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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  101 はじめての会議

SIDE OTHER

≪天才量子物理学者≫──茅場 晶彦からのデスゲーム宣言から約一月が経過した。11月6日──あの悪夢の日から沢山の人間が死んだ。……その多くの理由は、この世界に希望を見出だす事が出来なかったのだろう、外周から身を投げての自殺だったと云う。

デスゲーム宣言から約20日。約8000人の魂は鋼鉄の浮遊城に囚われたままだった。

SIDE END

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SIDE 《Kirito》

この城に囚われて約20日。〝現実世界(あちら)〟では気の早い者ならクリスマスで色めきだつ頃なのかもしれないが、この色気の[い]の字も無い〝剣の世界〟では、プレゼントやら話の代わりにレアドロップを落とすモンスターの話が飛び交っている。

「せぇいっ!」

リーファが裂帛(れっぱく)の気合と共に、Mobへソードスキルを叩き込む。……すると(たちま)ち、小気味良い音と共にMobはただのポリゴン体になって割れる。さっきのリーファの戦闘に()いてのポジションは(もっぱ)ら〝遊撃〟だった。

……俺達のパーティーは基本的にローテーションを回しながら1人が弾き(パリング)に専念し、もう1人が弾き(パリング)+遊撃で、最後の1人がダメージを稼ぐと云った──少々保守的なプレイングとなっている。

……もちろん相手(Mob)に隙が出来れば、ティーチの突きや俺の剣が容赦無く入っていくが。

瞬時に、明確な──〝最善手〟を選択しなければならない〝遊撃〟は、ティーチが担う事が多い。……リーファや俺も〝遊撃〟になる事があるが、それは(まれ)だったりする。

閑話休題。

「やった、レベル上がった!」

「やったな」

「おめでとう」

13歳──その年齢の少女と相応に喜ぶリーファに、ティーチ、俺とハイタッチで喜びを分かち合う。……ティーチ曰く〝〝この世界〟では良い感情も悪い感情も、表面上に出した方が良い〟らしい。

リーファからの自己申告が正しいのなら、これでリーファは11に上がった模様。……かく云う俺のレベルも11で、そろそろ12に上がろうとしていた。……14と云う、ティーチの──明らかに頭抜けたレベルには敵わないが。

ティーチの〝無謀なレベリング〟については、もう目を瞑る事にした。……当然揉めに揉めたが、俺がティーチを決闘(デュエル)で〝言いっこ無し〟と──叩き伏せようとしたが、逆にこちらが叩き伏せられてしまったからだ。

……パーティーを組むことが多い俺達は、レベリングの際に安全性が向上すると云う〝旨味〟もあった。……もちろんの事ながらティーチに〝おんぶにだっこ〟と云う事じゃないが…。

閑話休題。

「……ねぇ、あれってもしかして…」

「まごう事なき──ってやつ…?」

「ボス部屋、だな」

不意にリーファが指し示した方向を見れば、重々しい雰囲気を醸し出している巨大な扉が在った。第1層ボス部屋の扉を見付けてしまった。……確か、情報が出ていなかったので俺達のパーティーが発見者らしい。

(βテスト時代じゃ第1層ボスをクリアしたのは5か6。……俺達のレベル11、11、14…)


瞬間、頭の中で〝ゲーマー魂〟と云う悪魔が〝威力偵察クライナライインジャナイカ?〟〝レベル10オーバー3人ナラ死ナナイサ〟とか囁くが、そこは鋼の理性で無理矢理カットしておいた。

……《イルファング・ザ・コボルド・ロード》だけなら──〝本丸〟だけならまだしも、〝取り巻き〟──《ルイン・コボルド・センチネル》が居るとなると、無理そうだし──〝これまでの経験則〟からして、ボスにも〝何かしらの修正〟が加えられて然るべきなのだ。

