鬼館
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「そのことは、今必要なことは」
「仕事のことね」
「あの洋館何とかしてくれるか」
「立ち入り禁止にはしないのね」
「そうしてもいいんだがな」
王は沙耶香のその言葉もよしとはした。
しかしだ、それと共にこうも言ったのだった。
「またあそこに誰か間違えて入ってな」
「それで鬼に祟り殺されたら」
「変な話が増える、そういうのは好きじゃない」
「だからなのね」
「それに私が買ったんだ、買った場所でタチの悪い鬼がいたら嫌になる」
こう考えてだというのだ。
「だから頼む」
「わかったわ、ではね」
「早速はじめてくれそうだが」
「ええ、仕事は早くかかって早く済ませる」
沙耶香は洋館を見つつ微笑んで王に今度はこう答えた。
「それが私の主義だから」
「仕事は早く終わらせてか」
「上海の街でいい飯店で楽しませてもらうわ」
「上海料理のかい?」
「本場のを楽しませてもらうわ」
「そいつはいい、では仕事が終わったらご馳走させてもらおう」
王も笑ってだ、沙耶香に応えた。そしてだった。
その場で沙耶香の仕事を見ることにした、沙耶香は一歩前に出るとだ。
その影が動いた、すると。
その影は二つになり三つになった、まるで複数の方向から同時に光を浴びた様に。するとその影達がだった。
次々にだ、起き上がって。
そしてだ、沙耶香自身になってだった。
沙耶香本人のところに来てだ。微笑んで言って来た。
「ではね」
「今からね」
「仕事をはじめるのね」
「今回の仕事を」
「そうよ、これからね」
まさにとだ、沙耶香本人も答えてだった。
自分の分身達にだ、こう言った。
「相手はわかっているわね」
「ええ、怨霊ね」
「随分タチが悪いのが多いわね」
「最初の女の怨霊も」
「そして首を吊って死んだ怨霊もね」
縊鬼のこともだ、分身の一人が言った。
「あと入り込んで死んだ新しめの怨霊達」
「これは紅衛兵達ね」
「随分多いわね、だからこそなのよ」
それ故にとだ、沙耶香本人は言ったのだった。
「ここはまずこの術を使ったのよ」
「分身の術ね」
「それを使ってまずは数を増やして」
「一気に攻めて消し去る」
「怨霊達を」
「そうするのよ」
まさにとだ、こう言ってだった。
そしてだ、沙耶香は自分自身は洋館の正門のところに移動して。分身達には館の四方八方を囲ませた。そのうえで。
さらに前に出た、そして門を開けると。
瞬時に凄まじい、並の者ならそれだけで憑かれ殺されんばかりの瘴気が来た、だがその瘴気を。
沙耶香は右手を横に払って弾き返した、そして言うのだった。
「確かに強い瘴気ね、けれどね」
「私の相手ではないわね」
「そのことを言っておくわ」
分身達も言う、そして。
分身達は壁に対して右手を向けてそこから青い雷を放って壁を破壊した、その壁と共にある瘴気もだった。
そして本体も分身共に洋館の敷地内に入った、すると。
今度はだ、洋館の中から声がしてきた。
『誰だ』
『誰が来た』
『この場所に入るのは誰だ』
『一体誰が』
「さっき瘴気を返した美人よ」
沙耶香は悠然とだ、声達に返した。
ページ上へ戻る