FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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妖精女王と水竜
前書き
オリジナルの長編やりたいとか思ったけどやれるタイミングがシリルとウェンディが蛇姫の鱗にいる時くらいしかないな・・・
それまで覚えてられるのか?俺
「あの~・・・挑戦権100ってそんな無理ですよ?」
「なんでですか?」
焦っている様子のマトー君にそう言われ俺が質問する。システム的に出来ないとかそう言うことなのかな?
「一度の挑戦で全滅できるようになって設定されておりませんからですカボ!!」
「構わん」
「そういうことです」
システム的には100体に挑戦することも可能みたいだ。ただ一度にそんなに倒せるようには出来ていないと言うだけで挑戦することはできる。だったらそれは俺たちにとって大きな問題にはならない。
俺とエルザさんはマトー君の警告を無視し神殿の中へと入っていく。
ウェンディside
会場がざわめいている。全員の視線が神殿内を映し出す魔水晶ビジョンへと注がれる中、シリルとエルザさんは神殿の中心部に当たる円形の部屋へと姿を現す。
「エルザ・・・」
「シリル・・・」
ルーシィさんと私が2人を心配しながら見つめる。
「結構広いんだな、中は」
グレイさんは映し出された神殿の様子を見てそう呟く。
「逆さになってるけど・・・」
「うっ・・・見てるだけで気持ち悪ぃ」
私たちは体を傾けながらシリルとエルザさんが逆さになっている様子を見ている。ナツさんは酔いやすいからか逆さに映っている魔水晶ビジョンを見て青くなっているけど、シリルにそんな様子は見られない。神殿の中は逆さになっているって感覚がないのかな?
『挑戦者妖精の尻尾A、エルザ・スカーレット』
『同じくシリル・アデナウアー』
エルザさんとシリルは部屋の中央へと歩き、中央に立つ柱の前で立ち止まる。
『『挑戦権、100だ(です!!)』』
2人がそう言うと神殿の至るところから最初に見た黒いモンスターに白いモンスター、赤色のモンスターにとても大きな青いモンスターが現れる。
「あわわわ・・・たくさん出てきましたよ」
私はあまりのモンスターの数の多さに震え上がっています。なんてモンスターの数なの・・・
「Eクラスでも相当手強そうだったよね」
「あんだけの数、エルザとシリルだけで本当に戦うっていうのか?」
ルーシィさんとグレイさんも2人の無茶すぎる挑戦に不安を隠しきれないみたいです。
「やるさ、エルザとシリルならやる。俺には分かる」
不安な私たちとは対照的にナツさんは楽しそうに魔水晶ビジョンを見ています。
「ナツさん、なんだか楽しそうです」
「戦車よりこっち向きだったかな」
私とルーシィさんがナツさんの様子を見てそういいます。
「エルザさんとシリルくん、大丈夫でしょうか?」
「エルザはともかく、シリルはあんなの相手にできんのか?」
「いや・・・案外シリルが最後に決めちまうかもされないぜ」
Bチームの中でもジュビアさんがすごく心配してエルザさんとシリルを見ています。ガジルさんはエルザさんは大丈夫だと思っているみたいですけどシリルのことが不安要素みたい。
でもラクサスさんは2人の心配なんて全くすることなく魔水晶ビジョンを見物しています。果たして誰の予想が当たるのかな?
『換装!!』
『アームズ×バーニア、付加!!』
迫ってくるのモンスター、それに対しエルザさんは天輪の鎧に換装、シリルは付加魔法で自分とエルザさんの能力値を上げる。
換装したエルザさんは向かってきた黒いモンスターを早々に数体倒し、シリルは鉄拳で黒いモンスターたちを殴る。
エルザさんはモンスターを切り裂いた後に部屋の真ん中にある柱の上へと立つと・・・
『天輪・繚乱の剣!!』
エルザさんは自分の周りにたくさんの剣を展開しモンスターたちに向かってその剣を放ちます。
でもそれはシリルにも降りかかってしまうんじゃ・・・
『よっと!!』
私がシリルの心配をしているとシリルは剣を次々と交わし、その最中近くにいるモンスターたちに攻撃を加えていく。
『ああっと!!全方位から先制攻撃を仕掛けたエルザ!!さらにはシリルがその攻撃を全て見切りなおかつモンスターたちに攻撃を加える!!
