FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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伏魔殿
翌日・・・第三者side
『大魔闘演舞もいよいよ中盤戦、三日目に突入です』
『今日はどんな熱いドラマを見せてくれるかねぇ』
大魔闘演舞三日目の開始にともない、実況のチャパティ、解説のヤジマがそう言う。
『本日のゲストは魔法評議院より、ラハールさんにお越し頂いております』
『久スぶりだね』
『よろしくお願いします』
チャパティに紹介されたラハールは挨拶する。
『ラハールさんは強行検束部隊大隊長ということですが』
『ええ。大会中の不正は許しませんよ』
ラハールのジョークに会場中の観客たちは大笑いする。
『さすがは大隊長!!どんな時でもお仕事を忘れないんですね!!』
チャパティたちのトークによって観客席にいる人たちが盛り上がっている中、売店などのホールをラハールと同じ服装の顔にキズのある男が仏頂面で歩いていた。
「ラハールめ、俺まで付き合わせやがって・・・」
その男の名前はドランバルト。7年前の妖精の尻尾のS級試験に紛れ込み、妖精の尻尾を潰せるネタを見つけようとしていたが、ゼレフを求めてやって来た悪魔の心臓、さらにはアクノロギアの襲来により作戦を断念することになった者である。
ドランバルトは本日のゲスト、ラハールに大魔闘演舞に一緒に連れてこられたのだが、実は7年前の一件で妖精の尻尾を見捨ててしまったことに後ろめたさを感じており、あまり来る気分ではなかった。
しかし、ラハールの説得とある少年と少女の元気な姿を見たくて文句も言いながらもついてくることにしたのであった。その少年と少女とは・・・
「大変!!試合が始まっちゃう!!」
「なんで1人じゃないのにまた遅刻しそうになってんだよ俺は!!」
「あんたが屋台の串焼き食べたいなんて言うから!!」
「すごい行列だったのに~!!」
「たって美味しそうな匂いだったんだもん」
「いいから急ごうぜ」
そう言いながら駆けていく黒髪の少年と藍髪の少女と水髪の少女・・・のような少年、そして3匹の猫たち。
ドランバルトはその少年少女を見て足を止める。彼が見たかったのは藍髪の少女と水髪の少年だったのである。
藍髪の少女は自分がS級昇格試験に紛れ込む際に利用し、天狼島に置き去りにしてしまった少女。
そして少年の方は同じく7年前に、彼の仲間たちから死んだと聞かされていた少年。7年間ずっと死んでしまったと思っていた2人の姿を見たドランバルトは、思わず頬を緩める。
「頑張れよ・・・2人共」
ドランバルトは誰にも聞こえることのない小さな声で、会場へと消えていく2人の背中にエールを送った。
シリルside
『本日、三日目の競技を発表します!!』
チャパティさんが競技を発表するとこにギリギリで間に合った俺とウェンディはこっそりとルーシィさんたちの後ろから闘技場が見える位置まで移動する。
会場はいつも通り、競技が発表される前から大盛り上がりである。
『競技の名前は『伏魔殿』!!』
「パンデモニウム?」
「どういう意味ですか?」
競技名を聞いてなんという意味なのかわからなかった俺とウェンディはエルザさんたちに質問する。
「伏魔殿という意味だな」
「伏魔殿?」
「魔物が住んでいる神殿ってこと」
エルザさんとルーシィさんが俺たちの質問に答えてくれる。
「お化け屋敷でも出てくんのか?」
「んなわけねぇと思うけどなぁ」
ナツさんとグレイさんがそう言う。
「お化け・・・」
「うぁ・・・あたしそう言うの苦手・・・」
ウェンディとルーシィさんはお化けという単語に青ざめていた。
「そうか?私は別に気にしないが」
「エルザは特殊なのよ」
ルーシィさんの言う通りですね。エルザさんは逆に怖いものを見つける方が難しいような気がする。
「シリルは平気なの?」
「お前も幽霊とか言ったらビビりそうな気がしてたけど・・・」
「何の反応もないしな」
ウェンディ、ナツさん、グレイさんが俺の顔を見ながらそう言う。
「何言ってるんですか?3人とも忘れちゃったんですか?」
「「「「「?」」」」」
3人に加えてエルザさんとルーシィさんも俺が何を言いたいのかわからずに顔を覗き込む。
俺は妖精の尻尾の応援席にいる1人の少女・・・なのかな?を指さす。
「幽霊がすぐ近くにいるんだから今さら怖いわけないでしょう」
「そういえば・・・」
「いたな、幽霊・・・」
「あまりにも馴染んでて気付かなかったけど・・・」
「初代ってもう亡くなってたんですよね・・・」
俺のもっともな発言を聞いてナツさん、グレイさん、ルーシィさん、ウェンディが納得する。
『参加人数は各チーム2名です。選手を選んでください』
「2名?」
チャパティさんが今回の参加人数を発表したのだが、昨日一昨日と1人だけだったのに今日は2人も参加するのか。ここでもギルドの絆を見るってことなのかな?
