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ランス ~another story~

作者:じーくw
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第3章 リーザス陥落
  第45話 カスタム防衛戦


 その後、永久梯子と呼ばれる入口へと辿り着いた。その梯子は明らかに嫌な気配がする。恐らくはトラップの類だろう。

「へー よくわかったね?」

 そんな時だ。ランス達はプカプカと飛んでいる者 ……ねこまたに再び出会った。

「なんだ? お前。それにここはなんだと言うのだ?」
「ここはね~。永久梯子の入口なんだ。何も知らない冒険者は、そこの梯子をさっさと渡っていって~ 出口のない旅路を永久に彷徨うことになるんだけど……。でも、いきなり見抜いたのは君が初めてだな」
「嫌な気配を感じたからな。……あからさまだ。ここの洞窟の名前も悪魔回廊だ。何があってもおかしくないだろう? ……ロゼめ、こんなのがあるなら、いっておけよ」

 ユーリは、ロゼの顔を思い浮かべながらそう愚痴る。だが、それよりロゼはどうやって此処を突破したのか?も気になるところだろう。大方悪魔達に先導して貰ったと思われるが。

 ……ロゼは今は絶賛楽しみ中だろうから、きっと、くしゃみなんかもしてないだろう。

「ふふ、永久に永久に……飢え死にしちゃうんだ。僕は解除の仕方知ってるけど、そうだね。あるモノを持ってきてくれたら救ってあげてもいいよ?」
「ん……、別に良い」
「へ?」

 ユーリの回答を聞いて戸惑いを見せるねこまた。

「おいコラ! 何勝手に勧めてるのだ! オレ様は永久に彷徨うなんて嫌だぞ」
「わ、私も……(ランス様と一緒なら……、で、でもっ)」

 ランスとシィルは、断ったユーリにそう言っていた。ここから先は、渡ろうとすると、死も同然なのだから、そう反応するのが普通だろう。シィルは、後半は別な考えを持ちつつ合ったようだが……。

「違う違う。ほら、これで大丈夫」
「わきゃっ!?!?」

 ねこまたを横にずらした。
 そこにあったのは、突起物。スイッチの様なモノだ。

「これが、解除する為のスイッチ……だろう? 妙な気配がそこに集まっていたからな。それに、妙に隠している仕草だったし」
「うぅ……」
「んじゃあ……、渡ってる途中でまた使われても厄介だ」
「え……ぁ……」

 ユーリは、ねこまたの方に手を向けた。そして、その数秒後……浮いていたねこまたは、ヒュルヒュルと地面落ちていく。

「あ、あれ? ユーリさん何をしたんですか?」
「ん? ちょっとした、とっておきをな? 幾らなんでも、無害なこいつを斬るのは忍びないから」

 ユーリは、にやっと笑うと答えた。シィルは、ねこまたを見た。ユーリが何をしたのか……、シィルは悟ったようだ。

「(やっぱりスリープ……ですよね? 以前より、ずっと早くて、強力な魔力を感じます……でも、ユーリさんは魔法使いではないって言ってたのに…?)」

 シィルは、再び疑問を感じていた。
 以前に聞いてみた時、間違いなく否定をしていたはずだけれど、この感じはどう見ても魔力だ。

「さ、今のうちに永久梯子とやらを渡ろう」
「がはは! これの何処が永久なのだ! もう、向こう岸についたぞ? おい、お前ら さっさと来ないか」

 ランスは、どうやらもう先へと進んでいたようだ。向こう側から声が聞こえてきた。

「……一応実験にオレが行くつもりだったが、手間が省けたな」

 ユーリはそう言っていた。完全に100%解けたかどうか?は判らないから。

「あ……はは、アイツは悪運が強い方って事ですね……」
「あ、あぅぅ……ランス様ぁ……」
「いやいや、一応自信はあったって。でも、結果的にはシィルちゃんには悪い事したな。……悪い」
「い、いえっ! そんな風には……。ユーリさんは悪くないですよぅ!」

 ユーリに謝られたシィルは、慌てて両手を振った。結果的に、ランスが独断で踏み込んだんだし、ユーリの話を聞く以上は万全を期してくれようとした事も踏まえても、ユーリには非は無いのだから。

「おいコラ! さっさと来ないか! 奴隷と下僕共!」

 ランスの声が洞窟内に響き渡る。もう、危険は無いようだからさっさと行く事にした。

「ったく……、誰が下僕だっての。も、何言っても無駄だな。気にしないようにする事が一番か……でもなぁ」

 ユーリは、なんだかやっぱり納得が出来ないようだ……。認めてしまったら、なんだか負けに思えてしまうから。

「只管拒否をし続けるか」
「あはは……、確かにユーリさんの方が圧倒的に強いのに」

 かなみは、そう言っていた。
 レベルの差だってあるし、先ほどのリターンデーモンとの一戦。いや……、一戦と呼べるものじゃない程一方的だった。相手が相手だったから、命は奪っていないにしても、同情していない。……自分達の為に、戦ってくれたのだから。
 もしも、身体を差し出さなければ通れないのであれば、ランスの性格上、シィルはダメだから、自分がなるだろう事は判っていたから。

「まぁ……戦いにおいては、負けるつもりはサラサラない。ランスは勿論、他の誰が相手でも。……でもま、レベルや技能だけじゃないのも事実だ」
「ユーリさんはそう言うって思ってました。ず~っと言ってますもんね? でも、それでも 私の中ではユーリさんが、一番です」
「え……?」
「………あっ///」

 かなみは、思わず口を抑えた。一体自分は何を言ってしまったんだろう、と。とても恥ずかしいセリフを臆面もなく言ってしまった事実を思い返して。

「そうか。素直に嬉しいよ。ありがとな」
「あ……はい……///」

 言葉の中に《好き》と言うセリフを入れてなかった事が良かったのか悪かったのか……。それは、かなみにはわからなかったのである。

 そして、その後……。

 永久梯子を渡った先で待っていたランス。絶対に不機嫌だろうと思えたが、マンザラでも無かったようだ。渡った先で手に入れたラレラレ石を手に持っていたからだ。

「ぐふふ……『肉欲の診察室』に『好奇心ギャル』か。どっちもHなヤツだ。これは是非帰ったら視聴しなければ!」

 入っていたのは、勿論アダルトモノだった。
 この場所といいリスの洞窟でといい、結構、ラレラレ石との遭遇率?が高いようだ。

「はぁ、あのデーモン達が見ているのかね? ここから出そうにないしな。ロゼに散々やられて、多分暫くは見ないと思うが……」

 ユーリのその考えは的を射ているのである。彼らリターンデーモン達は、足腰が立たなくなってしまっているのだから。

「………その、ユーリさんも……見たりしてるんですか?」
「ん?」

 かなみは、複雑そうに聞いていた。

 確かに健全な男の子だったら、それが当然であり 当たり前とも言えるだろう。……アブノーマルに比べたら 確かにマシなのだけれど……、かなみは何処か嫌だった様だ。

「……んなの見るのはガキだガキ。……とも言えないかな、一応 ノーコメントだ。オレだって男だし。でも、家には間違いなく無いぞ? ……合ったらヒトミにも、影響悪いだろ」

 ユーリは頭を掻きながらそう言っていた。女の子にそう簡単に答える程、デリカシーが無いわけじゃない。

 そして、かなみにとっても、全く興味がないと言うのも複雑だから……この回答が一番良いモノだと、思っていた。女の子に興味がなかったら……自分自身にも興味がないと言う事なのだから。

