迷子の果てに何を見る
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第六十五話
前書き
ああ、やっと僕は自分と向き合えた。
僕が忌み嫌っていた僕に意味は在った。
by零樹
麻帆良武道大会 準決勝 後編
side ナギ
零樹の形が崩れ、そして目の前にオレが現れる。幻術や変装なんてちゃちなもんじゃねえ。目の前に居るのはまぎれも無くオレ自身だ。
「おいおい、なんだよそれ」
「はん、見れば分かるだろう。これがオレの嫌いな最強の姿だよ」
そう言って目の前のオレがオレに飛びかかってくる。なんだこの状況は。必死に抵抗するが違和感がオレを惑わし続ける。なんなんだ、この違和感は。弾き飛ばされて距離が開く。この距離なら
「「来れ雷精 風の精 雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐。雷の暴風」」
全くの同タイミングで全く同じ威力の雷の暴風が放たれる。そこで違和感の正体が分かった。それは目の前のオレはオレとまったく同じ能力や考え方を持っているということだ。
「おいおい、やっと気付いたのか」
「ちっ、なんつう質の悪い姿なんだよ」
話しながらも手を休めることはしない。嫌な予感がするからな。
「それをお前が言うか。零樹は嫌がっていたのに無理矢理この姿にさせたってのに」
「嫌う理由を勘違いしていたからな。まさか自分という存在を潰してまで相手に為り変わる何てな」
「そうさ、今のオレは零樹じゃねえ、間違いなくオレはナギ・スプリングフィールドという存在なんだよ。だからこそこんな現象が始まる」
その言葉と共にオレと目の前のオレの身体が少しずつ崩壊していく。
「なんだこれ!?まさか世界からの拒絶なのか」
「当たり前だろ。同じ存在が二人も居るんだ。世界がそれを許すはずが無い。自分という存在を保てなくなったら……元から居なかったと世界が改竄される」
それはやばいな。とっとと勝負を決めたいが相手は自分と全く同じ存在、鏡を相手にしている様なもんだし。うん?ちょっと待てよ。
「元から居なかったと世界に改竄されるって、なんで知ってるんだよ。矛盾してるじゃねえか」
「その矛盾を抱えているからこそ苦しんでいるんだろうが、思い当たることがあるだろうが」
「世界の修正を受けねえのかよ。そりゃそうか、異世界人のレイトの血を濃く継ぐ以上この世界からの修正を受けにくいのか。辛いな、それは」
「辛いの一言で済ませられるのなら零樹はそこまで嫌わねえ。重いんだよ。押しつぶされそうになる位に一つ一つが。そして、もう止められない」
「何がだよ」
「オレが消えるか、それともお前が消えるか。どっちかが消えるまで世界からの拒絶は止まらない」
ちっ、ということは圧倒的にオレが不利か。目の前のオレはその存在が無くなったとしても零樹としての存在を持つ以上こっちが消されても零樹が残るからな。
「おもしれえ、やってやるよ」
side out
side レイト
あの馬鹿はまだ起源のことを悩んでいたのか。まったく、そんな所までオレに似なくても良いのにな。まあ、零樹の勘違いを正せるかどうかはナギに任せるしかないな。勘違いを正せないのならここで敗れるだけのこと。
「零樹、お前はオレなんかよりも大きい男だ。オレが保証してやる。だから自分で勝手に枠を作るんじゃない。お前はそんな物に縛られる様なものじゃない。縛られるのは愛する女だけで十分さ」
誰にも聞こえていないだろうがオレは口に出す。伝わってくれれば良いんだがな。
世界からの拒絶による崩壊が更に進んでいく。存在が少しずつ薄れていき、関わりが薄かった人たちの記憶から忘れられていき、矛盾を埋める事象が書き換えられていく。まあ、これ位なら再度の修正は簡単だができれば早めに終わって欲しいな。
