| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ピンチの後にチャンスあり?

今、私とウルフの前に『ガメゴンロード』というモンスターが立ちはだかっている。
バラモス城に程近いこのネクロゴンドの洞窟には、今まで戦ってきたモンスターとは桁違いに強い敵が蔓延っている。

このガメゴンロードもその1匹で、戦闘開始早々にマホカンタを唱えてしまった為、私もウルフも魔法攻撃が行えないのだ。
同年代の男の子と比べればウルフの剣の腕前は高い評価を得るが、冒険者としてはまだまだ…
堅い甲羅で覆われたガメゴンロード相手では、然したるダメージを与える事は出来やしない。

私なんかは論外で、物理攻撃など出来るはずもなく、グランバニアから勝手に持ち出した『賢者の石』で、傷付いた身体を回復するしか出来る事がない。
アルルさんやハツキさん…力だけはあるカンダタに援護を頼みたいのだが、他の人達もそれぞれ敵の相手をしていて、私達を助ける余裕などありはしない…

はい。すっげーピンチです!
敵の後方にいる『フロストギズモ』が、要所要所でヒャダルコを唱え私達全員を苦しめるのが本気でムカつく!
お父さんやお兄ちゃんが控えていなければ、泣き叫びながら逃げ惑っていたに違いない。

因みに、アルルさんは『トロル』と、ハツキさん・カンダタは『地獄の騎士』と戦っている。
時折横目で戦況を確認するが、どちらも私達と同じように思わしくない。
つか、()よ誰か助けろや!


「であー!」
私の祈りが通じたのか…
それとも彼女(アルル)が心配になったのか…
どっちだか分からないけどお兄ちゃんが参戦し、“あっ!”ちゅー間に敵を全滅させてしまう。

助かった~…
流石は天空の勇者だね。
ウルフじゃ全く歯が立ったガメゴンロードを一撃で倒しちゃったよ。
そして直ぐさまアルルさんが苦戦していたトロルを切り捨て、地獄の騎士とフロストギズモへはギガデイン!

滅び行く敵に背中を向けて、私達の方へと戻ってくる姿はニヒルでカッチョイイ!
仲間のピンチを救う正義の味方。
それは私のお兄ちゃんだ!

「うわー…流石は天空の勇者様…つえ~…」
だがしかし…感情の篭もらない口調で、お兄ちゃんの激闘を称えるのは、何にもしなかったお父さん。
何だか、ちょっぴり、殺意が………

「分かってます!コレではアルル達の為にならないと言うのでしょう!しかし此処のモンスターは強すぎるんです!今のアルル達には荷が重すぎる…」
まぁ!?
あんな状況になっても、そんな事を考えて手を出さなかったのですかい?
冗談じゃねーよ、こっちは死ぬかと思ったんだぞ!!
本当は文句の一つも言ってやりたいのだが、先程までの戦闘が激しく、息が乱れて喋れません。

「うん…そうだねぇ…今のアルル達には、此処のモンスターは強すぎるよね。…あと数ヶ月は時間をかけて、特訓をすれば良かったね」
数ヶ月って…そんな暇があるわけ……あ!
そう言う事か…お父さんは『祠の牢獄』から『アッサラーム』に、ルーラで移動した事を問題視しているんだ。

時間をかけて船でアッサラームへ向かえば、その間にも戦闘で実戦訓練を行う事が出来たのだと言いたいのだろう。
“急がば回れ”の悪いお手本みたいな団体だな…

私もお兄ちゃんも…ウルフやカンダタですら、俯き黙ってしまうお父さんの言葉。
(ドン!)
「ティミー…よ、余計な事を…しないで…よ…あ、あんな敵…私…たち…だけで…大丈夫なのに…」
しかしアルルさんだけは、お兄ちゃんの胸を力一杯押し、息を切らしながら手出しした事に不平を言う。

勿論それは、ルーラ使用を特に要望していたお兄ちゃんを庇う為の強がりであるのだが…
その姿は健気だ。
私も見習おう!




小一時間の休憩後、再度奥へと進行する私達…
きっと私の今までの行いの悪さが呼び込むんだろう。
またもや先程と同じモンスターが現れ、私達に襲いかかってきた!
ごめんなさい神様…もう良い子になるから、マジで見逃して!

「ハツキさんはトロルの相手を、カンダタさんはガメゴンロードを牽制して、アルルとウルフ君は地獄の騎士を全力で倒して!マリーは後方から魔法で援護…ガメゴンロード以外に、メラを唱え続ける様に!」
大して信じていない神様に、心から祈りを押し付けていると、突然お兄ちゃんが大声で指示を出してきた。

慌てた私は兎に角メラを連発する。
神様への祈りが届いたのか、はたまた私が天才なのか…初っぱなにフロストギズモへ命中させる事が出来、アッサリ消滅させる事が出来た。

あのねちっこいヒャダルコを取り除いた事により、ウルフ達は断然有利に戦闘を進める事が出来る!
しかもお兄ちゃんの指示が的確で、瞬く間に敵は駆逐されてしまった。
う~ん…普段は頼り無く見えるけど、やっぱりお兄ちゃんってば凄い!

「どうですか父さん!アルル達は十分強いんですよ!敵の特性を把握して、それにあった戦い方をすれば、十分やっていけます!」
んー…どうだろう?
今回の功績はお兄ちゃんにあって、アルルさん達には何もないと思う。
完璧に適材適所を見極め、瞬時に対応する事の出来る天空の勇者様が凄いのであって、やっぱりアルルさんではまだまだ………

お父さんにもそれは解っているのだろう…
アルルさんを擁護するお兄ちゃんを抱き締め、ただ黙って頭を撫でるだけだった…


それから暫くはお兄ちゃんが指示を出して戦闘を行っていたが、コツを掴んだらしくアルルさんも指示を出し始め、気付いたらアルルさん指揮の下、私達は戦闘を行っていた。
「どうですか父さん!…アルル達は十分に強いですよ。戦い慣れた弱い敵とばかり戦うのも良いですが、新たな敵と戦い成長を促す事も必要です!」
もの凄く嬉しそうにアルルさんの事を自慢するお兄ちゃん。

「良い彼女を捕まえたな…」
ちょっとニガワラで2人を見据えるお父さん。
どういう意味に捉えたのか分からないが、誇らしげにアルルさんの肩を抱き寄せるお兄ちゃん。
結構ラブラブっす!

「絶対、どっかのバカ女に騙されると思ってたのになぁ…」
イチャつく2人には聞こえないお父さんの呟き…
私は盛大に頷き同意した!
ある意味リュリュお姉ちゃんのお陰ね…彼女が居なかったら、他の女に目が行っていたもん!



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