で舞台の上に立つ零斗に似た青年が舞台に上がる。まだ準決勝でのダメージが残っているのか包帯を巻いたままである。

『さあ、泣いても笑ってもこれが最後。決勝戦、開始』

「「我が身に宿る大いなる意思よ、我が身を喰らいその身を現せ」」

開始の合図と同時に同じ詠唱を唱え姿が完全に鏡合わせの様になる。


side out




side レイト


(シン、お前は現実側を任せる。自分の息子を鍛えてやれ。オレは零樹を幻術世界に引きずり込む)

(ほう、ならば身体を完全に貸すというのか)

(そうだ、やりすぎるなよ)

(分かっておる)

(なら良い。始めるぞ)

「「我が身に宿る大いなる意思よ、我が身を喰らいその身を現せ」」

シンの顕現と同時に幻術世界へと零樹を引きずり込む。

「ここは?」

「さて、零樹。お前はとうとうオレと同じ領域にまで踏み込もうとしている」

零樹の言葉を無視してオレは零樹に語る。

「だからこそお前には真実を伝えよう。オレがエヴァにすら伝えていないこの世界の真実を」

「母さんにも伝えていない真実?」

「ああ、この真実を知ってお前がどうするかはお前が決めれば良い」

そして、オレは語る。この世界の真実を全て。
何分経ったか分からない。だが、全てを話し終えたとき零樹の顔は分かりやすかった。

怒り

怒り一色だった。

「それで、それで良いのかよ父さん」

「既にどうすることも出来んな。これは完全に確定した事実としか言えない」

「だからってそれじゃあ母さんはどうするんだよ。そんなことになったら母さんはまた」

「ああ、壊れるだろうな」

「なんで、なんでそれで納得出来るんだ」

「オレがそんなことさせると思っているのか!!」

その言葉に零樹が二の句を告げれなくなる。

「それにな、エヴァならこう言うさ。----------ってな」

「……そうだね、母さんなら言いそうだ」

「ああ、だから心配する必要は無いさ。だがな、嫌な予感がお前からする」

「僕から?」

「何が、とまでは分からんが災いがお前の身に降り注ぐのは確実だろう」

「何でそんなことが」

「勘」

「勘ってそんな曖昧な」

「オレはそういう勘を滅多に感じることは無いが経験から言えばかなりヤバい。感じた数日後にクーデターが起こったり、戦争が起こったり、大地震が起こったりでかなりヤバい。だが、今までは『なんかそこら辺がヤバい気が』という感じが今回は『お前の周辺がヤバい』と感じる」

「何それ?お祓いでもした方が良いかな」

「そんなレベルじゃない気がするから注意しておけ。夏休みはほとんど魔法世界の方に行け。向こうで色々根回しやらをしといた方が良いと思うからな。ついでにナギ・スプリングフィールド杯にも出て来い。この大会みたいなメンバーが勢揃いする予定だからっと、そろそろ現実の方でも決着がついたようだな。戻るぞ」

幻術を解くと身体に痛みが走る。周囲を見渡すと……廃墟が広がる。観客も選手も司会も全てが逃げ出していた。内心呆れながらシンに確認する。

(言い訳はあるか)

(儂のせいではない)

(問答無用。当分眠ってろ)

シンを厳重に封印してから倒れている零樹にも同じ様に封印を掛けて背負う。零樹は気絶しているのかされるがままだ。

「大きくなったものだな。お前もリーネも刹那も」

歩きながら呟く言葉は誰にも聞かれることは無い。

「もう少し見守ってやりたかったんだがな」

重さを、温もりを忘れぬ様に歩き続ける。

「まさか三人の内の誰かの晴れ姿を見れるとは思わなかったな」

少し歩くと大会関係者が避難している場所が見つかった。

「まあ、その時までは見守っているし、色々と残して逝くしかないな」

駆け寄ってくるエヴァやアリスに気付かれない様に呟く。



side out







side ネギ


「……ここは」

目を覚ますと知らない天井が見えた。
起き上がると、どこか医務室のベッドの上だというのが分かった。

「そうだ、大会」

外に出ると表彰式が行われようとしていた。だけどそんなことよりも僕が目を引かれたのは

「とう、さん」

ずっと目指していた目標で、憧れの父さんの後ろ姿。
駆け出そうとして、その足が止まる。

「なん、で」

なんで父さんが三位なの?
なんで周りも納得しているの?
なんでだよ。
父さんは英雄で、偉大なる魔法使いで、皆に認められているのに。


なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで


次に目に入ったのが一位と二位。そこには天流先生とその息子が立っている。
またあいつらが、あいつらのせいで、あいつらさえいなければ。

「ラス・テル マ・スキル・マギステル。契約により我に従え高殿の王」

表彰台から離れているので誰にも気付かれることは無い。それにいつもよりも魔力が込め易い。これならあいつらを簡単に倒せる。

「百重千重と重なりて」

そこまで詠唱した所で杖が砕け散った。

「そんな」

父さんから貰った杖が、あれ?
じゃあ、あそこで父さんが持っている杖は?
でも杖は折られて、折られて?
あれ、杖は砕けたんであって、でも折られた?
一体どっちが、いや、何が正しいの?
腕を切り落とされた?
全身の骨を折られた?
銃で撃たれた?


何が起こっているんだ?僕の身体に何が?
次の瞬間、頭に衝撃が走り僕はその場に倒れ込む。
薄れていく意識の中で顔を上げるとそこにはタカミチが申し訳なさそうに立っていた。


side out





side レイト


タカミチが止めたか。まあ攻撃を受けた訳ではないから許してやるが何を考えてやがるんだアレは。オレたちはともかく一般人がどうなるかも分からないのか?顔には出していないが此所にいる関係者全員がそう思っているだろう。
ナギも苦い顔をしているがここからは家族の問題だからな。オレは何も手を出さんよ。それよりも今やることはただ一つ。

「各自解散。捕まっても自己責任だ」

報道部や新聞社などなどのマスコミ連中から逃げることにしよう。
マスコミ連中が詰め寄ってくる鼻先にスモークグレネードを大量に投げつけて会場全体が煙に包まれる。その煙に隠れて各々好きな方に逃げだす。零樹はアリスに支えられる様に離れているのが見えたしそれを追う様にナギとアリカ、タカミチに担がれたアレも確認した以上オレが此所にいる理由は無いのでキティと共に会場を離れる。それから認識阻害のメガネをかけて再びデートの続きに行くことにする。



side out
 
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