魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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後日談1 ゆりかご事件の裏で………3
前書き
長らく時間がかかってしまいました………
色々とあり、暫く書いてなかった影響で、更に進行速度が遅くなって、結局書き直してやっと終わりました…………
リハビリの筈のINNOCENTがメインで進んでますが、予定した他の後日談と1つIFを投稿出来る様に頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。
追伸
非会員の人なので詳しい名前は分からないのですが、感想で事細かく書いていただいたのにも関わらず、返信を忘れてしまってしまい、本当に申し訳ありませんでした………今年の4月、見直して気が付きました。心からお詫び申し上げます………
「よし、集まったな」
早朝朝8時45分頃。
再びアルピーノ家に昨日いたメンバー全員が揃っていた。
「皆急遽集まってくれて感謝する」
「いつ動くかわからないからすぐにでも行動出来るように準備していたわ。………それで急に集めたってことは何か動きが分かったの?」
シャイデの質問にコウは頷き、本題を話し始めた。
「皆今日の朝のニュース、もしくは新聞を読んだか?」
「ニュース?」
「………関係あるとすれば海鳴市の海岸の水位が下がったとか言っていたニュースの事か?」
ゼストが思い返すようにそう呟いた。
「ああ、そうだ」
「それが何か関係あるの?」
「その水位を下げた原因は恐らく01によって引き起こされた事だ。俺と01がいた世界は実験を物がある場所で行うわけにはいかなかった。誘発して何が起こるか分からなかったからな。だから自然の影響の少ないであろう水辺で行うことが多かったんだ。今回もその時のように01は海で試してみたんだと思う」
「となると相手は………」
「準備は万端って事だ。直ぐにでも行動を起こさないと相手がどう来るか………」
『流石02ね。私の考がえている事全部分かってる!!』
01の声が聞こえ、皆周囲を確認する。
「テレビ!」
オットーの声に釣られテレビを確認するとそこには01が写っていた。
『それじゃあこの世界を賭けた02争奪戦ゲームを始めましょうか!!』
「ゲームだと!?」
01の言い回しにゼストが思わず怒鳴る。
しかしそんなゼストを全く気にせず01は話を続けた。
『ルールは簡単、正午までにこの街にセットした爆弾を全て処理するか、私を殺せば貴方達の勝ち。逆に02を私に奪われるか、正午を過ぎたらゲームオーバー。ねえ?簡単でしょ?』
「ふざけるな!!そんなこと……」
と反論しようとした俺をシャイデが手で制した。
「幾つか質問は良いかしら?」
『う〜ん………却下。貴女は執務官経験もあるし、あまり話すとボロが出るかもしれないから止めておくわ。………だけどそれじゃあ余りにもそっちが不利すぎるから大ヒントをあげるわ!!』
「大ヒント?」
『先ず第1ヒント。設置した爆弾は全部で5個。この海鳴市内に設置したわ。どれか1つでも爆発したら街は消滅するでしょうから頑張って!第2ヒント。……私以外にこの戦闘に参戦する人はいないわ。要するに敵は私1人って事。OK?』
「………分かったわ、情報ありがとう」
『どう致しまして。それじゃあ9時と同時にスタートするわ。02、また後で会いましょう!!』
そう言ってテレビ画面は一瞬消え、先程と同じチャンネルに戻った。
「………それじゃあ作戦会議を始めましょうか」
シャイデの提案に頷き、俺達は近くに固まった………
『さっきの話から分かった事が数点あるわ』
この部屋にテレビ画面を使って連絡してきた01。既にこの場所も知られている以上、普通に話していては相手に筒抜けだろうという事で念話での会話となった。
『先ず01はこの戦いをゲーム感覚でやれる程自信がある出来だって事。そして5つの爆弾とう言う数に信憑性があると言った所かしら』
『えっ?でもそんな簡単に判断して良いんですか?』
『もちろん鵜呑みにして馬鹿正直に信じる必要はないわディード。……だけどコウから聞いた人物像と彼女の様子からそれは間違いないと思うわ。コウはどう思う…?』
