ドリトル先生の水族館
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第一幕その一
ドリトル先生の水族館
第一幕 穏やかな先生
ドリトル先生は今日もです、学校で教授のお仕事をしてです。
お家ではくつろぐ日々です、そうした充実した日々です。
それで晩御飯を食べてです、こう言うのでした。
「何か日本に来てね」
「いいことばかりだよね」
「お仕事はあるしね」
「お給料もしっかり貰って」
「それで色々な本も読めて」
「お家ではくつろげて」
「紅茶も美味しいしね」
先生は動物の皆にも笑顔で応えます。
「いいことばかりだよ」
「もうこれ以上はない位にかな」
「先生幸せみたいだね」
「まあ私達にしてみればね」
「まだ最高に幸せじゃないけれど」
「あと一歩必要だね」
「あと一歩なのかな」
先生は皆の言葉に首を傾げさせて言うのでした。
「僕はもう満足しているけれど」
「いやいや、満足じゃなくて」
「もっとね」
「幸せ求めていいと思うよ」
「あと一歩でもね」
「僕は贅沢はね」
ここでは無欲さを出した先生でした。
「別にいいから」
「いやいや、もっと少しは」
「欲張ってもいいよ」
「本当にあと一歩ね」
「あと一歩でいいから」
動物の皆はここで先生にこぞって言いました。
「先生はそこで満足したら駄目だよ」
「もっと踏み込んでね」
「贅沢していいんだよ」
「人生そのものをね」
「そうなのかな。僕はね」
皆が言うことがわかっていない先生はこう返しました。
「これで充分だと思うよ」
「今の生活で?」
「もういいの?」
「もう欲しいものないの?」
「今の状況で」
「だから。お仕事があってだよ」
まずはこのことに満足しているのです。
「お給料もちゃんと貰えてこんないいお家があって服も充分にあって」
「それで食べものも美味しい」
「しかも色々な種類の食べものがある」
「お茶も美味しい」
「お酒もだね」
「それでどうして不足なのかな」
とてもという口調での言葉でした。
「僕は充分幸せだよ。皆もいるし」
「確かに僕達もいるけれど」
「それでもね」
「そこでもう一歩ね」
「欲張ってもいいから」
「そうなのかな。もう望みはないけれどね」
本当に先生は無欲です、無欲であることはいいことですが。
それでもです、その無欲さが今は皆にはなのです。
「いや、もっとね」
「もっとないのかな」
「先生には欲が」
「ここまで来たらって」
「貯金もあるよ」
先生はお金のことかと思いこう答えました。
「充分にね」
「うん、先生お金にもこだわらないしね」
「貯金は今位でいいよね」
「先生は満足だよね」
「そうだよね」
「うん、それに僕は偉くなるつもりもないし」
こうしたことにもです、先生は興味がありません。権力を手に入れたり尊敬をされる様なことは関心の外なのです。
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