「俺が出る!!夕べの続きやんなきゃ気がすまねぇ!!」
ナツさんが昨日の剣咬の虎の行いがいまだに許せないらしく気合いを入れながらそう言う。だけど・・・
「だから勝手に決めんなって!!つーかおめぇは昨日出たから今日は出れねぇんだよ!!」
「何!?」
大魔闘演舞のルール『2日連続で同じ選手が競技パートに出ることはできない』というルールがあるから昨日出たナツさんは今日の競技パートには出れないんだよなぁ。
「どうする?エルザ」
「2人だからコンビネーションがいい人の方がいいんでしょうか?」
ルーシィさんとウェンディがエルザさんにそう言う。
「コンビネーションならシリルとウェンディが良さそうだが・・・」
「俺とウェンディだけだとちょっと力が足りない気がしますよ」
グレイさんと俺がそう言う。
「ここは私に任せてくれないか?」
「何か作戦でもあるの?」
「いや・・・ただ少しペアを組んでみたい奴が居てな」
エルザさんがペアを組んでみたい人?でも仕事でこのチームはほとんど一緒だから今さらペアを組む必要なんてあるのか?
「誰だよ?ペアを組みたい奴って」
「俺だろ俺!!エルザはやっぱりわかってるからなぁ」
「だからあんたは出れないでしょって」
「ナツさん、少し落ち着いてください」
相変わらず出たがりのナツさんにルーシィさんとウェンディがそう言う。
「シリル、行くぞ」
「え!?俺ですか?」
エルザさんに指名され驚く俺。確かに俺とエルザさんでペアなんか組んだことないけど・・・
「エルザとシリルか・・・なんか意外と相性いいかも!!」
「面白そうなペアなんじゃねぇか?」
「ファイト!!シリル!!エルザさん!!」
ルーシィさん、グレイさん、ウェンディが俺とエルザさんのペアに賛成する。
「決まりだな」
「わかりました!!」
エルザさんと一緒ならそう簡単には負けることはないだろうし、1日目の失態を取り戻すにはいい機会かもしれない。
俺は力強く返事をするとエルザさんと闘技場へと降りていく。
「俺を出せ!!」
「落ち着けって言ってんだろうが」
ナツさんがいまだに叫んでいるのをグレイさんが制する。ルールはルールなんだから諦めてくださいよ。
「Bチームは私が出るよ」
「ちょっと待て!!そろそろ俺にもなんかやらせろ!!」
一方Bチームではカナさんとガジルさんがそんなやり取りをしている。
「ガジルくんは昨日出たから今日は出れませんよ?」
「ぐっ!!」
ジュビアさんにそういわれガジルさんは悔しそうに歯軋りする。ナツさんとガジルさんってなんか似てますよね、そういうところ。
「ていうか、なんでリザーブメンバーのカナが?」
「ミストガンはどうした?」
「今日はまだ姿を見ていませんね」
ミラさん、ラクサスさん、ジュビアさんが周辺を見渡しながらそう言う。確かにBチームの待機場所に本来いるはずのミストガンさんの姿がない。
「実況のゲストに評議院がいるんじゃ出場できんでしょ」
「それもそうね」
カナさんに耳打ちされミラさんが納得する。ミストガンさんの中身のジェラールは脱獄犯だからね、バレたら捕まっちゃうよ。
「でもジュビアたち、今5人しかいませんけど大丈夫なんでしょうか?」
「別に常に全員が闘技場にいろなんてルールはねぇから大丈夫だろ」
昨日のバトルパートで負傷したエルフマンさんはまだ医務室で眠ってたりする。でもBチームで今いない2人はバトルパートでもう出てるから運営も選ぶようなことはないと思うし大丈夫なんじゃないかな?
