戦国異伝
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第二百二十二話 耳川の戦いその二
「広く持っていねばな」
「そして悪人には厳しく」
「何処までも追って捕まえる」
「そうすべきですな」
「上様がいつも仰っている様に」
「その通りじゃ、奇妙は政は出来ておる」
それはもう信長から見ても及第だった。
「そして戦はな」
「戸次川、そして民に対して」
「ここまでは、ですな」
「次で決まる」
次の戦でというのだ。
「奇妙の器がな」
「そしてこの九州の戦も」
「決まりますな」
「次で」
「どうなるかが」
「そうじゃ、ここで島津を大いに破ればな」
その時はというのだ。
「島津も諦める、おそらく次の戦はな」
「その戦の場所は」
「一体」
「耳川じゃ」
そこでというのだ。
「そこでの戦となるな」
「耳川、ですか」
ここで信長に言って来たのは大谷だった。竹中や黒田、生駒といった者達は今は信忠の周りに置いたのだ。
「あの地ですか」
「そうじゃ」
「あの地は」
大谷はあえて言った。
「大友家が敗れた場所ですな」
「そうじゃったな」
「はい、ですから用心が必要かと」
「そうじゃな、しかし奇妙はわかっておるわ」
その耳川のこともというのだ。
「さもなければ兵を進めぬわ」
「耳川の方には」
「今軍勢はあちらに向かっておる」
その耳川にというのだ。
「だからじゃ、安心してよい」
「では」
「その耳川での戦いじゃが」
「おそらく島津はその耳川で」
「九州を賭けた戦をする」
そうしてくるというのだ。
「相当に激しい戦になる、じゃが」
「それでもですか」
「あの得意の釣り野伏せはな」
それはというと。
「おそらくしてこぬな」
「既に破られているからですか」
「島津は賢い」
これは主である義久、そして彼の弟達全てがだ。
「一度破られた策は仕掛けぬわ」
「ですか、では別の戦ですか」
「釣り野伏せだけが戦ではないな」
「はい、策は幾らでもあります」
「そのうちで特に激しいものを選んでくるわ」
「特に、といいますと」
ここで言ったのは兼続だった。
「まさかと思いますが」
「察したか」
「では」
「あれをしてくるわ」
「川だからですか」
「そうじゃ、川だからじゃ」
耳川、そこ故にというのだ。
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