当直
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第四章
「何も出て来ないのが」
「ええ、今日も平和で」
「本当に何よりでした」
ラスコーニンとブチャーノフも飲みつつ応えた、そして。
三人は消灯をしたがこの時窓の外に何か得体の知れない者達を夜の中に見たが敬礼で返した、深夜のパトロールだと思って。
そしてベッドで寝てだった、朝には当直を交代した。スコヴィッチは隊長に当直日誌を出しただそこで隊長に問われた。
「昨日も平和だったな」
「はい」
満面の笑顔での返事だった。
「実に」
「それは何よりだ」
「本当に何もありませんでした」
「そうだな、この基地は今日も平和だ」
「明日も」
「少なくとも当分この辺りが騒がしくなることはない」
サンクトペテルブルグ近辺にあるこのl基地はというのだ。
「ウクライナから遠いしな」
「だからですね」
「平和だ、寒くてもな」
「そういうことですね」
「さて、ではだ」
隊長は当直日誌を受け取ってからだ、すぐにだった。
二つのグラスとウォッカの瓶を出してだ、スコヴィッチに勧めた。
「一杯どうだ」
「隊長のおごりですか」
「そうだ、当直が終わったからな」
それのささやかな祝いとして、というのだ。
「どうだ」
「では有り難く」
「昨日は飲んでいたな」
「はい、休日の当直でしたし」
普段以上にとだ、スコヴィッチは正直に答えた。
「そうしていました」
「そうだな、だが今日もだな」
「はい、飲まないと」
「やっていけないからな」
「ロシアでは」
「ロシア人は飲む為に生きている」
隊長も笑って言う。
「それは朝からだ」
「寒くてやっていけないですから」
「そうだ、ではな」
「一杯ですね」
「飲んで軍務に戻ってくれ」
「それでは」
スコヴィッチはにこりと笑って隊長に応えて彼が勧めるウォッカを飲んだ、そうして昨日何もなかった平和な当直の時に飲んだ大量のウォッカのことを思い出したのだった。彼が昨日のことで思い出したのはそれと楽しく一緒に飲んだ部下達のことだけだった。
当直 完
2015・3・23
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