Eクラスのモンスターが次々に倒されていきます!!』
シリルたちが映る魔水晶ビジョンの右下に現在の残っているモンスターの内訳が表示される。
開始された時は40体いたEクラスのモンスターたちはすでに16体にまで減っており、お客さんたちはみんな2人の攻撃とコンビネーションに歓声をあげています。
「なんでシリルはあんなに軽々と避けれたのかしら?」
「目だよ。あいつは天狼島での戦いで滅竜魔法の魔水晶を手に入れたからな、エルザの剣筋も見切るだけの力がついたんだよ」
ルーシィさんの疑問に答えるナツさん。その顔は本当にイキイキしていて、まるで自分が競技に参加しているみたいな顔をしている。
「一気に全滅させようとしたのか?」
「いいえ。全方位に攻撃することにより個体ごとの反応と能力、防御力を確認したのでしょう」
一方妖精の尻尾の応援席ではロメオくんの疑問に初代が答えていたりします。
「そして、どのモンスターにどの換装で挑むのかを瞬時に計算する。シリルはその鎧の選択を元に自分がやるべき魔法、さらにはエルザの動きに合わせた動きを判断する」
マスターがそう説明する最中、エルザさんは次の鎧へと換装する。
エルザさんが換装したのは黒羽の鎧。エルザさんは換装した直後にまたしてもモンスターたちを切り裂いていく。
「攻撃力が上がった!!」
「黒羽の鎧!!」
「一撃ごとの威力が底上げされるんだよね~!!」
「てことはまずは力押しで数を減らすってことね」
応援席のリリー、ハッピー、セシリー、シャルルがそういう。それに対しシリルは・・・
『水竜の咆哮!!』
ブレスで辺りにひしめくモンスターたちを一掃していく。
するとその黒のモンスター後ろから赤いモンスターがエルザさんに炎を吐き出し攻撃しました。
「エルザさん!!」
「炎を吐きやがったぞ」
叫ぶ私と煙が立ち込める神殿を見てそう言うグレイさん。
「心配ねぇ。相手が炎なら」
「そっか!!炎帝の鎧がある!!」
煙が晴れるとそこには赤とオレンジの鎧に身を包んだツインテールのエルザさんが無傷でいました。
モンスターは再び炎を吐きますがそれをエルザさんは剣を振るって消し去ります。
「炎を退けたぞ!!あれは一体・・・」
「海王の鎧とセットの武器だよ!!」
「炎には水ってことね」
「それでさらにパートナーが~・・・」
もう一度攻撃を放とうとする赤いモンスター。しかし、そのモンスターに脇から小さな影が襲い掛かる。
『水竜の・・・翼撃!!』
シリルの翼撃により赤いモンスターが粉々になって消える。そのシリルに今度は白いモンスターが迫ってくるけど・・・
『はぁ!!』
それはエルザさんの一太刀で簡単に凪ぎ払われる。
『ああっと!! 早くもDクラスを5体、並びにCを2体倒しました!!』
魔水晶ビジョンに表示される残りモンスターの内訳。どうやらシリルが倒した赤いモンスターがCクラスでエルザさんの倒した白いモンスターはDクラスみたい。
2人は次々と向かってくる黒や白、時おり現れる赤いモンスターたちを次から次へと倒していく。
するとエルザさんは海王の鎧とセットの剣を右手に握り、左腕に炎帝の鎧の剣を換装しモンスターたちを叩きます。
ドッドッ
その2つが合わさったことにより神殿がところどころ爆発し、外に向かって煙が流れ出ています。
『おおっと!!これは・・・』
「水の炎の二刀流か」
「でもさすがにダメージも受けたみたい」
「魔力の消耗も大きいみたいだね」
チャパティさん、リリー、シャルル、セシリーがそう言います。
『防御力を倍化、イルアーマー!!』