おっと硬直状態が動くな。
side out
side ナギ(零樹)
目の前のオレの行動が変化する。相打ち狙いの様な、正確には自分へのダメージを無視した行動に変わる。ならばこちらもそれに合わせるだけ。この姿を見せた以上やることはいつもと変わらない。鏡の様に、影の様に同じ動きで張り付くだけ。後は世界が拒絶してくれる。いつもと違うのはギリギリでこの姿を止めるだけ。その後は一撃を与えれば倒れる。だから何も考えるな。自我を殺せ。
「ははっ、楽しくなってきた。そう思ってるんだろう」
「なつかしいな、生きるか死ぬかのこの現状。レイトの修行中みたいな感じだ」
「「……よく生きてるよな、オレ」」
共にボロボロになりながらも状況は激しくなっていく。既に舞台は破片しか残っておらず空中戦にもつれ込んでいる。舞台は魔法の射手の流れ弾で粉砕された。
「喰らえ新必殺螺旋丸」
目の前のオレが雷の暴風を術式固定した状態で投げてくるのを多重障壁で受けながら雷の斧を叩き込む。もちろんそれは分かっているとばかりに回避される。さっきからそんな感じで戦いが続いている。
「思いつきでやってみたんだがこれも防がれるか。あ~、どうすっかな~」
当たり前だ。そもそもオレも考えついているからな。
拒絶が酷くなっているのか観客が錯乱し始める。というより立っているのが辛くなってきた。
「さて、限界が近づいてきてるみたいだな。覚悟は良いかオレ」
「はん、そんなことは知らねえな。オレの限界はオレが決めるもんだ。そしてオレは……そろそろヤバいかな。な~んか記憶やら何やらが」
同時に片膝をつく。本気で限界が近い。これ以上は僕も、ちっ、限界が来ていたか。纏っていた魔力を拡散させ、元の僕の姿に戻る。身体が変化したズレを戻しつつ、立ち上がる。
「これで、ダウンしろ」
軽くふらつく脚でナギさんに蹴りを放つ。これで全てが終わると思った。その脚が掴まれるまでは。
「なっ!?何処にそんな力が」
「言っただろう。オレの限界はオレが決めるもんだってな。そろそろヤバいだけでまだまだオレはやれるぞ」
片手で場外まで投げ飛ばされる。素早く起き上がり再び千の雷を2発取り込み殴り掛かる。ナギさんも同じ様に千の雷を取り込み再び高速戦が繰り広げられる。だが、今度は僕の方がナギさんを圧倒する。世界からの拒絶のダメージが残っているこの状況でなければ勝ち目は薄い。それを実感したからこそ猛攻を駆ける。
「うおおおおおおおおおおおおおおお」
大気中の魔力で投影を使い大量の宝具を出しながら次々に持ち替えて斬り掛かる。それでも身体を掠めるだけで捌かれる。それでも攻撃の手を緩めることはしない。
「ちぃ」
ナギさんが懐から何かを取り出して剣先に投げつけてくる。止めることが出来ずに何かを切り裂くとそれが炸裂する。爆発の大きさから燃える天空を封じ込めた弾丸だったのだろう。指向性を持たされていないそれは僕とナギさんを巻き込み場外まで飛ばされる。予想以上にダメージを追っているのか池の水が全身の傷に染みる。さらに予想外は続く。闇の魔法は先程の燃える天空を喰らった時に解除してしまったがそれはナギさんも同じだった。それにも関わらずナギさんは水中で雷系の魔法を発動させ自分も巻き込んで感電させる。戦闘服にはもちろん対電能力も付加されているが、その対電能力以上の威力に筋肉が硬直し肺の中の空気を全て吐き出してしまう。それに対してナギさんは元から来ると分かっていたので耐え凌ぎ舞台に再び上がっているのが見えた。追いかけようにも痺れが未だに取れず動けない。このままでは窒息して死ぬだろう。
…………やはり僕では英雄には勝てないのか。
