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戦国異伝

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第二百二十三話 信貴山城攻めその十

「これは」
「謎ですな」
「これ以上はないまでにな」 
 まさにとだ、また言った信長だった。
「謎だらけじゃ」
「この度も出てきましたし」
「殿、どうされますか」
 ここでだ、池田が信長に問うた。
「あの者達は」
「気になるな、話を聞くか」
「そうされますか」
「うむ、あの者達を一旦止めよ」
 これが信長の命だった。
「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「うむ、話を聞こう」
 こうしてだった、その闇の兵達と家臣達が止められてだった。
 信長は彼等の話を聞こうとした、だが。
「さて、我等は」
「何も」
「知りませぬ」
「一切です」
 こうだ、虚ろな目で言うばかりだった。
「そう聞かれましても」
「何がなんだか」
「松永様に従っただけで」
「何も」
 兵達はこう答えだ、家臣達は。
「それはです」
「殿に対する忠義です」
「そのことはです」
「言えませぬ」
「決して」
 こう言うばかりだった、彼等も。
「ですから」
「首を切られてもです」
「言えませぬ」
「何があろうとも」
「斬りたければお斬り下さい」
 こうまで言うのだった。
「それでもです」
「我等はです」
「何も言いませぬ」
「そして殿以外にも仕えませぬ」
「このまま何処かへと消えます」
「首を切られぬのなら」
「こう言っていますが」
 池田が難しい顔でだ、信長に言った。その彼等の話を聞く信長に。
「どうされますか」
「誰にも仕えぬか」
 信長は池田の言葉を聞きこう返した。
「そう言うか」
「はい、このまま寺に入ります」
「我等はそうします」
「兵達は村でも開き」
「そこで生きるでしょうが」
「あの者達もです」
「誰にも仕えませぬ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 彼等はあくまでだ、何も言おうとはしなかった。大事なことは。
 それを見てだ、信長は言った。
「放してやれ」
「ではこのまま」
「うむ、この者達は何も言わぬわ」
 そのことがよくわかったからだった。
「聞いても無駄じゃ、そしてな」
「誰にもですか」
「この者達はもう戦には出ぬ」
 彼等の目を見ての言葉だ。
「ならよい」
「ではこのまま」
「放て」
 池田にも答えた。
「そうしてやれ」
「首を打ちませぬか」
「寺に入ってそこから出ぬのならよい」
 それでというのだ。 
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