「ああ……確かにヒトミちゃんにはそうですよね」
「だろう? ま、色々とマセてるが、とりあえずそれ以上は、OUTだ。さぁ 行くぞ。そろそろ出口が近そうだ」

 ユーリは、ランス達がいる方へと進んでいった。かなみも、その後ろに続いた。ランス達は、既に奥へと向かっている。外の光が差し込む場所へと。

 確かにもう出口は目と鼻の先にあった。

 先へと進むにつれて、光の量は増してくるようだ。漸く悪魔の通路を通り抜ける事が出来たようだ。

「皆さん、出口です! やりましたね、ランス様」

 シィルが先頭でそう言った。
 それを聞いたランスは、一気に歓喜の声を上げる。

「がははは、ミッションコンプリートだぁ! うむうむ、やはり外の方が空気も美味いと言うものだ!」
「……まだだろう。寧ろココからだ。カスタムにはヘルマンの兵がいてもおかしくないんだからな」
「がはは、そんなもんオレ様の手にかかれば、楽勝! ちょちょいのチョイで救って、恩を売ってくれるわ! ぐふふ……」

 いやらしい顔で笑うランス。……そして、ランスとは対照的にユーリの声は低く、そして恐ろしい程までに集中しているのが判る。ランスは、それでも漸くここから外に出られる事に嬉しいのか、機嫌は ラレラレ石を手に入れた時よりもよく感じた。

 そして、ユーリの隣でいたかなみは、ユーリの集中しているのがよく判ったようだ。

「(……やっぱり、とても大切な人なんだ)」

 シィルに簡単ではあるが、事情は聞いているから、気持ちはよく判ってるつもりなんだ。
 色々と想うところはあるけれど、今はユーリと共にカスタムを救うことだけに集中したほうが良いと、かなみは思った。

 そして、洞窟を抜けた先はもう既にユーリが危惧したとおり、戦乱の嵐の中だった。激しい爆発音が辺に響き渡っており、猛る怒声も聞こえてくる。

 だが、目の前にいたのはヘルマンの兵ではなく、自分たちを取り囲むように沢山の女の子たちが覗き込んでいたのだ。

「あれ?ランス? それに、ユーリさんじゃない!」

 自分達の姿を確認した中央にいた作業着をきた女の子の1人がそう叫んでいた。
ランスは、首をかしげている。……誰だ?と思っていたようだ。だが、相手は女の子だから、嫌そうな顔はせずに直ぐにいつもの調子になる。

「むちむちした良い太ももの女だな? おお、さてはオレ様のファンか? だから、名前を知っているのだな??」
「違うだろ、馬鹿。久しぶりだな。マリア」

 ユーリは、そう答える。
 確かにあの時、カスタムの事件の時の服装とは違い、そして髪型も変わっているが、前にあったのはほんの少し前。女は短い時間で成長をすると言うのは聞いたことがあったが(ユーリは、羨ましい……と、変に思ってたりもしてる)、そこまでは変わっていないのだ。

「本当です、マリアさんですね。お久しぶりです。ご無事で良かったです!」
「わ~っ! シィルちゃんも一緒なのね! ひさしぶり、また会えて嬉しいわ!」
「……へ??」

 シィルは判ったようだが、ランスはまだ判ってないようだ。

「っとにもー。忘れたの? まぁ、前に会った時は、髪型は三つ編みで、服もワンピースだったし、印象変わったとは思うけどさ。 ランス。……私よ。マリア・カスタード。ユーリさんもシィルちゃんも、久しぶりね」

 忘れているランスはとりあえず置いといて、覚えてくれていた2人に挨拶を交わした。

「本当に、マリアか? イメチェンする時は、オレ様の許可を取れ」
「もうっ、なんで、髪型変えるだけで、ランスの許可を取る必要があるのよ! 勝手に決めないでっ!」

 マリアは、ランスの物言いにぷんぷんと怒っているが、内心では、喜んでいるようにも見える。それは、援軍に来てくれたと解釈もしたし、何よりもランスが来てくれた事もあるだろう。

「再会を懐かしむのは後にしようか、それで、いきなりで悪いがマリア、カスタムの状況を教えてくれ。……志津香は、他の皆は無事か?」

 ユーリは真剣な顔つきになりそう聞いた。

 それを聞いたマリアは、表情を強ばらせる。いつもの彼女なら、真っ先に自身の親友の名前が出たのだ。ここぞとばかりに、脳内にその言葉を保存し、後で再生をして聞かせてやろうとも画策出来るのだが……、今はそれどころじゃないのだ。

「それが……、私たちの部隊は大丈夫なんだけど、今また、ヘルマンの軍が攻めて来ていて……志津香が率いている魔法使いの部隊いる場所に攻撃が集中しているんです」

 敵の数は圧倒的だ。

 だが、それでもカスタムの進行には手古摺っている。それは恐らく個々の実力もあるだろうが、指揮官が優秀なのだろうとも思える。だが、それでも少数と言う事実は消せない。どんな戦でも、数が多い方が圧倒的に有利なのだから。

「ほうほう、つまりは志津香のヤツがピンチなのだな?」
「うん……。町の巡回に回ってる時に攻めてきて、それで志津香たちが迎撃をしてくれてるの。ランの部隊も駆けつけてくれてるけど、今回1点にかけてくる兵力が大きくて……その上、遠巻きに私たちにも牽制をかけてきて。早く救済に行かなきゃいけないのに動きがとりづらくて…」

 一点集中、一点突破をして、内から外から同時に攻めてくる手法をとっている様だ。

 内を固めて、外からの進撃を阻止し続ければいくらか防ぐことは出来るだろう。マリアのチューリップ、そして志津香たちの魔法。それが可能だったからこそ、今まで防衛をしてこれたのだ。……が、一点でも突破されて、内に侵入を許してしまえば、そうはいかない。内外と両方と戦わなければならないのだから。

「がははは! なら、オレ様が格好よく救って、恩を売る最初のオレの女が志津香に決定だ! がははは!」

 ランスは上機嫌で笑いながら剣を肩に担ぐ。早速行こうとしたのだが……。

「あ、あれ? ユーリさん??」

 かなみが振り返ったその時にはもういなかった。
 忍者を彷彿させるかの様な速度、あるいは、気配を消したのだろうか?と思える様にこの場からユーリが姿を消していたのだ。

「なにぃぃ!! あのガキめ! また 抜けがけをするつもりじゃないだろうな!! こうはしておれん!行くぞ、シィル! かなみ!」
「あ、はい! 判りました。ランス様!」
「……ええ、行きます!」

 シィルも慌てて、ランスに付いていき、かなみも腰に挿してある忍者刀の柄を握りながら走っていった。

「……ユーリさん。志津香を……お願いします」

 マリアは、向かった先を。……志津香がいるであろう先を見てそう呟くと、まだヘルマン軍達が蔓延っている場所に向かって、構えた。

「……よし、ここは、絶対に通さないわよ! チューリップよーーい!!」

 マリアの一言で、部隊の全員がチューリップ一号を構える。そして……。

「撃てーーっ!!」

 マリア達は、まだ戦塵の渦巻く方へとチューリップによる砲撃を放った。マリアの部隊は、チューリップを装備している部隊だ。


 第一、第二と続いて一斉に砲撃を放っていったのだった。










~カスタムの町 東側~


 そこでは、マリア達が居た場所とは比較にならない程に戦塵が渦巻いていた。

 そして、敵味方問わず、倒れている数も多い。それでも、カスタムのメンバーが倒れているのが少ないのは流石と言えるだろう。

「このっ!!」

 その中で、剣を振り上げ、前衛を買って出てくれているトマトが剣を振るい、迎撃している姿があった。その姿は、アイテム屋とは到底思えない程、奮戦している。勇猛果敢とも言えるだろう。