するとシリルがエルザさんにアーマーを付加しました。これなら多少の攻撃は関係なく戦えますね。
そのエルザさんとシリルの前に今度は青いモンスターが姿を見せる。そのモンスターはさっきまでのモンスターたちの倍以上の大きな体を持っています。
『貴様がSクラス。いや・・・違うな』
『順番的にBクラスってところですかね?』
エルザさんとシリルはそのモンスターの様子を冷静に判断しそう言います。
青いモンスターは口から水を放ちますが・・・
『いただきま~す!!』
シリルがその水を一気に吸い込む。
『換装!!』
シリルの後ろにいるエルザさんは雷帝の鎧に換装するとBクラスのモンスターに電撃を浴びせます。それにより青いモンスターは力尽き地面へと崩れ落ちました。
『飲んだら力が湧いてきたぁ!!』
シリルは水を飲み込み後ろを振り向く。そこには赤いモンスターたちが一斉にシリルに向かって突進してきていました。
『水竜の鉄拳!!』
シリルは水を飲んだおかげでパワーが増しており、炎属性の赤いモンスターたちを次々に撃破していきます。
『こ・・・これは凄まじい!!早くも半数を切りました!!』
チャパティさんの言う通り残りモンスターはSクラス1、Aクラス4、Bクラス5、Cクラス9、Dクラス13、Eクラス14の合計46体となっています。
「マジかよ・・・」
「ワイルドォ・・・」
「さすがだね」
「すごいや!!」
競技参加者のノバーリさん、セムスさん、ヒビキさんとイヴさんがそう言う。
「エルザ殿は動きに無駄がなく、洗練されておる」
「だけどあのシリルって子も見劣りしないくらいの動きをしているよ」
ジュラさんとリズリーさんがエルザさんとシリルの戦いを見てそれぞれそう評価する。
「ショウとウォーリーも見てるかなぁ?」
「さすがにうちのノーランと互角に戦えるだけのことはあるでさ」
「これは面白いね、記憶しておこう」
ミリアーナさんとナルプディングさん、ルーファスさんも2人の強さに惹かれているみたい。
「下らねぇ、騒ぐようなレベルかよ。見てみな、ざまぁねぇ」
そんな中他の皆さんと違う見方ををしているのが剣咬の虎のオルガさん。オルガさんの目に映るのは明らかに疲労している魔水晶ビジョンに映ったエルザさんとシリルの姿。
『やはり、かなり消耗している様子』
実況のチャパティさんがそう言う。疲弊している2人にまだ半数近く残っているモンスターたちが向かってくる。
「いけぇ!!エルザ!!シリル!!ぶっ倒せ!!」
「しかしさすがに・・・」
「少しキツそうだよね・・・」
ナツさん、グレイさん、ルーシィさんがそう言う。
エルザさんは今度は飛翔の鎧に換装し、スピードでモンスターたちに対抗する。シリルもエルザさんほどの早さはないが、しかし確実に技を急所に当てていきモンスターたちを少しずつ倒していく。
モンスターたちは駆け回るエルザさんとシリルに口から魔法を放ち応戦するが飛翔の鎧に身を包むエルザさんとバーニアで速度上昇しているシリルには当たらず、2人の追加攻撃を受けてしまっている。
『『ハァッハァッハァッ・・・』』
肩で大きく息をする2人。そんな2人の前に新たなモンスターが立ちはだかる。
『ああっと!!傷つきながらも順調にモンスターを倒し続けるエルザとシリルの前にAクラスのモンスターが立ちはだかった!!』
AクラスのモンスターはさっきのBクラスよりもさらに大きく、まるで鬼神のような風貌をしている。
シリルの10倍は楽にあるそのモンスターが2人に向かって拳を打ち込む。
ドドッ
Aクラスのモンスターの拳は神殿の床をいとも容易く粉々にしてしまう。
「重たそうな一撃だね」
