骨斧式・コラボ達と、幕間達の放置場所
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交節・相対する狩人と魔刃・前
前書き
ひじょ~~~にお待たせしました!
村雲恭夜さん執筆、「狩人と黒の剣士」より、ライト君です!
―――尚、特別出演として、ミザールさんもいます。
小説を読み、スキルを使ってみれば、何とかなりそうではあったのです。
……が、ライト君が普通に戦っているその代わりに、
ネタバレしないようにと気遣いながら、尚且つ力を入れさせたガトウの実力がとんでもない事に……。
あと、長くなりそうなので、サワリである前編、バトル中心である後編に分ける事にしました。
では本編……まずは前編をどうぞ。
ある層の広葉樹並木が広がる、それなりの面積を持つ芝生の広場。
本来ならば閑散としている筈の場所なのだが、今は様々な屋台だ立ち並んで多種多様な香りを漂わせ、子供から大人に男や女まで多くのプレイヤーが居り、とても賑やかだ
行き成りここまで人が集まったのは何故か? ……その答えは、群生している木々の中でも特に大きい二本の枝に、とある横断幕が掛けられている。
それは―――『突発的デュエルトーナメント! 出場者二十名限定! 優勝者には豪華賞品!』―――というものだった。
豪華賞品に釣られたプレイヤー、実力を試してみたいプレイヤー、何より娯楽を求めるプレイヤー達が、続々と広場中央まで集まっていく。
「へぇ……面白そうだな! ちょっと出てみるか!」
「うんライト、折角だし出てみればいいんじゃない?」
その集団より少し外れた位置、堂々宣伝が書いてある横断幕を指差し、お互いに金髪であるとある二人の少年と少女が、楽しそうに笑いながら指差し、同時に内容へ心を踊らせていた。
ボサボサな金髪を持つ瞳も金に輝く少年は “ライト” 、金髪のさらりとしてストレートで此方は黒真珠のような瞳を持っている少女は“ミザール”。
ライトはソロ、ミザールは血盟騎士団に所属し、共に攻略組プレイヤーである。
お互いそれなりに面識があり中がいいのか、普通物理的ながらそれなりに距離を取る男女間の会話も、何処となく近げだ。
「豪華賞品もいいけど、俺はミザールとまたガチでやってみたいし、やる気が高まるな」
「いいよ、私も負ける気ないからね」
お互いにそう宣言すると受付に向かい、それぞれエントリーした。
見ると、血盟騎士団であるミザールは勿論のこと、ライトもそれなりに有名か、周りでは出場を辞退する様な声や、逆に奮起されて参加して見ようと言う事が、次から次へと上がっている。
と……ライトは辺りを見回し、お目当ての者が無かったのか首を横に振った。
「キリトの奴は来てない……まあ、突発的なイベントだし、仕方無いか」
キリトとは、攻略組かつ同じソロプレイヤー仲間(と言っていいのか)であり、《黒の剣士》と言う二つ名も持っているハイレベルプレイヤーである。
特に攻撃に対する反応スピードと、第六感とでも呼ぶべき感覚の鋭いプレイヤーで、その実力からは想像できない程中世的で、ナイーブな外見をもつ少年なのだ。
ライトとしてはそうそう戦える機会など無いので、是非刃を交えてみたいとも思っていた様子。が、居ない物に期待するのは愚かしい事であり、諦めるしかないと再び首を振っている。
参加者募集が終わり、主催者側のギルド―――そのメンバーが集計して、組み合わせを考えて行くのを見やりながら、彼は僅かに横から覗く青空と、上に存在している天井へ視線を傾けた。
(ま、準決勝辺りまでは楽勝だろ……あんま強い奴、いなさそうだったし)
問題はミザールなんだよなぁ、とライトはため息を吐きながら、一筋縄では勝てない彼女への対抗策を考えようと、腕を組んで持ち上げていた頭を少し落とす。
……だが、その考えは途中で一旦遮られることとなった。
「ちょ、あんた何で立ったまま寝てんの!? いやウチの屋台人来ないけどさ? でもだからって……ほら、品は出来てるからさっさと受け取ってって!」