「ランさーん! ここは、トマトに任せるですかねー! 急いで、このトマト印の世色癌を、志津香さん達に渡してきてほしいですかねー!」
「トマトさんっ! ありがとう! ここ、お願いね!」

 トマトと背中合わせに戦っていたのは、嘗てカスタムの四魔女の一角だったエレノア・ラン。

 魔力は、指輪のせいで多く失われているが、彼女は剣術も心得ている為接近戦でも活躍をし、指揮力にも優れている。部隊のリーダーを任されている程なのだ。

「ははっ! 先に後衛をやっちまえば、後は総崩れだ! 行くぞ! 野郎ども!!」

 無論ヘルマン側も負けてはいない。

 元々数では圧倒しているのだ、そういった奢りから攻めきれずにいたようだが、今は違っていた。
この部隊で強力なのは魔法使い達。前衛が抑えている間に強力な魔法で一掃するのが、彼女達の戦法。だからこそ、その攻撃の要を先に処分する。厄介な後衛を先に潰すのが定石なのだ。

「くっ……! しつこいわねっ!!」

 志津香は、肩で息をしながらも、必死に魔法を駆使して、敵を薙ぎ払っている。だが、どうしても物量の差は出てしまう。

 彼女の最強の魔法である白色破壊光線を詠唱する暇も無いし、その上連続して行っている戦闘の為、皆疲弊していると言うのもある。
 
 マリア達が駆けつけてくれるのだけが望みと言う状態だ。……つまり、戦況はこの上なく悪いと言う事だ。気の強い彼女がそれを認めたくないのは仕方が無い事だった。

「(くっ……、まさか、マリア達の方にも何かあったの?)」

 そんな中でも、悪い予感が志津香の頭を過ぎっていた。考えまいとしていた事だが、これだけ兵力を集めてきているのに、直ぐに駆けつけてこれないと言う事は、間違いなく何かあったんだとしか思えない。

「へへへ。魔法使いなんざ、距離を詰めれば楽勝よ!」
「な、なんですって!!」
「あっ だ、ダメです! 志津香さん! そんなに前に出ては!!」

 それは志津香の弱点。
 直ぐに熱くなってしまうと言う事。挑発に弱いと言う事。

 熱くなるが故に集中力が散漫になってしまう。魔法においてはそれは致命的だろう。集中力が無ければ、威力も出ず、魔力も霧散してしまう。そして、霧散してしまえば……。

「きゃあっ!!」

 周囲への注意力も散漫になってしまうのだ。飛来してきた矢が志津香の身体を掠めた。続いて、第2、第3の矢が、志津香の脚にも掠める。数を考えれば 直撃しなかっただけで、幸運と言えるが 脚を掠めた為、バランスを崩してしまい倒れてしまった。

「ひゃはは!! 殺ったぜぇぇ!!!」
「っ!!」
「志津香っ!!」

 ランが駆けつけて来たが、もう手遅れだと言う事は、残酷なまでに判ってしまっていた。何故なら、自分と志津香とは距離がありすぎる。近接戦闘を主体とするランと後方火力支援主体の志津香だ。……接近戦となってしまえば、どうなるのか、見るより明らか。


 そのヘルマンの剣が志津香に迫っているのがはっきりと目に焼き付いた。


「やめてぇぇぇ!!」


 ランが叫びを上げるが、その剣が止まる事はない。喜々として剣を振り上げているヘルマン軍は、止まらない。

「(こ、こんな所で終わるわけには いかないのに……)」

 この時、志津香の頭は急速に回転を上げた。

 これは、死の間際に見ると言われる走馬灯と呼ばれるものだろう。

「(私は……あいつと一緒に……ラガールを……って約束をした……のに)」

 もう後ほんの一寸の距離にに白刃が迫ってきている。全てがスローモーションだけど、決して止まってくれる訳でも、自分が早く動ける訳でもない。

「(アイツ……ゆー……と一緒に……)」

 そして、最後に思い浮かべるのはいつも思っていた事。


『アンタは絶対にいなくなるんじゃないわよ……』


 頭の中で、その顔を思い浮かべる時、決まって 志津香は呟く。

 また、出会えた喜びを知って……そして、大切な人がいなくなってしまう苦しみを知っているからこそ強くそう思っていたのだ。なのに……自分が……。

 志津香は、最後の瞬間は目を開ける事が出来ず、思わず目を瞑ってしまった。

「ゆぅ……!」

 そして、最後に出てきたのは……大切な人の顔と名前、だった。そして。


――……ゆぅに、会いたい。


 その言葉は、出る事は無かった。

 目をぎゅっと瞑っている志津香。

 だけど、一向に刃が襲ってくる事は無かった。死の直前は全てがスローモーションになっている。そう感じているのだけど、それでも遅すぎるのだ。

 そして、響いたのは 金属の音。何かが弾ける様な甲高い音。

 それを訊いて、志津香は、ゆっくりと目を開けた。

 そこに立っていたのは……。


「なんだてめぇ!!」

 確実に、放たれていれば志津香の命を奪っていただろう刃。それを受け止めてくれたのは。

「……これから」

 男は ゆっくりと、相手を見据えた。そして、相手の目を見て叫ぶ。あらゆる負の感情を込めて。殺意を込めて。


「これから死ぬヤツに名乗る名は無ぇ!!!!」


 その怒号と共に繰り出した男の剣技は、ヘルマン軍の剣を粉砕した。

 体格の比較的大きい、ヘルマン軍の自分より、遥かに小さく華奢とも思える男の何処にこんな力があるのだろうか。剣を粉砕された一撃の威力は、そのままヘルマン兵の身体を吹き飛ばしていた。吹き飛ばされた男は、無数の兵達の中へ頭から突っ込んでいき、見えなくなった。

「ぎゃぁぁぁっ!!」

 そして、遅れて響くのは、男の悲鳴。


「……死にたくないヤツからかかってこいと、言う所だったが……」

 凶悪な殺気が場に渦巻いた。
 それがまるで意思を持っているかの様に剣に纏うと、更に一段階、殺気が上がったと錯覚される。宛ら、その姿は悪鬼だと言えるだろう。

「貴様らは、ひとり残らず叩き潰す! 滅殺だ!」

 ユーリは、その身に殺意を纏い、剣を構えながら、無数のヘルマン兵へと突進していった。



「あ………」

 志津香は何が起きたのか理解するのに、時間がかかっていた。

 確かに、あの一瞬……彼の顔が頭を過ぎった。最後の瞬間に、死ぬ寸前に浮かんだ。それは カスタムの皆の顔じゃなく……彼の顔が。そして、次に目を開けたら……。

「ふん。ユーリめ! 自分だけ格好をつけよって!」

 そして、遅れて駆けつけてきたのが、もう1人の男だった。見覚えがある男。

「む? がはは。なんだ志津香、腰が抜けているようだな? オレ様が優しく抱き起こしてやろう! その代わり、お前にはオレ様の皇帝液を抜いてもらうぞ? がははは!」
「あ、あんたは……」