『………俺も同意見だ。01は当人に似ているのか分からないが、自分の研究に絶対の自信を持っている。だから失敗した時の事を考えない』
コウはシャイデの考察に驚きつつ、自分の意見を話した。
『………だが、01は時々突拍子もない事をしてくる。例えば今回で言えば開始早々俺を捕らえに現れるとか、爆弾を探す様を楽しんで最後の最後まで姿を現さなかったりと正直色々と考えられる』
『どうメンバーを分けるかだな………』
ゼストの言葉通り、どうメンバーを分けるかが今回の戦いの勝敗を分ける。そして更にそれだけではない。コウを捕らえられればその瞬間でこちらの負けとなり、一気に爆弾を爆発させるだろう。
なのでこの人数で、攻撃、捜索、防衛の3グループに分けなければならない。
『捜索は私が適任でしょうね。後はみんな戦闘タイプよね………クアットロが入ればまだ余裕があったかも知れないけれど…………無い物ねだりしても仕方がないわね………』
クアットロは俺のデータにある。ある意味ジェイル・スカリエッティに一番近い性格をしており、かなりの危険人物。それと同時に有栖零治の記憶で実は姉妹で一番の苦労人とか。………正直よく分からないのが俺の中の印象だ。
『探索に向いているのはシャイデを除けば……』
『私かしらね。元々召喚魔法とサポートが中心だったし、私以外いないわね』
今まで静かに聞いていたメガーヌが椅子から立ち上がり答えた。
『だがメガーヌ、お前は目覚めてから戦闘などしていないし、ブランクが長いだろ?それに虫達はほぼルーに預けた筈だ』
『だからこそ私はサポートに回るの。戦闘は厳しいかもしれないけれど、それなら私にも出来るから………』
覚悟を決めた目で見つめられたゼストに止める手立てがある筈もなく、
『………分かった。だが気をつけろ』
『分かってるわ』
そう答えるしかなかった。
『それじゃあ捜索班は私、メガーヌ、そして護衛も兼ねてディードとリンスにお願いするわ』
『はい』
『わ、分かりました』
『戦闘班はゼストとセッテ。2人しかいないけど2人の機動力に付いて行けるメンバーは他にいないわ』
『ああ、これで良い。俺とセッテならもしどちらかが襲われててもなるべく早く駆け付けられるだろう』
『師匠の顔に泥を塗らない様に頑張ります!!』
『オットーはコウの援護を。逃げる為の相手を近づかせなければ良いわ』
『任せて』
『アリサは………コウ!』
『うん?』
『あなたはアリサを守りながら自分を守る事』
『なっ!?』
ポンポンと決め、誰も特に反論はなかったが、アリサの事に関してはそのまま頷く事は出来なかった。
『アリサも巻き込む気か!!』
『何を言ってるのよ、もう巻き込まれてるでしょ?………それにアリサを人質にあなたを要求する事も考えられる。だったら隠れて見つからない事を祈るより、近くに居てもらって守ったほうが断然良いわ』
『だがそれでは………』
『危険な目に遭うかもね。……その時はコウ、あなたが全力で守りなさい。あなたの元の有栖零治は守るものがあったからこそ強かった。………きっとあなたもそうよ』
俺の言葉にも有無を言わせぬと言った具合に俺はそれ以上に反論出来なかった。
『………それにこの部屋にメッセージを送ってきたと言う事は奴にこちらの場所は筒抜けだ。返って1二人に残していった方が危険だ』
『………確かに』
『そう言う事。会って数日のあなたに教え子を任せるのは本意じゃないけど、今の状況じゃ仕方がない
。しっかり守りなさい、01については私達が何とかするから』
そうハッキリと答えたシャイデ。それにその場にいた皆がしっかりと頷いてくれた。
『………ありがとう』
元はと言えば俺が運んできた事件でもある。確かに自分達の住んでいる世界の事だ、無視は出来ないのは分かるが、原因でもある俺に文句を言わず協力してくれる。更に言えば俺は有栖零治の偽物みたいなものでそれだけでも彼等にとっては許せない事でもある筈だ。
「さあ、それじゃあそう言う事で行きましょう。………9時前ね、スタートは9時からって言ってたけど別に守る必要は無いわね」
「そうだな、それじゃあ俺達は動くとしよう」
ほぼシャイデとゼストが決めていたが誰も反論せず動きだす。
「コウ………」
「皆、逞しいな………だからこそ頼もしい。アリサ、俺で悪いが俺に付き合ってくれ」
「悪いなんて無いわ。………私こそ、ごめん。私やっぱり足手纏いね……」
