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戦国異伝

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第二百二十四話 帝との話その二

「上様は意表を衝かれるがな」
「おかしなことはじゃな」
「されぬ方じゃ」
 これが柴田の言うことだった。
「だからのう」
「いぶかしんでもか」
「その必要はないと思うがな」
「それはその通りじゃがな」
 林もこのことはわかっている、信長は意味のないことはしない。その行いには全て彼の読みが確かにあるのだ。
「ましてや朝廷への参内じゃ」
「自ら申し上げられてな」
「ならばな」
「間違いなく意味がある」
 柴田は言う。
「安心して我等は参ろうぞ」
「さすればな」
「では、ですな」
 荒木もここで言った。
「我等も参内し」
「そうじゃ、上様に従い帝の御前に参ろうぞ」
 林は荒木にも応えた。
「そうしようぞ」
「さすれば」
「都も落ち着きましたし」
 ここでこう言ったのは松井だった。
「実によくなりました」
「比叡山も伝教大師の頃に戻るか」
 村井は比叡山のことを話した。
「僧兵もなくなり怪しげな僧達もいなくなった」
「あのことは大きかった」
 林は松井と村井にも述べた。
「僧兵は長い間厄介なことじゃったが」
「その僧兵達もいなくなり」
「比叡山も落ち着きました」
「高野山や他の大きな寺社もそうですが」
「僧兵だのがいなくなりました」
「それだけでも違う、南禅寺もそうじゃが」
 林は自分からこの寺の名前を出した。
「僧兵がおらん様になってよかった」
「はい、実に」
「あの寺のことも」
「あの崇伝という僧も奇怪じゃったが」
「あれは何者でござろう」
 藤堂もわからなかった、それで言うのだった。
「一体」
「わからぬ、わしもな」
 林もこう言うのだった。
「あの者のことは」
「左様ですか」
「今もな、行方も知れぬしな」
「何処に消えたのかも」
「わからぬ、天海と共に公方様を惑わし天下を騒がせた罪は重い」
「だからですな」
「見つけ出してじゃ」
 そのうえで、というのだ。
「首を撥ねねばな」
「なりませぬな」
「だからこそ探しておるが」
「果たして何処に消えたのか」
「わからぬわ」
 こう藤堂にも言うのだった。
「今も尚な」
「他にもおるしのう」
 佐久間の言葉はいささか剣呑だった。
「あ奴と天海の他にも」
「うむ、何かとな」
「戦国じゃと妖しい者も多いか」
「どうしてもな」
「都は昔から色々あるがのう」
「そういえばありますな」
 羽柴が気付いた様に言って来た。 
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