「カナがいくなら私も出ようかしら」
「いいんじゃねぇの?」
「頑張ってください、カナさん、ミラさん」
「ちっ、しゃあねぇな」
どうやらBチームはカナさんとミラさんで決まったようだ。
「エルちゃんがいくなら私に行かせて、カグラちゃん」
「許可しよう」
人魚の踵は猫みたいな髪型をした女の人が名乗りをあげる。
「妖精の尻尾4人とも超可愛い!!カグラさん!!もう1人はソフィアでいい?」
「何言ってんだい」
「ソフィアは昨日の競技パートで出たから今日は出れないんだよ?」
「えーっ!?」
ソフィアさんがエルザさんたちを見て目を輝かせていたが昨日の競技パートに出ていたが為に参加できないと知るとがっかりと肩を落とす。
「4人とも」とか言ってた気がするが気にするとろくなことになるからそのことについては突っ込まないぞ。
「じゃあ私がいってもいいかい?」
「許可しよう」
猫耳の人と一緒に出てくるのは1日目のバトルパートに参加していたリズリーさん。2人は闘技場へと向かって降りてくる。
「わぁ~ん!!ソフィアの至極の時間がぁ・・・」
「お前は落ち着け」
「出ていっても接触できる競技とは限らないでしょ」
「だけど~・・・」
ソフィアさんはよほどエルザさんたちにセクハラしたかったらしく号泣し、それをカグラさんたちがあやしていた。
「負けないよ!!エルちゃん!!」
「ああ」
後ろから来た猫耳の人に声をかけられ答えるエルザさん。
「お知り合いなんですか?」
「ああ、昔の私の仲間だ」
エルザさんは笑顔でそう言ったあと、少し表情を曇らせる。
「エルザさん?」
「ハッ!!すまない、気にするな」
俺が声をかけるとエルザさんは顔をバチバチと叩いて気合いを入れる。あの猫耳の人と何かあったのかな?せっかく久しぶりにあったんなら色々お話しすればいいのに。
『人魚の踵からはミリアーナ選手とリズリー選手が出るようです』
会場の魔水晶ビジョンにミリアーナさんとリズリーさんの顔が写し出される。あの猫っぽい人はミリアーナさんって言うのか。
「評議院の前だ、余計なことはするなよ、オーブラ、ナルプディング」
(コクンッ)
「了解でさ」
大鴉の尻尾はシャルルたちを襲った鼻の高い男と1日目の競技パートに出てきたナルプディングが出るようだ。
「天馬から僕と」
「僕が行くよ」
「「「「「「「「「「キャアー!!」」」」」」」」」」
青い天馬からはヒビキさんとイヴさんが参加するようだ。
それを聞いた女性人は2人の名前の書いてある看板を掲げながら黄色い声を出す。
「夕べの話通り俺が行く。全員纏めて黒雷のチリにしてやる」
「どのような競技かもわからぬというのにか?」
「オルガらしいな」
「フフッ」
剣咬の虎では1人はオルガさんが出てくるようだ。
「もう1人は誰が来る?」
「ローグは?」
「興味がない」
オルガさんとグラシアンさんがまだ剣咬の虎で出場していないローグさんに声をかけるけど冷たくそう返す。
「ならば私が行こうかな、いいかな?ローグ」
「ああ」
どうやらもう1人は1日目に続いてルーファスさんが出場する模様。
「いいのか?愛しのあの子と一緒の競技にグフッ!!」
「余計なことは言わなくていい」
グラシアンさんが何か言おうとしたがローグさんが顔をわしづかみにして話を遮る。そのやり取りを見ていたルーファスさんは口元を押さえて微笑み、スティングさんは全く気にした様子もなく闘技場を見つめている。
それにしてもあのローグって人、どこかで見たことある気がするんだよなぁ・・・どこだっけ?