「いいや、俺はアリサが居てくれて嬉しい。いくら記憶にあると言ってもアリサ以外は初対面だし、まだ皆俺を心の底から信用していないだろう。………だから親しい人がいてくれるだけで本当に安心できる」
「コウ………」
「本当に壊れちゃったわね02……」
その声が聞こえたと同時にセッテが声の主に斬りかかった。
「ちっ!?」
「速いわね。正面から戦うのは危険そう……」
セッテが斬った01は話しながらドロドロと溶けていく。
「!?皆、外に!!」
シャイデの声に反応した皆は1番近いベランダへと駆け出す。
「えっ?嘘っ!?」
「アリサ、しっかり掴まって!!」
「ちょっと待って、待ってって!嫌あああああ!!!」
アリサの制止を聞かず、皆一斉にベランダから飛び降りる。
「メガーヌ!!」
ゼストの声と共に、空中に広い円状の足場が出来た。
「無茶するわね………」
シャイデの言葉と共に振り返ると、先程までいたマンションは氷の中にあった。
「これが魔剣の力なの……?」
マンション全体を包み込むように凍っており、かなり分厚い。
更にいつの間にかこの街全体を氷が覆っていた。気温もかなり低く感じ、真冬の国ような光景に皆が息を飲む。
「中にいたら終わってた………」
オットーの言葉に皆の顔が引き締まる。
「アハハハハ」
「フフフフ」
気がつくとすっかり囲まれていた。いや、不意に囲むように現れたのだ。
「01……!!」
皆同じ格好で同じ表情。手には皆同じように氷の魔剣、ヴォーバルソードを持っている。
「来るぞ!!」
01達は笑いながら襲ってきた。剣を振るうごとに冷気が漂い、気温がどんどん下がっていく。
「ううっ………」
「アリサ!!」
他の皆はバリアジャケット、コウは戦闘機人なのである程度の温度変化は平気だが、生身のアリサは違った。
「分散するぞ!」
そうゼストが叫ぶと同時に懐から小さいボールのような物を取り出し、それを握り潰した。
すると周囲を眩い光が包み込む。
「目眩まし?」
「眩しい眩しい!!」
「アハハハハ!!」
「フフフフフ!!」
光を受けて動かないでいる01達だが、狂ったように笑ったり、変に余裕があったりと不気味なままで本当に効いているのか分からない。だが逃げる事には成功した。
「アリサ大丈夫か?」
「うん、ありがとう………」
ここは高いビルに囲まれた細めの一本道で、逃げるのには難しい場所に逃げてきてしまった。
更にアリサはああ言ったが、身体は震えており、とても寒そうだ。
「取り敢えずこれ羽織っておいて」
「でもコウが………」
「俺は戦闘機人だし多少は大丈夫」
そう言って半ば強引に着ていたコートを着せる。
「後初めて皆が何とかしてくれるのを待つ間アリサが逃げられる場所を………!!」
「どうしたのコウ?あっ………」
2人の視線の先には右手に青白い剣、左手に炎の形を形取った様な少し歪な形をした剣を持った01が居た。
「お待たせ02。迎えに来たわ」
「01!!」
最悪な状況だった。分断された上に、護衛されるはずだったオットーとは逸れ、アリサの状態、そして何より俺自身が戦闘向きでは無い事が今の最悪の状況を物語っている。
「助けは来ないわよ。他は私の作った氷分身と戦闘中。脆いけど、直ぐに再生するし、戦闘力はオリジナルと引けを取らないわ」
となると直ぐに援護は期待できない。………ならば少しでも時間稼ぎをしなければ俺はいとも容易く捕まるだろう。
「その左手の剣は何だ………?」
「ああこれ?これは炎の魔剣フランベルジュ。ヴォーバルソードの対となる魔剣よ。………最も今はヴォーバルソードの力を最大限に発揮するために、私自身が凍らない様にするための触媒でしかないけどね。まあホッカイロと思ってくれればいいわ」
「ホッカイロ……?」
「例えが悪かったわね………まあ理解出来なくても構わないわ。別に理解しようと理解しなくてもやる事は同じだから………」
そう言うとゆっくり近づいていく01。
「くっ、アリサ逃げるぞ!!」
「え、ええ!!」
「逃がさないわ」
ヴォーバルソードをこちらに向けると、細い氷の山が真っ直ぐこちらに伸びてくる。
「IS質量転移!!」
アリサの手を引き走りながらISを発動。近くの自動販売機を盾にして攻撃を防ぐ。
「あらあら………」
代わりに攻撃を受けた自動販売機は一瞬で氷の中に捉えられ、氷のオブジェと化してしまった。
(あんなの受けたらアリサは……絶対に逃げなければ!!)
