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戦国異伝

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第二百二十二話 耳川の戦いその十二

「あの家を乱すぞ、出来るだけ長くな」
「そして、ですな」
「あの家を乱してから」
「織田家にもですな」
「仕掛けますか」
「織田家にも仕掛けてな」
 そうしてというのだ。
「織田信長を滅ぼすぞ」
「はい、そして」
「そのうえで」
「天下をい出す」
「そうしますか」
「そうしようぞ」 
 こう言うのだった。
「あ奴の挙兵はそのはじまりじゃ」
「ですな、では」
「ここは、ですな」
「我等もですな」
「動く用意を」
「それをですな」
「しようぞ」
 まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、では」
「これから忙しくなりますな」
「兵を挙げる準備もして」
「徳川に仕掛け」
「織田家にも」
「そうしていきましょうぞ」
 こう言うのだった、そして。
 闇の中から出てだ、密かに織田家を離れた松永自身にもだ。影から言った。
「ではな」
「はい、これより信貴山に戻り」
「兵を起こすな」
「そうします」
 松永もこう答える。
「これより」
「そうか」
「それで宜しいですな」
「うむ、しかしな」
「しかしとは」
「遅かったわ」
 老人は彼に苦い声で言った。
「どれだけ待ったと思っておる」
「さて」
「御主が織田家に入りじゃ」
 そしてというのだ。
「天下が一つになるその時までじゃ」
「ずっとだったと」
「そうじゃ、十数年の間じゃ」
 それこそというのだ。
「待たせてくれたな」
「いやいや、どうもです」
「どうも。今度は何じゃ」
「頃合がなくて」
 謀反を起こすその時はとだ、松永は笑って言うのだった。
「遅れました」
「する気がなかったのではないのか」
「いやいや、違います」
 松永は笑って否定した。
「そうしたつもりは」
「ないと申すか」
「だから今です」
「謀反を起こしたか」
「そうなのです」
「その言葉信じてよいのか」
「だから今謀反をしたではありませぬか」
 この時にというのだ。
「そうではありませんか」
「織田家が浅井、朝倉や本願寺と争っている間ならじゃ」
 その時ならというのだ。
「謀反を起こせば大きかった」
「そうでしょうか」
「毛利や武田、上杉、北条でもよかった」
 彼等と戦っている間でもというのだ。 
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