「図体が大きいからね」
人魚の踵のアラーニャさんとソフィアさんがそう言う。
「ひぇぇ・・・あれじゃあもう・・・」
「いや・・・その重さを逆に利用した、というところか」
ベスさんがエルザさんとシリルがやられたと思ったようだけど、カグラさんの言う通り拳を突き落としたはずのモンスターの腕が粉々に崩れ落ちる。
その先にいたのは金剛の鎧に身を包んだエルザさんだった。
『オオオオオオオッ!!』
会場の皆さんはその攻撃を受け止めたエルザさんを見て歓声を上げる。
しかし、その場にいるはずのシリルがいない。それに気づいた観客たちに緊張が走る。
『どらぁ!!』
その緊張を束の間、モンスターの頭上から飛び出てきたシリルがAクラスのモンスターを蹴る。モンスターは不意をつかれた上にシリルの威力あるキックのダメージで神殿の壁を突き破って外へと転落していく。
ピョ~ン
シリルとエルザさんは神殿の中心部から外へと出て狭い通路を渡り始める。その前に小さな一つ目のモンスター?が跳ねながら逃げるので2人はその後を追いかける。
するとその通路の両サイドからEからBクラスまでのモンスターたちが一斉に攻撃してくる。
ドォンッ
モンスターたちのブレスは大爆発を引き起こすがシリルが素早く敷いた水の盾により防がれている。
「はぁぁぁぁ!!」
エルザさんはシリルの後ろから巨人の鎧に換装し、手に持っていた槍をモンスターたちに投げつけ弾き飛ばす。
その2人に下からAクラスのモンスターがジャンプして攻撃を仕掛けようとしてくるが、エルザさんが雷帝の鎧に換装し直し、雷撃を受けたモンスターは打ち落とされる。
そのエルザさんの隙をつこうとBクラスとCクラスのモンスターが飛びかかるがエルザさんの肩を踏み台にしてシリルがモンスターたちに突進する。
「水竜の剱角!!」
シリルは水を纏いながら体を回転させ、目の前のモンスターに頭突きを食らわせる。
「換装!!」
エルザさんは黒羽の鎧へと換装し、周辺のモンスターを力業でねじ伏せる。
「水竜の顎!!」
シリルは小さな体を目一杯に使いながら巨大なモンスターを少しずつ、確実に沈めていく。
次から次に落とされていくモンスター。私たち妖精の尻尾はその様子に跳び跳ねながら声援を送り、他のギルドの皆さんは驚きすぎて顎が外れそうになる人やただ静かにその様子を見守る人など様々な反応を見せる。
『お・・・恐るべし妖精女王と水竜!次々に換装と滅竜魔法を繰り出しモンスターを撃破!!
ダメージ、魔力の消耗共に大きいものの残すはなんと・・・あと4体!!』
魔水晶ビジョンに映されたエルザさんは普段から着ているハートクロイツの鎧で剣を地面に突き刺し息を整え、シリルは顔を伝う汗を拭う。
残りモンスターの内訳はBクラス2体にAクラスSクラスが1体ずつ。
「でも、強いのばかり残ってる!!」
「Sクラスのモンスターさんもまだ倒していないんですよね」
モンスターの内訳を見たルーシィさんと私はシリルたちの消耗度を見て心配せずにはいられない。
それにSクラスのモンスターは聖十大魔導が2人がかりでも倒すことが難しいってマトー君が言っていた。
あんなに疲れてるシリルとエルザさんで大丈夫なの?
「なーにがSクラスだ」
「S級のエルザの凄さは俺らがよく知ってっからな」
「それに、シリルだって成長してんだ。強いのばかり残ってたって関係ねぇっつうの」
心配する私とルーシィさんとは正反対にナツさんとグレイさんは2人の勝利を信じて疑わない。
そうだよね!!2人が信じてるのにシリルの彼女の私が信じないんじゃダメだよね。エルザさんも強いんだし、きっと大丈夫!!
