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戦国異伝

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第二百二十二話 耳川の戦いその四

「攻める陣は疲れたら下がるのじゃ」
「そして次の陣が戦う」
「その陣も疲れたら下がり、ですな」
「すぐ後ろの陣が戦う」
「そうしてですな」
「敵を徐々に攻めますな」
「あれは背水の陣じゃ」 
 信忠もわかっていた、島津の今の陣が何かを。
「あえて死地に入り戦う。死兵となって戦う陣じゃ」
「それ故に、ですな」
 黒田が信忠に言って来た。
「ここは」
「うむ、こちらは攻めて来る敵にじゃ」
「守りを固め」
「島津の兵は強い」
 信忠も熟知している、このことを。
「その強い兵達の攻めをな」
「防ぎつつですな」
「戦うのじゃ、兵の数で優っているのなら」
 それならというのだ。
「それを使って戦う」
「では」
「このまま戦に入る」
「十二段鶴翼で」
「戦うとしよう」
 こうしてだった、信忠はその島津の軍勢と対峙した。そうしてだった。
 長槍隊を前に出した、しかし。
 それだけではなくだ、そのすぐ後ろにだ。
 鉄砲隊を用意させていた、その彼等にだ。
 信忠は直接だ、こう言った。
「よいか、島津の兵が来ればな」
「撃つ」
「そうすればよいのですな」
「その島津の兵を」
「出て来た時に」
「島津の兵の鉄砲の使い方はじゃ」
 それはとも話す信忠だった。
「自ら前に出て撃って来る、しかしな」
「その兵をですか」
「撃てと」
「そうしますか」
「ここは」
「そうじゃ、その者達から撃て」
 真っ先にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「その彼等をですか」
「撃ってそうして」
「倒すのですな」
「真っ先に」
「そうせよ、よいな」
 こう言ってだった、長槍隊の後ろに置いた鉄砲隊にだ。攻めて来る島津の鉄砲隊を撃てというのだ。そのことを話してだった。
 信忠は実際に撃たせた、それを受けて。
 今撃とうという島津の兵達は次々と倒れていった、しかし。
 義久は臆することなくだ、こう言った。
「怯むでない!」
「このままですか」
「幾ら撃たれようとも」
「撃ち返す」
「そうせよというのですか」
「そうじゃ、怯まず臆することなくじゃ」
 そうしてというのだ。
「攻めるのじゃ、鉄砲が駄目というならじゃ」
 それならだった、義久は。
「弓矢じゃ」
「弓矢も放ち」
「そして、ですか」
「攻めよ」
「そうすればいいですか」
「御主達はどう思うか」
 義久はここで弟達にも問うた。 
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