『零樹』
急に父さんから念話が入る。
『父さん?』
『諦めるのか』
『……諦めたくない。けど、駄目なんだ』
『どうしてだ』
何故、今の状況でそんなことを聞いてくるのか分からないけど、空気を吐き出してしまい頭の回転が鈍っている僕はいつも隠していた本心を話してしまう。
『父さん、僕は父さんみたいになりたいとずっと思っていた。決してなれないと分かっていても父さんに追い付ける様に色々なことを真似した。父さんの様に強く、家族を愛して、守れる父さんの様に。そんな願望が僕の全てなんだ。僕はただ父さんの真似をしているだけの空っぽな存在なんだ。だからアリスに魅かれた。家族以外で始めて父さんの様に心が強いアリスに』
『オレはそんなに心の強い人間ではない。それはただ単にオレが歳をとりすぎているだけだからさ。でもな零樹。お前は今でもオレの様になりたいと、願望を捨てることなく思い続けているか?』
『もちろん』
『なら、諦めるな。オレならここからでも立ち上がる』
ああ、そうだね。オレは父さんの真似をする。これは変えられることではない。なら立ち上がるしかない。そう思うと自然と身体が動く。
『それにな』
念話にイメージが付いてくる。アリスが僕が沈んでいる辺りを見ながら叫んでいる。
『女を心配させたままなんて無様な姿を曝すなんてこともするな』
全く持ってその通りだ。僕はアリスと一緒に生きていくと決めたんだ。それをナギさん達にも認めてもらいたい。水を蹴り飛び上がる。
『最後に一つだけ教えてやる。お前はオレとエヴァの子供で、オレの血を濃く継ぐ』
何を言っているの?
『つまりはお前はシンの血も濃く受け継いでいることになる』
シン
父さんが言うには父さんの世界で最強の生命体の固有の名。世間で知られている名は寄生型思念体。そして世界を産み出した存在。
『どちらかと言えばシンの血が最も濃い。そしてお前の起源もシンのそれに近いものだ』
それはどういう意味なの?
『お前の起源はさ“世界”なんだよ。お前が望めば“世界”は答えてくれるさ』
世界?何とも分かり難いものだけどそれは無いだろうと否定する。
『お前は否定するだろうけどな、今日こそハッキリ言ってやる。お前はオレを越すことが出来る。だから勝って来い』
“勝って来い”
父さんから初めて聞いたよ。いつもなら行って来いか、ちゃんと戻って来いとしか言ってくれなかったのに、勝って来いと父さんは言った。なら勝ち目は残っているのだろう。水面から飛び上がり舞台に立つ。タイムアウトギリギリだったらしいが問題ない。
さて、どうやって戦おう。魔力は世界樹からの供給があるから問題無し。体力もまだ半分位はある。気力も十分。父さんから助言も貰った。
ならば父さんの助言の意味を考えよう。父さんが無駄なことを話すわけが無い。だが、僕の起源が『世界』とはどういうことなんだ?それが勝利の鍵になるのは分かる。だが、『世界』とは何なんだ?
単純に考えるのならば固有結界だろう。だけど僕に固有結界が無いのは分かっている。僕の最強の姿であるアレが固有結界の代わりに存在しているからだ。だからこれは違う。ならば考え方を変えよう。そもそも世界とはなんだ?
今僕たちが住んでいる世界、父さんが生まれた世界、父さんやリーネ姉さんが可能性を引っ張ってくる平行世界、位相をずらした魔法世界。僕が知っているだけでも、ああ、漫画の世界とかもあったな。まあ、いくらでも存在するもの、それが世界だと僕は考える。これは間違っては居ないと思う。
次に起源に関して考えてみよう。父さんが言うには自らの根源の浅い部分が起源らしい。逆に言えば起源を発展、または掘り下げれば根源に辿り着けるとも言える。
……まさか僕に根源に至れというのか?