 呆気に取られてしまったが、目の前にいるのは間違いなくあの時の男。

 ランスだった。

 つまり、さっきのは幻覚の類ではない。……助けてくれたのは間違いなく。

「ゆーっ……」

 志津香は思わず涙ぐんでいた。彼の姿を思い浮かべながら。

「志津香っ!? 無事なのっ!」

 ランが駆け寄り、志津香に世色癌と元気の薬、竜角惨を差し出した。

「え、ええ……大丈夫」
「ユーリさんが……、来てくれました。これで大丈夫っ……」

 ランも涙ぐんでいた。

 志津香が斬られてしまうと思ったあの時。彼女も生きた心地がしなかったんだ。目の前で……仲間が、苦楽を共にした親友が死んでしまう光景など、悪夢以外の何でもないのだから。だからこそ……、助けてくれた事が嬉しかったのだ。
 そして、ランにとっても憧れの人だから。

「ランさ~~んっ! こっちのヘルマン兵達が突然減ったですかねー! 大丈夫ですかぁー!? ああっ!!」
 
 少し遅れてトマトが駆け足でこちらへとやってきた。
 ユーリ、そして、ランス達の参戦により、分散している余裕が無くなってしまったようなのだ。そして、トマトの目にも彼の姿が映った。
 あの凶悪なヘルマン軍の巨体。それを物ともせずに、無双している彼の姿を。

「ユーリさんじゃないですかー!! 来てくれたんですかねー! これは、トマトの願いが天に届いたですかねー!! 間違いないですかねー!!」

 トマトは何故か、天に向かって拳を突き上げていた。

 つまり、この戦いの最中、彼の事を想っていたのは決して1人だけじゃないという事だ。

「皆さん、大丈夫ですか?? いたいのいたいの、とんでけー!」

 シィルが少し遅れて合流し、傷ついているラン達にヒーリングを施した。シィルの顔を見た皆は安堵の表情を作る。

「あ、ありがとう。シィルちゃん」
「おお、ユーリさんだけでなく、シィルさんまで 来てくれたですかー! これはもう絶対勝てるですかねー! トマト、まだまだ、頑張るですよー!」
「あ、はい! ランス様も一緒です。後はリーザスのかなみさん」

 シィルは指を指してそう答えた。

 その先には、ランス、そしてかなみも戦っていたのだ。

 勿論、ランス、シィルは知っているのだけど、もう1人の女の子は知らない。


「むむむっ!……ランスさんは兎も角、あの人はトマト、知らないですかねー。……ライバル出現の予感、びんびんですかねー!」
「馬鹿な事言わないで! 私たちも早く援護するわよ!! 敵の数はまだまだ多いんだからっ!」

 志津香は、いつもの調子を戻し、魔法の詠唱に入った。

「真知子さんやロゼさんと付き合っている間に、このスキルに目覚めました~! これで、トマトも一気に有利に!」
「はいはい! 判ったから、手を動かす!」
「行きます!!」

 志津香は、火爆破を主に使用し、周囲の敵を一掃。

 そして、怯んだ相手を、更に気合の入ったトマトとラン達部隊の剣撃で仕留めていった。



 次々とヘルマン軍をなぎ払って言った後。ユーリはある男を前に、脚を止めた。

「……お前が、志津香を襲った。手に掛けようとした奴……だな」

 睨みつけるユーリ。その前にいるのは最初にユーリが吹き飛ばした相手だ。

「ぐっ……、て、てめぇ……」

 あの衝撃のせいか、意識が少し朦朧としてしまっているようだ。

 だからこそ、この男は 今の現状が判っていない。

 目の前の男1人に、何人モノ兵を屠られたと言う事実が判ってなかったのだ。無残に倒れている仲間達も全く目に入ってなかった。ただただ、怒りだけしか無かった。

「この野郎が! これは戦争だぁ! 殺そうが、犯そうが、勝者が敗者に何したって許されるんだよ! どんな手を使ったかしらねえが、次はねえぞ! このガキが! 助けたつもりだろうが、あの女も、次はぶっ殺して、死体を犯してやる!!」

 ユーリの顔を見ながらそう叫びを入れる男。

 その言葉は、比較的周りに響いた様だ。到底許せる様な台詞じゃない。だけど、それ以上にこの男は地雷を踏んでしまっていた事に気づいた。

 つまり、ユーリのことを知っている面々は、この時ばかりは、少なからず男に同情をしてしまったようだ。


「………」


 ユーリは、志津香を殺そうとした事実+さっき言われた暴言(ガキ)が合わさり、怒りのボルテージが振り切りそうになってしまう。

 その怒りは、剣に宿す……つまり、頭は比較的冷静に、そしてそれ以外の殺気は武器に全てを込めた。

「煉獄……」

 剣の柄を握り締める。手から迸るオーラは、剣の切っ先まで伸び、その刀身を暗黒に染めた。

「ん!! なっ……!?」

 目の前の男の姿が変わった。

 まるで悪鬼になったかの様な気配を感じたのだ。同じ人間に思えない気配。その驚異は、直ぐに来た。

「滅!」

 男がそう叫んだ瞬間だった。

「…………ぁ!!」

 何をされたのかすら判らない。

 少し離れた位置にいた男が一瞬で眼前に迫った瞬間。持っていた剣が増えた感覚があった。増えた……と言うより、目の前に突然壁が現れたのだ。そして、意識は完全に絶たれてしまった。

「……貴様は、地獄に落ちろ」

 ユーリは、剣を振るい、僅かに着いた血を飛ばした。突きの壁の正体は《煉獄・滅》。それは男の全てを奪っていた。

 剣に付いているのはわずかな血痕の為、鮮血さえも奪い去ったようだ。相手の身体は無くなっている。厳密には、超高速の突きの乱れ打ちだった。それが男の身体を比較的細かくミンチにしたのだ。それは纏っていた鎧すらも塵と化し、戦塵に煽られ空に舞っていったのだった。


 それを目の当たりにしたヘルマン軍は、最早戦意を喪失してしまい、武器をかなぐり捨て、敗走をした。今戦っている相手は人間ではない。と思ったからだ。

「がははは! オレ様の勝利~! 敵は尻尾を巻いて逃げていくぞ? がははは!」

 ランスも剣をぶんっと振るい、血を飛ばしていた。
 活躍少ない……と思うかもしれないが、ここ一番ではユーリ程とは行かないが、それ以外とは比べ物にならないくらいのヘルマン兵達を屠っていたのだ。つまり、ランスは怒るだろうが、活躍ランクNo.2はしているという事。

「ふぅ……、ユーリさん? お、終わりましたよ」

 かなみは恐る恐ると言った感じでユーリに声をかけた。あれだけ怒ってしまっていたから……少し萎縮したようだ。

「……ああ。大丈夫だ。かなみもフォローありがとな?」
「いえ、私も役にたたないといけませんから!」

 もう、いつものユーリに戻ってくれていた。
 恐ろしいと思ったけれど、その怒りが誰かの為に生まれているんだから、決してユーリから距離を取ったりは かなみはしない。

 それは、この町の住人も同じだった。

「久しぶり、ね。……ゆーっ……ユーリ」
「……志津香」

 ユーリは、志津香の顔を落ち着いて見た。どうやら、怪我らしい怪我はないようだ。シィルや、トマトの回復薬のおかげでもあるだろう。そんな志津香を見て、ユーリは心底安堵したようだ。