「……一応聞くけど──【トールバーナ】に引き返すよね?」

「そうするか。威力偵察は無理だしするにしても、少なく見積もって12人は要るな」

「ああ。威力偵察の人数を募るにしても、攻略の会議を開く必要がある。……キリトはアルゴだっけか? あの情報屋にこの情報を流してくれ」

「了解」

俺達は【トールバーナ】に尻尾を巻きながら逃げ帰るのだった。

SIDE END

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SIDE 《Yuhno》

【トールバーナ】。それは第1層の迷宮区から一番近い街である。そんな街にボクとアスナは訪れていた。……と云うのも、≪鼠のアルゴ≫──今は〝情報屋〟を標榜している少女から〝とあるメッセージ〟が届いたからだ。

そのメッセージはこんな感じだった。曰く[ボス部屋が発見されたらしいヨ。11月30日の10時に【トールバーナ】で攻略会議をするそうダ。]──とあった。今日は11月30日。会議当日である。

どことなく、闘技場(コロシアム)の様な印象を(いだ)かされる広場の上の方の(いしだたみ)に腰を掛けて、辺りの──今回の攻略会議に関する情報を拾ったらしい人達の装備品ををよくよく観察してみれば、レアドロップ品で固まっていた。

……そうなると、〝今から本当に攻略会議をするのだ〟──と、どこかあやふやだった実感が急速に──明確に(かたち)を成してゆく。

(ティーチ君とキリトは一緒に居るだろうし、ティーチ君のパーティーに入れてもらおうかな。……でも、どうやって声を掛けよう)

ティーチ君から、ティーチ君はキリトとパーティーを組んでいると聞いている。……〝キリトが来るなら、ティーチ君も来るだろう〟──と、そんな皮算用的思考を(めぐ)らせていると、10時になった。

(来たかディアベ──)

――「はーい、傾注傾注~」

(っ!? ティーチ君っ!?)

定時になり──いざ、〝ディアベルの髪の青さでも確認してやろう〟と、このコロシアム(?)が広場の中心のステージに目を遣れば、そこに居たのは〝水色ワカメ〟でななく、〝赤茶髪の少年〟──ティーチ君だった。

……ディアベルとは所謂(いわゆる)〝原作キャラ〟で、第1層のボスのラストアタックボーナスを狙おうとして返り討ちに遭った、憐れなβテスターである。彼の死に際の一言が、〝我が身可愛さ〟なプレイをしていたキリトの心を動かすの事になったりと、割りと重要なキャラクターである。

……そんなディアベルだが、βテスト時代の経験有ってか、ボス戦では指揮官として八面六臂の活躍を見せるのだが…

(原作ブレイクじゃん…)

そう頭を抱えたくなったボクは悪くない。……二次創作なども好きなボクは、俗に云われている〝原作厨〟では無いが、この展開は──〝ディアベル以外〟が第1層の会議を先導する展開は見たことがなかったのだ。

……そんなボクの懊悩(おうのう)に気付かずにティーチ君は続ける。

「俺はティーチ。……綴りは〝教師〟の〝ティーチ〟だが、〝先生〟なんて呼んだ日には、明日の朝日を拝ませない様にしてやるので、そこんところは気を付ける様に」

――「はーい、先生~!」

――「くはっ、やめろ…ふふふ…」

「……良いか? 攻略勤しんでいる皆に召集を掛けたのは他でも無い。皆に重要な発表が有ったので集まってもらった。……というのも──もう情報が回ってるかもしれないが、俺達のパーティーがボス部屋の扉を発見した」

――「「……っ!」」

ティーチ君のジョークに広場が沸き上がる。ティーチ君は、〝つかみは上々か〟とでも言いたげに頷くと、頃合いを見て本題を切り出した。……ティーチ君の真面目な声音に、広場の皆──先ほどふざけていた2人ですら押し黙っていた。

「さて、そこで〝対フロアボス〟の詳しい話を詰めていきたいと思って…」

――「ちょぉ、待ってんか…!?」

ティーチ君が対ボスの詳しい話に移ろうとした時、謎トンガリヘアーの闖入(ちんにゅう)者──〝皆のサボテン〟〝【SAO】の〝なんでや〟さん〟こと、キバオウが発起した。