シェリアside
「ジュラさんが出るの?」
「オババの命令じゃ仕方ない」
あたしがこの競技にジュラさんが出ると言い出したので驚いているとリオンがそう言う。
「靴下・・・」
「新しいの買えよ」
あたしたちの後ろでは昨日クロヘビに靴下を破られたトビーがいまだに悲しみに暮れており、ユウカが冷静に突っ込みを入れている。
「うむ、任せておけ」
ジュラさんがお髭を触りながらそう答える。となると・・・
「もう1人は誰が行く?」
リオンがそうあたしたちに聞く。今回の競技は2人参加だからジュラさんともう1人出さないといけないんだよね。
「だったら、あたしが行ってもいい?」
あたしは手を挙げてリオンに名乗り出る。だって今蛇姫の鱗で何も出てないのあたしだけなんだもん。
「おし、じゃあシェリアで―――」
「待って」
あたしで決まりそうになった時、一番後ろにいた少年が待ったをかける。その少年は・・・
「どうしたの?レオン」
なんとレオンだった。レオンが誰かの話を遮るなんて珍しいなぁ。
「この競技、俺に行かせてくれ」
レオンはあたしたちに面と向かってそう言う。
「でもあたしまだ何も出てないん―――」
「いいだろう」
「ちょっとリオン!!」
レオンは1日目のバトルパートで出てたから今日は譲ってもらおうかと思ったんだけど、あたしが言い切るよりも先にリオンがレオンの参加を許可してしまう。
「サンキュー、リオンくん」
「ならば行くぞ、レオン」
「はい」
ジュラさんとレオンはそう言って2人並んで闘技場へと降りていく。
「もうリオン!!あたしだって行きたかったのに!!」
「そう言うな、シェリア」
「今回だけは許してやれよ」
「オオーン」
リオン、ユウカ、トビーがそう言う。あれ?なんかレオンが出るべき理由でもあったのかな?
「もしかしてこの競技ってレオンが有利だったりするの?」
「さぁ?俺たちはまだ競技の内容は知らないからな」
「だったらなんで?」
あたしがリオンの顔を見上げるとリオンはあたしの頭に手を置く。
「レオンが今までに「―――させてくれ」なんて言ったことあったか?」
「ん~?」
レオンと出会ってからの記憶を掘り起こしてみる。レオンはいつも受け身で自分の意見を言うときも必ず語尾に?をつけて決して自分の意見を押し通すようなことはない子だった・・・だけどさっきは「行かせてくれ」なんて珍しく自分の意思を押し通すような言葉を使った。
「なかったかな?」
「俺にも一度もそんなことを言った記憶がない。だが今回はそう言い切った。
これは俺の推測だが、レオンは今日出場しなければならない理由があるのかもしれん。それが吉と出るか凶と出るかはわからんがな」
レオンが出場しなけらばならない理由?仮にそうだとしたら、一体何が原因なのかな?
「この大魔闘演舞の観客たちの歓声か、誰か気になる奴でもいたのか、それともまた別の何かか・・・」
リオンも何が原因かはわからないみたい。その答えを知っているのは、きっと今のところレオンだけなんだろうな・・・
シリルside
『選手が出揃いました!!剣咬の虎からはオルガ&ルーファス!!
蛇姫の鱗からはジュラ&レオン!!
青い天馬からはヒビキ&イヴ!!
大鴉の尻尾からはオーブラ&ナルプディング!!
人魚の踵からはミリアーナ&リズリー!!
四つ首の仔犬からはノバーリ&セムス!!
妖精の尻尾Aからはエルザ&シリル!!
妖精の尻尾Bからはカナ&ミラジェーン!!
以上、各選手が出場です!!』
魔水晶ビジョンにそれぞれの出場選手たちの顔が映し出される。
「レオン!!ジュラさん!!」
「やぁ、シリル」
「久しぶりじゃのぉ」
最後に出場が決まったレオンとジュラさんが降りてきて、俺はレオンに手を振り、ジュラさんに軽く頭を下げる。
「レオンも出てきたんだね」
「うん。ちょっと気分が向いたからね」
レオンは相変わらず飄々としており、本当に気分が向いているのかどうなのか判断に迷うところである。
「シリル殿、今回はよろしく頼むぞ」
「こちらこそ、お手柔らかにお願いしますよ」
俺とジュラさんはそんな話をしている。ジュラさんとレオンって1日目のバトルパートですごかったからなぁ・・・まぁうちはエルザさんいるからあんまり負ける気はしないけど。
「シリル殿は以前カミューニ殿を倒したと伺ったのだが誠かな?」
「え?えぇ、一応・・・」
「ほう」
ジュラさんが聖十になった時期はカミューニさんと入れ代わりだったはずだけど、名前くらいは知ってるってことなのかな?
「できることならいつか手合わせしてもらいたいのぅ」
「全力で遠慮しておきます!!」
ジュラさんのまさかの提案に首をブンブン俺は横に振る。ジュラさんなんかと対決したら一瞬で負けるわ!!