「良かった……」

 彼女を見て、そう言っていた。

「っ……。う、うん。一先ず礼は言っとくわ。ありがとう」
「ああ、カスタムの皆も無事で良かった」

 ユーリの表情は、完全に綻んだ。先ほどの殺意などは全て霧散。いや ヘルマン軍達に与え切ったのだろう。

 志津香の後も他の皆の方を見て 笑っていた。カスタムのことが本当に心配だったのだ。その中でもユーリにとっては志津香の存在が大きくウエイトを占めていたようだ。そして、志津香もユーリを見る目はとても穏やかな物に変わっていた。

「うぅ~……、やっぱし、最大最強のライバルは志津香さんですかねー。……でも、諦めないですかねー!」

トマトは、2人のやり取りを見ていて、触発された様に、『うおおおおっ!』と声を上げていた。勝鬨? と 傍から見れば思うだろう。

「志津香……ずるい……私だって一緒にお話したいこといっぱいあるのに……」
 
 ランも何処か哀愁を漂わせている。
 だけど、あの間に入る事は出来そうにないのだから。

 こんな状況だというのに、乙女の熾烈な駆け引きが続いているのだ。当然だが、かなみもその機微は理解できており……。と言うか、ユーリを見る目が他の人と違うのは明らかだから嫌でも判るのだ。

「あぁ……やっぱりヒトミちゃんの言うとおりだ……」

 ユーリの家に泊まった時にヒトミが言っていた『他にもいっぱいいると思うんだ』と言う言葉を思い出していた。




~ユーリ宅~



「くしゅんっ……! んん??」

 ヒトミは突如くしゃみをしてしまった事から、誰かが噂したのでは?と察した。

「ああ~……ひょっとしたら、お兄ちゃんにまた女の人が……?」

 ……ヒトミは何かを察した様に、ニヤニヤと笑っていた。これは、種類こそは違えど、根本的嗅覚は、ロゼ達にも匹敵しそうなものなのである。







 そして、場面は再びカスタムの町。

 被害0とまではいかないが……、一先ずカスタム陥落の危機は去ったのだった。



~カスタムの町~




「がははは! 喜べ、オレ様が来たからには、もう大丈夫だぞ! ヘルマン軍など、かる~くぶっ潰してやろう!」

 ヘルマン軍が敗走した後。ランスは、腰に手を当て、ふんぞり返りながらそう声を上げていた。

「オレ様の女たちに手を出したのだからな! がははは!奴らは極刑だ!」
「もうっ! だから、誰がランスの女なのよ!」
「がははは、決まっているだろ、お前らの事だ!」

 ランスはビシーっと周りにいた女たちを指さした。
 ユーリは、遠目で彼女達を見ていたが……、本当に女が大半を占めている。こんな状況で本当によく持ちこたえたものだと、関心をしていたのだ。

「いーや トマトは、断然ユーリさん派ですかねー!」
「おいコラ! 不感症娘! オレ様の許可なく、ユーリ側(そっち)に行くんじゃない!」

 ランスに止められそうになったトマトだったが、巧みに擦りぬけると、べぇ~! っと舌を出しながらユーリの方へと向かっていった。

「む! そーいえばユーリ! 貴様抜けがけをしようとしたな!? 志津香は、オレ様のモノだと言っただろうが!」
「誰がランスの女よ! この馬鹿ッ!」

 志津香は、顔を赤くさせる程、怒りを込めて猛抗議をしていた。

 だが、不快であれど、これは志津香にとっては、理想的な展開でもある。さっき、守ってくれた姿が目に焼き付いて離れないのだから。この時、顔を赤らめて怒ったとしても……。

「がははは、照れるな照れるな。顔が赤いぞ?」
「怒って赤くなってるのよ!」

 そう、ランスに言われたから、顔が赤いのだと。怒っているからこそ、顔が赤いのだと。志津香はそう言い訳が出来るから。


「やれやれ……」

 何も判っていないユーリは、いつも通り、ため息を吐いていた。

「ふふ、久しぶりだな。ユーリ」
「ああ、ミリか。お疲れだったな。よく持ちこたえた」
「オレを誰だと思ってんだ? このカスタムは絶対に落とさせやしないよ」

 ミリは胸を張って答えた。
 彼女の実力はよく知っている。このカスタム防衛には欠かすことが出来ない戦力になっていたのだ。

「だな。これからはオレ達も手を貸すよ」
「おお、そりゃ助かるな。……さっきはああは言ったが正直、そろそろキツイと思っていた所なんでな」

 ミリは、全員を見渡しながらそう答えた。
 薬で傷を癒す事は出来たとしても、限界はあるし、疲弊もしていく。妹のミルも頑張って戦っていたが、まだ子供。疲労感が溜まって今は眠っている。

 相手の戦力も遥かに上だし、口ではそう強がったとしても……時間の問題だったのだから。

 そして、まるで狙ったかのように現れたのはランス。

「おいコラユーリ! オレ様の女たち手当たり次第に色目使うつもりか!!」
「だから、誰が使ってるんだよ! 何度も何度も的外れな事ばっか言うなっての!」

 流石に何度も突っかかってくる為、ユーリも思わず応戦をしてしまっていた。


 その姿を見る志津香。


 相変わらず元気そうで変わらない。
 本当に……来てくれて良かったと、志津香は遠目で彼を見ていた。そんな時だ。

「むっふふ~! し~づかっ?」
「っっ!?」

 声がしたのと同時に志津香の肩を叩いた。
 思わず飛び上がるように振り返ると、そこにいたのは、妙に笑顔なマリア。

「傍に行かなくていいの?志津香にとっての白馬のおうz「ふんっ!!」ふぃっ!!」

 最後まで言わせず、志津香は素早くマリアの頬を抓った。

「……一体、な・に を 言おうとしているのかしら……? この口は?」
「い、いふぁい(痛い)! いふぁいひょ(痛いよ)! しづゅきゃっ(志津香っ)!」

 ぐに~んと面白いくらいにマリアの頬が伸びていく。

「むむむ、志津香さんっ! トマトも負けないですよ~!」
「っ!! な、何を言ってるのよっ!!」
「ふふ……、もう 無理なんじゃないですか? 誤魔化すのも。ね? 志津香さん」
「ま、真知子までっ!!」

 囲まれてやいのやいのと言い合っている皆。マリアは、頬の痛みからは解放された。

「ふぅ、あ~痛かったぁ」

 まだ、若干ヒリヒリするようだ、だけど、これは幸せの痛みだって言っていい。だって、皆が無事だったから。また、こうやって馬鹿な騒ぎを出来る様になったのだから。

「良かった……本当に。ありがとう、ユーリさん。……ランス」

 まだ言い合っている2人の方を見ながらそう呟くマリア。

 そして、よくよく考えたら、この痛みも随分と懐かしい気がする。平和の証、幸せな痛みだと思える頬のヒリヒリ感。

 ……密かに?惹かれているランスと皆に笑顔を戻してくれたユーリ。
 今はカスタムの四方八方を囲まれている状態であり、絶望的な状況なのは変わらないこの2人がいれば大丈夫だと思えるんだ。






