戦国異伝
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第二百二十三話 信貴山城攻めその五
「それでよいのなら何よりです」
「そういうことじゃ、しかし闇のか」
「はい、あの本願寺の時と同じ様に」
「闇の具足の者達か」
「旗も服も陣笠もです」
その全てがというのだ。
「武具も全てです」
「まだ本願寺の跳ねっ返りがおったのか」
信長はまずはこう考えた。
「それが松永の下に入ったのか」
「そうかと」
長益は実際にこう考えていて言った。
「それでいるのかと」
「左様か、ではな」
「はい、どうされますか」
「今奇妙が兵を率いてこちらに向かっておる」
その三十万の兵をだ。
「その兵が来れば攻めるが」
「それまでは、ですか」
「攻めぬ、そして話をする」
「弾正めと」
「そうする」
長益にもこの話をした。
「よいな」
「ですか」
「それまでは攻めぬ」
信長は確かな声でまた言った。
「わかったな」
「ではこれより」
「うむ、今からすぐに行こう」
信貴山城の方にというのだ。
「そうしてじゃ」
「しかしそれは」
「危ういというのじゃな」
「はい、しかも」
それに加えてというのだ。
「話をしてもです」
「聞かぬというのじゃな」
「そう思いますが」
「それでも話をしたい」
信長はまた言った。
「あ奴が降れば許す」
「そうされますか」
「そういうことでな」
「では攻める用意は」
「それはする」
このことについてはだ、信長ははっきりとしていた。話で収まらねばその時はと考えているのである。そのうえでの言葉だ。
「あらためてな」
「では」
「うむ、鉄砲にな」
それにだった。
「奇妙が来たならじゃ」
「大筒もですな」
「用意する」
「それでは」
「攻める、よいな」
「はい、それでは」
話で収まらなくなった時もだった、信長は松永との話を行うことにした。城の前に来てだ、自らこう言ったのだった。
「弾正はおるか」
「?あの声は」
「まさと思うが」
「他ならぬ」
「織田信長か」
「そうなのか」
松永の家臣達、既に闇の具足や服、陣羽織に身を包んでいる彼等はその言葉にすぐにだった。反応を見せた。
「まさかもう来るとは」
「相変わらず動きが早いわ」
「そしてか」
「攻めて来るというのだ」
「御主に話したいことがある」
ここでだ、信長は城に向けてこうも言った。
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