「次はこれで行くわよ?」
そう言うと01の頭上に水が集まり凍っていく。
それは1つだけではなく、小さい氷柱サイズの氷が溢れんばかりい増えていく。
「くっ、まずい!!」
直ぐに周りの物をかき集め、それで目の間に強固なバリケードを作った。
「逃げるのを諦めて守りに入ったのね。………でも果たして耐えきれるかしら?」
そう言ってヴォーバルソードをこちらに向ける。
「フリーズランサー!!」
そして頭上に出来た大量の氷柱が一斉に飛んできた。
「くっ!!」
アリサと共に逃げながらバリケードを作っていたが、氷柱のスピードは速く、とても逃げ切れるスピードでは無い。
「何とか建物を利用して………」
しかし誘導弾の様に操作できるのであれば建物の陰に隠れてもそれを避けて向かってくるかもしれない。
「いや、だがバリケードを避けて飛んでこないと言うことは誘導弾ではない?だけどそう思わせておいて………っ!!」
猶予は無かった。逃げながらも順次近くの物をかき集めてバリケードを作っているが、バリケードの作る速度が追いついていない。無限に続くかと思われるくらい、勢いの落ちない氷柱に押され始めていた。
そして段々とISの範囲内に転移できる物が無くなってきていた。
「こうなれば一か八か……!!」
運に任せる形になるがもうそれしか逃れる方法が無かった。
「アリサ、横の路地に入るぞ!!」
「えっ!?きゃ!!」
アリサの了承を得ずに、ちょうど見えた路地の小道に逃げ込んだ。
「質量転移!!」
そしてすかさず入った入り口にバリケードを作った。
「アリサ、先へ………!!」
直感的にアリサの前に倒し、アリサの前に仁王立ちし、覆う様にして立つ。そして襲いかかる氷柱の嵐。
バリケードを破壊し、次々とコウの身体に突き刺さった。
「えっ………?」
何かにの衝撃を受け、揺れるコウの身体。しかしそれでもコウは倒れない。
「コウ……?」
恐る恐る声をかけるアリサだが、コウの目は虚ろだった。
「アリサ………大丈夫か?」
「それは私のセリフよ!!コウ、しっかりして!!」
立ち上がりコウの様子を見るアリサ。背中には多量の氷柱が刺さっており、氷が徐々に広がっていた。
「あらあらもう終わり02?」
そんな2人の元へ01がゆっくりとやって来た。
「早いわね……ちょっとつまんない!………でもまた私の元に02が帰ってくるんだし別に良いわね」
「あんたは………!!きゃあ!!」
睨みつけるアリサを01は氷の塊を飛ばし、吹き飛ばした。
「気安く触れないでこの薄汚い女。02はわたしのものなんだから………」
そう言って愛おしそうに顔を撫でる。
「コウ………」
「うるさいわね………どうせこの世界と一緒に消滅するだろうから無視しようと思ってたけど止めたわ。あなたを殺してからこの世界を破壊することにしましょう」
そう言って01はコウに突き刺さってる氷柱よりも大きな氷柱を作り出し、アリサに向ける。
「じゃあ、後で向かうであろうお仲間をあの世で迎えて頂戴」
そう言っていざ、氷柱を発射しようとした時だった。
「IS……質量転移………」
コウのISが発動し、物質を転移させる。
「今更あの子を助けようと?無駄な………!?」
そこで01は自分の身体の変化に気が付いた。
ヴォーバルソードを持っていた腕が凍り始めたのだ。
「な、何が………あっ!!」
凍っていく腕に意識が持って行かれ、気がつかなかったが、左手に持っている筈の剣が手の中には無かった。
「フランベルジュは!?」
そう言いながら確認するとフランベルジュはアリサの目の前に転がっていた。
「は、早く………!!」
慌てて取りに行く01の前でアリサがフランベルジュを取った。
「これが貴女には必要みたいね………」
「返しなさい、出ないと貴女もただでは済まないわよ!!」
「何を……!!」
不意にフランベルジュを持つ手に異変が起きた。