~リーザス城 廊下~



 薄暗い廊下を歩く足音が2つ。
 重厚なもの、そして軽やかなもの。……しかしいずれも人のものではなかった。

 そう、魔人の2人だ。

「……………ふむ」

 ノスの重い口がゆっくりと動いた。それを見たアイゼルは。

「何か、気に病む事でも、ノス?」

 表情の読めないノスが漏らした呼気から、意を察した為、視線を向けたのだ。

「ヘルマン軍ども……、歩みが止まったようだな」
「ああ……」

 それは、皇子を通じて、軍内部の情報は絶えず入ってくる。今でこそ、リーザスを陥落せしめたと言う事で、有頂天になっているあの皇子だったが、勿論吉報だけではないのも事実だ。アイゼルは、小さく肩を竦めてみせた。

「少々、抵抗に遭っているようですね。これだけの優勢。多勢に無勢状況であるのにも関わらず。……まるで 美しくない。所詮は人間、と言う事を考えれば納得ですが」 
「ふっ…… 足りぬ」

 嘲りさえ優美に、何処か楽しむように呟くアイゼルに対し、ノスは短く、そして重く吐き捨てた。

「混乱を、拡大するのだ。……今少しばかりは、奴らには踊ってもらわなければならぬのでな」
「そうですね。……演者が物足りなければ、梃子入れが定石、でしょう」
「……出せるか?」
「ええ。既に1人。使徒を向かわせております。それで多少は 埒が明くでしょう」
「ふん。……世話の焼ける」

 ノスはそう呟くと踵を返した。 

 忌々しさも無論沸くが、また、あの男の傍へといく為だ。現在はサテラがいる。……あの娘だけでは 心配だから、と言う理由も少なくはないのだった。










~リーザス城 ヘルマン軍司令部~

 
 玉座に座しているパットン。
 全てを手中に納めたと 言わんばかりに手を開いて、そして握り締めた。

「ふ……ふふふ、リーザスは既に我が手中。そして、自由都市地帯も最早時間の問題だ。全て我がヘルマン第3軍により、制圧されるであろう」

 脚を組み直し……、そして口元に手を置いてにやりと笑った。

「おめでとうございます。パットン皇子!」

 部下の皆が平伏し、頭を垂れた。

「ふ……くふふふ……、これで 父上も私を認めてくださる筈だ。否、認めざるを得なくなる。あんな売女との間で生まれたシーラに皇帝の座を取られてたまるか。……例え、あんな売女、そしてステッセルに踊らされているだけだとしてもな」

 元々パットンは、皇帝と妾との間で生まれた子であった。それを認める前に、母親を失ってしまった。妾の地位のままに……。

「ヘルマン共和国の次の皇帝は 私以外にある筈が無いのだ……、く、ふふふふふ……」

 笑みを絶やす事無く、笑い続けるパットン。


――……誰からも愛される様な皇子にと願っていた彼の母親、今の彼を母親が見たらどう思うだろうか。


 それは、誰にも判らない。
 パットン自身も、考えてすらない事だった。

「そう、パットン様しかありえません! これまでの歴史上、ここまで侵攻出来た事など……貴方が、パットン皇帝が歴史を作るのです!」
「パットン皇帝!万歳!!」

 一斉に手が上がる部下たち。

 彼らはパットンの側近で守護する部隊であり、勝ち馬にはとことんまでのる。
 つまりは おべっかだ。今後も恩恵をあやかれる様にと。パットン自体は、継承者とも言われていた立場もあり、慣れてはいたのだが ヘルマン国内での扱いは、日に日に増して悪くなり、居心地も悪くなっていた事を考えれば、悪くない雰囲気であり、気分も悪くない。


「……ふん。もっと格好良い皇子だったら良いのにさ」

 背後にいた2人の内の1人がそう呟く。
 パットン周囲の連中の声が大きかったからか、それがパットンに伝わることも無かった。

「サテラ……」
「判ってる」

 そう、2人の内の1人はサテラ。そして、サテラを黙らせたのが、先ほどここへとやって来たノスである。

「ノス。私たちが人間界を全て支配した時には、お前たち魔人と共存出来る素晴らしい世界が築かれているであろう」
「…………」
「(なんで、こんな弱っちい人間と共存なんか……、でも ホーネットの為だから、ここは堪えて……)」

 サテラがこのパットンの言葉で何も反論しなかったのは奇跡に近いと言えるだろう。ノスは、ただ沈黙を貫いていた。

「その時は、ノス。お前が魔人達の指導者である魔王になっているかな?」
「っ……なんで、nぐむっ」

 サテラは今回ばかりは言い返そうとした。自分たちの主はホーネットだと言おうとしたのだが、それに気づいたノスは素早くサテラの口を塞いだ。

「ふん。それに、私が何も知らんとでも思っているのか? お前たちがリア王女から聞き出そうとしている物……、それは、魔人の世界を支配するのに必要な物なのだろう」
「……御意」
「ふがっ! ふががっ!!」

 パットンは、その反応を見ただけで良かった。ノスは表情が見えにくく、読みにくいが サテラは判りやすいから。

「はっはっは……、好きにするが良い。私は、それがなんなのかすら今は興味は無い。……ただし私に歯向かうな」
「………」
「(人間のくせに……人間のくせに……!)」

 パットンは、目つきを鋭くさせていた。ノスからはっきりと、答えが返って来た訳ではない。

 相手は、圧倒的力を持つ魔人だ。

 普通であれば、人間の身で抗う事など不可能。だが、ここまで啖呵を切ると言う事は必ず何かを持っているのだろう。


「パットン皇子!」

その時だった。
このリーザスの玉座の間、ヘルマン軍司令部内に突如 兵が駆け込んできたのだ。

「なんだ? 騒々しい……。そうか、カスタムの町を降伏させたのだな?作戦内容は聞いている。あの規模であれば 一瞬だっただろう」

 パットンが考えていたのは、カスタムの陥落報告だった。事前に作戦の内容も聞いていたからこそ、失敗するとなど微塵も思っていなかったようだ。だが……。

「い、いえ……、先日のカスタムの街への攻撃は、失敗に終わりました」
「なに……?」

 報告内容は、自身が想像していたものとは まるで逆だったのだ。つまりは、負けたと言う報告だった。

「敵は、司令官マリア・カスタードを中心に、少数ながら見事な防衛戦を展開しています」
「敵を褒めたたえていると言うのか……? それに、ヘンダーソンが発案したあの作戦。少数では対処しきれない物と踏んでいたのだが……、私の見込み違いだったのか?」

 パットンは、ギロリと睨みつけた。その眼光に萎縮してしまう兵士だったが、直ぐに首を振る。

「い、いえ! ご安心をっ! 前回の攻撃で、カスタムの防衛線は大分傷を負わせた筈。次の攻撃で必ずや占領出来ます!」
「ふん……、仏の顔も3度までというが、私はそこまで甘くはない。前線の大隊長(ヘンダーソン)に伝えよ。この次は成功の報告以外は無い。その命もな」
「は、はっ!! お任せ下さい! 必ずや、パットン皇子の元へと、吉報を献上致します!」

