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戦国異伝

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第二百二十三話 信貴山城攻めその八

「弾正殿は毒は淹れておりませぬ」
「利休殿がそう言われるのなら」
「間違いはありませぬな」 
 ここで利休に応えたのは丹羽と蒲生だった。
「それならば」
「殿も」
「はい、それに今は茶の場です」
 ここで利休の言葉は強くなった、そのうえでの言葉だ。
「騒がれることは」
「ううむ、では」
「この場は」
「穏やかにですな」
「話をするということで」
「その様にお願いします」
 織田家の主な家臣達に言う、しかしだった。
 ここでだ、利休は羽柴だけが落ち着いているのを見てだ、彼に対して問うた。
「羽柴殿は」
「はい、それがしは前からですが」
「弾正殿をですな」
「嫌いではありませぬので」
 それで、というのだ。
「この度のことも何かあると思いまして」
「だからですか」
「何か訳あって。しがらみでもあるのではありませぬか」
 羽柴は半ば松永に対して問うて言った。
「そう思いますが」
「ははは、そう思われますか」
 松永はその眉を少し動かしてから応えた。
「それがしが」
「違いますか」
「いやいや、それはどうか」
 松永は言葉を誤魔化そうとした、その彼を見て信長は彼がこのことについて答えないと見てだった、彼の茶を飲み。
 そのうえでだ、こう言った。
「美味いのう」
「お気に召されましたか」
「実にな。それでじゃが」
「はい」
「すぐに言う、降れ」
 実にだ、単刀直入な言葉だった。
「この城を明け渡せ、そしてじゃ」
「それにですな」
「平蜘蛛を渡せば許す」
 これが信長の出した条件だった。
「それでよい」
「平蜘蛛をですな」
「どうしてもというのなら別のものでもよい」
 微笑みさえ浮かべてだ、信長は松永にこの条件も出した。
「話は聞く」
「ではまずはここにある茶器を」
 この場にあるだ、全ての茶器を手で指し示して信長に言った。
「上様に差し上げます、それに」
「それにか」
「この城も」
 信貴山城もというのだ。
「明け渡します」
「そうか、わかった」
「ではそれで、ただ」
「ただ、何じゃ」
「兵と家臣達に危害は加えぬことをお願いします」
 松永は信長にこのことをくれぐれも言った。
「それがしだけということで」
「御主も許すのじゃ、それで何故あの者達に何かする」
「ではこれより城から兵も家臣達を出します」
「そうするな」
「はい、ただ最後に平蜘蛛と共に天守に登ることをお許し下さい」
 ここでだ、松永は信長にこのことを願った。
「そうして宜しいでしょうか」
「最後にか」
「はい」
 こう信長に問うのだった。
「駄目でしょうか」
「よい」
 信長は寛容にだった、この場でもだった。 
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