まるで炎に包まれたかのように腕が熱く、痛みを発する。血液が煮えたぎっているような感覚を感じ、アリサの表情が険しくなる。
「フランベルジュは炎の魔剣、普通の人間が持てる物じゃないわ!!早く離さないとその剣に燃やされるわよ!!」
01の言葉に思わず手を離しそうになるアリサだが、痛みを堪えてしっかりと握り、構えた。
「正気なの!?」
「なめないで!!これ位の熱さへのカッパよ!!」
そう言ってフランベルジュを振り上げた。
だが、使おうとした途端、フランベルジュの炎が一層強くなり、炎がアリサを包み燃やそうとした。
「アリ……サ……!!」
心配そうにアリサを見つめるコウにアリサは微笑んで返した。
「私はね………悔しいの………いつも守られてばかりで………小学生の頃から何も変わってない……だけど!!もうそんなの嫌なの!!!大事な人達が大勢いる世界を私は守りたい………!!私の大好きな人を助けたい!!………だから!!!」
炎に包まれ、徐々に感覚が無くなっていく中でアリサは叫ぶ。
「私は燃える女よ!!バーニングよ!!フランベルジュ、お願い力を貸して!!!」
最後の叫びと共にアリサは大きな炎に完全に包まれた。
「アリ…サ……?」
「バカな女………っ!?早くフランベルジュを持たないと………」
アリサの声が聞こえなくなった事を確認して、01は炎に近づく。
そしてヴォーバルソードを突き刺し、炎を消そうとした瞬間、炎が01を襲ってきた。
「なっ!?」
予想外の出来事に01は後ずさる。幸運だったのは身体を蝕んでいた氷が半分ほど溶けた事か。
「ありがとう……フランベルジュ」
炎が徐々に弱まり、現れたのは真紅のドレス姿のアリサが居た。その周囲にはアリサを守るように炎が漂っており、背中には炎の翼も生えている。
「アリサ………」
「コウ………」
アリサがすかさずコウヘ駆け寄り背中に手を添える。
「これは!!………とても暖かい………」
優しい熱がコウの身体の全身に広がり、氷を溶かしていく。更に氷柱によって傷ついた傷も塞がっていった。
「アリサ、お前………」
「今度は私も一緒に戦うわ。だから一緒に帰りましょう」
そう言ってアリサはコウを立ち上がらせ、01を見る。
「………何を勝ち誇った顔をしてるのよ……!!貴女達の状況は分かってる!?今この場所を覆っている氷のフィールドがある限り、私の優位は変わらないわ!!」
そう言って01はその場に自分と同じ氷の分身を作り出した。
それと同時に再び01の腕が凍り始める。
「ぐぅ………!!」
「魔剣の力を無理やり引き出したらその本人にそれ相応の対価が帰ってくる。それ以上使ったら腕が駄目になるわよ!!」
「腕くらい自分で作れば良いわ。それに心配するならさっさとその剣を寄越しなさい!!」
そう言うと同時に分身達が襲ってくる。
「来るか!!」
「コウ、任せて!!」
ISを使おうとしたコウを止め、アリサが前に立つ。
「行くわよフランベルジュ!!」
そう言うと刀身が燃え盛るように炎が灯る。
「はあああああ!!」
そして気合と共に横一閃した。
それと同時に放たれた炎の斬撃は分身だけでなく、凍っていた世界を溶かしていく。
「これほどなの!?」
01が驚く中、アリサは上空へと上がっていった。
「先ずはこの氷の世界を破壊する!!」
翼が大きく広がり、フランベルジュを再び横に寝かせ構える。
「華炎蒼波斬!!」
刀身の炎が赤から蒼に変わり、放たれた蒼い炎の斬撃はこの街の氷を溶かしていく。
「これは!!」
「ゼストさん!!」
「ああ!!」
倒してもキリが無い01の分身が消え、ゼストとセッテはコウの元に動き出す。
「ディード!!」
「オットーはアリサさんの元へ!!」
ディードはシャイデの元へ、オットーはアリサの元へ走り出した。
「お母さん!!」
「ええ!メガーヌさん、補助お願いします!」
「任せて!!」
敵の妨害が無くなった事でシャイデは自分のデバイスの糸を使って捜索する事が出来た。