 兵は急ぎ足でこの場を後にした。



 実はまだ報告していない事実もある。それは、突如現れた者達の存在だった。

「………」

 脳裏に過るあの光景。

 カスタムから逃げるヘルマン兵達の中に彼はいたのだ。あの圧倒的な力の前にしていた。数なんか物ともせずに屈強な兵士を屠る姿。鎧を装備している意味すらないのではと思えるその攻撃力。
しかも、敵は実質たった2人。

 たった2人の加入で一気に覆されてしまったのだ。

「……アイツ、アイツは 中でもアイツだけは……」

 走りながら呟く。2人の内最も恐怖を覚えたのは……あの男だった。

 その脚は報告の時から震えていた。
 失敗の報告をするからだと思っていたようだが、その事実は違っていた。

 1人の人間を……ここまで畏怖するのは、初めて3軍に入ったあの時以来なのだった。

 現在、人類最強と称されるヘルマン一の勇姿。その姿を初めて間近で見たあの時と。


「くっ……」

 震える脚を必死に止めようとする。

「今度は……ヘンダーソン様も もっと大規模攻撃を仕掛けざるを得ない。全兵力を駆使してでも。……ご自身の命が掛かっているのだから。いくら強くても、全勢力相手に勝てる筈がない!」

 自分に言い聞かせる様にそう言っていた。

 彼の言う事は間違いではないのである。
 間違いがない、だからこそ、彼らはあの悪魔の通路を利用してカスタム内に入ったのであり、個々の力だけで大部隊を相手にするのは無理なのだ。つまり、このパットンへの報告はカスタムを更に窮地に追い込む結果になったのだ。

 もう、残された時間は少ない。



~リーザス城 地下牢~



 そこでは、未だに拷問が続いていた。
 さっきまでは、リアとマリスは同牢で拷問をされていたのだが、今はいるのはマリスとサヤだった。

「ふふ……、マリスさんはとっても綺麗な身体をしているわね。痛めつけるのはリア女王だけにしとこうかと思ったけど……、こうも綺麗だと唆るわ」

 その言葉による陰湿極まりない拷問が更に続いていた。

「……っ………」

 裸に剥かれてしまい、羞恥も感じながらも決して心は折れずに 凛としているマリス。そのマリスを見たサヤは舌なめずりをした。

「全く強情ね。貴女も、でもそろそろ教えてくれても良いんじゃないの? ……リーザス王家に伝わる《聖武具》を渡した英雄と言うのは誰のことなのかしら?」
「……し、知りません」
「ふぅん。……全く。仕方ないわね。マリスさんが喋りたくなるように、お友達を呼んであげるわ」

 サヤがさっと後ろに指で合図を送ると、暗闇の中に4人の巨漢が現れた。ヘルマン兵であり、その国柄の大柄な男達。その股間にぶら下げている一物も、先ほどまで拷問で使われた道具の比じゃない。

「さぁ、マリスさんのボーイフレンドの登場よ。彼らにはず~~っと禁欲させてたし、女にも合わせてない。女とSEXする事しか、考えてないはずよ? 謂わば獣の様なものね」
「………」

 マリスは、眉一つ動かさなかった。その反応は流石にサヤの眉を動かすには十分であった。

「まだ、黙っているつもりなのね……。ふふ、もう知らないわよ? 強力な精力剤も使ってるし、最早無限の性欲。私がヤレと命じれば、一晩中……、いや、もっともっと犯り続けているわよ。彼らは、あなたの穴という穴に欲望の液を幾らでも注ぎ続けて……、ふふ 子供が宿っちゃうかもね?ドロドロなこの場所が貴女の出産場所になっちゃうわね」

 サヤは、マリスの下腹部を比較的優しく……撫でた。それが呼ぶのは不快感のみだった。

「好きにすればいいわ……」

 だが、マリスはブレる事はなかった。それが合図。

「犯りなさい」

 サヤが号令をかけた殆ど同時に目をギラつかせた男達が我さきにとマリスに飛びかかっていった。

「っ~~!!!」

 叫びをあげるまもなく、口もその巨根に塞がれてしまい声を上げる事も出来ない。股が裂けてしまう衝撃と痛みでも、声を上げる事すら出来ない。

 狂乱の宴がマリスを襲っていた。

 ただ……心だけはおらずにマリスはいた。必ず、助けが来る事を願い続けて……。

「(かな……み………、ラン……ス……様……、 ユー……リさ……)」

 その責めは、マリスが気を失っても続けられていった。








~カスタムの町 作戦会議室~



 それは、ヘルマン軍を撃退した次の日のこと。
 カスタムの町では迫り来るヘルマン軍にどう対抗するかの作戦会議が行われていた。

「先ずは、お礼を言わせてください。私たちの救援に来てくれて有難うございます。ランス、ユーリさん。シィルちゃんに、かなみさん」

 マリアは前に立つと頭を下げた。

「がははは! オレ様の女がピンチなのだ。良い男の特権と言うヤツだな? がははは!」

 ランスは相変わらずだな、と皆が呆れて苦笑いをしていた。

「皆が無事で良かったよ。……だが そうも言っていられないか」

 疲弊しているメンバーたちを見てそうも言うユーリ。まだ、戦うことは出来るとは思える。だが、士気にも関わってくるものなのだ。それが、疲労と言うも。

「でもでも、ユーリさんが来てくれたんですよ~! 百人力じゃないですかね~!」

 ただ、その中でもトマトはいつも元気だ。そんな彼女が皆を、陰ながら支えているといっても過言ではないだろう。アイテム屋と言う理由を抜きにしたとしても。

「はは……、トマトは相変わらずだな。その喋り方といい。でも、本当に強くなってる。びっくりしたよ」
「えへへ~ですかね~」

 トマトは褒められた事で頭を掻いていた。
 先ほども言った通り、この天真爛漫な彼女に救われた人だって少なくないだろう。ユーリは、そうトマトについて思っているんだけど……、肝心な部分、最もわかって欲しい部分はやっぱり判ってないのである。

 だが、それでも、その腕が驚いたと言うのは嘘偽りはない。

 剣も振った事すら無いであろう腕だったのに、僅か数ヶ月でここまでになっているのだから。アイテム屋にしておくのに惜しい程の戦いの才能があるようだ。

「ふふ、相変わらずですね」
「真知子さん。ああ……聞きたい事があったんだが」
「……何でしょう?」
「優希の事だ。リーザスが落とされたんだ。……アイツは大丈夫なのか?」
「………」

 真知子は、何も言わずに首を横に振った。その仕草だけで十分だ。ユーリも表情を暗める。

「そうか……」
「いえ、情報が無いだけです。きっと大丈夫です。彼女なら、きっと……」
「だな。……今は信じて前に進む。それに、カスタムの状況も今は極めて悪い」

 ユーリはそうも言っていた。

 実は、ヘルマン軍の状況、作戦が伝わっているのだ。別に極秘にしている訳でもない。それは、決して慢心でなく……圧倒的な戦力差があるからこそ、のものだった。事実そうなのだ。

