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戦国異伝

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第二百二十二話 耳川の戦いその六

「はい」
「それではです」
「このままです」
「守りつつ戦い」
「そのうえで」
「攻めてよい相手と悪い相手がおる」 
 そして、というのだ。
「死兵は攻めるべきではない」
「迂闊に攻めますと」
 ここで言ったのは竹中だった。
「下手な傷を受けます」
「そうじゃな」
「ここはこうすべきです」
 鶴翼で包みつつ、というのだ。
「戦いです」
「疲れたならばな」
「下がって、です」
「疲れを癒しつつな」
「順序よく戦うべきです」
 だからだというのだ。
「徐々に戦っていきましょう」
「そういうことじゃな」 
 信忠も竹中の言葉に頷いてだ、そのまま戦い。
 そしてだった、そのうえで。
 疲れた陣は実際に下がらせた、そして無理をさせずにだった。
 新手を繰り出して戦う、そうした織田家の戦い方で戦をしていった。
 織田の兵は疲れていない、だが。
 島津の兵は違っていた、全員が死兵となり果敢に戦う彼等は。
 何時しか疲れが溜まってきていた、それでだった。
「動きが鈍くなったきたな」
「はい、残念ですが」
「どうしてもです」
「そうなってきましたな」
 義久に弟達が答えた。
「我等にしましても」
「長く戦い」
「疲れがです」
「感じられてきました」
「わしもじゃ」 
 見れば四人共だった、それぞれ汗と埃に塗れ。
 刀は刃が毀れ返り血も浴びている、そして自身もだ。
 四人共傷まで負っている、それはだった。
 兵達もだ、その殆どが。
「皆傷まで負いな」
「疲れも溜まり」
「飯も食っておりません」
「水も碌に」
 そうした暇すらなかったのだ。
「これではです」
「あと少しで力尽き」
「その後は」
「終わりか」
 遂にだ、義久はこの言葉を出した。
「最早」
「はい、これ以上の戦は」
「最早無理かと」
「無念ですが」
「どうすべきか」
 後ろは川だ、これではだった。
 下がれない、それでだった。
 義久は自分からだ、弟達に言った。
「わしの首をやるか」
「兄上の」
「兄上の御首をですか」
「織田に」
「そうじゃ、わしが首を出せばな」
 島津家の主である義久、その彼のだ。
「織田家も納得してくれよう」
「戦の終わりを」
「それを」
「そして家の安泰も」
「もう九州は手に入れられぬ」
 このこともだ、義久は言った。 
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