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blood∴or∵knight

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生きるのは死を逃れる為じゃない、死を恐るから生きるんだ。

 
前書き
前回の続きです(`・∀・)ノイェ-イ!
八尋の覚醒です!展開早いな〜と思われるかも知れませんが、実際の所、夏那と八尋は数え切れない程、その瞬間をその時間を繰り返してます。
と言っても八尋は記憶がdeleteされてますが…………さてさて!
変なタイトルですいません!読んで頂けると嬉しいです!
感想など書いてくれるともっと嬉しいですヽ(ω・*ヽ)ウレ♪(ノ*・ω)ノシイ♪.。゚+.(*・ω・*)ノ。+.゚ナァ♪
 

 
 右回転の駒を廻すと右回転。
 左回転の駒を廻すと左回転。
 力の法則だ。力の向きを変えると駒の回転は停止する。
 右回転中の駒と左回転中の駒が衝突すると右回転の駒の回転力は低下し左回転の駒の回転力は増加する。
 回転の軸がズレると駒の回転は不安定となり回転力は低下する。その点は右回転も、左回転も、変わらない。
 衝突を利用する回転力の増加はある意味、衝突と激突を繰返す小惑星に似ている。
 星が完成するまでの段階に小惑星同士の激突が存在する。激突した小惑星同士はバラバラとなって合体すると。
 それを繰返す事で、星は完成する。分解と再生の分岐点は破壊と修復の連鎖だと考えられるが、それ以外の方法で、星を完成させる方法は無いのか? と考えた学者は駒の回転に目を惹かれた。
 右回転の駒と左回転の駒は互の回転を利用する事で、回転力を維持する。
 駒の衝突はある意味、隕石の衝突と告示するのだ。
 駒の回転の研究に没頭した学者は不可解な現象に気付いた。
 右回転の駒と左回転の駒が衝突する時、凄まじいエネルギーが発生する事を。
 そのエネルギーは両回転の駒が衝突した瞬間のみ発生する一時的な物と研究を重ねる毎に解明したが、学者はその点はエネルギーに興味を持った。
 両回転の駒の衝突時エネルギー発生直後、駒と駒の間の空間が消えたのだ。
 ほんの一瞬の出来事で、人間の肉眼では見る事すら適わない衝突エネルギーは莫大なエネルギーだと解った。
 空間を捻じ曲げ、その数ミリの空間を転移させる現象。
 その現象を学者は『TEN』と名付けた。



 ある意味、理想的な発想だ。
 簡単な事を積み重ね、莫大な利益を得る。
 エネルギーを収縮させ空間を転移させる現象『TEN』は現在のエネルギー問題を解決させる糸口とも言える。
 最初は駒から始まって、以降の実験は完全な機械・・・・・・と言っても駒の形を模した機械駒だが、それらを回転させ衝突させる実験は始まった。
 回転する駒同時の衝突は質量が多ければ多い程、実験結果は良好で。
 逆に質量が少ないと微妙な結果となる。
 結果は結果だ、結論から言えば。
 まだ、まだ上を目指せる。
 そう願って学者は研究を続けた。





 吹葵 夏那の服装は常識からズレている。
『魔術』発動効率を上げる為とはいえ人々の注目を集めるようなデザインは微妙と言える。
 その衣装は人を視界から消える魔術的な意味を持った魔術の基本的な錯覚魔法の一種を常時、発動する事で完成する。
 変な服装だが、普通の人間は見えない。
 なら、大丈夫だ。もし、見られてもコスプレイヤーで言い訳する事も可能だ。
 ・・・・・・あれ? それって余計に恥ずかしくない?
 立ち止まって考えても、結果は変わらず。
 見られたならその時考えよう。恥ずかしくなるのはその後でも十分できるよ。
「今日の放課後、カラオケ行こうぜ!」
「おっイイね」
「野郎だけでかよ〜女の子誘って行こうぜ〜」
 男子生徒達は私の存在を無視する様に通り過ぎた。
 そう、それが正しいのだ。礼装の効力と人間の目を錯覚させる魔術で、私の姿は他人に見えない。
 例え、変な服装どろうと見えなければ問題ないと解るが、抵抗は残ったまま・・・慣れるのは時間が掛かるな〜と考えつつ手元の札を窓ガラスに貼付けた。