『『ふぅ・・・』』
2人は一度呼吸を落ち着けると視線を合わせ軽くうなずくと別々の方向へと走り出す。
エルザさんの走り出した方向には神殿の壁にピッタリとくっついているAクラスのモンスター。
シリルが向かう方向にはBクラスのモンスター2体が待ち受けている。
ピョ~ン
「あ・・・」
「おい、あいつ・・・」
エルザさんが走っているとその足元に先程もいた一つ目のモンスター?がジャンプしながら移動している。
そのエルザさんにAクラスのモンスターが両手を握り合わせ掲げると一気にエルザさんへと降り下ろす。
ドガッ
その衝撃に煙が上がる。しかし、その煙はすぐに晴れ、金剛の鎧に換装したエルザさんが拳を受け止めているの姿が伺える。
その反対方向にいるシリルにはBクラスのモンスターがブレスで応戦しています。だけどBクラスのモンスターの属性は“水”、水の滅竜魔導士であるシリルにとってそれはごちそう以外の何者でもない。
スゥゥゥゥゥッ
シリルはその2体のブレスを吸い上げながらジャンプする。
『水竜の・・・砕牙!!』
シリルは猫のような形にした手を交差するように振るい、2体のモンスターを引っ掻く。
『ハァァッ!!』
エルザさんはさらしと袴に換装する。その手に握られているのは鎧を着ていては絶対に持つことが出来ない剣、『妖刀紅桜』。エルザさんはその剣でAクラスのモンスターを真っ二つに切り裂く。
これによりBクラスのモンスター2体とAクラスのモンスターが力尽き、その姿が消える。
『ついに・・・ついに残り1体!!Sクラスのモンスターを残すだけどなりました!!』
そんなチャパティさんの実況を聞く観客たちは一切騒ごうとしない。会場の皆さんの視線はただ静かに魔水晶ビジョンに映される2人に注がれる。
『Sクラスのモンスター・・・それは一体どのような・・・!!』
さっきまでの2人の戦っていたモンスターたちからSクラスのモンスターがどのようなものなのか、皆さん注目する。
シリルとエルザさんもそのモンスターの姿を確認しようとしているが、ある一点でその視線を止める。
そこにいたのはさっきから何度か魔水晶ビジョンに姿を見せていた一つ目の小さなモンスター。
『って・・・あれ?』
チャパティさんもそのモンスターの姿を見てどういうことなのかわからずにいる。
『エルザさん・・・まさか・・・』
『やはりな。薄々感じてはいたが・・・』
シリルもそのモンスターを見て思考がついていかなくなっていたようだが、エルザさんだけは冷静に事態を把握していた。
『貴様がSクラスか』
『エェェェェッ!?』
「何ィィ!?」
エルザさんにそう言われ、ビジョンの中のシリルと私の隣にいるナツさんは驚いて叫んでしまう。
「「ちっさ!!」」
「ずいぶん可愛らしいモンスターさんですね」
「ん~・・・いやーな予感がするんだけど・・・」
ナツさんとグレイさんは予想外な大きさのモンスターに突っ込み、私はなんか可愛いモンスターを見て感想を言う。ただルーシィさんはそのモンスターに対して悪い予感がしているらしい。
ヒュンッ
エルザさんは紅桜から両手持ちの剣へと換装します。ただ、服装はさらしと袴のままです。
「あれ?なんで刀を変えるんだ?エルザ姉」
「紅桜から二刀流?あのちっこいの相手に?」
「何かあるのね」
「ああ。表情を見てみろ。集中力と緊張感が倍増している」
「そこまでの相手なの~?」
ロメオくん、ハッピー、シャルル、リリー、セシリーがそう言う。確かにエルザさんはさっきの戦いよりもさらに集中力と緊張感が増している。一方シリルは・・・
『これが・・・Sクラス?』
シリルは偶然Sクラスのモンスターの近くにいたのだが、足元にいるそれをじっと見つめている。見つめられる一つ目さんは身構えるようにシリルを睨んでいる。
『シリル、お前も本気でいけ』
『え?こんなのにですか?』
エルザさんに注意されたシリルはSクラスのモンスターを指さしてそう返す。一つ目さんから何かを感じ取っているエルザさんと完全に警戒心を解いているシリル。この正反対の2人、果たしてどっちが正解なのか・・・
カッ