「01の大きなミスはここは管理外世界って事。妨害さえなければ、この世界に無い異物を探すくらい………見つけた!!メガーヌさん!!」
「私も確認したわ。今皆に座標の指示を………OKよ!!」
「私、行ってきます!!」
「ミント、まだ妨害があるかもしれないわ、何かあったら連絡して!」
「はい!」
「まさか、こんな………」
「これでヴォーバルソードの世界は消えた。もう降参しなさい」
フランベルジュを向け、アリサが淡々と言い放つ。
「まだよ、まだ………それに私の目的は………」
そう呟いて02を見る01。
「02一緒に……!?」
ヴォバルーソードで何か行動を起こそうとした01だが、俺の背後から飛んできたレーザーにヴォーバルソードを弾かれ、手から離してしまう。
「間に合った………ごめん遅れた」
「オットー!!」
「あれ?アリサさんの格好が変わってる………魔法使えたっけ?」
そんなオットーの問い掛けに答える隙にヴォーバルソードを拾おうとした01。だが、突如現れた2人に押さえつけられて動けなくなってしまった。
「もうゲームは終わりだ」
「私達の勝ちです」
ゼストにうつ伏せに抑えられ、セッテのブーメランブレードがハサミのように01の首を固定した。
「2人共無事だったのね!!」
「アリサこそとんでもないことになっているが……大丈夫なのか?」
「ええ。私、炎の魔剣フランベルジュも使い手になったんです」
「炎の魔剣!?」
「何それ!?」
2人が驚きに戸惑っていると更に通信が入って来た。
『こちらシャイデ、現在爆弾5つの場所を特定。現在3つは回収済み。残り後少しよ』
「了解した、最後まで気を抜くな」
通信を切り、再び01を見た。
「もう間もなく爆弾は全て回収されるだろう。お前の企みは完全の終わった」
「もう降参して」
アリサもそう降参を求めるが01の反応は無い。
「何で何も言わないの?」
「01………」
そんな01にコウが声を掛けた。
「もうやめよう01、俺は大切なたった1人の姉を失いたくない………」
「そう、たった1人の私の家族………私は02が居れば他は何もいらないの……あなただけでいいの、あなただけ………」
「確かに家族は1人だったのかもしれない。だけど手を伸ばせば……一歩踏み出す勇気があればいくらでも変えられたんだ。様々な繋がりが広がっていくんだよ」
「繋がりは02だけで良い!!他は何も要らないのよ!!」
そう言って01はポケットの中にあったボタンを押す。
「もう良いわ、02が居ないなら世界なんて全て滅んでしまえばいいのよ。それにどちらにしてもクレインがゆりかごを起動させた以上、あの兵器を使うだろうし、どの道、生き残る可能性なんて無いわ」
そう言うと01が光り輝いた。
「ベヒモス、起動………」
そして01の体がゆっくりと点滅を始めた。
「あははは!!もう終わりよこの世界は!!」
点滅はゆっくりと早くなっていく。
「くっ……セッテ、離れるぞ!!」
「はっ、はい!!」
01の変化に戸惑いつつもゼスト達は一旦離れる。
「どうするの?」
「シャイデに爆弾処理を……」
「無駄よ。私の身体自体がベヒモスなの。人体を傷つけないように爆弾を停止なんて出来る?」
そう言うと誰も何も言えなかった。
「まだ3分は時間があるわよ?別世界に逃げても構わないわ。私は追わないから」
「そんな………」
がっくりと膝をつくアリサ。
「お父さん、お母さん、すずか………」
悔しさを噛み締めながらアリサはが呟く。フランベルジュ手から離れ、ヴォーバルソードっと一緒にコウの視界に映った。
「フランベルジュ……?ヴォーバルソード……?重ねる!?」
そこでコウの頭の中にあった零治の記憶の中にとあるゲームの記憶があった。
「アリサ、手伝ってくれ!!」
「えっ!?」
不意に声を掛けられたアリサの手を取り、立ち上がらせ、コウはヴォーバルソードを拾った。