『式神 予兆』

 札は窓ガラスと一体化する。
 人間は運が良いと思った時、自分は付いていると思い込む。
 逆に運が悪いと思った時、自分は運が悪いと思い込む。
 その思い込み利用するのが札だ。
 札を張っていれば災難を祓ってくれると人間は錯覚する。
 その錯覚を応用する魔術『勘違』
 見えない札は人間に錯覚を与える。
 説明するとなると時間が掛かるが、一言で言えば『加護』を付与する。
 札の効力範囲内の人間は錯覚する、俺は、私は、恵まれていると。
 ―――――ノルマ達成まで、あと4枚かな。
 張っていると安心する札は効力範囲が狭い。
 錯覚を利用する札を途切れ途切れ、糸を繋げる様に設置する事で、校内全体を守護する術式は完成し完全な結界は完成するのだ。
 私の仕事は蔓延る『零』達の供養です。
 現世で彷徨っている霊達を私達の業界では『零』と言います。
 一応、私は高校生です。こんなインチキ臭プンプンの仕事と高校生を両立中です。
 午前中の授業をすっぽかし仕事をする私……帰ったら補習は確定だな〜と現を抜かし残った札の枚数を確認します。
 ―――――学校の制服、着たいな。
 人間の視覚に映らないと行っても私の本業は学生だ。
 しかも校内です。変な服装で校内を歩き回るより制服を着て堂々と廊下を歩きたい。
 でも、今回は諦めます。
 理由は簡単です、なんせ今回の現場は――――

「夏那の奴、今日も遅刻?」
「最近ずっとだよな〜」
「サボってるんじゃねぇの? 最近寒いしさー」

 そう、今回の現場は私の通う学校なのです。







 数時間後。
 真っ暗な夕焼け色に染まった学校を私は歩きます。
 学生の本業は勉強なのに……朝から夕方まで仕事なんて。
 まぁ、就職すれば毎日こんな感じなのかな。そう考えると憂鬱です。
 校内の生徒は殆ど帰りました。残ってるのは学校の先生と職員のみです。
 と思ったんですが、一人男子生徒が残ってました。
 蒼色混じった黒髪の少年です。
 勉強中なのかノートを開いて熱心に、何かを書いています。
 チラチラっとノートの内容を見てみると…………世界の定義? と書かれた中二病ノートでした。
 自分の存在意義を確かめる為の、他人の存在意義を与える為の、分かち逢えない悲しみの心を、知ろうともせず決めつけられた理不尽な少年の小説。解る様な、解らない様な内容の文を少年は一生懸命書き続け、笑顔で言った。
「会えるよ、ずっと待ってるから」
 独り言…………その言葉は刹那を宿した言葉だった。
 魔術的な意味を持った言霊だ。
 会えない・会えない人間の寂しさ伝染させる拡散魔術。
 魔術は現象。
 その意味を成せれば現象は成立する。
 意味を与えれば代用できる。
 少年は普通の人間だ。長年の経験で解る。
 と言っても4年半年程度の仕事経験者の目だが、素人の目より的確だ。
 現象は成立する…………魔術的召喚儀式が。

『術式展開∴反転世界』

 言霊を宿した言葉は『零』を惹き寄せる。
 偶然発動した魔術を媒体に『惡魔』を召喚されたら.……止めなくちゃ!
 私の知ってる対策知識だと、誘き寄せられた零達は魔術発動者の魔術を吸取る習性がある。
 それを利用するんだ。結界を張り終えた今の状況なら多分、数は少ない。
 少年を罠に使えば一網打尽だって可能だろう。だが、一般人を利用するなんて…………
 零の気配だ、仲間を集めて魔術の発動源を喰らおうとしている。
 時間は限られる。張り終えた札の魔術を収縮して少年を護らせるか?
 結界の範囲内を狭め、少年の周囲だけを重点的に収めれば防御力は絶対的だ。
「守護の導きを少年の魂と接続。
 一時的魔術発動者の権限を剥奪。魔術発動源を吹葵 夏那へ以降!」
 少年の微量な魔力を私の魔力に変換。
 撹乱作戦だ。今の私は少年の魔力を持っている。少年は結界の力で護られ守備は万全だ。
 なら、後は私の番だ!ターゲットは私に変更され、零達は私を優先的に狙う筈。
 私の役目は守る事。
 守るんだ、守られなかった人達の為に。






 階段を駆け上がる。
 見慣れた階段を、普段はゆっくりと歩む階段を私は駆け上がった。
 屋上を目指し、大量の札を壁や階段の手すりに貼り付けつつ私は走るのだ。
 まだ、目立った変化は見られない。
 でも、感じる。
 大量の邪気が私を目指して向かってくる感覚を。
「融合される前に終わられる!」
 屋上の扉を蹴り壊した。
 案外、脆いな。でも、好都合!
 私は手元の札をばら撒いた。ストックの札も全部ばら撒いた。

