狸と狢
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2部分:第二章
第二章
「あんた達を見分けろって?」
「うん、そうだけれど」
「どうかな」
「そんなのできないよ」
こう彼等に告げます。
「とてもね」
「できないって?」
「難しいのかな」
「難しいなんてものじゃないよ」
狐はまた二匹に言います。
「そっくりじゃないか、何から何まで」
「そうだよね、本当に」
「同じ種族にしか見えない位に」
「そっくり」
他の動物達も狐に続いて言います。
「誰がどう見てもね」
「そっくりだし」
「見分けつかないわよ」
「それじゃあ困るんだよ」
狢がそれを聞いてこう反論しました。
「見分けてもらわないとね」
「僕だってそうだよ」
狸も言います。
「間違えられるのは気分がよくないよ」
「だからここは」
「とはいっても」
鼬が腕を組んで困った顔で答えます。
「二人共ねえ」
「そうそう、見分けられないから」
「とてもね」
鼬の言葉に他の森の住人達も言います。とにかくわからないというのです。
「二匹共そっくりだから」
「何処がどう違うの?」
「それで見分けるって」
「無茶を言うよね」
「ううん、それでもさ」
「見分けてもらわないと」
「そうだよ」
「困るから」
二匹は困った顔で話します。とにかくどうにかして見分けてもらいたいのです。けれどこの場は皆見分けようがないと言って終わってしまいました。二匹は困った顔で横穴に戻ってです。そのうえでまた話をします。
「何か全然区別がつかないってのは」
「困りましたね」
「うん、全くだ」
狢が狸に対して言います。
「僕達は確かに似ているけれど」
「それでも。見分けられないっていうのは」
「困ったなあ」
「どうしたらいいですかね」
「そうだね。とにかくさ」
狢はまた言いました。
「外見じゃとても区別がつかないんだよね」
「そうですよね、僕達の外見じゃ」
「何か目印があればいいんだけれどね」
「目印ですか」
「そう、目印」
それだというのです。狢は難しい顔で話します。
「目印があればいいんだけれどね」
「そうですか。目印」
狸は狢の言葉を聞いてです。あらためて考える顔になって。それでこう言いました。
「少し考えたんですけれど」
「うん、何かな」
「帽子でも被りません?お互いに」
「帽子?」
「はい、帽子です」
こう狢に提案するのでした。
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