俺たちが話していると空に青紫色の魔法陣が展開され、その中からイビツな形の城が出てくる。
「これは・・・」
「すごい・・・」
「たまげたねぇ、これは」
姿を現した城を見てエルザさん、ミリアーナさん、リズリーさんが感想を言う。
「すごいや!!」
「解析開始」
巨大な城に興奮気味のイヴさんの脇でヒビキさんは古文書を開いて情報を入力している。
「邪悪なるモンスターが巣くう神殿伏魔殿!!」
「でかっ!!」
「おっきいわね」
「カボチャだ」
「今日はいるんだ」
カナさんとミラさんは伏魔殿のあまりの大きさに驚き、俺とレオンはカボチャ・・・もといマトー君がいることに気づいてそう言う。
「モンスターが巣くうだと?」
「そういう設定ですのでカボ」
ジュラさんの問いにマトー君が答える。
「この神殿の中には100体モンスターがいます。といっても我々の創った魔法具現体、皆さんを襲うようなことはないのでご安心を」
そりゃあ競技に使用したモンスターが観客に危害を加えたら大魔闘演舞なんて即効中止にされちゃうだろうからな。
「モンスターはE、D、C、B、A、Sの6段階の強さが設定されています!!内訳はこのようになっています」
魔水晶ビジョンにそれぞれのレベルの数が表示される。Eクラスが40、Dクラスが30体、Cクラスが15体、Bクラスが10体、Aクラスが4体、Sクラスが1体となっている。
「ちなみに、Eクラスのモンスターがどのくらいの強さを持っているかといいますと!!」
魔水晶ビジョンが切り替わり、神殿内と思われる場所が映し出される。そこに黒い四つ足のモンスターがおり、それを見た観客たちは怯えながらビジョンを見る。
そのモンスターが目の前にある石像に体当たりすると、石像は一瞬で跡形もなく姿を消してしまう。
「こんなのやこんなのより強いのやらが100体渦巻いているのが『伏魔殿』ですカボ」
Eクラスのモンスターの破壊力に会場が静まり返る。
「なかなか派手な競技だな」
「昨日までが地味だったからな。これくらいした方が盛り上がるって判断なんだろ」
俺の意見にレオンがそう言う。
「モンスターはクラスが上がるごとに倍々に戦闘力ご上がると思ってください。Sクラスのモンスターは聖十大魔導が2人がかりで戦ったとしても倒せる保証はない強さになっていますカボ」
「む」
マトー君にそう言われジュラさんが少し不機嫌そうな声を出す。
「つまり、1人だと上位クラスのモンスターを倒せる見込みがないから2人での競技にしたってことかな?」
「そうですカボ。1人ではあまりにも危険ですからねぇ」
イヴさんとマトー君がそう言う。
「皆さんには順番に戦うモンスターの数を選択してもらいます。これを挑戦権といいます」
「挑戦権?」
「例えば3体を選択すると神殿内に3体のモンスターが出現します。選んだチームは2人で神殿に入ります。3体のモンスターを撃破するとそのチームのポイントに3点が入り、次の選手は残りの97体から挑戦権を選ぶことになります。これを繰り返し、モンスターの数が0!!または皆さんの魔力がなくなった時点で競技終了です」
マトー君が挑戦権についての説明を魔水晶ビジョンを見ながらしてくれる。
「数取りゲームみたいだね」
「そうです。一巡した時の状況判断も大切になってきます。しかし先ほど申し上げた通りモンスターにはランクがあります。これは挑戦権で1体を選んでも5体を選んでもランダムで出現する仕様になってます」
魔水晶ビジョンに5体選んだ時の例としてS、A、A、B、BというものとE、E、E、D、Dという2つの例が映し出される。
「つまりSクラスのモンスターとぶつからない戦略が必要ということだね」
マトー君の説明を受けてヒビキさんが髪をいじりながらそう言う。
「ランダムっていうなら、そんな戦略立てようもねぇがな」
「それもそうだね」
ヒビキさんの意見に対してオルガさんとローグさんがそう言う。
「いや、確率論と僕の古文書《アーカイプ》があればある程度の戦略が立つ」
「さすがだね、ヒビキ」
2人に対しヒビキさんがそう返し、イヴさんがヒビキさんを持ち上げる。
「モンスターのランクに関係なく撃破したモンスターの数でポイントが入ります。一度神殿に入ると挑戦を終えるまで成功させるまで退出はできません」
「神殿内でダウンしたらどうなるんだい?」
「今までの自チームの番に獲得した得点はそのままにその順番での撃破数は0としてリタイアになります」
カナさんの質問にマトー君がそう答える。
「どちらか1人でもダウンしたらそこでリタイアになっちゃうの?」