「先ずは敵の勢力が知りたいな。……ある程度は聞いているが正確なものがあれば」

 ユーリは、作戦を聞くに辺、それを第一に聞いた。マリアは、頷くと白板に現状の敵の規模をを記入していく。

「敵は、カスタムの町を包囲するように6、000もの部隊を配置しているわ。その内訳は、ヘルマン軍2,000と、そしてリーザス軍4,000と言う所ね」

 その言葉を聞いた途端、かなみが思わず立ち上がった。

「なっ!! り、リーザス軍?? ヘルマンに寝返ったというの!? そんなっ……!」

 その近況を訊いて、かなみは、信じられなかった。

 軍部の全員を知っている訳ではないが、訓練をしている内に、何度も世話になっている。
そんな彼らの事を知っているのだ。

 愛国心があり、そして国に忠を尽くしているのも。

 だからこそ、その内容は、信じたくないし、認めたくないのだ。

「落ち着いて」

 興奮しているかなみに、声をかけたのが志津香だった。
 勘違いをしている事を正確に伝える事が出来るのが魔法使いである彼女なのだから。

「リーザスの軍の人達は何も寝返ったわけでも、裏切ったわけでもないわ。……何度か接触したけど、間違いない。あの虚ろな目……表情、そして彼らに例外なくに感じる仄かな魔力。間違いなく彼らはヘルマン軍に洗脳をさせられている」
「洗脳……、相手にも魔法使いがいるという事ですね」

 シィルがそう答えていた。
 嘗て、彼女も洗脳をランから受けた事があるから判るのだ。あれを受けてしまえば、自分の意思でどうにか成るものではないのだから。

「そうか……。ラン」
「あ、はい。何でしょう? ユーリさん」

 ランは突然呼ばれて少し驚いたが、冷静に返事をした。ユーリは、険しいままの表情で訊く。

「嫌な記憶を思い出させてしまうかも知れない。……申し訳ないが、これは必要な事なんだ。教えてくれ。洗脳を……、それも4、000もの人間を洗脳する為にはどうすれば良い? 何か条件があったりはしないのか?」
「そう……ですね」

 ランは嫌な顔一つしなかった。今は緊急事態だし、それに幻術の類に精通しているのは間違いなく自分であり、適任だと言えるから。

「あの時の私であったとしても、他人を1度に操るとしたら、精々10数人が限界ですね……。つまり、指輪の力でブーストさせた私、つまり、上位魔法使いの100倍以上の魔力の持ち主がいれば可能と思いますが、それは、現実味にかけてしまいますし、そんな魔力は信じがたいとも思えます。……後、他は、例え出来たとしても、これだけの規模の人間を操るとしたら、術者は必ず近くにいなければならないと推察されます」

 淀みなくランはそう答えた。その説明に志津香が追記する。

「洗脳を得意とする魔法使いがいるのは間違いないわね。……その魔力は未知数だけど、ランの言うとおり、傍にいるのは間違いないと思うわ。多分、ヘルマンの司令部。ラジールにその魔法使いがいるはずよ」
「ああ……、敵の心配もなく集中出来るのは、味方陣営内。妥当な線だな」
「ふむふむ……、ならば話は簡単ではないか、そいつを潰せば、敵の半分以上が減る上に、こちら側になるのだろう?」
「ま、そう簡単なものでもないんだ」

ランスの言葉にミリが答える。

「敵の部隊には、モンスターも従えているんだ。人間がモンスターを従えているなんて、魔物使いがいる可能性も高い」

 ミリのその言葉にかなみは、苦い顔をした。何故なら……魔物使いよりも性質が悪い者がいるのだから。

「そうだった。説明、してなかったな。……落ち着いて聞いてくれ」

 ユーリは、その事を思い出し、伝える事にした。
 戦い続けていれば、いつかは判る事だから。
 
 今回の相手、その背後には、ヘルマン軍の背後には 凶悪な魔が背後に迫っていると言う事を。






















〜人物紹介〜


□ マリア・カスタード(3)

Lv18/35
技能 新兵器匠Lv2 魔法Lv1

元カスタムの四魔女の1人。
現在は、侵攻を繰り返してくるヘルマン国相手に、防衛戦を続けている。その的確な采配や、指示で多大な成果を上げた事から、カスタム守備隊、総司令官を勤めている。
彼女最大の武器であるチューリップ1号も着々と生産をしているが、今回の戦闘で出せた数は決して多くはないが、チューリップ部隊も重要な戦力として機能し、総司令官兼チューリップ隊部隊長も勤めている。


□ 魔想志津香(3)

Lv26/56
技能 魔法Lv2 格闘Lv???

元カスタム四魔女のリーダー。
そして現在ではカスタム防衛軍の魔法部隊、部隊長を勤めている。
元々、魔法の技能はカスタム最強であり、指輪事件で失われた魔力も少ない為、火力としてはチューリップ隊を凌ぐ程の攻撃力を発揮している。
……が、短気なところは相変わらずであり、そこを付かれてしまった。
だが、間一髪のところでユーリに救われる。
……この時、ユーリの事がどう見えたのか?それは志津香だけの秘密である。


□ エレノア・ラン(3)

Lv20/30
技能 剣戦闘Lv1 魔法Lv1

元カスタムの四魔女の1人。
そして現在は優秀な頭脳を駆使した副司令官を勤めている。
魔法の力は指輪に奪われてしまった為、威力は微々たるモノだが、 普段の業務の合間に剣の鍛錬はトマトと共に続けており、町唯一の魔法剣士として活躍をしている。
その戦闘力から、副司令官を兼任し、且つ200人を超える実戦部隊の部隊長をも勤めている。


□ ミリ・ヨークス(3)

Lv20/28
技能 剣戦闘Lv1

 カスタムで薬屋を営む女戦士。
元カスタム四魔女の1人ミル・ヨークスの姉であり、極度の疲労から戦線を離れている妹の為にも負けられないと剣を握っている。
剣の腕は、ランと共に並ぶ実力であり、第二実戦部隊の部隊長に抜擢されてた。

……変わらずロゼや真知子とは良き酒飲み仲間であり、今回の一件、ロゼを脱出させ(ロゼでしか通ることが出来ない)出来ればユーリ達をと頼んだのは彼女と真知子である。


□ 芳川真知子(3)

Lv8/33
技能 情報魔法Lv1 召喚魔法Lv1

カスタムの町の情報屋。
コンピュータを扱える事からも判るとおり、非常に優秀な頭脳の持ち主であり、カスタム1。
マリアの司令官の補佐を行いながら、何百通りものシミュレートをさせ、敵の戦力をもコンピュータに組込み、作戦を立てている。
謂わば、隠れたカスタムを支えている存在。

……ミリやロゼとは良き酒飲み仲間。今は外部との連絡はコンピュータを駆使しても難しいので、ロゼしか通れない悪魔の通路から、助けを求める様に依頼した。
ユーリと再開した時、思わず涙がこぼれそうになる程喜んでいたが、ポーカーフェイスの為、誰にも気づかれ無かった。


□ トマト・ピューレ(3)

Lv11/37
技能 剣戦闘Lv0 宝箱幸運Lv2

カスタムの町でアイテム屋を営んでいる少女。
ユーリと一緒に冒険に出たい一心で、ランやミリを巻き込んで剣の修行を行い、現在では実戦部隊の一員として活躍をしている。
元々アイテム屋なのだと言う事をふまえると、彼女の成長速度は他を圧倒するものであり、将来はどのようになってしまうのか……、と末恐ろしくも感じている者もいるとか。

今も昔もユーリ一筋であり、見よう見真似、ロゼ嗅覚面白センサーも備え付けてきつつあり、とある決戦?に向けて日々頑張っている。
現在のところは、志津香が最大のライバルとしているとか……。
 










 
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