少年の知恵
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
3部分:第三章
第三章
「これだってな」
ククの大きさを考えればでした。どう見てもどう考えても無理でした。かえってマオイが引っ張られるだけです。その子とは簡単に想像がつきました。
これでマオイは困りかけました。しかしです。
網を見てなのでした。彼はふと考えました。
「若しかしたら」
頭の中で閃くものがありました。そうしてなのでした。
何日かあれこれと何かをしてからです。海の中に入ってそこでククを呼ぶのでした。
するとククはすぐにやって来ました。そのうえで彼に問い返します。
「やるつもりだな」
「ああ、そうだ」
海の中で胸を張って彼に言います。
「御前を絶対にぎゃふんと言わせてやるからな」
「ふん、やれるものならやってみろ」
ククの強気はここでも変わりません。
「やれるものならな」
「言ったな、それじゃあな」
「ああ、どうするんだ」
「ここまで来い」
ククに対して言います。
「いいな、こっちにな」
「俺と泳ぎで勝負するっていうのか」
「それは来てみればわかる」
あえて多くは言わないのでした。そのかわりにです。
早速泳ぎはじめてです。それからククに言うのでした。
「こっちだ。来い」
「泳ぎで人間が魚に勝てるか」
ククはそのマオイに対して自信たっぷりに言い返します。
「ぎゃふんと言わせてやるからな」
「ふん、それは僕の台詞だよ」
こんなやり取りをしてです。マオイは自分のありったけの速さで泳ぐのでした。
ククはそのマオイを追い掛けます。けれどです。
マオイは小回りを活かしてあっちにこっちにと泳ぎ回ります。それに対して大きくてしかも泳ぎの速いククは困惑してしまうのでした。
「糞っ、何てすばしっこい」
「見たか、小回りなら負けないぞ」
マオイは泳ぎながら追い掛けて来るククに対して言います。
「こうしてな」
「それが俺をぎゃふんと言わせることか」
「いや、違う」
それは違うというのでした。
「それはこれからわかることだ」
「だからそれは何なんだよ」
「来ればわかる」
まだ言おうとしないマオイでした。
「そうしたらな」
「ふん、それじゃあな」
そう言われてです。ククも頭にきてです。
そのうえで、でした。ククはそのすばしっこく泳ぎ回るマオイを追います。その追いかけっこが海の中で暫く続いたのです。
そしてです。マオイはある岩と岩の間に入ろうとするのでした。
ページ上へ戻る