「その通りですカボ」
ミラさんとマトー君がそう言う。
「欲張りすぎても良くないってことか」
「おまけに常に2人とも無事な状態じゃないといけないなんて・・・」
「それに次の順番までの魔力の回復具合も計算に入れながら戦うから・・・」
「意外と難しそうだね」
リズリーさん、俺、ミラさん、カナさんがそう言う。
「こりゃあ俺出なきゃよかったかなぁ」
「?なんで?」
レオンが突然そんなことを言い出す。確かにレオンはのんびりしてるからこういう頭を使いながら戦う競技が苦手っぽい気もするけど。
「だって片方が倒されたらその時点でリタイアだろ?ジュラさんはともかく俺は弱いからなぁ・・・」
「どの口がそんなこといってんだよ・・・」
1日目のあんなハイレベルな魔法見たから言えるけどレオンはかなり強い気がする。なのに弱いからとかなんか嫌みに聞こえるわぁ・・・
「それでは順番を決めます。くじを引いてください」
そう言ったマトー君の手に8本の棒の入った箱が現れる。
「シリル、お前が引いてこい」
「?俺、くじ運そんなによくないですよ?」
なんたって7年前の魔法コンテストで最後を引いたからな。このゲームって順番がより早い方が有利な気がするから俺のくじ運に任せられると困るんだけど・・・
「案ずるな。その代わり、挑戦権の選択肢は私にくれ」
「了解です」
エルザさんは戦闘においての頭の回転はいいから挑戦権を考えてくれるのはありがたい。
とりあえず俺はくじで早い順番を引けるように祈っておこっと。
各チームの代表がくじをそれぞれ引く。引いた棒の先端に戦う順番の数字が映し出される。
「オオッ!!一番だ!!」
俺は自分の引いた棒に映る数字を見てそう言う。なんだ俺意外とくじ運いいぞ!!
「ラッキーだね!一番たくさん自分の順番が回ってくるよ!!私なんか8番だ」
「あらあら、カナらしいわね」
カナさんが8と映し出している棒を俺に見せながら苦笑いし、ミラさんはいつも通りの笑顔でそう言う。
「レオンは何番?」
「7番」
レオンは自分の引いた棒に映る数字を俺に見せる。でもレオンは別段気にした様子もなく平然としながらチョコバナナを食われる。なんかここまで何があっても動じないと逆にかっこいい気がしてくるから不思議だ。
「エルザさん!!一番でした」
「そうか」
俺が引いてきたくじを見せるとエルザさんはため息まじりにそう言う。あれ?俺一番いいくじ引いてきたんだけど・・・
「この競技、くじ運で全ての勝敗がつくと思っていたが・・・」
「くじ運で!?い・・・いやどうでしょう?戦う順番よりペース配分と状況判断の方が大切なゲームですよ」
マトー君はエルザさんの言葉にそう言う。他の競技参加者たちも同様な考えらしくエルザさんと俺の方を見る。
「いや・・・これはもはやゲームにならんな。いくぞシリル」
「は・・・はい!!」
神殿の入り口へと歩き出すエルザさん。俺は呼ばれたのでエルザさんの後ろにくっつくようについていく。
「え!?」
マトー君はエルザさんが何を言いたいのかわからず目を点にしている。
エルザさんは神殿の前の階段につくと立ち止まる。俺はその脇に並びエルザさんの顔を覗き込む。
「100体全て私たちが相手する。挑戦権は、100だ」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
エルザさんのとんでもない選択に会場にいる全ての人間が驚きを隠せない。
「ハハハハハッ!!」
「クククククッ」
エルザさんの無謀すぎる選択にナツさんとグレイさんは楽しそうに笑っている。
「フフフッ」
その挑戦にエルザさんと共に挑む俺もあまりのも予想外の挑戦に楽しくなって笑みをこぼす。
「やれるだろ?シリル」
「はい!!絶対やってやりますよ!!」
こうして俺とエルザさんの無謀すぎる挑戦が幕を開ける。
後書き
いかがだったでしょうか。
この伏魔殿はどうしようかすごく迷いました。
最初はシリル1人で挑戦する予定でしたがシリルが果たして1人で倒せるのかと思い断念、グレイだけいまだ活躍がないからグレイとシリルで挑もうかとも思いましたが割りと堅実なこの2人が100体に挑戦するビジョンが思い付かずにこれまた断念。
なので一度やってみたかったシリルとエルザのペアでモンスターの強さを原作よりワンランクずつ上げてタッグで行うことにしました。
次回もよろしくお願いします。
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