「……Zz」
「だから寝てないで! 早く起きろよ!?」
どうも可笑しな客が居るようで、周りの物珍しげな視線も合わせ、ライトの視線も自然とそこに集まっていく。
怪しげ且つ毒々しげな食品を売っているその屋台には、確かに今居る男以外客はおらず、しかしその男も話をまとも受け取るなら、立ったまま睡眠を取り始めている事になる。
暗銀のメッシュが入った鉄色の逆立った短髪と、浅黒い肌を持つ長身の男性プレイヤーは、デカールなの顔に十字状の大きな傷があり、一目見る限りでは見下ろされる事も相まって『恐怖』の印象がのこるだろう。
……尤も、こんなコミカルな事態を引き起こした後では、怖いという単語など微塵も出てきそうにないが。
それはさておき―――中々にカオスな現状を繰り広げているが、男は漸く目を覚ましたのか猫背を解き、頭を掻きながら無言で品を受け取ると、メニューを開いて硬貨状となったコルを取り出し、店主の手に置く。
「まいど。……にしてもあんた、そんなに眠いなら何でこんな小規模祭りに―――ん? どうした?」
取り出した赤紫色の焼き鳥に食いついた途端、男の歩行速度が一気に緩やかになり、十数歩もすれば遠ざかっていく筈だった背中が、店主の前から中々離れないという事態に陥っていた。
もしや、それ程に不味かったのだろうか……周りのプレイヤーは当然、ライトも例外なくそう思いはじめた、その矢先だった。
「……スゥ~……フゴッ……Zz」
「は!? いや待て待て待て、また寝てんの!? この数秒でぇ!?」
「な……!?」
如何やら見当違い大外れ。
浅黒い男性プレイヤ-は、どうやら再び睡眠を取り始めたらしい。しかも律儀に焼き鳥を口に運んだまま、そして例えゆっくりでも歩くのは止めないままに。
まさかと思いつつ、男よりも頭二つ分低い小柄な男が覗きこむと―――
「ね、寝てる! 本当に寝てる!!」
「はぁ!? 嘘だろ!?」
「どらどら……っておうっ! マジみたいだ……」
「え~……?」
「……変な人だね」
嘘偽りなく、立って寝る+歩いて寝る+喰って寝る+行き成り寝る+数秒と経たずに寝る―――という大胆コンボをやり遂げた男は、気にぶつかって反っくり返っても起きず、焼き鳥も放さない。
最早笑いなどまるで起きず、皆微妙な表情のまま、男性プレイヤーから遠ざかっていった。
ライトと、何時の間にか戻って来ていたミザールももまた、彼らから視線を外すと、微妙な心持になった気持ちに活を入れる為、大きく深呼吸をする。
そして観客らに背を向け、未だ出場者の組み合わせを見ている主催者達へと、期待を込めた顔を向けるのだった。
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『さあ、いよいよ皆さまお待ちかね! 突発的 “デュエルトーナメント” の開催だあっ!』
「「「うおおおおおおっ!!」」」
辺りから大きな歓声が上がり、行き成り開催告知されたとはいえ、プレイヤー達がこのイベントを楽しみにしていたか、そしてどれだけ娯楽が少ないかが窺える。
その声の中、ライトは少しばかり緊張していた。
何せデュエルは普通個人個人でやったり、最多でも見知った者達に囲まれて勝敗を決めるもの。見世物状態は仕方無いとはいえ、こんな大観衆の中で戦うなど、普通は緊張する。
「うぅ……何かブルって来たぜ」
「まあ、緊張する気持ちは分からなくもないけど」
「え? お前もなの?」
「当たり前だよ、慣れてるって訳じゃないし」
そんな二人のやり取りは、周りの客らの高揚感に呑み込まれていく。
大音量で喜びの声が返ってきたことに満足げに頷き、司会者らしきファンキーな恰好の男は、手の項を前に向けて腕を伸ばし、メガホンの様な謎アイテムを強く握った。
『ではルールを説明するぜ! 参加者20名で二人づつ戦って貰い、勝った物が先に進めるのは言うまでもないこと!