すると一つ目さんは半分しか開いていなかった目を大きく開く。するとその可愛らしかった小さな体がみるみる変化していく。
『げっ!?』
『来い』
自分より大きくなっていくモンスターに青ざめるシリルと戦闘体勢に入るエルザさん。魔力も限界に近い2人の前に最後の砦が立ちふさがる。
「だから無理だといったんですよ!!Sクラスのモンスターが最後の1体となった時、パワーが3倍になるように設定されているんですよねカボ」
魔水晶ビジョンを見ながらそう言うマトー君。その近くにいる競技参加者たちもじっとビジョンに視線を向けている。
『さぁ!!『伏魔殿』ラストの1体!!しかし、なんと気づけばバトルは決戦場に移動しており・・・』
魔水晶ビジョンに映された円形の闘技場、そこでは先のAクラスのモンスターさえも凌ぐほどの大きさに変化したSクラスのモンスターがエルザさんと水天竜モードに変身しているシリルを押し潰そうとしていた。
『巨大化したSクラスのモンスターがエルザとシリルに襲いかかる!!』
『ぐっ!!』
『がっ!!』
エルザさんとシリルは反撃しようとしたのだが、Sクラスのモンスターに軽く受け止められ、決戦場の真ん中に蹴り入れられる。
『こんな仕掛けまで設定されているとはねぇ』
『思わぬ伏兵・・・なるほど、伏魔殿という名にふさわしいですね』
解説のヤジマさん、ゲストのラハールさんがそう言う。
「いっけぇ!!そんなデカブツ、エルザとシリルの敵じゃねぇ!!」
ナツさんが2人に声援を送る。その声が聞こえたのか、2人を蹴り上げようとするSクラスのモンスターの足をシリルが受け止める。
『だぁぁぁ!!』
シリルはその足をつかんだまま力一杯モンスターの足を押し返す。
『ハァッ!!』
シリルに押し返され、バランスの崩れたモンスターにあまりの戦いに刃こぼれしている2本の刀を持ったエルザさんが剣を振るう。
「え?」
バラバラになるモンスターの手。何が起きたのかわからないマトー君は呆然としている。
Sクラスのモンスターに後ろからエルザさん、前からシリルが飛びかかる。
『フッ!!』
『鉄拳!!』
エルザさんとシリルの攻撃により顔が半分消し飛ぶモンスター。しかしそれに怯むことなくモンスターは2人にすかさず攻撃を加える。
地面に叩きつけられシリルとエルザさん。しかし、2人はすぐに地面から飛び上がりモンスターへと接近する。
『滅竜奥義!!』
『換装!!』
シリルは右手に水と風を大量に纏い、エルザさんは二刀流から紅桜へと換装する。
『水中天嵐舞!!』
『ッオォ!!』
2人の魔法は本体と思われる体の中心部にある一つ目さんを粉砕する。
傷だらけになりながら、落ちたはずの妖精が舞うその姿を私は・・・ううん、きっと誰も忘れないと思う。
ドドッ
2人の後ろで崩れ落ちるモンスター。それを見て私とルーシィさんは涙を流して抱き合い、ナツさんとグレイさんは笑顔でグータッチする。
2人を知っている人たちはそのあまりにも劇的すぎる勝利に涙を堪えられずにいる。
妖精女王と水竜、それはまるで凛と咲き誇る緋色の花と力強く立つ水色の妖精。
『し・・・信じられません!!なんとたった2人で100体のモンスターを全滅させてしまったぁ!!妖精の尻尾Aエルザ・スカーレットとシリル・アデナウアー圧勝!!文句なしの大勝利!!
これが7年前、最強と言われていたギルドの真の力なのかぁ!?』
剣を持つ右手を高々と掲げるとエルザさんと両手をまんべんの笑みで広げるシリル。それを祝福するように歓声を上げる会場のすべての人たち。
今ここに、2人の挑戦が幕を閉じた。
後書き
いかがだったでしょうか。
基本は100対1を基本にして作ってみました。おかげでモンスターの強さが1ランクずつ上がったはずなのにほとんど反映されてませんでした(笑)
というかアニメのエルザがSクラスのモンスターをあまりに圧倒しすぎてて何も言えねぇ・・・
次も3日目競技パートです。
次回もよろしくお願いします。
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