『・・・…...・・・』

 それは出現した。
 形を失った霊の零。
 姿は見えない、視覚で見える物じゃない。
 零は感じる『物』だ。
 視覚で見るんじゃない、心の目で捉えるのだ。
 目を開いたまま心の目で零を捉える。
 数は最低100匹~最高200匹と推測するが、焦らない。
 準備は万全だ。罠を張り巡らせ、攻撃態勢を整えた状態なら迎撃可能と判断する。
 ただの零なら魔力を吸い上げる悪霊。攻撃力は皆無だ。
 でも、この数……魔力を媒体に『惡魔』召喚されたら---敗北は確定、損害は計り知れない。
 弱音は吐かない。
 今度は助けるんだ。
 少年から奪った魔力の一部を札へ移行。
 この札は少年の偽物と成った。
 その札を自分自身に貼り付け-----逃げる!
 それを追って零達は私を追いかける。
 作戦成功だ! 微量の魔力を込めた札を貼って置いた札に重ねる様に貼った。
 ―――起爆スイッチon。
 ――――魔力開放!
 仕掛けていた札は爆発した。
 建物に危害を加えず、零だけ仕留める魔術。
 何十枚の札は爆発を続ける。何度も、何度も、何度も、手持ちの札を全部使ったんだ粗方片付けられるよね。
 爆風は感じない。解るのは消失。
 零だった残留粒子は校内を漂って消える。
「終わった……………………」
 一瞬の出来事だ。
 だが、背筋の凍る時間でもあった。
 階段を駆け上がって仕掛けたトラップで一網打尽作戦は時間換算だと10分も満たない事だ。
 でも、私はその一瞬を生き抜いた、死ぬかも知れない事をやり遂げ、見事生還したのだ。
 膝が笑ってる…………疲れた。
 余裕なんて無かった。
 死ぬか生きるかの瀬戸際をぐるぐると行ききすると考える余地を消され、する事をやるべき事から目を遠ざけ、現実逃避する。そんな自分を変えた、変えられた。
 一人の少年を助ける為と言っても消費した札の枚数と魔力は釣り合わないと解っても、命を救えた実感が、私の心をスッキリさせてくれる。
「さぁ〜札を貼り直して帰ろう!」
 清々しい気分のまま私は仕事を再開するのでした。
 その後、最悪の結末が待っているとは知らず。






 潰された片目を右手で抑え、出血量を減らそうと試みるが、駄目だ。
 流れる血は増すばかり。そろそろ大量出血で死ぬな、俺。
 左手は裂け、感覚は消えた。
 最初は痛いと嘆いた。
 だが、痛覚の消えた今、悲鳴を上げる必要は皆無だ。でも、人間的心理だと痛みに耐えきれず暴れ回るのが普通かな。
 両足は無傷だ、歩ける。
 立ち上がると視界が眩むが、動かないと…………殺される。
 理不尽だな、人生ってさ。圧倒的な力の前だと無力だよ。血がぽたぽたと垂れる。
 疲れた・・・・・・眠い・・・・・・今日の晩飯、確か、カレーだったよな・・・・・・腹減ったな。
 俺は状況を打開する方法より今日の晩飯のカレーを食べる事を考えていた。呑気なのか馬鹿なのか、でも、理不尽で死ぬより満腹な状態で死を迎えたい。
「………………あの人…………」
 俺を助けようと囮となった少女は無事なのだろうか?
 変な服装の女の子だったな。外国の人かな、中世代の貴族風ぽい服装だったけど案外コスプレだったり。
 自然と笑みを零す。こんな状況下でも俺は笑えるんだな。
 見えてる方の片眼も靄が掛かり始めた。
 まだ、見える程度の左眼の視界は歪む。少しづつ色は消え、少しづつ視界は点滅する。
 チカチカと光を放って消える壊れかけの蛍光灯の様だ。
「頑張れよ…………ほら、もしかしたら。
 …………写輪眼とか開眼…………するかも………………よ」
 あっ・・・・・・・・・写輪眼通り越して万華鏡写輪眼の連発した後の結末の失明コースだな。
 完全な闇だ。
 目を閉じても、人間の目は僅かな光を見られる。
 でも、俺の視界は完全な闇だ。
 僅かな光すら通さない空虚な闇だ。
 混乱すると思ったが、俺は案外冷静だ。
 貧血だからか。考える事は悲観的と楽観的が混ざったパワフルな状態だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 死ぬのか、理不尽すぎるだろ。
 潰れた片目を抑え、俺は地面を這いずる。
 死ぬのは嫌だ。生きるんだ、助けられた命なんだよ。
 何故、あの子は俺を助けたのか?
 理由は解らない。でも、助けられた事は事実だ。生きる事を明らめるな、死ぬのは生きる事を精一杯努力した後だ。死ぬとか、生きるとか、考えると俺は毎回悩んでいた。
 今、生きてるのは自然な事で。
 死ぬのは不自然な事だと思ってた。
 人間は死ぬんだ。それを俺は理解した。
 ――――――じゃあ、生きるのは死ぬ事なのか?
 人間は、俺は死ぬから。
 死を逃れる為、生きるのか?

 ――――――――――違う!!!!

 死から生きるんじゃない。
 生きる事を、死ぬ事を、知るから生きるんだ!!
 力が湧き上がる。
 生きる意味を死の意味を理解する。
 何故、心臓の鼓動は止まないのか?
 何故、人間は穢れた生き物なのか?
 何故、人間は人間を愛せるのか?
 単純な事だ、それを理解するのに理由なんて必要ない。

「今度は…………俺の番だ」

 少年は立ち上がった。
 幾度も繰り返された理不尽を終わらせる為、少女を助ける為に。
 そして少女は気付き、笑みを零す。
 今度こそ…………八尋が私を救ってくれると。
 抑えきれない嬉しさと哀しさを胸に、少女は呟いた。


 
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