今大会では決勝は “半減決着モードで、他の全試合は “初撃決着モード” で行われる! その他ルールは何時ものデュエルと同様だ!』
詳しく戦闘方法まで分けられている事に、ライトは少々感心すると同時、このデュエルトーナメントが、結構前から計画されていたものだと言う事も、普通に理解した。
心の清涼剤が少ないこのアインクラッドなのだから、我慢しきれずこういった催しを思いつくだけでなく、即座に準備や実行へと移してしまうのものも、ある意味では当然かもしれない。
久々に生死関係無く剣を触れると、ライトは緊張からだけでなく、高揚感からも武者震るいする。
『それじゃあ、抽選結果を発表するぜ! 出場選手は注目っ!』
Aブロック
1.コウキVSユウダイ
2.バージェスVSラグーン
3.ミザールVSガトウ
4.シンジVSクォーツ
5.フェザーVSリュウ
Bブロック
1.スサノオVSジュウオウ
2.フォルテVSユリア
3.ライトVSセネター
4.プラックVSアマヤ
5.イーヴァラVSジョーズ
『―――以上っ! AブロックとBブロックの覇者を決め……真の勝者は誰なのか!? 決勝で争って貰うぜっ!』
ライトはBブロック三回戦、ミザールはAブロック三回戦であり、それぞれ勝ち進めば、決勝で当たる事になる。
二人がそれぞれ決意を胸に秘めていると……周りが俄かに騒がしくなった。
先にも言ったがミザールは血盟騎士団所属で、しかも第二副団長なのだ。開催前でも注目を集めていたのだし、出場するとくればそりゃ、騒がしくなって当たり前なのである。
そして此方も先に言ったが、ライトの名もそれなりに知られている為、二人の名前を目にして且つ実力を聞き及んでいる者達は、既にどちらが勝つのかと言う賭けをしてしまっている。
参加者の中には肩を落としている者や、逆に猛者と闘えるのだとワクワクしている者もいて、十人十色な反応だ。
まあ、ライトは一応攻略組であるが対して抜きん出てはいない “セネター” と言うプレイヤー。
ミザールに至っては、無名であり前線で名前も聞かない “ガトウ” と言うプレイヤーとだ。結果は火を見るよりも明らかなのだろう。
「それじゃ、決勝で会おうねライト」
「勿論だ! 途中で負けんなよ?」
「そっちこそヘマして負けないでよ」
「おうよ!」
お互いに手を振りながら、ブロック別の天幕状控室まで行き、トトカルチョの集計とオッズ調整を待つ……そんな中。
周りから注目を集め、行き場の無い視線をさまよわせていたミザールは、皿の如く目を見開いて驚いた。
(さ、さっきの変な人がいる……!?)
視線の先に存在していたのは―――焼き鳥を買う前に寝て、勝った後も寝て、気にぶつかっても寝ていた、あの鉄色の髪を持つ男性プレイヤー。
そんな変な人呼ばわりも責められない彼が、すぐ目の前に座っていたのだ。
しかも名前の飛び交う周りの会話からするに、ミザールの対戦相手であるガトウとは、どうも彼であるらしいことが窺えた。
と、一人の男性プレイヤーが後ろの下がり過ぎて男―――ガトウにぶつかり、ガトウはそれなりの勢いで額を、天幕とは言え敷物の無い地面にゴツリとぶつけてしまう。
……それでも頑なに起きない。
それどころか気持ちよさそうに、実に静かな寝息を立てている。……格好はそのままに。
(油断禁物とは言うけど……名前も聞いたこと無いし、目ぼしいギルドにもこんな容姿の人はいないし……と言うか何で出場したの? この人)
ステータス数値が物を言うゲーム内である以上、筋肉質だの骨ばっているだの、巨漢だの小柄だの、男だの女だので実力は測れない。
人を見た目で判断してはいけないという言葉は、SAOでは比喩や戒めだけの意味を持たないのだ。
《戦姫》とまで呼ばれ、ハイレベルプレイヤーの中でも上位に位置するミザールが、実力からは想像できない美少女である事からしても、その言葉の意味が良く解る。
……解るのだが、目の前のガトウからはどうもその訓示を吹っ飛ばすような、微妙な空気しか感じ取れない。
多少なりと油断しても仕方ないだろう。
すると、外から観客の声援もひときわ声援が聞こえた。興奮からか、開催時よりも大きくなっている。それと同時に、出入り口からプレイヤーが姿を現した。
『ハイ! では出場者の皆さん、お待たせしました! ……対戦はAブロック開始と同時に始めます! こちらの一回戦スサノオさんとジュウオウさんですね! 準備はよろしいですか?』
「うっす!」
「はい!」
それぞれ獣を模した鎧と、日本の神々をかたどった装備を身につける男性プレイヤーが、メガホンを持った主催者側のプレイヤーなのだろう女の子に、お互い自分なりの方法で緊張をほぐしながらついて行く。
残った者達も、それぞれ独自の方法で緊張を和らげていた……未だに寝転がっているガトウは、それが緊張のほぐし方なのだろうか?
……それとも、外の出来事からするに、彼に元からある単なる癖か。
(後者だったら、何か嫌だなぁ……)
全身に力を込めて軽く息を吐きながら、しかし不意にガトウの姿を見て気合いが抜けそうになるのを堪え、私用武器の選択を頭の中で行っていく。
(最初は槍で行って……相手の力量を見て変更しよう。ライトとの対決になったら、状況を見て変えればいいよね)
最後に短くそして強く息を吐くと、“初撃決着モード”故か、今正に決着がつこうとしている勝負を、ミザールはその黒い目に映した。
場所は変わり、Aブロック天幕。
此方もまた第一回戦が終わり、第二回戦のメンバーが舞台へ上がっていくのを、背後からライトは見ていた。
(次は俺の番か。まぁミザールの戦いは見れないが、別に見る必要は無いだろ。武器は、何で行くかな…………やっぱ『エウリュアレの宝剣』で行くか!)
