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ピリカピリカ

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5部分:第五章


第五章

「いいかい?お化けとか幽霊が一番怖がるものはね」
「はい」
「それは何なんですか?」
「勇気なんだよ」
 こう言うのでした。
「勇気をね。一番怖がるんだよ」
「勇気ですか」
「それをなんですか」
「そう、それなんだよ」
 このことを子供達に話すのでした。
「勇気があればそれで」
「大丈夫なんですか」
「お化けにも」
「そうなんだよ」
 また言いました。
「だからね。本当に」
「わかりました。それじゃあ」
「勇気を出して」
「そう、行こう」
 自分がまず前に出たうえで子供達を励まします。
「皆もいるし。いざ」
「わかりました。市長さん」
「僕達も勇気を出して」
「私も」
 女の子も。勇気を出すのでした。彼女達も前に出ます。
「行きます。おじさんが幽霊でもお化けでも」
「負けないから」
「そうだよ。相手が何でもね、負けないって思えば」
 あえて子供達を鼓舞するように語ります。
「それが勇気になるから」
「そうですね。だから」
「絶対に」
「僕もいるからね」
 自分がいると言って。子供達を安心させることも忘れません。
「だからね」
「はい」
「皆、行こうよ」
 一人が皆に声をかけました。
「おじさんが何なのか見ないとさ。そうだろ?」
「そうだよね。決めたし」
「だったら」
「決めたことは最後までしないと」
 子供達の間でこう言い合うようになっていました。
「駄目だからね」
「そうだよね、やっぱり」
「僕達決めたんだし」
「ええ」
 男の子も女の子達も言い合って頷き合いそうして話を決めていきます。もう市長さんの手から離れてしまっている程でありました。
「よし、決めたよ」
「僕も」
「私も」
 また口々に言い合います。
「おじさんが何なのか。見よう」
「逃げないでね」
「勇気を出して」
「ううん。これは凄いな」
 市長さんもそんな子供達を見て思わず唸ります。
「こんな凄い子供達だったなんて。こりゃ僕が出る幕はないのかも」
「市長さん」
 けれど子供達は市長さんのそんな心のことは知らず声をかけてくるのでした。
「それじゃあ行きましょう」
「皆で」
「うん、そうだね」
 とりあえず自分の心は見せないで子供達に頷きます。
「皆でね」
「ええ」
 こうしてまた皆でおじさんを追跡することにしました。もう子供達が主軸になっています。市長さんはそんな子供達について行っておじさんを追跡します。そうしてやって来たのは。
「あれっ!?」
「ここって」
 皆そこに来て思わず声を上げました。何とそこは。
「和菓子屋さんじゃない」
「新名堂じゃない」
 子供達はその和菓子屋を見て言うのでした。
「ここって確か」
「何でこんなところに?」
「あっ、皆見て」
 ここで子供の一人が皆に言います。
「おじさん裏手に入って行くよ」
「本当だ」
「しかも屋台ごと」
 見ればその通りでした。おじさんはお店の裏手の駐車場に入って行くのです。皆それを確かに見ていました。
「どういうことなんだろう」
「さあ」
 皆それだけではわかりません。
「何であそこに?」
「どうしてなんだろう」
「ちょっと待って」
 また一人がここで気付きました。
「ひょっとしたらさ」
「どうしたの?」
「あれかも知れないよ」
 またしても不吉な雰囲気が皆を覆ってしまいます。それはどうしても避けられませんでした。
「あのおじさん、実は和菓子屋のお爺さんでね」
「あの人!?」
「あのお爺さんだよね」
「うん、あのお爺さんだよ」
 この和菓子屋さんはお爺さんとお婆さんがやっています。もうかなりのお歳ですが元気にやっているのです。街での評判は愛想がよくて美味しいお菓子を作ってくれるというもので極めていいものです。
「あのお爺さんだけれど」
「まさかあのお爺さんが」
「お化け!?」
 導き出される答えはこれでした。
「お爺さんがお化けだったの!?」
「それでああして出て来る!?」
「まさか」
 皆また口々に言い合います。そういえばおかしい、彼等の中で思える部分がどんどん出て来てそれが確かなものに思えてきました。
「すっごい御歳じゃない」
「ええ」
 まずはこのことです。
 
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