この世界において未だに父さんしか辿り着いていない根源に、父さんと同じ舞台に
“お前はオレを越すことが出来る”
その言葉が頭の中でリピートする。
分かったよ父さん、やってみるよ。
父さんが根源に至ったのは必要に駆られて偶々だったがどうすれば良いかはある程度判明している。自分の起源が何かを知った上で内面の奥深くに潜れば良い。だけど今は戦闘中。どうやって時間を稼ごうかな?考える時間も勿体ない。とりあえず物理的魔術的精神的に動きを止める。倉庫からの転送と投影を使い大量の鎖をナギさんに巻き付ける。もちろん鎖は封印用のものだ。さらに周囲に機雷を散布する普通に目視出来るが精神的に動きを止めるにはこれ以上の物は無い。その隙に内面へと意識を向ける。
今までと違い、最も嫌悪するアレの奥にまで潜る。内面世界にあるアレは黒い影の様な物だ。その奥にあるのはもちろん黒一色。何も見えない位の黒一色。目の前にあるはずの自分の手が見えない位に。そして何より気持ち悪い。それでも無理をして奥に潜る。奥に進む程気分が悪くなり、胃の中の物を戻す。もちろん現実の僕がだ。意識を一瞬だけ現実に戻したからこれは事実だ。いきなり倒れて戻し始めた僕に会場のほとんどが驚いているようだがダウンカウントも取られていないしナギさんも動きを止めてくれている(鎖は全部壊されてこれから機雷を駆除しようとしていた)。再び内面に潜り更に深みに向かう。
そして、一番再奥に辿り着く。
そこには
何も無かった。
正確にはここに辿り着くまでと同じ光景が続いているだけだ。
「ここまで来て、結果がこれなのか。結局僕には何も無いということなのか」
「だれかいるの?」
誰もいるはずの無い場所で誰かに声をかけられる。周囲の気配を探ってみても誰もいない。
「誰か居るのか?」
「!!いるよ。ぼくはここに」
誰かの必死な声が響くも、それが何処からの呼びかけなのかが分からない。
「何処だ、いや、その前にお前は誰なんだ」
「わからない、ぼくはだれなの?」
そんなのはこっちが聞きたい。
「くそ、一体何なんだ。父さんが言う通り潜ってみたのに結果として何かが……まさか、『世界』とはそういうことなのか!?」
一つだけ考えられることがある。そして、それに納得してしまう。それに納得すると小さな子供が目の前に現れる。白い服を来たシンを解放した父さんによく似た子供が。
「お前はシンの息子なのか」
「わからない、ぼくはひとりでここにいただけ」
「寂しくないのか」
僕は一体何を言っているんだ。
「わからない、けどだれかといっしょだったきがする」
「どんな人か分かるか」
そんなことを聞いてどうする。
「うんとね、いっしょうけんめいなひと」
「どんな風に」
「いつもね、もくひょうのためにがんばってる。でもね、なやんでもいるの」
「何を悩んでるか分かるか」
「えっと、このままでいいのかなっていってた」
「このままで?」
「うん、このままでほんとうにいいのかってなやんでた」
そうか、やっぱり悩んでいたのか。
「お前はその人をどうしたい」
「たすけてあげたい」
そう思ってくれるのか。
「ならその人を、いや、僕を助けてくれるか」
「うん、だからね、なまえをちょうだい」
名前か、それならあれしか無いな。
「シンだな。お前は心で真で神だからな。親と名前が被るかもしれないけど、お前はシンだ」
「うん」
「じゃあ行こうか」
シンと手を繋ぎここから抜け出す。
side out
side ナギ
オレを捕縛した零樹がいきなり倒れて胃の中身をぶちまけている。オレは何もしていない。じゃあ一体何なんだ?
いきなり零樹の雰囲気が変わった。
「我が身に宿る大いなる意思よ」
この詠唱はまさか!?
