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真田十勇士

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巻ノ十一 猿飛佐助その七

「おそらく羽柴殿も天下統一を考えておられる」
「織田信長公と同じく」
「その様にお考えですか」
「天下統一」
「それをお考えですか」
「まずは大坂を拠点に西国を収められてじゃ」
 そしてというのだ。
「そこから東国であろう」
「関東や奥羽ですか」
「そちらに進まれますか」
「そうして天下をですか」
「天下人になられるおつもりですか」
「そうであろう、だからな」
 それで、とだ。また言う幸村だった。
「羽柴殿のお考えはかなり大きい、そしてその天下を治める場所がじゃ」
「大坂ですか」
「あちらですか」
「あの地に築かれる城ですか」
「そうなるであろう、しかし羽柴殿は」
 幸村は秀吉自身についても話した。既に一行は歩きはじめている。山道を悠々と歩きそのうえで都に向かっている。
「思えば凄い方じゃな」
「最初は百姓でした」
 穴山も幸村に言って来た。
「そして織田家に入っても草履取りでした」
「そこから上がっていってな」
「織田家でもかなりの重臣になられ」
「今では天下人になろうとさえしておられる」
「凄い方ですな」
 由利も言った。
「全く以て」
「考えてみればな、しかも家臣も優れた方が多い」
「何でもです」
 ここで言ったのは海野だった。
「弟殿の羽柴秀長殿がかなりの出来物だとか」
「羽柴殿を上手く支えておられるな」
「はい、そう聞いております」
「他にも優れた方が多い、特に」
「特にとは」
「加藤清正殿、福島正則殿も見事じゃが」 
 この二人以上にというのだ。
「石田三成殿、大谷吉継殿か」
「そのお二人ですか」
「うむ、特によいと思う」
 幸村は清海にも答えた。
「軍師として竹中半兵衛、黒田孝高殿もおられるが」
「石田殿と大谷殿がですか、その」
「そのお二人じゃな、天下の柱となられるぞ」
「ご自身だけでなく家臣も優れた方が多い」
 根津は考える顔で述べた。
「やはり天下の方になられるものがあるか」
「拙者はそう見ている、しかしな」
「それは確実ではありませぬな」
「うむ、確かに天下に最も近いが」
 だがそれでもだというのだ。
「柴田殿もおられ徳川殿もおられるからな」
「柴田殿は天下を望まれているでしょうか」
「いや、あの方はあくまで織田家の家臣じゃ」
 幸村は柴田の立場、そしてその考えについて望月に答えた。
「だから天下なぞはな」
「到底、ですか」
「望まれぬ」
「そうですか」
「愚直な方と聞いておる、おそらく羽柴殿と戦をしてもその愚直さが仇となってな」
 そうしてというのだ。
「敗れるやもな、勢力の違いも出て」
「そうなられますか」
「惜しいとは思うが人が死ぬのが戦国じゃ」
 泰平の世よりも遥かにというのだ、戦の為に。
「仕方ないとも言える」
「では徳川殿は」
 伊佐は幸村に家康のことを尋ねた。 
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