戦国異伝
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第二百二十二話 耳川の戦いその十四
「そのうえで勘十郎にもそうさせる」
「勘十郎様にもですか」
「そうしてもらいますか」
「信貴山の城を囲みじゃ」
そのうえでというのだ。
「後はわしが行く」
「上様がですか」
「信貴山まで、ですか」
「行かれる」
「そうされるのですか」
「そうじゃ、そしてそのうえでな」
信長は自分の言葉に驚く家臣達にさらに話した。
「あ奴を降らせる」
「あの、許されるのですか」
「松永めを」
「あの、あ奴は」
「これまで」
「御主達はずっとそう言っておるがな」
しかし、というのだ。信長は。
「わしはあ奴を悪人とは思えぬのじゃ」
「だからですか」
「あ奴とお話をされて」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「降らせる」
そうするというのだ。
「よいな」
「ううむ、それは」
「幾ら何でも」
「あ奴はここで、です」
「消すべきでは」
「いい機会ですので」
羽柴以外の者がそれぞれ言う。
「確かに織田家では大人しかったですが」
「この十数年の間」
「ですがそれでも」
「蠍は蠍です」
それが松永久秀だからというのだ、毒を持ち音もなく忍び寄り寝首を掻いてくる。そうした男だというのである。
「ですからここで」
「一気に信貴山城を攻め」
「そして、です」
「討つべきだと思いますが」
「まあ待て」
ここでもだ、松永は止めるのだった。
「確かに攻めることも考えておるが」
「それは最後で、ですか」
「まずはお話をされる」
「そうされるのですか」
「上様が」
「そうじゃ、城攻めはそれからでよい」
信長はまた言った。
「それにあ奴が城に入る前に捕らえることが出来たならな」
「それでよい」
「そう仰るのですか」
「あの様な者でも」
「まずは話ですか」
「そうじゃ、わしはあ奴と話がしたいのじゃ」
信長はこの考えを変えていなかった、そのうえでこうも言った。
「あと松永の兵達には罪はない」
「残っている者はですな」
「誰一人として」
「あの者達には何もするな」
このことも言うのだった。
「知っておれば一緒に行っておるわ」
「確かに。共に消えたのは腹心の者達のみ」
「あ奴とずっと一緒におる者ばかりですな」
「ではその者達には何もせずに」
「置いておきますか」
「筒井家の下におけ」
筒井順慶、彼のというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「松永の兵達は筒井殿の下に置きます」
「そうします」
「その様に」
家臣達も応えた、そしてだった。
信長はこのことも言ってだった、そのうえで。
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