少しばかり悩むも、何時も通り基本的に使っている片手剣『エウリュアレの宝剣』で行こうと、ライトは決めた様だ。
同時に聞こえるのは、一際眩いライトエフェクトと大音量のサウンドエフェクト。そして観客達の声だった。
試合は終わり、第三回戦に入る様だ。
『第三回戦でーす! ライトさん、及びセスターさんは舞台まで上がってくださーい!』
「はい!」
「お、おす!」
自然体で部隊へと脚を進めるライトに対し、セネターはどこかぎこちない。
そんな彼に、ライトは苦笑いで告げた。
「別にそんな緊張すること無いだろ?」
「そ、そりゃあアンタはそうかもしれないけどさぁ……俺、上がり症なんだよ……仲間に煽られて出場しちまってさぁ……」
どうも本人的には極めて不本意な場へ出させられたらしく、セネターは表情までぎこちない物であった。
とはいえ……ライトの事を知らないのか、それとも知っていて尚なのか、やる気は十分であり諦めの感情はうかがえない。
そんな彼を見ながら横目でミザールのいる舞台を見やると―――ライトは思わず目を見開いた。
そう、あの寝まくりの変人が居たからである。
(確かガトウって名前だったよな……アイツ参加してたのかよ……)
何とも言えない微妙な表情で正面へと視線を戻し、セネター側から申し込まれて始まった、紫色のデュエル開始までのカウントダウンを一瞬睨んだ後、下へと目線を戻してセネターを眺めた。
メインウェポンは両手剣、そして左腕に楕円形のバックラーを装備しており、盾によるガードを合わせた、カウンターを用いるスタイルである事が分かる。
こういったカウンター戦法は、人型Modが代等するSAOでは中々に通用する戦法で、戦士率も低くなる代わりにある程度の鍛錬が必要な、中級者以上向けのスタイルだ。
馬鹿正直に正面から言っても、ソードスキルで反撃されるのがオチ。ライトは愛剣をダラリと下げたまま、どう攻めるか戦法のパターンを幾つも生みだし、組み合わせて行く。
そして……スタートの合図が鳴り響いた。
「シッ!」
「うおっ!?」
何故かライトは行き成り真正面から斬りつけ、強攻撃の重さで軽くノックバックさせた。余りにも唐突で、しかも想定していなかった攻撃の為、セネターの行動が一瞬遅れる。
その隙を逃さずライトは再び軸をずらして剣側へ接近し、まずは剣を水平に払って盾を弾く。
そのまま振り切った剣の切っ先を傾け、右腕を後ろに引いた。
単発重攻撃『ヴォーパル・ストライク』のプレモーションを、システムが感知し剣に光が宿り、刃が血の色に染まる。
セネターも一か八か、片手で垂直に振り降ろし、先に頭部を捉えんとしている。
「うおおおおおっ!」
「せい……らああっ!」
ぶつかり合うお互いの咆哮に呼応し、剣は加速する―――――しかし、ソードスキルには勝てないか、ライトの一撃を受け、セネターは後方へと吹き飛んだ。
頭上にライトの名を写したウィナー表示が現れると、観客席から爆発した様な大音量が発せられた。
「くっそ~……やっぱ負けちまうかぁ……まさか逆手に取るとはなぁ」
「頭の中にはあっても、やっぱすぐには行動できないだろ?」
「まぁな。練習しててもぶっつけ本番じゃあ、やっぱきっついぜ……」
その後、ライトに手を貸して貰い立ち上がったセネターは、仲間の方へと軽く苦笑いで手を振り、天幕へと戻っていく。
鞘へ『エウリュアレの宝剣』を戻し、そのまま天幕へ行こうとして……ライトは立ち止まる。そのまま、Bブロックの部隊の方を向いた。
結果は解りきっていようとも、一応彼女の方も見ておく気らしい。
(さ~て、何秒でカタが付いたのか……)
口もとをまたも苦笑いでつり上げ、ウィナー表示を見ようとして……瞬間、時間でも奪われた様に止まる―――
―――ミザールが呆然としてガックリ膝をつき、ガトウと言う名のプレイヤーが欠伸をしながら背を向け、頭上に『Winner:GATO』と表示が出ている光景によって。
「……嘘、だろ……?」
後書き
後編は近々上げる予定です。
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