杜若がそうである理由
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澄んでいないのは知っていても、冷たく体内に入れば勘違いしてしまう。
周りに誰も居なければ、大きく風を切って歩いている気がしてくる。
街灯は滲んで映り、月の光を邪魔しない。
響く足音が私を主人公にしてくれているようで、嬉しい。
鼻の奥の方がむず痒い。
その上を日中焼かれていたコンクリートが置いて行かれた様に香った。
私は満たされていた。
全てが上手く進んだ後だった。
遂げられた自分を心から誇りに思い、秘密が出来たという異常さに酔っていた。
いや、ここで言い直そう、確かに私は主人公になった!
この長い夜を全身で味わっていたかった。
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