SIDE END

SIDE OTHER

「さて、そこで〝対フロアボス〟の詳しい決議を…」

――「ちょぉ、待ってんか…!?」

「………」

ディアベル以外の第1層ボス攻略会議の先導──イレギュラーに頭を抱えたくなったのは、何もユーノだけでは無かった。……キバオウの登場に大した驚きを見せず、口を[へ]の字で閉口させている男──リュウも現状の推移を見守るしかなかった。

「……まずは名前からどうぞ」

「ワイはキバオウってもんや。……ワイが言いたいのは〝こん中に死んでった初心者(ニュービー)に詫び、入れなアカン奴らが居る〟──っちゅうことや!」

「……取り敢えず、詳しく聞こうか」

ティーチは闖入者──キバオウの乱入に大した目くじらをたてたり、嫌な顔をしたりせずにキバオウの忠言の続きを促す。

「ワイは、こんクソゲームの初日に初心者(ニュービー)を見捨てて逃げ腐りおったベータ共と(くつわ)を並べるつもりは無い! 〝ケジメ〟として、〝出すモン〟を出して貰わんとなぁっ!」

「……つまり貴方は〝βテスターの所為で沢山の初心者(ニュービー)が死んだ〟〝βテスターは初心者(ニュービー)に、(なにがし)かの報償で(あがな)え〟──と言いたいのか?」

「そうや、薄汚いβテスター供は有り金全部──アイテム全部差し出せや!」

「……はぁ貴方は〝ドアホウ〟とか言われたい──被虐嗜好(マゾヒスト)なのか?」

ティーチはキバオウの忠言──にしては、(いささ)か穴が空きすぎている理論にキバオウにすら判る様に肩を、欧米人がよくやる──人を小馬鹿にするように〝お手上げだ〟と云った感じのジェスチャーをする。

「なんでやっ! おのれ喧嘩売っとんのかワレぇ!」

「……はぁ…。〝この〟本、なんだと思う…?」

人より感情的になりやすいきらいがあるキバオウである。ティーチのその態度を〝挑発〟と取ったキバオウがティーチに寄り掛かろうとするが、ティーチは嘆息しながら(ふところ)から1冊の本──【アルゴの攻略本】と大々的に銘打たれた本を取り出し、キバオウに突きつける。

「なんや、武器屋とかで無料で配布しとる本やないか」

「……よもや、ここまで言っても判らないなんて…。……貴方、今から本当に〝ドアホウ〟に改名した方が良くないか?」

「なんやてぇ!?」

「……この本を書いたのは、貴方の言う〝薄汚いβテスター〟だよ。……その〝βテスター〟の情報に(あずか)ながら、よくもあんなにβテスターを扱き下ろせるもんだ」

「……ぐぅ…」

キバオウは〝(わざ)と目を逸らしていた事実〟に目を向けさせられ、たじろぐ。

「そもそも、この攻略本には〝情報が有りすぎる〟とは思わなかったのか? ……そこを辿っていけば、どの様な人達が情報を出したかは判りそうなものなんだがな」

「……ふんっ! 判ったわ、今回は引っ込んだるわ!」

負け犬の遠吠えとばかりに、キバオウは元々座っていた場所に戻って行く。

「さて、話は逸れたが──いや、ここで明言しておこう。……俺はβテスターじゃない。しかしβテスターのお陰で、こうやって〝この場〟に立っていられるんだ。……βテスターの皆さんには深く感謝を申し上げます」

ティーチの見事としか言い様の無い所作の礼に、広場の空気が止まった。更にティーチは続ける。

「……よし、フロアボス攻略に関しての話に戻ろうか」

(うやうや)しい態度から一転、ティーチは何事も無かったかの様に元の話題に戻す。……広場の皆がコケたのは仕方のない事だった。

SIDE END 
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