moon light fantasy
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再び城館(シャトー)へ
前書き
ランちゃんが頼もしすぎる。
「それで!どうするの!」
少し暗くなっていたが直ぐに明るさを取り戻したランちゃんはこれからの事を聞いてきた。
フォルツが宿に帰って酒場に取り残された僕は少し考えてから。
「うーん…。まず1番の優先事項は『リナちゃんの救出。および洗脳解除』かな。
リナちゃんさえなんとかすればゼツ君はこっち側につくのはほぼ確定だと思うし…。」
「なるほどね!まずはメインディシュを食べるんじゃなくて前菜を食べる感じかな?」
「ん。そんな感じ。」
ランちゃんの例えはどうでもいいとして。僕はそう言って猫の用のごはんをもぐもぐと食べる。
そして僕は本題の情報を聞く。
「ランちゃん。昨日のアリス・スタライズって何者?」
そう。昨日いたアリス・スタライズ。あいつがやり手なのは分かった。だけど素性がわからない。
するとランちゃんはいつもどおりのハイテンションに戻り資料を渡してきた。
「はいはい!これが資料だよ!」
そう言ってランに渡された資料を僕は読む。
〜アリス・スタライズ〜
セシリア王国出身。14歳、女性。
生まれつき魔法に優れており、7歳の頃には元素魔法全ての基本的な魔法を全て取得した言われている。
得意魔法は風と水。特にその2つを合わせたオリジナル魔法『暴風雨の矢』という魔法を使えると言われているが確かではない。
現在は冒険者として世界各地を回っているらしい。
「え…これだけ?」
僕はキョトンとしてランちゃんに問いかけるがランちゃんは少しバツの悪そうな顔で答えた。
「んー…。ギルドの一員でもないし。ただ経歴も胡散臭いんだよね。」
「確かに。」
7歳で元素魔法全て取得とかありえねー。だって普通一つの魔法覚えるのに何ヶ月もかかるのに…。
そんな事を考えて僕はなんとかなるだろうと考えて。
「ま、ギルドの人じゃないし。あんまり期待はしてなかったんだ。」
「ごめんね!あんまり力になれなくて。本当は炎帝の城館にも私が行った方がいいと思うんだけどね。」
ランちゃんは自信ありげにそう答えてきた。
それもそのはず。ランはこの世界の五強の1人。『鮮血のラン』の異名を持つ。一度戦場に現れたなら一瞬で状況が変わると言われるくらいの力を持っている。
そしてゼツも5強の1人。『紅蓮の帝のゼツ』の異名を持っている。
「まあ…ギルドも大変でしょ?そっちに集中しなよ。」
「元からそのつもりだよ?」
ランちゃんはそう言ってオレンジジュースを飲み干す。そして僕の方に向き直ると。いつもと違うおちゃらけるランではなく。『ギルド』のリーダー、そして5強の1人、『鮮血のラン』として。
「だからギルドから正式に依頼します。
…『炎帝』の討伐をよろしくお願いします。」
僕はその言葉に無言で頷いた。
「ま、今日は少しお休みという事で!
マスター!今度はオレンジカクテルちょうだい?」
「あるよ!」
マスターは今度は嬉しそうな顔をしてカクテルを作り始めた。
僕は少し苦笑しながらランの飲み相手をした。
…酒宴が終わったのは日を跨いでからと言っておこう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次の日。
一昨日作った転移魔法で俺たちは再び炎帝の城館の前にいた。
「…。」
「どうしたの?フォルツ?」
ニナが不思議そうな顔で見てきたので俺ははあ、とため息を吐いた。
「…なんでこの魔術師がいる。」
そう言って俺はアリス・スタライズを睨みつけた。するとアリスは飄々とした態度で。
「別に私も貴方と一瞬に行くとは言っていません。
ここでお別れです。」
「ええ⁉︎なんで⁉︎なんでよ⁉︎」
ニナはそんなアリスの言葉を聞いてプンスカプンスカ不機嫌気味だった。するとアリスは。
「いえ、別に私も『夢幻の剣』フォルツ・レープリカの力を借りたいのですけど…。
残念ながら貴方の相棒さんが認めてない様なので…。」
「…ああ。」
俺はそう言って肯定する。当たり前だ。いくら強いと言っても見ず知らずの奴をパーティーに入れるなんて考えられない。
だが…。
「俺はお前を信用していない。
だからお前と俺たちは別々に行く…。だが…。」
「?」
アリスはキョトンとして俺を見つめてくる。その蒼い瞳は澄んでいた。
ああ。嘘はついてないんだろうな。
…昔の僕と大違いだ。
「だが俺もこの館に囚われた奴らを助ける為に協力しよう。
囚われた奴らがいたら俺もならべく救出する。」
「…⁉︎本当ですか!ありがとうございます!」
そう言ってアリスはぺこりと頭をさげてきた。
俺はそれを見て館の扉を開ける。
「別に…。
よく考えたら俺が戦ってる間に女が苦しんでるなんて夢見が悪いからな。」
そう言って俺は館の中に入っていく。それを見てアリスは少しだけ微笑んだ。
館に入るとどうやら構造は本館と別館に分かれていて俺たちがいるのは3階建ての別館。本館は別館の奥。一階建ての様だ。
「私は別館を調べます。」
そう言ってアリスはさっと慣れた動きで別館の階段を登って行った。俺はキッと目の前の闇に睨みつけた。本館へと続く通路に今、俺たちはいるのだがその先から溢れ出るプレッシャーがある。
感じる…。何か黒い物を感じる。
「…いるね。ここに。」
ニナはそう言って俺と同じ方を睨む。
ここにいる。奴へのてがかりが。
「…行くぞ、ニナ。気配は本館だ。」
「了解。」
後書き
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