「我が身を喰らいてその身を示せ」
倒れている零樹の姿がまた変化する。身体の表面は鱗に覆われ翼と尻尾が生える。
「びっくり箱を開けている様な気分だな。オレは後何回驚けば良いんだ」
「さあ?少なくとも後一回は驚くんじゃないんですか」
いつの間にか背後を取られていたオレは素早く剣を盾にする。
「ぐっ」
振り返ると零樹が楽しそうに笑ってやがる。違うな、あれは身体を明け渡してるのか。レイトみたいなことをしやがって。
というよりこの状況から勝てるのか?結構キツいんだけどってあぶねぇ!!パターンが急に変わりやがった。なんというか獣の様な感じのパターンに、って剣に罅が入ってやがる。さっきの一撃でかよ。また零樹が飛びかかってくる。フェイントも何も無く真直ぐな一撃を障壁で受け止める。5枚中3枚を一撃で抜かれる。ちょっと待て、此所まで簡単に抜かれると自信を無くしそうになるから。でもこれで一つだけ分かった。シンの姿に似ているがアレはシンじゃねえ。生まれたばかりの子供みてぇなもんだ。
障壁で止められていない方の腕で殴ってくるのに合わせてクロスカウンターを決め、れなかった。寸前で腕が止まり膝で蹴り上げられる。うまいこと頭を揺らされる。うん、負けたなこれは。次の瞬間、オレを殺さないぎりぎりの威力の拳が顔面に突き刺さった。マジで痛てぇ。
side out
side アリス
『8、9、10。勝者、天流・M・零樹選手』
勝った?零樹がお父さんに?英雄相手に勝利を手にした?
魔法関係者のほとんどが唖然としている。特に麻帆良学園の関係者が。英雄が目の前で負けたのだから。
だけどそんなことを全て思考の外にやり零樹に駆け寄る。今にも倒れそうな零樹に肩を貸すと零樹の姿が元に戻り始める。
「すみませんね。思ったよりも消耗が激しいみたいです」
顔から生気がごっそりと落ちた零樹が申し訳なさそうにしています。
とりあえず医務室に連れて行きましょう。
「誰か、担架を」
私が声をかけるとすぐにスタッフが零樹を担架に乗せる。他にも池に飛び込みお父さんを引っ張り上げて同じく持ってきている担架に乗せて運び出そうとした所でお母さんがそれを止めます。
「気が付いておるのだろう、ナギ」
「起きてるよ。頭がくらくらして気持ち悪いけどな」
「零樹も無事か」
「ええ、なんとか」
「そうか、ならば今此所でいいだろう。零樹、アリスをよろしく頼む」
「それは」
「ああ、お前達の結婚を認めよう」
「本当ですか」
「嘘を言ってどうする。今のお前にならアリスを任せられる。寂しくはあるが娘の幸せの為なら我慢も出来よう」
「まあ、戦闘力に関してはぎりぎり及第点だからこれからも修行は怠るなよ」
「ありがとうございます」
「ありがとう、お母さん」
「うむ、それから式を挙げるなら早めにしておくと良い。色々あって私達は挙げる暇が無かったが娘の晴れ姿位は見たいからな」
「そういう話は追々ということにしておきましょう。まだやらなければならないことがありますから」
その言葉と同時に関係者全員が身構える位に強大な敵意が会場を包み込みます。
「父さん」
「零樹」
師匠が私達の近くに歩いてきます。明確な敵意を発しながら。
それに向かい合う様に零樹が立ち上がります。
「やっと、僕も父さん達と同じ場所に立てましたか?」
「お前にも巣立ちの時が来たようだ。次の試合、それがオレがお前にしてやれる最後の指導だ」
巣立ち
それは師匠の庇護下から離れて対等な位置に立てるということ。
つまり今後は家族としては助けてくれても弟子としては助けてくれないということに繋がる。もう、弟子として助けなくても自分でなんとか出来るということなのだから。
「はい、ご指導よろしくお願いします」
「回復するだけの時間はやる。きっかり1時間後に開始する」
それだけを告げると師匠は姿を消します。
そこまでが限界だったのか零樹も倒れてしまい、直ぐさま医務室へ連れて行かれダイオラマ魔法球で休養を取ります。
試合までに完全な状態に持って行けるのでしょうか?私も出来る限りの治療を施します。間に合ってくれると良いのですが。
side out
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