「何をするの………?」
「この2振りの剣の本来の姿を取り戻す。………だけど使い手を選んだフランベルジュは恐らく俺には扱えない。だからアリサにも協力してほしい」
「でもヴォーバルソードだって充分………」
アリサはコウの確信を持つ顔を見てそれ以上何も言わなかった。
「分かった、コウを信じる!」
「ありがとう」
そう言ってコウはアリサの肩を持ち抱き寄せる。アリサも自然とコウに合わせ、コウの肩を持った。
ダンスのように密着した状態で互いの剣を合わせる。
「頼む………!!」
この体勢が1番剣を合わせやすく、互いに持ちやすい。記憶では1人の剣士が2振りの剣を合わせていたが、それは出来ない。
「あっ、コウ!!」
2振りの剣は互いの色で光り輝き、渦を巻いて合わさっていく。
そして現れたのが、全て紫の大剣だった。
「嘘っ、本当に………」
「出来た……!!」
エターナルソード。記憶は曖昧であるが、次元を操る力があるはずだ。
「凄い力……この剣は……次元を斬り裂く剣………確かにこれなら!!」
アリサは使い手として何かを感じた様だ。
「アリサ!!」
「うん!!」
2人で一緒に大剣を持ち上げる。すると大剣が光り輝き始める。
「01………」
「あはははは」
ベヒモスを発動させてから01は壊れたように笑っているだけだった。
「行くぞ!!」
「ええ!!」
「「次元斬!!」」
振り下ろした大剣は01を捉えるものも、斬り裂かれることは無かった。しかし空間に亀裂が出来ており、その亀裂が修復しようと01を飲み込み始めた。
「あははは、あはははは!」
その場から離れぬように無意識に踏ん張る01だが、飲み込む力は強く、もはや時間の問題だった。
「02、02……!!」
助けを求めているような呼び掛けではなくコウを探しているような様子だった。
そんな01の姿に涙が頬へとつたって落ちていく。
「今までありがとう姉さん。さようなら………」
別れの言葉の後、01は次元の裂け目に飲み込まれていったのだった………
「以上が事の顛末よ。ベヒモスはあの後ちゃんとシャイデ先生とメガーヌさんが封印したわ。流石元エリートよね」
と、アリサは言うが俺と桐谷は開いた口が塞がらない。
「壮絶だな………」
「本当、死ぬかと思ったわよ」
と苦笑いするアリサ。
「魔剣はどうなったんだ?」
「どっちの魔剣もそれぞれ持ってるわ。使い手が決まった以上、勝手に離すと魔剣が暴走するんですって」
「どっちも?」
「ヴォーバルソードは俺を使い手として選んだらしい」
「はぁ!?」
次から次へと驚く話ばかりで正直もう疲れた。
「魔剣は使い手を選ぶ際、先ずは魔力が無いかを確認するらしい。その後使い手を試し気に入ったら正式に使い手として選ばれる。俺は戦闘機人で魔力も無いし、うってつけだったんだろう」
「だが、そうだったらもっと早く使い手を見つけていたんじゃないのか?」
「極寒の氷雪世界と溶岩とマグマが一杯の火山世界に行って取りに行けたらね」
それを聞いて俺と桐谷は苦笑いで返すしか無かった。
「とにかくそういう事だから。一応伝えたわよ。それじゃあ今日は帰らせてもらうわね」
そう言ってさっさと部屋を出るアリサ。
「有栖零治」
「何だ?」
そんな中部屋にいたがあまり喋らなかった02ことコウが話しかけてきた。
「俺はなんと名乗ればいい?佐藤孝介はお前の………」
「別に何でもいいよ。今の俺は有栖零治だからな」
「そうか……」
その答えを聞いて満足したのか出口へと向かう02。
「だったらしい佐藤コウと名乗らせてもらおう」
「ああ、分かった」
俺の返事を聞き、コウは部屋を出て行った。
「疲れた………」
色々と長く、驚きに絶えない話を聞いたせいか、そのまま横になって眠ってしまった………
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