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夜空の星

作者:みすず
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目障りなヤツ!

 
前書き
登場人物紹介:
★ミレーヌ・トーゼフ(♀)19歳
 主人公。トムの娘三姉妹の次女。父が経営する雑貨店を手伝っている。
 ロビンの事が嫌いだったが…。

★ロビン・ニール(♂)19歳
 郊外にある名門ニール家の一人息子。大学生。隣の雑貨店に住むミレーヌに対しぶっきらぼうな態度をとる。

★サラ・トーゼフ(♀)18歳
 トムの娘三姉妹の末っ子。ミレーヌと共に父の店を手伝う。
 名門ガンス家の次男、ルイに見初められ婚約中。

★クリスティーン・トーゼフ(♀)22歳
 トムの娘三姉妹の長女。最近結婚し、家を出ている。
 ミレーヌの相談相手。

★リチャード・アンダーソン(♂)21歳
 都会に住む若者。ロビンと同じ大学の学生。ミレーヌに告白をする。

★トム・トーゼフ(♂)45歳
 三姉妹の父。町の郊外で雑貨屋を経営する。
 隣にある名門ニール家のデーヴィスとは犬猿の仲。

★デーヴィス・ニール(♂)46歳
 ロビンの父。名門ニール家当主。都会で市の議員を務める。
 トムとは犬猿の仲。

★サイモン・エルガー(♂)37歳
 ニール家に長年仕える執事。SPかの如く体格が良い。
 トムとデーヴィスの確執の理由を知っている。

★シェリー・トーゼフ(♀)故人※当時35歳
 トムの妻で三姉妹の母。10年前に病気で亡くなった。
 家族を愛した心優しい人物。

 

 
「サラ!早く支度して、もう開店時間になるわよ!」
 あたしは自宅兼雑貨屋でもある店内で、開店準備をしながら妹のサラを呼んだ。
「ミレーヌ姉さん、そんなに急がせないでよ。パパだってまだ準備できてないんだし。」
 妹のサラが眠たそうにエプロンをつけ店内に入った。
「遅いわよ、とっくにこっちは準備終わっちゃったわ。」
「姉さんが早すぎなの!まぁ、朝から元気なのはいいことだけど。」
「パパはまだ?」
「多分、トイレじゃないかしら?」
「もう、いっつもこの調子なんだから。…あ、もうお客さんよ!ジェームスさんだわ。」
 カラン!というドアのベルの音と共に、近所に住むお得意さんのジェームスさんがお店に入った。
 入り口近くにいたサラが第一声を掛けた。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ!おはよう、ジェームスさん。」
「おはよう、サラちゃん、ミレーヌちゃん。朝から元気いっぱいだね。ミレーヌちゃん、早速頼めるかい?」
「はい、どうぞ!」
「釘30本に、メモ帳2冊、オレンジの詰め合わせを2袋、卵2箱をお願いしたいんだが。」
「はい、ただいま用意しますね。」
 あたしはカートを引きながら、それぞれの品物を取りに店内を回る。
「姉さん、ちょっと。」
 品物を取り出している最中、サラが小声で話しかけた。
「ロビンさんがまた外から見てるわ。」
「ええっ!?こんな時に…!サラ、悪いけど代わりに品物を入れてくれる?レジの下に隠れさせて!」
 ジェームスさんと目があったが、苦笑いで目を逸らしてくれた。
 慌ててジェスチャーで頭を下げながら、レジの下に隠れた。

 カラン!
「元気かー?乱暴女!」
 ベルの音と同時に聞こえた嫌な声。
 ロビン…相変わらず失礼な態度!
「いらっしゃいませ。あの、ロビンさん。姉さんはまだ…。」
 サラが焦りながら、お店に入ってきたロビンという青年に声を掛ける。
「サラちゃん、相変わらず嘘が下手だねー。姉と違って素直でいいところだけどさ。」
「本当です、姉さんはまだ部屋の方にいるんですっ!」
「わかったわかった、そういう事にしといてあげるよ。ミレーヌ!妹に庇われて良かったな。また来てやるからな!今度はレジから出てろよ!」
 そう言いながらロビンは店を出て行った。
「姉さん、もう大丈夫よ。」
「もうっ!なんでいっつもあんな暴言吐かれなくちゃならないの!?」
「レジにいる事バレちゃってたわね…。」
「いったいいつから覗いてたのかしら。腹立つーっ!!」

「ミレーヌちゃん、そろそろいいかい?」
 ジェームスさんが気まずそうに声を掛けた。
「すみませんいつも…。すぐ用意します!」

 会計が終わり、品物を抱えながらジェームスさんが話しかけた。
「ロビン君は、相変わらず頻繁に店に来るね。ミレーヌちゃんがお気に入りなんだねぇ。」
「変なこと言わないでくださいよ、ただの嫌がらせですよ、あいつは!」

「いらっしゃい、来てたのかジェームス。」
「ああ、おはよう、トム。」
 その時、やっとパパがお店に入ってきた。
「ミレーヌ!聞こえたぞ。ニールの息子とは本当に何でもないのか?」
「パパ、何でもって…!そんなワケないでしょ!」
 ジェームスさんが口を開いた。
「そういえば、トムとロビン君のところのニールさんとは相変わらず仲が悪いのか?」
「当たり前だ。あんな非常識な輩と仲良くなれるか。」
「もういい大人なんだから、もう少し落ち着いてくれよ。他の近所のみんなも仲の悪さを心配してるぞ。」
「悪いが放っておいてくれ。迷惑は掛けていないつもりだし、あいつとは絶対に関わりたくない。」
「まぁ…。無理強いはしないけどな。それじゃあまた。」
 ジェームスさんがお店を出て行くと、パパが聞いてきた。
「ミレーヌ、何でもないんだな?本当に?」
「さすがにお客さんとしてくる時は迎えるしかないでしょ?でもそれ以上でもそれ以下でもないし。心配しないで、あたしもあの親子は嫌いだもん。」

 パパが経営するこの雑貨店の隣に、名門ニール家の屋敷があって、そこの当主、デーヴィス・ニールさんの一人息子が、さっきのロビンだ。
 口は悪いし、ぶっきらぼうで大嫌いなヤツ。
 一応同じ年齢だったから、小さい頃はサラも含めて一緒に遊んだ仲だった。
 それなのに、ある日を境に、特にあたしをからかうようになったの。
 ロビンはあたしがパパのお店を手伝うようになった2年前から、ずっとあんな調子でお店に時折顔を出している。
 でもなぜかあたしがいない時には、物をちょっと買うだけですぐ帰るらしくて…。
 どう考えてもただの嫌がらせとしか思えない!

 それにしても、パパとデーヴィスさんは、若い頃から仲が悪いみたい。
 今でもいざこざは続いていて、お互いに迷惑を被る事があったらわざわざ家に出向いて、ネチネチと文句を言ってくるほど。
 だから小さい頃にロビンと遊んでいた時も、パパはいい顔をしていなかったんだ。
 勿論、何度か仲が悪い理由を聞いたりしたけど、頑なに答えてくれないので、あたしもサラも理由はわからない。
 そういえば…。
 ロビンがあたしをからかうようになったのって、あたしのママが病気でこの世を去った10年前。
 その頃だった気がする。

 偶然……なのかな。

 
 

 
後書き
次回へ続く 
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